2011年02月12日 16:32

広告益世って なーに?

【りょく吉】
うーん? うーん?

【あか吉】
なに力んでいるの?おトイレならあっちよ。

【りょく吉】
リキんでいるんじゃなくて、悩んでいるの?

【あか吉】
あらら天下太平、能天気なりょく吉が悩むなんて・・・地震でもくるんじゃない?

【りょく吉】
ひどいよ・・・僕だって悩むよ

【あお吉】
まあまあ。じゃ、りょく吉は何を悩んでいるの

【りょく吉】
これだよ

jin.jpg

【あお吉】
この前、みんなで見に行った特別展示「広告王 森下博」にもあったよね。これがどうしたの?

【りょく吉】
だって・・・森下仁丹は薬の会社でしょ。なのになんで軍人さんが商標になっているの?

【あか吉】
それはそうね。どうせ商標にするなら、私みたいな美しい猫をマークにすればいいのに

【りょく吉】
え?

【あお吉】
りょく吉、こういうときは何も言わない。「沈黙は金」だからね

【りょく吉】
あ、そうか。うん!

【あか吉】
なによ、気分悪いわね。「その通り、あなたは美しい」とくらいいえないのかしら

【あお吉】
・・・・さて、りょく吉君、それはねこういうことだよ。

【あか吉】
こらーー無視するな

【あお吉】
まず、このマークは「大礼服マーク」といいます。このマークについて創業者の森下博さんは、お孫さんにこう語ったそうです。
「少年時代に祖父に大礼服の軍人さんは誰なのかと尋ねると、祖父は、あれは軍人さんじゃないと笑っていた。あれは外交官だと言うのです。つまり、仁丹は薬の外交官だということです」
つまり、軍人ではなく、薬の外交官なんだよ。

【りょく吉】
へー、そうなんだ。

【あか吉】
ふーーん。じゃー、これ知っている?
仁丹という名前が商標として登録されたのはいつでしょう?

【あお吉】
1900年(明治33年)でしょ

【あか吉】
ちっ!知っていたか

【りょく吉】
ふーん。そんなに前からあるんだ。大礼服姿も全然変わっていないの?

【あお吉】
大礼服の帽子をかぶり、カイゼル髭をたくわえ、謹厳でりりしい中にも親しみのある表情は変わらないけど、時代時代に合わせた細かい変更はあるね。勲章を少なくしたり、英文字を入れたりして、だんだん、今のシンプルなデザインになったんだよ。
今回の展示にはないけれど、こんなカラフルなものもあったんだよ

horo.JPG
看板と広告の資料館・琺瑯看板研究所 佐溝力氏 所蔵)
 

【あか吉】
じゃ、これ知っている?
長い歴史の中で、仁丹のホーロー看板も、随分たくさん種類があるけど、古いもの順に並べるときの一番単純な見わけ方はなんでしょう

【りょく吉】
そんなのわかんないよ~。

【あお吉】
よりシンプルなほうが新しい、じゃないかな~?

【あか吉】
ふふふ、答えは「髭の長さ」でした。古いほうが長くて、新しいほうが短いのよ。種類が多いから例外もあるとは思うけど。基本はこれでわかるそうよ。

【あお吉】
へーそうだったんだ。

【あか吉】
ふふふ。あー気持ちいい。りょく吉。これからは、なんでも私にきいてね。
さて、気分いいから、もうひとつ。
森下博さんは生前、社員の方にこんなことを言われていたそうよ。
「商標は一旦採用した以上永遠に変更しないものでなくてはいけない。単純明瞭で、裏表どちらから見ても分かりやすいものが良い。出来れば、『美顔水』などのように一見して効能が表示されているのが望ましい。さらに、国際的に不都合なものではいけない」。
大礼服マークと「仁丹」はまさにこの理想に適ったものだったのね。

【りょく吉】
一緒にいったのに、あか吉、あお吉は、本当によく、覚えているね

【あお吉】
前から、疑問に思っていたことがわかったから、たまたま覚えていただけだよ

【あか吉】
そういえば、りょく吉も随分熱心にみていたけど、どんな広告が好きだった?

【りょく吉】
僕はこの絵とこの絵が好き。字はあお吉に読んでもらった。

jintan.JPG

【あか吉】
昭和5年の新聞広告ね。仁丹の新聞広告というと2面を使った見開き広告のイメージが強いけど、こういうのも確かにいいわね。寒がりのりょく吉らしいわ。あお吉は?

【あお吉】
僕はこれ。やっぱり金言広告。名言はいいよね

kingen.jpg

【りょく吉】
なんで広告に名言をのせたの?

【あお吉】
それはね・・・

【あか吉】
私に聞きなさい。私に!

【りょく吉】
じゃ、あか吉先生、教えてください

【あか吉】
よろしい!
まずは、森下博さんの経営理念から。
「原料の精選を生命とし、優良品の製造販売進みては、外貨の獲得を実現し、広告による薫化益世を使命とする」つまり、「良品販売・海外発展・広告益世」

【りょく吉】
広告益世ってよくわかんない

【あか吉】
広告は商売の柱である、と同時に広く社会に役立つものでなくてはならないということよ。この「広告益世」の理念の代表といわれているのが、1914年(大正3年)にスタートした「金言広告」。
「天は自ら助くる者を助く」「時を空費するは無情の奢侈なり」など古今東西の格言から厳選した5,000種類の金言を、新聞広告は言うに及ばず電柱広告、看板、紙容器などに入れたと聞いているわ。この「金言広告」は新しい時代の広告として一世を風靡し、各方面から称賛を博し、学校などからも多くの感謝状が寄せられたそうよ。

【りょく吉】
あか吉先生、ありがとうございました。ところで、あか吉は?

【あか吉】
もちろん、これよこれ!

dokumetsu.JPG

ビスマルクの顔の毒滅看板よ!
商標はドイツの鉄血宰相ビスマルク。キャッチフレーズは「梅毒薬の大発見 ビ公は智略絶世の名相、毒滅は駆黴(くばい=梅毒を治療すること)唯一の神剤」。このビスマルクの顔のインパクトが好きなのよ

あお吉りょく吉
確かに、迫力あったね~

【あか吉
この展示も2月25日で終わりだそうよ。りょく吉は、もう一度みてきたほうがいいわね。

【りょく吉】
うん、わかった。次はいつ見ることができるかわからないしね。

参考文献:
 森下仁丹歴史博物館 http://www.jintan.co.jp/museum/index.html
 森下仁丹100周年記念誌
 森下仁丹80年史

投稿者 museum | 2011年02月12日 16:32