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 〜平成10年度大阪の標準者モデル賃金附帯調査〜
賃金制度等の改革に関する調査(要約)
平成10年11月17日
記者発表資料
本件担当:経済部上野、上月
電話:6944-6304

わが国の賃金水準は今や世界最高のレベルに達している。今後は少子高齢化の進展など構造的な問題により、これまでのような経済成長が見込めない状況である。 こうしたなか、企業は日本的経営の柱であった年功序列型賃金制度の見直しをはじめ、賃金制度の改革に着手しつつある。そこで、企業の賃金制度改革の実情を明らかにし、今後の参考とするため、本調査を実施した。 調査期間は平成10年7月〜8月末。アンケート方式により大阪市内に本社を有する常用従業員数30人以上の企業を中心とする2045社を対象とした。有効回答563件、回答率27.5%。

調査結果の概要(業種・規模別 回収状況)

1)賃金制度改革への関心
  • 賃金決定要素について選択してもらったところ、割合の高い順に「年齢」「能力」「勤続」「職種・職務」「資格」「学歴」「業績」「出来高」であった。
    製造業・非製造業ともに「年齢」の割合が最も高いが、規模別に見てみると従業員数1000人以上の企業では「能力」の割合が最も高い。このことから大企業ほど能力主義が浸透していると推測される。
    一方、従業員数99人以下の企業では、「年齢」の次に「勤続」の割合が高い。
    (資料2)正社員の所定内賃金の決定要素

  • 賃金諸制度の改革を進めるなかで企業が最も関心をもっている事柄は、「業績給の導入」47.6%が最も高く、次いで「能力給の導入」44.6%、「年俸制の導入」31.3%、「退職金制度の改定」25.9%となっている。
    (資料3)賃金諸制度の改革において、最も関心のある制度

2)年功序列型賃金制度のゆくえと業績給の導入

  • 年功序列型賃金制度のゆくえについては「衰退する」と答えたものが69.3%と「衰退しない」7.6%、「わからない」20.8%を引き離した。今後、日本企業の賃金制度が大きく変化するとの見方が多い。
    特に、従業員数1000人以上の製造業では「衰退する」とした割合が85.3%と最も高かった。
    (資料4)日本型年功序列賃金制度について

  • 欧米型の「業績給」の導入については、「拡大する」49.9%、「拡大しない」7.6%、「わからない」40.5%となった。
    従業員数1000人以上の非製造業で「拡大する」としたものが57.1%と最も高い一方、従業員数99人以下の製造業・非製造業では「わからない」が「拡大する」を上回り、企業規模が小さくなるほど業績給の導入に懐疑的な傾向がうかがえる。
    (資料5)欧米型の業績(成果)給の導入について

3)能力給導入への取り組み(資料6〜13)

  • 能力給を決定する要素としては「管理的能力」を挙げるものが48.5%と最も高く、「専門的能力」46.0%、「短期の実績」32.1%、「勤務態度」25.9%、「長期の実績」21.8%と続く。
    製造業は非製造業に比べ「管理的能力」を挙げる割合が高く、企業規模が大きいほどその傾向が強い。
    また、企業は「短期の実績」を重視する姿勢が鮮明だが、従業員数1000人以上の製造業では「長期の実績」が44.1%と高率を示しているのが特徴的である。
    (資料7)能力給を決定する要素

  • 所定内賃金に占める能力給の割合では、部長・課長クラスの管理職で「50〜75%」とするものが一番多い。係長・一般 正社員は「25〜50%」とするものが一番多く、上位管理職ほど能力主義が反映されている。
    (資料8)所定内賃金に占める能力給の割合

  • 今後、所定内賃金に占める能力給の割合を「増やしていく」としたものが30.6%、「現状維持」は26.3%であった。特に従業員数1000人以上の企業では38.2%が「増やしていく」としており、大企業では今後も一段と能力主義が進展するものと考えられる。一方、従業員数99人以下の企業階層では「現状維持」が最も多かった。
    (資料9)能力給が所定内賃金に占める割合の今後の見通し

  • 能力給導入のメリットは、「硬直化した賃金制度の改善」28.6%、「社員の意欲が向上」25.2%、「業績に応じた個別 管理が可能」19.5%、「社員の適正配置が可能」9.1%である。
    一方デメリットは、「能力の評価基準の明確化が困難」46.0%、「評価を処遇に反映できない」22.6%、「評価に対する社員の不満」13.5%が挙げられた。能力給導入を成功させるためには、1)社員の納得が得られる評価の客観的基準を打ち出す、2)評価にふさわしい処遇を可能にする、3)評価に不満を持つ社員の声を聴く場を設けることがカギになりそうだ。
    (資料11)能力給導入によるメリット
    (資料12)能力給導入によるデメリット
    (資料13)人事考課時の社員による自己申告制度について


2003.4.1更新
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