佐藤会頭の眼~会員企業と共に歩む(寄稿文) その8
Chairman’s Eye with you

その8<生産財や部材の製造などモノづくり企業を支える会員企業の輪>
○ピーター・ドラッカーの数々の名言の中でも「コップの中の水」が一番大阪らしい。ドラッカーは、入っている半分の水に満足するのではなく、空の半分を満たそうと努力する姿勢がイノベーションをもたらす、と説く。即ち新商品、新市場、新資源が生まれる。かの松下幸之助氏も同じことを言っている。2階にあがりたいという熱意がハシゴを生み出すことになる、と。

○生産過程や部材生産で自己表現する企業の多くは、日の当たる場所に出る幕はないものの、経営の姿勢はドラッカーだ。生産財商社としてメーカーに必要な機械、工具・製造機器用代替部品を迅速に提供する役割を担う西川産業、高周波誘導炉、太陽光発電の基幹材料であるシリコン等を熱処理する生産設備で製造業に寄与する富士電波工業、電気制御技術・デジタル通信技術を活用し、生産設備向けの制御システム(FAシステム)を提供する日本電機研究所、生産工場の排水処理等に欠かせない加圧ろ過装置の専業メーカーである栗田機械製作所など、コップの中の空の部分を満たそうとしている。最先端モノづくりに欠かせないモノづくり企業のネットワークの底力も知った。

<訪問先の主な製造業支援ネットワーク>
・製造業向け工具、工作機械・部品等の提供: エンジニア、西川産業
・製造業向け生産装置、システムの提供:   富士電波工業、日本電機研究所
・製造業向け部材・装置部品の提供:     山本金属製作所、フジキン、カサタニ
                      加貫ローラ製作所、栗田機械製作所

2011年9月富士電波工業の製造現場を視察CIMG0603.JPG「2011年9月 富士電波工業の製造現場にて」
○工業用電気炉等を製造する富士電波工業(淀川区、昭和23年設立)の横畠俊夫社長は、シンクタンクを経て横畠洋志現会長の後を引き継いだ3代目社長。高温対応(2,000度以上)の素材加工技術(プラント設計から据え付けまで)に強みをもち、競争力を維持している。真空溶解炉がシリコン加工に適し、太陽光電池パネル部品の製造に役立っているという。今後も大阪・関西のモノづくり企業の基盤となる素材分野の発展に貢献したいと抱負を語った。後継者不足の話をよく聞くが、こうした第3世代の若手経営者を中心にモノづくりの輪を広げられるよう会議所でもお手伝いしていきたい。

      訪問記録 2011年9月8日 富士電波工業


2011年10月日本電機研究所の製造現場を視察CIMG0295.JPG「2011年10月日本電機研究所の製造現場を視察」
○日本電機研究所(大正区)の訪問では、福地邦臣会長、福地裕文社長らと懇談する機会を得た。同社は1932年(昭和7年)の創業で、クライアントのニーズに応えオーダーメードで行うシステム開発が得意分野だ。最近では、食品メーカーの求めに応じて、食品素材の管理が工程ごとに細かく行える追跡(トレーサビリティ)システムの構築を支援したと力強く語った。また営業努力もあって制御システム開発(ハード・ ソフト)可能な対象業種も広がっており、「受注は全てオーダーメードのため、設計開発担当者がフォローアップに時間を取られがちとなり、新しい受注先の開拓まで人手が回わりきれない」というのが福地社長の悩み。しかし中国・天津にも子会社を設立するなど大正区を代表するオンリーワン企業として大手メーカーの信頼は厚い。

      訪問記録 2011年10月12日 日本電機研究所

○山本金属製作所(平野区)の工場や研究開発センターは、山本憲吾社長から直接案内していただいた。代表取締役就任は2009年(平成21)年8月で、1970年(昭和40年)に同社を創業した現会長の山本将義氏から経営のバトンを引き継いだとのこと。山本会長からは、「リーマンショック以降、製造業にとって厳しい経営環境にあるが、思い切って研究開発型の企業へ舵を切るために、息子に社長を譲った。」と伺った。その布石として岡山県のリサーチパークに研究開発センターを立ち上げ、車輛分野への新規参入など新たな展開を進めているとのこと。今後の活躍が楽しみだ。

      訪問記録 2010年5月18日 山本金属製作所

○カサタニ(淀川区)は、1954年、自動車用の板ばね・コイルばね加工からスタート。笠谷勝美社長は、「あらゆる製品に高精度と小型・軽量化が求められる現在、我が社の得意とする超精密プレス加工技術は国内のみならず世界で広く評価され、事業領域は、ソーラー部品をはじめとする太陽光発電システムや、実用金属の中でも難加工材とされるマグネシウム加工製品など、21世紀の先端分野にも広がっている。」と自社紹介。研究開発型企業を目指し、鳥取県に技術センターを開設する一方、マレーシア(ペナン)、中国(天津市、中山市)などにも進出。製造業を取り巻く環境は厳しいものがあるが、市場の荒波を乗り越えて今後の発展を期していただきたい。

      訪問記録 2010年6月11日 カサタニ

○1899年に西区京町堀で創業、110年を超える業歴を有する印刷、工業用ゴムロールの老舗製造業が加貫ローラ製作所(生野区)だ。お会いした加貫順三氏は平成元年に就任した5代目社長。加貫社長からは、「印刷に不可欠なゴムローラや、産業機械の多くに用いられているローラだが、東日本大震災ではグループ会社営業所が津波により壊滅的な打撃を受けた。しかし、幸いにも人的被害を免れ、5月に新たな営業所を立ち上げることができた。」と業況説明があった。製造現場では、カスタムメイドのローラが数多く製造されており、その一つ一つが高い精度と高品質だ。専業メーカーの強みを活かし、更なるグローバル展開を期待したい。

      訪問記録 2011年10月12日 加貫ローラ製作所

○栗田機械製作所(西区)は、創業時(1930年)から固液分離技術を極める中でフィルタプレスに優位性を見いだし、設計から製造まで一貫したサービスを提供。昭和40年頃から海外にも製品や技術を提供するなど、その活躍のフィールドを国内外のマーケットに広げてきた。ただ業種柄、売掛金の回収が長期間にわたるため、経営管理面での苦労は多かったと3代目を継いだ栗田佳直社長は語る。2010年5月には上海にも進出したとのこと。今後、アジア新興国市場での更なる飛躍をお祈りしたい。

      訪問記録 2010年8月20日 栗田機械製作所