佐藤会頭の眼~会員企業と共に歩む(寄稿文) その9Chairman’s Eye with you

その9<大阪ブランドの発掘>
○冒頭で申し上げた通り、訪問先の会員企業の中で見つけ出した様々な分野のコンテンツは大阪発祥として紹介できるものばかり。例えば、気がついただけでもざっと以下のものを思いつく。

<食品関連>
・魚竹蒲鉾店「春夏秋冬魚庭(なにわ)天」
・国立循環器病研究センター産学官連携室「減塩食レシピ」「減塩弁当」
・大阪味噌醸造「自然醸造味噌」
・マロニー「マロニー」
・向井珍味堂「きな粉」

<各種製品>
・コドモエナジー「ルナウェア」
・エンジニア「ネジザウルス」
・ファミリー「マッサージチェア」
・シード「字消しテープ」「古紙再生機」
・マンダム「アイスデオドラント ボディペーパー(汗ふきシート)」、「男性用化粧品」
・日本ポリグル「天然凝集剤ポリグルタミン酸による水質浄化システム」




2011年7月天満橋ライトアップイベントに橋下知事(当時)らと出席CIMG0101.JPG「2011年7月 天満橋ライトアップイベントに橋下知事(当時)らと出席」
<イベント他>
天の川伝説の祈り星 「防水対応青色LED小型電球」
OSK日本歌劇団
通天閣観光「通天閣」






2012年7月通天閣100周年イベントCIMG1948.JPG「2012年7月 通天閣100周年イベントに協力」

○大阪を訪れるアジア地域の観光客やビジネスパーソン向けのノベルティグッズとなりそうなものは、通天閣をモチーフにした各種キット、マロニー社のマロニー、マンダム社のボディペーパー、シード社の字消しテープ、コドモエナジー社の携帯蓄光ストラップなど。その組み合わせも楽しい。今後も大阪らしさを体現している商品の発掘に努めたい。

○7月7日、天神祭の序曲として大阪の風物詩に定着しつつあるのが、青色LEDの電球を川に浮かべて情景を楽しむ試みだ。水都大阪イベントが2009年に中之島周辺を会場に実施されたのが発端だった。当時の橋下大阪府知事が、点灯式で対岸がライトアップされて綺麗になったと挨拶。私のほうから肝心の大川の川面は暗いままだ。ホタルイカを泳がせてはどうか、と冗談で応酬した。このアイデアに賛同した毎日放送の山本雅弘会長(当時・現相談役最高顧問)などが発起人に就任。そして立ち上がったイベントが2010年7月7日に行われた天の川に見立てた小型青色LEDランプの放流事業だ。

これまでにも京都、琵琶湖や、2012年には東京の隅田川でも同様のイベントが行われたが、このイベントとアイデア発祥の地は大阪であると常に声を大きく紹介している。こういうこだわりをしなければ、あっという間に大阪発ブランドは消えていく。例えば、京都はハモというイメージが定着しているが、昔から天神祭など夏祭りでのご馳走といえばハモ、タコ、白天が有名。大阪はかねてよりハモ料理の本場だと大阪天満宮文化研究所研究員の近江晴子先生より貴重なお話を伺った。


2012年1月マロニー社訪問で記念撮影CIMG1015.JPG「2012年1月 マロニーの河内社長を訪問し意見交換」
○また大阪の食を支える会員企業訪問では、女性経営者や英国人社長に出会う機会を得た。女優の中村玉緒さんの「マロニーちゃん!」のCMで一躍知名度を向上させたのはマロニー(吹田市)の河内幸枝社長。父親の会社を引き継いで手腕を発揮。「家業」を「企業」へと育て上げた。まさに主婦からの体当たりの転身だったという。煮崩れしないハルサメをとのニーズから開発されたマロニーは、関西の鍋文化にマッチ。河内社長は関東圏への拡販を実現すべく、当時スキャンダル騒動に巻き込まれていた中村玉緒さんをあえて自社製品のCMに起用。中村さんの独特のキャラクターと主婦層の同情もあり、PRは大成功を収めたという。まさに女性経営者ならではの視点だ。河内社長はITによる経営効率化にも熱心に取り組んでおり、2010年2月には 経済産業省主催の「中小企業IT経営力大賞2010」で日本商工会議所会頭賞を受賞。大商女性会の幹部としても活躍中だ。
      訪問記録 2012年1月18日 マロニー

○西区で天然醸造の大阪産味噌を製造している大阪味噌醸造㈱4代目社長は、大阪弁を達者に操る英国人のフレンリー・アントニー氏。「味噌力」の本を手渡され、全国で作られている味噌の違いをレクチャーしてもらった。食い倒れの街大阪が育んだ大阪産味噌の特徴は、コメと大豆を原料に用い、コメの割合が多めになっていることだ。日本人が育ててきた味噌文化を英国人の方から教わるとは夢にも思わなかった。外国人の視点を活かした味噌の新たな用途開発に期待が高まる。100年を超える社歴を有する大阪味噌醸造の社長の座右の銘は「待ちの姿勢が必要な時は、敢えて動かない力を備える。」というもの。時間を争いがちな日本人にとって、新鮮で興味深いフレーズだ。
      訪問記録 2012年5月24日 大阪味噌醸造

○黒門市場で大阪の食を支える流通拠点の役割を担ってきた魚萬珍味堂(中央区)。 同社の網干輝雄会長は商店街で長年食材を扱ってきた基盤をベースに、旬の素材を生かした和食店向けの業務用食材の開発・提供に積極的に取り組んでいる。提供する素材のみならず、調理場の安全性にも配慮する緻密さで調理する和食料理人の心をつかみ、取引先を全国に広げている。まさに食道楽・大阪を支える会社だ。
      訪問記録 2012年5月24日 魚萬珍味堂

○魚竹蒲鉾店(平野区)は、「おおさか地域創造ファンド」の助成事業に採択された会員企業。大阪港で獲れた魚介類を用いた練り製品「春夏秋冬魚庭(なにわ)天」を開発・販売中だ。同社の練り製品は、イオンなど大手流通店舗の食品売り場でも人気とのこと。竹中祥之社長に座右の銘をお聞きすると「第一に掃除を心掛けている。」とすぐ返ってきた。魚竹蒲鉾店には、今後も独自の練り製品により「大阪産(もん)」ブランドを積極的に広げていって欲しい。
      訪問記録 2010年5月18日 魚竹蒲鉾店

○平野区で中尾敏彦社長が経営する向井珍味堂(平野区)は、きな粉・青のり・ごまなどの粉末食品を製造・販売。高い品質管理技術と、自社製品を使ったオリジナル洋菓子の開発で注目を集めている。きな粉は原料となる大豆の素材が決め手。原料大豆の選定では、長年にわたる経験、ノウハウによって、「きな粉」に合う品種の大豆を原料として買い付け。用途に合わせて焙煎や粉砕をひとつひとつ変えて60種類以上の「きな粉」を市場に出している。きな粉を用いた餡子やロールケーキ、シュークリ-ムも開発。まさにオンリーワン企業といえる取り組みだ。唐辛子は素材生産地であるベトナムや富山県に何度も足を運ぶこだわりようだ。南支部主催展示会などにも積極的に参画いただいている。
      訪問記録 2012年5月24日 向井珍味堂

○その大豆やコメなどの先物商品取引を手掛けるのが西区にある関西商品取引所だ。同取引所では、2011年8月に「コメ」の先物市場を72年ぶりに復活。江戸時代の堂島米会所の流れを汲む西日本唯一の取引所だ。岡本安明理事長など歴代トップがリーダーシップを発揮。国際競争力のある大型取引所を目指し、取引所の統合・再編により機能強化を図ってきた。先物取引発祥の地である大阪にとって、関西商品取引所はなくてはならない大阪ブランドの一つだ。今後もアジアに開かれた商品市場として活躍の場を広げていってほしいと願っている。
      訪問記録 2012年1月18日 関西商品取引所

○国立循環器病研究センター(吹田市)の産学官連携室では、調理に関する独自のノウハウや減塩レシピを提供している。同センターとの共同で減塩食弁当を取り扱うシップヘルスケアフード社は、病院や老人ホームのみならず、一般家庭など院外にも「健康食」として広めていく方針だ。減塩弁当を提供する取り組みは大阪府庁内の食堂や大手商社の社員食堂にも広がってきており、健康予防食のニーズは各地で大きくなっている。国循センターでは、生活習慣病への予防策として、料理教室での調理実習なども事業化を進めている。これまでに減塩弁当を4回試食してみたが、毎回メニューが異なり、薄味を補う様々な工夫がなされるなど通常の弁当と違和感を覚えなかった。「減塩寿司」など新たなメニュー開発を支援していきたい。

      訪問記録 2012年9月13日 シップヘルスケアフード


2012年2月デリス・レストランウィークのグランプリ作品を試食CIMG1231.JPG「2012年2月 デリスレストランウィークでグランプリ作品を試食」
○水都大阪と食の大阪は大阪ブランドだ。大阪市中央卸売市場とその周辺の活性化を通じて、同エリアの場格をあげようという試みも緒に就いた。その最初のきっかけは平成22年12月に訪問した大阪市中央卸売市場関係者との懇談だ。同市場がもっと市民に親しみを持ってもらえるように工夫する余地はないのかと提言した。さらに当日はプレス関係者にもお声掛けし、果実せり、野菜・水産卸売場を見学。その後、安治川船着場から八軒家浜船着場まで「アクアライナー」に乗船して、大川クルーズを体験してもらった。




2011年10月大型観光船入港時に設営された海外観光客向け臨時ショップを視察CIMG0049.JPG「2011年10月大型観光船入港時に設営された海外観光客向けショップを視察」
東京では築地の卸売市場周辺に多数の店舗が集積し、観光スポットとして国内外の観光客を集めていた。平成23年度には大商と大阪市(経済局)が同市場の観光拠点化に関する検討会を設置。その議論をふまえて「天下の台所 ざこばの朝市」のイベントが平成24年4月から実証実験として始まった。この成果を受けて朝市を民間ベースで継続して実施することになった。朝市がつなぐ地元住民と卸売市場関係者の新たなコミュニケーションの場の創出だが、これも継続の力を発揮しなければ尻すぼみだ。行政と民間とのコラボで朝市がずっと賑わうことを願っている。
      訪問記録 2012年3月25日 天下の台所 ざこばの朝市