佐藤会頭の眼~会員企業と共に歩む(寄稿文) その7Chairman’s Eye with you

  • その7<超業歴企業の訪問>

○大正後期から昭和初期にかけて、大阪市が大大阪と呼ばれていた時代に創業を果たしていた業歴80年以上の老舗製造業も計15社訪問した。
そのうちの1社が今年創業100周年の記念すべき節目となったネクスタ(城東区)だ。同社では創業以来、紙袋、包装用紙を製造。取り扱いアイテム数を増やすべく、社員からの徹底したアイデア出しを実行。既存の分野にとらわれず、付加価値の高い医療機器や電子部品用包装材、掃除機用ゴミ袋などに参入。新製品開発に全員参加で取り組む企業風土を醸成しているのは見事だ。まさに得意技に磨きをかけるビジネスを実践している。長寿の秘訣の一端を垣間見た思いだ。岡崎社長の座右の銘は「創造進取、とにかくやってみよう」だ。

  •  訪問記録 2011年9月8日 ネクスタ


○本社の佇まいや風情から社歴の貴さを感じたのは都島区のシード。創業当時の社屋の絵には遠く大阪城が見え、高い建物の姿がない。本社社屋の会議室や廊下は今も板張りのままの姿。消しゴム製造ラインの機械も自社の従業員が工夫して手直しし、省力化に努めているという。また業種柄、製造現場の臭い対策にも万全を期す一方、近隣の小学校からの見学も積極的に受け入れて地域調和にも配慮。同社では世界特許の字消しテープなど、新製品開発にも積極的にチャレンジし、独自開発の古紙再生装置を新たな収益源に育てようと文具ビジネスからの脱却を進めている。「消す」ビジネスの進化・発展形を日々模索しているのが実に印象的だ。

    訪問記録 2011年1月11日 シード

○1925年(大正14年)に福島区大開町で創業したのは田淵電機㈱(淀川区)。これまで培ってきたトランス製造、電源事業の強みを深化させ、1995年の電力自由化以降、太陽光パワーエネルギー事業に注力。太陽電池や燃料電池が発電した直流電力を効率的に交流電力に変換できるシステムで国内シェアを伸ばしている。まさに他社より2歩前を行く取り組みだ。田淵暉久会長の座右の銘は「Something’s New & More 一味違う~もっと」。欧米での海外駐在経験も豊富な企業経営者だ。故ダイアナ妃と一緒の写真も拝見した。英国に工場進出した折に現地新聞に掲載されたものだった。

○同社では、近年、海外製造部門を欧米からアジア地域にシフト。2008年には田渕会長の陣頭指揮の下、ベトナム北部バクニン省の現地工業団地に進出し、立ち上げから僅か1年で1,500名を雇用するほどだ。本会議所でもベトナム進出に必要な情報提供や研究会やベトナムビジネス調査団への参加を呼びかけ、少しだけお手伝いさせていただいた。田渕電機の事例は、まさに良く言われる国内工場の海外移転に伴う空洞化事例そのものだが、こうした海外進出による業務拡大が、結果的に日本本社の管理部門の雇用増につながっているとの説明も受けた。長引くデフレ、円高への対応から日本のメーカーは国内での合理化・効率化はもう十分やり尽くしている。海外進出が実は国内の雇用促進に寄与しているのだ。現場視察の大切さを再認識させられる訪問となった。

   訪問記録 2012年1月13日 田淵電機

○2012年7月17日に訪問を行った有光工業(有光幸紀社長・東成区)と十川ゴム(十川敬二相談役・西区)は、いずれも大大阪時代の最中に大阪市西区で産声を上げたモノづくり企業。現在、両社とも本社を大阪に置き、県外に工場を展開している。有光工業による高品質産業用ポンプ、十川ゴムの付加価値の高いホース類は、創業以来のコア製品。有光工業奈良工場(田原本町)では高圧洗浄機のほか、葉の裏側への農薬付着を高める静電ノズルなどを製造。熱中症予防に役立つドライミスト式細霧システムの実演も視察した。また五條市にある十川ゴム奈良工場では、自動車燃料用ホースや、内面を特殊樹脂で製造しているホースの製造現場などを見学。両社の奈良県内の工場では、日本人従業員による徹底した品質管理など共通点が多く、省エネ効率や、安全性に優れた製品を製造し、海外製品との差別化を図っている。日本企業のモノづくりのDNAを実感できた。

         訪問記録 2012年7月17日 有光工業
              2012年7月17日 十川ゴム


<明治時代から大正前期の創業(創業時より社名変更ある会社含む)>
2011年10月加貫ローラ製作所の製造現場を視察CIMG0332.JPG「2011年10月加貫ローラ製作所の製造現場を視察」
  ・塩野義製薬    :1878年(明治11年)
  ・日立造船     :1881年(明治14年)
  ・加貫ローラ製作所 :1899年(明治32年)
  ・大阪味噌醸造   :1906年(明治39年)
  ・ネクスタ     :1912年(大正元年)
  ・シード      :1915年(大正4年)





<大正後期から昭和前期の創業(創業時より社名変更ある会社含む)>
2012年7月有光工業奈良工場で細霧ミストを体感うCIMG2154.JPG「2012年7月 有光工業奈良工場で細霧ミストを体感」
  ・タカラベルモント :1921年(大正10年)
  ・oneA      :1923年(大正12年)
  ・有光工業     :1923年(大正12年)
  ・田淵電機     :1925年(大正14年)
  ・十川ゴム     :1925年(大正14年)
  ・マンダム     :1927年(昭和2年)
  ・フジキン     :1930年(昭和5年)
  ・栗田機械製作所  :1930年(昭和5年)
  ・日本電機研究所  :1932年(昭和7年)


○100年以上の社歴を誇る会社の数は1位が東京、次いで大阪が2位。関西での老舗企業となると、大阪がナンバーワン。ネクスタなどこれまで視察して感じるのは、“守成と創業の精神“が横溢していることだ。大商の調査では、今後企業規模を拡大すると回答している意欲的な老舗企業が4割にも達している。”守成と創業“、こうした精神を持っているモノづくり企業の存在が大阪の強みではないか。

○通天閣でも先般開業100周年記念のイベントが行われた。このエリアはもともと第5回内国勧業博覧会の会場跡地。運営する通天閣観光㈱(浪速区)では、西上雅章社長の様々なアイデアと企画力で多くの観光客を集客し、賑わいを取り戻している。周辺の新世界商店街は、串カツ店や大衆劇団などが軒を並べ、ディープな大阪を垣間見ることができるエリア。その中心にそびえる通天閣は、大阪観光のシンボルとして益々輝きを増している。
2012年2月に節分豆まきの企画で訪問した折、来る7月の100周年イベントにご参加願いたいと西上社長から直々にお誘いを受けた。残念ながら関西財界訪中団と日程が重なったため参加が叶わなかったが、その節分イベントに同じくゲストとして招かれたのが今年創立90周年を迎えたOSK日本歌謡団のトップスター高世真央さんだ。この歌劇団も西成区天下茶屋発祥の大阪ブランド。是非とも皆で支えて後世に残していきたい。

         訪問記録 2010年9月29日 通天閣観光
              2012年2月1日  通天閣観光

○訪問先企業の中で、OSK日本歌謡団の支援を社会貢献と捉え、文化に理解を示す経営者にも出会った。平野区で給水装置や設備関連のビジネスを展開する㈱タブチの田渕宏政社長だ。同社は水の安定供給を使命に給水シテムをト-タルにサポート。東日本大震災は、蛇口をひねれば当たり前に水が出る有り難さを改めて思い知らされる良い機会となった。大阪の水道は漏水率が7%で全国トップレベルとのこと。全国の自治体からも信頼を得ている会社だ。田渕社長のように本業をしっかり経営し、大阪にご恩返しをと心得てOSK日本歌劇団をサポート。心強い限りだ。

         訪問記録 2010年9月1日 タブチ