1.「食の都・大阪スタイル宣言」作成に至った経緯
- 大阪は、あわせ出汁、カウンター割烹をはじめ様々な食、食文化を生み出し全国に発信してきたが、それらが全国に普及する過程で、自らの立ち位置が次第に不明確になってきた。また、特に近年、大阪の食のイメージが一部の偏った食に定着しつつある。
- そこで、大阪の食の総合的なブランドイメージ向上を目指す「食の都・大阪」推進会議は、大阪の食関係者がこれまで大切にし、若い世代に引き継いでもらいたいと願う「食の都・大阪のDNA」を、宣言文のかたちで端的に示そうと、大阪を代表する著名な料理人など約30名への聞き取り調査を通して、「食の都・大阪スタイル宣言」を取りまとめた。
2.「食の都・大阪スタイル宣言」の内容と特徴
- 同宣言は、「すべてはお客様が楽しく味わうために」を基本に、和・洋・中など料理のジャンルや、割烹・料亭・レストランなど業態の違いを超えて存在する“大阪らしさ”を聞き取りから検証・抽出し、料理技法の在り方や店主の心構えなど7項目の行動指針から構成されている。
- 同宣言は主に食の“作り手”としての料理人、飲食店などに向けて発信し、実践していただくことを第一義にしているが、同時に、食の“食べ手”としての顧客側にも知っていただくことで、大阪の食をより楽しく、美味しく味わってもらえる。
- さらに、同宣言は、これを飲食店や外食産業においてストアコンセプトや従業員教育に採り入れることにより、他店との差異化のきっかけづくりになるとともに、中期的な普及を通じて、国内外の来阪客に対して“大阪らしいお店”の一体的なPRが可能になることなどが期待できる。
3.「食の都・大阪スタイル宣言」
食の都・大阪スタイル宣言について
大阪はわが国のほぼ中央に位置し、西に豊饒なる瀬戸内に連なる大阪湾、東に肥沃な河内平野を有することから「魚(な)庭(にわ)」や「菜(な)庭(にわ)」と呼ばれていました。また、大阪は、これら良質かつ新鮮な食材に恵まれた地の利に加え、諸国の台所として長きにわたり市場流通の拠点として栄えたことで、独自の料理文化が醸成され、今日の日本料理の礎となる料亭料理や割烹料理を生み出してきました。さらに、大阪は、西洋をはじめ他国の料理文化を古くから受け入れ、大阪好みのスタイルに融合してきた先取の気質を有しています。
しかしながら、日本の食を先導する立場だった故に、大阪で生み出された食が全国に普及する過程で、自らの立ち位置が次第に不明確になりつつあるのもまた事実です。そこで、今回、大阪の著名な料理人の方々にご協力いただき、自らの足元を再度見つめ、先達が大事にし、大阪の将来の食を担う人たちに引き継いでほしいと思う、いわば食の都・大阪のDNAを「食の都・大阪スタイル宣言」としてまとめることにしました。
「食の都・大阪スタイル宣言」の基本となる「すべてはお客様が楽しく味わうために」やその実現に向けた7つの努力目標は、大阪が世界に誇る日本料理のみならず、和洋中などの食のジャンルを越えて大阪の食にかかわるすべての人たちの思いだと言えます。また、宣言で掲げた内容は、大阪の地にとどまらず食を愛する世界の人々と共有できるものだと思っています。
かつてそうだったように、私たちは「食の都・大阪スタイル宣言」に掲げたことにこだわり、その力をさらに磨くことで、大阪のみならず世界の人々が安心して楽しく味わえる食を追求していこうと思います。
この宣言にひとりでも多くの方が共感し、ともに食の都・大阪を盛り上げてくれることを祈っております。
「食の都・大阪」推進会議
(協力:食の都・大阪スタイル宣言助言委員会)
食の都・大阪スタイル宣言
「食の都・大阪スタイル宣言」はPDFファイルもご用意しております。
「すべてはお客様が楽しく味わうために」
それが食の都・大阪スタイルです。
その維持向上のため、7つのことにこだわります。
- 1.「喰い味」を追求し、誰もがうまいと思う味を提供します。
- 喰い味とは、大阪が追求する「素材の持ち味を生かした誰もが旨いと思う味」のこと。世界の誰もが旨いと思う“味のグローバル・スタンダード”を目指します。
- 2.ダシにこだわり、素材を余すことなく生かします。
- 良い素材を吟味するのは当然のこと、料理のジャンルを超えて“ダシ”にこだわり、素材本来の持ち味や隠れた魅力を引き出すことで、素材を余すところなく生かします。
- 3.大阪ならではの旬を大切にします。
- 季節感や祭事を大切にしながら、商都で育まれた大阪ならではの“旬の料理”を器に盛り込みます。
- 4.素材や調理技法を組み合わせ、新しい味わいを創造します。
- 大阪が得意とする“和える・混ぜる”といった調理技法を駆使し、鮮度を第一に、素材をダイナミックに組み合わせることで、理想的なマリアージュのなかに創造性あふれる魅力的な料理を提供します。
- 5.良質な値打ち感を提供します。
- どこよりも味にこだわるのが大阪。第一に料理の質を追求し、それを納得できる価格で提供する。大阪スタイルは“質の高い値打ち感”を大切にします。
- 6.店主の個性も味わいのひとつ。お客様とのかかわりを大切にします。
- カウンター割烹を生んだ大阪の料理は、人と人とのかかわりのなかで味わうもの。作り手と食べ手の“かけあい”がスパイスとなり、料理に絶妙な味を醸し出します。
- 7.料理の主役は食べ手。お客様に楽しんでいただく場を提供します。
- 楽しく食べてこそ料理。料理の主役はあくまで食べ手であるお客様とこころえ、上質で心地よい時間と空間を演出し、お客様に心の底から料理を楽しんでもらう。そんな食べ手の側に立った細やかな心配りで“もてなし”を尽くします。
4.「食の都・大阪スタイル宣言」にご協力いただいた方々
「食の都・大阪」推進会議
代表 | 小嶋淳司 | 大阪商工会議所 | 副会頭 |
代表 | 松本 孝 | ミナミまち育てネットワーク | 執行役 |
幹事 | 小林 哲 | 大阪市立大学大学院 | 経営学研究科准教授 |
食の都・大阪スタイル宣言事業ワーキングチーム委員名簿(氏名50音順・敬称略)
幹事 | 小林哲 | 大阪市立大学大学院 | 経営学研究科准教授 |
幹事 |
門上武司 | あまから手帖 | 編集主幹 |
委員 |
岩永知大 | 大阪ガス(株) | 秘書部経営調査室長 |
〃 |
井上辰雄 | 辻学園グループ | 統括本部長 |
〃 |
木下桂一 | (社)大阪司厨士協会 | 理事長 |
〃 |
金馬由佳 | (株)京阪神エルマガジン社「ミーツ・リージョナル」 | 編集長 |
〃 |
笹井良隆 | NPO法人「浪速魚菜の会」 | 代表理事 |
〃 |
本郷義浩 | (株)毎日放送 | 制作局制作二部部次長 |
〃 |
山田? 研 | 辻調理師専門学校 | 教育本部本部長 |
〃 |
湯木潤治 | 大阪芽生会 | 会長 |
食の都・大阪スタイル宣言助言委員会委員名簿(氏名50音順・敬称略)
委員 | 秋山尚登 | (割烹 秋やま) |
〃 | 穴見秀生 | (本湖月) |
〃 | 上野修 | (浪速割烹 川) |
〃 | 上野修三 | (料理研究家) |
〃 | 上村和世 | (ジョヴァノット) |
〃 | 浦上浩 | (粋餐 石和川) |
〃 | 大宜味剛 | (中国華膳 彩菜) |
〃 | 唐土良太郎 | (南地 八三郎) |
〃 | 川田一郎 | (レストラン ラ・クロッシュ) |
〃 | 神田川俊郎 | (神田川本店) |
〃 | 黒崎利夫 | (咲蔵) |
〃 | 坂本晋 | (割烹 味彩) |
〃 | 渋谷圭紀 | (ラ・ベカス) |
〃 | 春藤信也 | (辻学園調理・製菓専門学校) |
〃 | 高山龍浩 | (トゥールモンド) |
〃 | 武直樹 | (ラ ギャロワーズ) |
〃 | 豊田光浩 | (リーガロイヤルホテル ダイニング&カフェ ナチュラルガーデン) |
〃 | 中谷隆亮 | (味吉兆) |
〃 | 畑耕一郎 | (辻調理師専門学校) |
〃 | 原彬容 | (元ル・ヴァンサンク) |
〃 | 藤原哲也 | (Fujiya1935) |
〃 | 松尾英明 | (柏屋) |
〃 | 松本秀夫 | (辻調理師専門学校) |
〃 | 萬谷浩一 | (ラ・トォルトゥーガ) |
〃 | 南茂樹 | (一碗水) |
〃 | 宮本幹子 | (うずら屋) |
〃 | 村上卓央 | (ピアノ ピアーノ) |
〃 | 山田精三 | (エプバンタイユ) |
〃 | 山根大助 | (ポンテベッキオ) |
〃 | 山本弘幸 | (花祥) |
〃 | 湯木潤治 | (大阪芽生会) |
5.「食の都・大阪スタイル宣言」の宣言発表
○開催日:平成22年2月2日 午後2時
○場 所:「高麗橋吉兆」能舞台
○宣言者:宣言の趣意説明 「食の都・大阪」推進会議 代表 松本 孝 氏
宣言の読み上げ 「食の都・大阪」推進会議 代表 小嶋 淳司 氏