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(以下の記載は、平成10年度末現在の内容のため、現在では終了している事業があります)

戦後の大阪商工会議所(3)-4
昭和54年〜平成10年

Chapter:4 国際化の推進

 世界は、東西冷戦が終わりを告げ、一部に深刻な民族・地域対立が続いているものの、地球的規模での人・物・情報の交流が活発化している。アジアでは昨今経済的混乱がみられるが、「世界の成長センター』としての発展可能性は大きいと考えられる。こうした中、本会議所は、わが国初の世界ビジネス・コンベンション(G-BOC)の開催、海外商工参議所などとのネットワークの構築、「関西/西部カナダ・ビジネスフォーラム」の開催など『地域』対『地域」の交流、米国などに対する投資環境調査団や『大阪圏プロモーション・ミッション」の派遣、留学生支援事業の実施、APEC事業に対する積極的協力など、時代の一歩先を見揚えた先駆的な取り組みを次々と展開している。

■目次
  1. 国際ビジネス交流の拡大

  2. ミッションの派遣

  3. 海外ネットワークの構築と相互理解の促進

  4. 大阪・関西プロモーションの展開と海外企業などの立地促進

  5. 外国人留学生・研修生に対する支援

  6. APEC、CACCI事業への協力


1 - 国際ビジネス交流の拡大
●ビジネス・コンベンションの開催 

 昭和58年1月、通商産業省・中小企業庁の主催により、中小企業政策国際会議(中小企業サミット)が本会議所を主会場に開かれた。世界30ヵ国から産業大臣や中小企業庁長官など168人が出席し、中小企業政策に関する情報・意見の交換が活発に行われた。
 本会議所では、大阪府・大阪市とともに、同サミットの協賛事業として「国際貿易・投資コンベンション」を企画・実施した。これは、内外の企業経営者が個別商談と交流を通じてビジネスを実現することを目的としたもので、海外12カ国から210人、国内から400人が集まり、投資セミナー、業種別懇談会、個別商談会などを通じ、活発な交流が繰り広げられた。参加者の評価も高く、各プログラムとも「満足」とする声が過半に上り、次回も「参加したい」とするものが76%に上った。そこで、59年10月に、京都・神戸の両商工会議所にも呼びかけ、第2回国際貿易・投資コンベンションを開催した。参加者は、海外18カ国・地域から341人、国内からは約800人と広がり、貿易・投資・技術提携などの個別商談会や企業経営シンポジウム、産業視察ツアーなどが実施された。60年11月には、日中企業間の貿易、合弁・合作、技術提携などの促進に絞り、「中国投資・貿易コンベンション」を開催した。中国から鄭拓彬・対外経済貿易部長、魏玉明・同副部長をはじめ、14都市の代表ら約170人を迎え、日本側は約2000人が参加した。とくに、6日間にわたる個別商談会では、618件の商談が行われ、このうち408件が継続されることになった。62年10月には「アジア・太平洋ビジネス・コンベンション」を海外24ヵ国・地域から370人、国内から約1000人の参加を得て、開催した。
 平成2年10月には、これまでのアジア・太平洋地域中心から全世界を対象としたビジネス・ネットワークの構築とビジネス機会の創出を目指して、新たに「世界ビジネス・コンベンション」(G-BOC)を開催し、その後毎年秋に定期的に行っている。その特色は、(1)個別商談会について事前に参加者の希望を聞き、それに見合う相手先を探すなど、実質的なビジネス交流の成果があがるようきめ細かく対応している(2)「国「ビジネスチャンス・セミナー」に参加することで、各国の最新の経済情勢や投資環境などを収集できる(3)「日本市場参入セミナー」「世界工業団地フェア」「国際ビジネス支援プラザ」などビジネス直結型のプログラムを用意している、ことがあげられる。毎回の海外参加者は約40ヵ国、地域から700〜800人、国内参加者は約3500社で、商談件数は約6000〜7000件と、今では国際ビジネスを進める上で欠かせないイベントとして内外で高い評価を得ている。

●訪日外国人との懇談・商談

 毎年、本会議所を訪れる外国人は多数に上っている。この20年間の動きをみると、前半10年間は、中国投資・貿易コンベンション、フランス物産展が開かれた昭和60年(1422人)、アジア・太平洋ビジネス・コンベンションが開かれた63年(1359人)を除き、毎年1000人前後であった。後半10年間は世界ビジネス・コンベンション(G-BOC)の定着もあって毎年2000人前後と大幅に増加している。地域別にみると、平成2年まではヨーロッパ、北アメリカ、アジアがそれぞれ1/3を占めていたが、それ以降はアジアの伸びが目立っている。来訪の目的は、企業誘致、貿易振興、関西市場の情報収集、プロジェクトの取材などである。

2 - ミッションの派遣

●経済使節団の派遣


 本会議所は、各国との経済交流の拡大、国際会議への参加、関西における各種イベントヘの参加招請などのため、多くの経済使節団を各地に派遣している。ここでは、最近20年間に派遣した主な経済使節団についてみることにする。

・アジア太平洋地域を 中心に幅広い交流
 本会議所は、昭和46年以来、シカゴ商工会議所との間で「経済発展のためのパートナー」関係を結び、大阪・シカゴで交互に合同会議を開いてきた。とくに、56年には「米国経済使節団」(団長=佐伯勇・会頭)を派遣し、シカゴ、サンフランシスコの両商工会議所とそれぞれ合同会議を開き、日米経済動向、中小企業の振興、都市開発問題などについて意見を交換した。
 57年には、古川進・会頭を団長に「オーストラリア経済使節団」を派遣、オーストラリア製造業会議所(当時、ビクトリア製造業会議所)とメルボルン商業会議所に対して事業提携を提案、基本的合意に達し、翌58年にオーストラリア製造業会議所と、59年にメルボルン商業会議所と、それぞれ正式に調印した。60年にも近藤駒太郎・副会頭を団長とする経済使節団がメルボルンを訪れ、本会議所、オーストラリア製造業会議所、メルボルン商業会議所の合同会議を開き、日豪協力のあり方について話し合った。
 この間、59年には「欧州経済使節団」(団長=古川進・会頭)がイギリス、フランスを訪問し、政府・経済界の要人と貿易・産業協力や商工会議所間の交流強化について意見を交換するとともに、ロンドン商工会議所と事業提携を結んだ。
 60年に入り、「関西訪中経済使節団」(団長=古川進・会頭)が中国政府要人と懇談し、同年11月に大阪で開く中国投資・貿易コンベンションヘの参加招請を行い、翌61年には(財)日中経済協会との共催で「対中国投資促進使節団」(団長=佐治敬三・会頭)を派遣し、中国投資・貿易コンベンションのフォローアップ、62年開催のアジア・太平洋ビジネス・コンベンションの説明と招請に努めた。あわせて、61年には「韓国経済使節団」「東南アジア経済使節団(シンガポール、タイ、マレーシア、香港)」62年には「カナダ・米国経済使節団」(団長はいずれも佐治敬三・会頭)を派遣し、各国政府や経済団体の首脳と経済交流の拡大について意見を交換するとともに、アジア・太平洋ビジネス・コンベンションヘの参加を呼びかけた。なお、61年には、在阪8経済団体合同で「関西財界訪中代表団」(団長=日向方斉・関経連会長)を派遣、国家要人と会見し、日中両国の友好増進と経済関係の強化に取り組むことを確認した。
 63年には「ヨーロッパ経済使節団」(団長=佐治敬三・会頭)がパリ、リヨン、ミラノの3都市を訪れ、政府関係機関や業界団体の首脳に対して平成元年に関西で開催するワールド・ファッション・フェアヘの参加招請を行うとともに、ミラノ商工会議所と協力合意書を締結した。
 元年には「豪州・ニュージーランド経済使節団」(団長=佐治敬三・会頭)を派遣し、ワールド・ファッション・フェアおよび2年開催の国際花と緑の博覧会と世界ビジネス・コンベンションのPR、参加招請を行った。同元年には「ソ連・東欧経済使節団」(団長=近藤駒太郎・副会頭)がハンガリー、東ドイツ、ソ連を訪れ、経済の実情を視察し、交流のあり方を探った。さらに、元年には関西の7団体の共催で「関西財界訪韓使節団」(団長=宇野収・関経連会長)を派遣し、経済協力の強化と日韓双方のプロジェクト・イベントヘの相互協力に努めた。

・各地商議所との事業提携
 平成2年と3年には続けて「東南アジア経済使節団」(団長はともに佐治敬三・会頭)を派遣した。2年には、シンガポール、タイ、香港を訪問し、それぞれの地域の有力経済団体であるシンガポール中華総商会、タイ商業会議所、香港中華廠商聯合會と事業提携したのをはじめ、世界ビジネス・コンベンションヘの参加招請、花の万博、関西国際空港、アジア太平洋トレードセンターのPRなどに努めた。3年には、ベトナム、インドネシア、シンガポールを訪れ、相互理解の増進に努める一方で、ベトナム、東ジャワ両商工会議所と提携した。
 4年には、「オーストラリア経済使節団」(団長=三野重和・副会頭)がオーストラリア製造業会議所などの主催する国際会議「ASIA2010」に参加し、豪州連邦政府首脳などと懇談した。また、同年、日中国交正常化20周年を記念して関西の10団体が合同で「関西財界訪中代表団」(団長=宇野牧・関経連会長)を派遣し、国家要人と率直な意見交換を行った。
 5年には、大西正文・会頭を団長とする「訪中経済使節団」が北京を訪れ、事業提携先の中華全国工商業聯合會、および日中経済協会との共催で、「日中ビジネス・コンベンション」を開いた 同コンベンションには、日本側から現地参加も含め132人、中国側から211入が参加し、日中貿易・投資促進セミナー、個別商談会などを通じ、具体的なビジネス交流の拡大に努めた。同5年には、「東欧経済使節団」(団長=堀田輝雄・副会頭)をハンガリー、ルーマニア、ポーランドに派遣し、市場経済導入に向けた各国の取り組み状況とビジネス交流の拡大策を探った。また、日本とポルトガルの交流450周年を記念して「ポルトガル経済使節団」(団長=上山保彦・副会頭)をポルトガル、スペインに派遣し、友好増進に努めるとともに、マドリード商工会議所と提携した。
 6年に入ると、「フィリピン・香港経済使節団」(団長=大西正文・会頭)が現地で政府・財界首脳と交流拡大策について懇談するとともに、「オポチュニティ大阪セミナー」を開催し、大阪のPRに努めた。同年に、マクマラン・豪州連邦政府貿易大臣が主催する「全豪貿易投資展望会議」がメルボルンで開かれた。その際、国別・テーマ別セッションのーつとして唯一関西が選ばれ、大西正文・会頭が基調講演を行った。

・「地域」対「地域」の交流
 平成7年に「ミャンマー経済使節団」(団長=小池俊一・国際委員会副委員長)、8年に「インド経済使節団」(団長=堀田輝雄・副会頭)を派遣し、発展の可能性を秘めた両国の最新事情の把握と交流の拡大に努めた。
 8年には「ニュージーランド・豪州経済使節団」(団長=大西正文・会頭)を派遣し、ニュージーランドでオークランド商工会議所と事業提携に調印するとともに、メルボルンでは大阪ビジネスセミナーや住宅・建材、食品・飲料、アパレル・テキスタイルの3分野で業種別分科会を開き、具体的な事例にまで踏み込んだ意見交換を行った。10年にも「豪州経済使節団」を派遣し、ビジネス交流の拡大に努めた。
 また、8年には関西と西部カナダ4州と「地域」対「地域」の交流を進めるため、京阪神はじめ関西の6商工会議所と関経連の共催で「カナダ経済使節団」(共同団長=大西正文・会頭、牧冬彦・神戸商工会議所会頭)を派遣し、カナダ・ウィスラーで「第1回関西/西部カナダ・ビジネスフォーラム」を開催した。翌9年には神戸で、10年にはカナダ・マニトバ州でフォーラムを開き、全体会議や業種別分科会などを通じ相互理解の増進とビジネス交流の拡大に努めている。
 同じく8年には堀田輝雄・副会頭を団長とする「中近東・中欧経済使節団」がオーストリア、トルコ、イスラエル、ルーマニアの4カ国を訪れ、大阪・関西との関係強化について話し合った。
 9年には、関西の10団体が合同で「関西財界訪中代表団」(共同団長=川上哲郎・関経連会長、大西正文・会頭)を派遣し、国家要人と意見の交換を行い、日中、とくに関西との関係強化に努めることを再確認した。また9年には、明治の初めに岩倉遣欧使節団がイギリス・マンチェスターを訪問して以来125周年にあたることから、京阪神3商工会議所と関経連の共催で「欧州経済使節団」(団長=大西正文・会頭)を派遣し、マンチェスターで「大阪/マンチェスター・フォーラム」を開いた。そして、全体会議と情報・通信、医療・ヘルスケア、環境技術など5つの業種別分科会などを通じ、具体的なビジネス交流の強化策について熱心に討議した。10年は大阪に場所を移し、関西/北西イングランド・ビジネスフォーラムとして開催することにしている。

●各種調査団の派遣

・投資環境調査団
 昭和55年に「対EC進出企業経営・投資調査団」(団長=稲葉静也・資本交流研究会委員長)がイギリス、西ドイツ、オランダ、ベルギーの投資環境と日系・外資系企業の経営実態を探ったのを皮切りに、57年には「対スペイン・ポルトガル投資調査団」(団長=近藤駒太郎・副会頭)を派遣し、両国の外資受入れ状況と日本企業による投資の可能性を調べた。58年には「第4次対米投資調査団」(団長=稲葉静也・国際委員会副委員長)が米国8州の投資環境や中堅・中小企業の進出の可能性を探った。その後、63年にも「対カナダ企業進出調査団」「対米進出企業視察団」(団長はともに河合徳太郎・国際委員会副委員長)を派遣し、カナダ7州、米国中西部3州の投資環境と日系進出企業の課題などを調査した。
 平成に入り、6年と8年に日本商工会議所ベースで日本政府派遣の「韓国投資環境調査団」が訪韓、双方とも大西正文・会頭が団長を務めた。7年には「フィリピン投資環境調査団」(団長=小池俊二・国際委員会副委員長)を派遣した。これは前年、本会議所の「フィリピン・香港経済使節団」(団長=大西正文・会頭)がラモス・フィリピン大統領と懇談した際、サポーティング・インダストリー育成に向けて両者が合意し、派遣したもの。調査団は、インフラの整備状況、投資奨励策、日系企業の経営環境など中堅・中小企業の対フィリピン投資の可能性を探った。9年には、「中国内陸部投資環境調査団」(団長=堀田輝雄・副会頭)が沿岸部に比べて開発途上段階にある重慶、成都、ウルムチ、蘭州といった内陸部の経済状況と投資環境を調べた。

・商談・視察団など
 中国に対しては、昭和54年から大阪市、大阪港振興協会とともに数次にわたって「大阪港運輸経済訪中団」を派遣したほか、「大阪建設業界訪中団」(54年、団長=松村雄ニ・建設部会長)、「大阪中堅・中小企業訪中団」(5年、団長=西村俊一 ・産業構造委員長)、「大阪産業経済訪中団」(58年、団長=新井真一 ・中堅・中小企業委員長)などが訪中し、産業交流・協力のあり方などについて話し合った。その後、平成4年に「中国経済視察団」(団長=小泉進・進興電気工業社長)が北京、深順、広州などを訪れ、改革・開放路線の進展ぶりを目のあたりにした。7年には「上海・杭州流通視察団」(団長=平田憲識・小売部会長)が現地の商業施設をはじめ商業事情について見聞を深めた。
 ASEANをはじめアジア・オセアニア地域には、昭和60年に輸入促進を目的とする「東南アジア貿易促進ミッション」(団長=井川道直・日商岩井特別顧問)がシンガポール、香港、台湾において100件の個別商談を行い、平成元年には「アセアン地域機械産業視察団」(団長=有光琳郎・機械工業部会長)がタイ、シンガポール、マレーシアを訪れ、各国の機械工業の技術レベル、周辺・部品産業の状況などを調べた。2年、「オーストラリア商談ミッション」(団長=松下良一・貿易部会長)がメルボルン、シドニーを訪れ、90件に上る商談を行った。6年には「ベトナム繊維産業視察団」(団長=大西隆・繊維部会長)、「インドネシア繊維産業視察団」(団長=伊藤直三・繊維部会副部会長)を派遣し、繊維産業を中心に工場、関連施設の視察、関係者との意見交換などを行った。
 他方、欧米には、「米国空港・都市機能調査団」(昭和58年、団長=吉川和広・京都大学教授)、「北米都市交通システム視察団」(61年、団長=上山善紀・交通運輸委員長)、「欧米税制事情調査団」(61年、団長=石原保・税制委員長)、「商品先物取引調査団」(平成元年、団長=新井真一・大阪繊維取引所理事長)、「中堅・中小企業米国視察団」(6年、団長=大西隆・中堅・中小企業委員長)、「米国繊維産業視察団」(7年、団長=伊藤直三・繊維部会副部会長)、「ヨーロッパ文化首都視察団」(7年、団長=上山善紀・地域政策委員長)、「ドイツ・イタリア都市調査団」(8年、団長=有光琳郎・企画委員長べ「トルコ繊維産業視察団」(8年、団長=長塩安之・繊維部会長)など産業経済のみならず、都市づくり、交通システム、文化振興など幅広い分野で、調査団、視察団などを派遣した。

・環日本海経済圏構想の調査研究
 本会議所は、日本海を囲んで近接するロシア極東地域、中国東北地方、韓国、朝鮮民主主義人民共和国との相互交流を活発化し、圏域全体の発展をはかろうという環日本海経済圏構想に着目し、その具体化に向けて検討を進めている。このため、平成3年に在阪企業や関係自治体・団体が集まり「環日本海経済圏構想研究会」 (座長=吉田倬也・国際委員会副委員長)を設置し、在阪企業の環日本海経済圏構想に対する関心の喚起、専門家を招いての懇談・ヒアリング〜日本海沿岸地域関係者との意見交換、国際シンポジウムの開催などに取り組んでいる。また、4年には「ロシア極東地域経済調査団」(団長=吉田倬也・環日本海経済圏構想研究会座長)をハバロフスク、ウラジオストク、ナホトカ、ユジノサハリンスクに、また「中国東北地方経済調査団」(団長=松下良一・貿易部会長)を黒龍江省、吉林省、遼寧省に派遣したほか、5年には「北東アジア経済圏構想・韓国調査団(団長=吉田倬也・環日本海経済圏構想研究会座長)がソウル、釜山を訪れ、各地域の取り組み、日本に対する期待などを調べた。
 こうした成果を踏まえて、6年には関西国際空港と対岸諸都市との直行使の開設、世界ビジネス・コンベンション(G-BOC)の活用などによる経済交流の拡大、対岸地域における中小企業の育成支援、日本海国土軸の構築などを骨子とした「環日本海経済圏に関する提言」をとりまとめた。その後も、国内外の関係機関などとの意見交換を重ねる一方、10年には改めて「ロシア極東地域経済調査団」(団長=藤野文暗・環日本海経済圏構想研究会座長)を派遣し、最新情報の収集に努めた。


3 - 海外ネットワークの構築と相互理解の促進

●海外商議所との事業提携

 本会議所は、昭和46年以来海外商工会議所などとのネットワークの構築に積極的に取り組んでいる。現在、提携関係にあるのは、世界22ヵ国・地域の35団体である。地域別には、アジアが14ヵ所、オセアニアが3ヵ所、北アメリカが8ヵ所、ヨーロッパが10カ所となっている。ネットワーク化の狙いは、双方が派遣するミッションの受入れをはじめ、イベントやシンポジウムなどに対する相互協力、地域に密着した経済、ビジネス情報の提供などである。例えば、本会議所などが主催する世界ビジネス・コンベンション(G-BOC)に毎回海外から多数の参加者があるのも、提携先の会議所などの多くが代表団を組織し、参加してくれることが大きい。
 また、本会議所は58年にオーストラリア製造業会議所と提携し、ミッションの派遣・受入れやビジネス交流の拡大などに努めているが、こうした実績を高く評価した豪州政府は、平成4年にオーストラリア通商事務所を本会議所ビル内に設置し、日豪企業間の取引拡大に努めている。同じく、本会議所ビルに日本事務所を置くインド工業連盟とは5年に事業提携を結んでいる。

●相互理解の促進

 本会議所では、関西に在住する外国人ビジネスマンや外交官と日本人ビジネスマンにコミユニケーションの場を提供し、国際交流の促進と相互理解の増進を図るため、日本貿易振興会大阪本部と共催で、英語でスピーチとディスカッションを行う「大阪インターナショナル・フォーラム」を昭和56年から開催している。すでに105回(平成10年7月現在)を数えるが、テーマも経済、産業、技術、文化など多岐にわたり、毎回50〜70人が参加し、交流を深めている。
 また、昭和61年に佐治敬三・会頭とデスクェット・在大阪フランス総領事が日仏経済交流の一層の促進のため、両国のビジネスマンが定期的に意見を交換する場を持つことに合意したのを受け、「日仏ビジネス・クラブ」を設置している。そして、本会議所と在日フランス商工会議所が共催して、62年に第1回懇談会を開催して以来、毎年日仏貿易・投資交流・技術提携の促進策などをめぐって活発な意見交換を行っている。
 さらに、62年に在日米国ビジネスマンと日本企業関係者が日米関係について率直な意見交換を行う場として「日米経済サロン」を創設した。平成2年、「在日米国商工会議所関西支部との合同会議」と名称を変更し、情報交換を行っている。

●産業交流センターの運営

 本会議所は、昭和60年にわが国と諸外国との相互理解と友好関係の増進を目的として、大阪府、大阪市、在阪経済団体とともに「産業交流センター」(事務局=本会議所)を設立した主な事業は、外国の大学生(大学院生を含む)で日本語のレベルが一定以上に達し、かつ日本の産業や企業経営に関心を持つ成績優秀者に対する奨学金の支給と、日本の産業・企業経営などに関心を寄せる社会人の日本への招請・研修である。発足以来、奨学金をアジアの学生を中心に弱人に支給し、研修事業は35ヵ国、107人に対して行っている。

4 - 大阪・関西プロモーションの展開と海外企業などの立地促進

●海外プロモーションの活動

 本会議所は、大阪、関西を世界にアピールする上での方策を検討するため、昭和63年に「大阪・関西プロモーション戦略研究会」(座長=河合徳太郎・国際委員会副委員長)を設置し、平成元年に海外のマスコミ関係者に対して情報を継続的に提供する「関西インフォメーションセンター(仮称)」の設置、PRキャラバン隊の海外への派遣、関西を紹介する英文のパンフレット、ビデオの制作などを骨子とした提言をとりまとめた。そして、2年から大阪府、大阪市と共同で英文大阪経済情報誌「オオサカ・ビジネス」を発行しているほか、「エコノミック・プロフィール・オブ・オオサカ」などの英文PR誌や大阪・関西プロモーションビデオを作成した。さらに大阪圏セミナーを在阪の外国公館・通商事務所のスタッフや外資系企業のビジネスマンらを対象に開催したほか、東京でも在日本大使館などの外交官、ビジネスマン、プレス向けに同様のセミナーを実施するなど多彩な活動を展開した。とくに5年には、安部川澄夫・副会頭を団長に「大阪圏プロモーションミッション」を米国のニューヨーク、ワシントン、シカゴ、サンフランシスコ、ロサンゼルスに派遣し、各地で大阪圏セミナーを開催するとともに、現地テレビ、新聞などのメディア・インタビューを通じ、大阪圏の魅力をアピールするなど、広く関西への企業進出を訴えた。さらに、6年にはマニラ、香港で「オポチュニティ大阪セミナー」を、7年にはオーストラリアで大阪・関西セミナーをそれぞれ開催し、大阪・関西のプロモーションに努めた。

●外国企業の対関西進出の促進

 本会議所では、平成8年に国際投資交流特別委員会(委員長=小池俊二・副会頭)を設置し、外国企業の大阪・関西への投資促進策などの検討を進めている。この一環として、関西企業、在日外国企業・政府機関、対日投資関心海外企業などを対象に「対日投資促進策に関する調査」を実施し、「外国企業の対日投資促進策についての提言」をとりまとめた。10年には「欧州投資交流使節団」(団長=橋本睦・国際委員長)がフランス、フィンランド、ドイツを訪れ、大阪・関西の産業、文化面の集積と魅力を紹介し、対日進出を促した。
 また、本会議所では、8年に「大阪商工会議所ビジネス・インフォメーション・センター」を開設し、弁護士や公認会計士などを登録して、大阪・関西にビジネス拠点を設置しようとする海外ビジネスマンらに対してビジネス関連情報の提供やコンサルティングに応じている。8年度には20ヵ国のビジネスマンに対し延ベ32件、9年度には8ヵ国延べ13件の相談に応じた。

●ビジネス・アンバサダー制度の創設

 本会議所は、海外での大阪・関西 の知名度を高め、外国企業や外国政府機関・通商事務所、国際会議、観光客、さらには大阪オリンピックの誘致を促進するため、平成9年に「大阪商工会議所ビジネス・アンバサダー」制度を創設した。本制度は、海外訪問の機会の多い在阪企業経営者や経営幹部に「ビジネス・アンバサダー」を委嘱し、海外出張や本会議所の海外経済使節団派遣の機会に、現地で大阪・関西のPR活動を展開してもらおうというもの。ビジネス・アンバサダーの活動実績としては、9年に堀田輝雄・副会頭がマンチェスターで、橋本睦・国際委員長が北東イングランドで、靜敬太郎・国際委員会委員がシカゴ日米協会でそれぞれ講演し、大阪・関西の魅力をPRした。10年に入り、河合徳太郎・国際委員会副委員長がパリとバーミンガムで、橋本睦・国際委員長がリヨン、レンヌ、ヘルシンキ、ベルリンで、中村龍平・常議員がシカゴでそれぞれ講演した。

5 - 外国人留学生・研修生に対する支援

●留学生里親制度の設置

 本会議所は、昭和53年に留学生里親制度をスタートさせた。これは、祖国を離れて日本で勉学に励んでいる留学生に日本人家庭を紹介し、家族ぐるみの交流を通じて相互理解を深めることを狙いとしたもの。また、56年には「留学生問題委員会」(平成3年に「留学生委員会」と改称)を全国の経済団体に先駆けて設置するなど、外国人留学生・研修生に対する支援、交流事業を積極的に展開している。留学生・研修生の受入れは、各国の人材育成や技術水準の向上に一役買うだけでなく、将来、大阪・関西と各国との交流の橋渡し役を担ってもらえるという点で「国際交流百年の計」を目指したものである。平成10年3月現在の里親登録数は1390家庭で、この20年間に本制度に参加した留学生は58ヵ国・地域から累計で3039人に達している。

●留学生相談室の開設

 本会議所では、留学生の抱える悩みや問題を解決し、日本での学生生活をより円滑なものにしてもらうため、昭和63年に「留学生相談室」を開設した。相談室では、弁護士、入国管理局のOBなど各分野の専門家を相談員に配し、法律、在留資格、健康問題などについての相談に応じるほか、就職、研修、奨学金などの情報提供を行っている。また、里親や企業からの交流上の問題や身元保証、留学生の採用、社員寮の提供などの相談も受け付けている。開設以来の相談件数は、留学生から2533件、里親・企業などから844件の計3377件に上っている。

●留学生と企業の交流サロン開催

 近年、学業終了後日本企業への就職を希望する留学生か増えてきている。そこで本会議所では、昭和63年から関西の主要企業に対してアンケート調査を実施し、留学生の採用に前向きな企業の情報を留学生に提供している。また、平成3年からは日本での就職を希望する留学生と留学生の採用を予定している企業が個別に面談する「留学生と企業の交流サロン」を開催している。毎年、電機、機械、商社など20〜30社の人事担当者と400〜500人前後の留学生が一堂に会し、就職惰報の交換を行っている。その結果、企業が採用する留学生は年々増えており、企業の国際化に貢献している。

●外画人研修生ホームビジット・プログラムの実施


 日本をより理解してもらうために発展途上国からの研修生を日本人の家庭に招待する外国人研修生ホームビジット・プログラムを、(財)アジアクラブの委託を受け昭和62年から実施している。このプログラムは、同事業に関心のある日本人家庭をホストファミリーとして本会議所に登録し、年に2〜3回、1回につき2〜3人の研修生を受け入れてもらうもので、平成10年3月現在142家庭が登録している。本事業開始以来10年間で2656入が延べ970家庭を訪問した。

6 - APEC、CACCI事業への協力

APEC非公式首脳会議が平成7年に開催され、アジア太平洋18の国と地域の首脳が一同に会した。大阪商工会議所は開催に協力したほか、APECビジネス・コングレス等の協賛事業を実施した。(写真提供=外務省)
●APEC事業への協力

 本会議所では、平成元年に発足したAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の意義と活動の重要性に着目し、事業に協力している。具体的には、「APEC貿易振興セミナー」の本会議所での開催、大阪府、大阪市、在阪経済3団体による「アジア太平洋経済交流促進協議会」の発足(6年に京阪神を含む11団体に拡大)とAPEC閣僚会議の大阪誘致の要望(以上4年)、「APEC人材養成パートナーシップ事業」推進のための西日本事務局の本会議所内での設置、G‐BOC93でのAPEC加盟国間の個別商談の実施(以上5年)、APECトップマネジメントセミナー開催への協力(6・7年)などがある。
 平成6年に第1回APEC中小企業大臣会合が行われた際には、地元協力協議会(会長=大西正文・会頭)を設置し、域内10ヵ国・地域から150人の参加を得て「アジア太平洋中小企業フォーラム」(議長=大西会頭)を大臣会合と並行して実施した。その成果を議長報告としてとりまとめ、大西議長が大臣会合の官民合同会議の席上で発表した。
 こうした実績や誘致活動が実を結び、7年にAPEC非公式首脳会議と閣僚会議が大阪で開かれることになった。わが国で国際的にも第一級の国際会議が首都圏を離れて開催されるのは初めてであり、関西の自治体、経済団体などは「APEC大阪会議関西協力協議会」(会長=山田勇・大阪府知事)を設立し、地元一体となってAPEC大阪会議への協力・支援、関連行事などを行った。本会議所では、10月の第4週をAPEC協賛ウィークと位置づけ、APECビジネス・コングレス (APB-NetII)、GIBOC95、アジア太平洋ベンチャー95を開催した。このうち、APECビジネス・コングレスは、APEC大阪会議に民間の意見を反映させるため、経済団体連合会、日本商工会議所、関西経済連合会との共催で実施したもので、域内14ヵ国・地域の42経済団体関係者81人が本会議所に集い、APECの将来展望と民間の役割、APECへの政策提言、経済団体間の連携強化策について意見交換し、共同声明を採択した。これに先立ち、本会議所では、APEC大阪会議に経済界の意見を反映させるため、在阪企業や経済団体からなる「APEC大阪会議政策提言検討懇談会」を設置し、「APECに関する提言」をとりまとめた。本提言は、APECの公式諮問機関である「太平洋ビジネス・フォーラム」やAPECビジネス・コングレスの議論に反映された。
 このほか、本会議所は、7年にオーストラリアで開かれた第2回中小企業大臣会合に日商などと共同で使節団(団長=松本進・副会頭)を派遣、8年にフィリピンで行われたAPB-NetIIIおよび第3回中小企業大臣会合には堀田輝雄・副会頭が団長として参加した。また、6年に大阪で聞かれた第1回中小企業大臣会合で、橋本龍太郎通産大臣(当時)が提案した「APEC中小企業民間指導者セミナー」を7・8年の両年、関西の自治体、経済団体との共催で実施した。さらに、本会議所はAPECビジネス諮問委員会(ABAC)の日本側中小企業代表委員である中川健三・国際委員会副委員長の活動を支援し、APEC中小企業情報ネットワークの構築などに取り組んだ。

●APEC環境交流促進事業の推進

 本会議所は、APEC域内の環境技術交流に対する関西の貢献策を具体化するため、平成7年に大阪府、大阪市、在阪経済5団体などともに「APEC環境技術交流事業検討会」を設置し、「APEC環境技術交流に関する提案」をとりまとめた。同事業は、APEC大阪会議においてAPECの共同研究事業のーつとして位置づけられるとともに、関西の2府4県、政令指定都市、主要経済団体のトップで構成される「関西国際経済交流推進会議」(代表世話人=大西正文・会頭ら4人)で事業推進の合意をみた。本事業は、「APEC環境技術交流バーチャルセンター」を設置し、インターネット上にホームページを開設して各国の環境関係機関のホームページとリンクすることにより、域内の環境技術情報の交流を促進する一方、セミナー、シンポジウムなどを通じて域内の環境にかかわる人材を育成しようというものである。そこで、8年に事業の実施主体として自治体、企業、経済団体、研究機関などが中心となって「APEC環境技術交流促進事業運営協議会」を設立し、9年からバーチャルセンターの本格運用を開始した。

●CACCI事業への協力

 平成8年に、アジア・大洋州の18ヵ国・地域の経済団体で構成されるアジア商工会議所連合会(CACCI)の第16回総会が本会議所で開かれた。CACCI創設30周年にあたる大阪総会には、域内14ヵ国・地域から340人が参加し、「競争と向上〜地域協力への課題」を統一テーマに「ボーダーレス時代における中堅・中小企業の経営戦略」「CACCI地域における貿易・投資・産業協力の方向性」「ニュービジネスの育成・振興」について意見交換した。同総会で、大西正文・会頭が第19代会長に選出された(任期2年)。大西会長は、インドネシア、タイ、フィリピン、オーストラリーア、ニュージーランド、香港を訪れ、会員団体トップや政府要人と意見交換した。また、堀田輝雄・副会頭が会長代行として、ネパール、バングラデシュ、スリランカ、ベトナムを訪問。大西会長は会員拡大に努め、ネパール、カンボジア、モンゴルが新たに加入した。さらに、CACCI加盟国の中小企業相互間のビジネス交流の拡大に資するため、10年9月に大阪で域内の約1200社の参加を得て、アジア中小企業見本市を柱とする複合見本市「ダイナミック・アジア」を開催した。

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2006.3.3更新
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