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大商ニュース   2020/6/10号



新型コロナ感染症対策 中堅・中小企業支援に向け緊急要望

 大阪商工会議所はこのほど、「新型コロナウイルス感染症対策に係る中堅・中小企業支援施策に関する緊急要望」を安倍晋三首相はじめ、経済産業相ら政府・与党関係者などに建議した。第二次補正予算の編成と今後の政策対応について、支部・部会代表と中堅・中小企業委員会正副委員長との意見交換会での議論も踏まえ、取りまとめた。
 要望では、わが国経済は戦後最大の危機にあるとの認識の下、中堅・中小企業の資金繰り支援、雇用の維持など事業継続策の強化はもとより、経済危機の長く、かつ広範囲にわたる影響を念頭に今後の政策展開を図ることが重要と指摘。資本性資金の活用による中堅・中小企業の財務悪化防止策の強化や、雇用調整助成金の拡充、失業者へのマッチング支援など雇用のセーフティネット策の強化、地方自治体が地域の実情に応じて迅速に支援展開できるよう地方創生臨時交付金の大幅拡充などを訴えた。また、各種支援策を迅速に届けるため、窓口の増員や申請書類の簡素化など、支援体制の強化を求めた。
 他方、感染拡大の防止と経済社会活動の維持を両立する「新しい生活様式」を踏まえた経済社会に中堅・中小企業が対応できるよう、デジタル化の推進はもとより、オンライン商談会など販路開拓支援なども要望。行政手続きの簡素化・効率化の観点から、デジタルガバメントの早期実現も強く求めた。

【問合せ】企画広報室TEL6944・6304


食創造都市 大阪推進機構 外食利用に関するガイドライン策定
新型コロナ感染予防へ

 食創造都市 大阪推進機構(事務局=大阪商工会議所、公益財団法人・大阪観光局)は、「新型コロナウイルス感染症(COVID―19)に対する外食利用に関するガイドライン」を策定し、5月13日に発表した。
 同ガイドラインは、店舗側のみならず利用客に対する要請も含めて、飲食店が、感染症に対応するための具体策をとりまとめたもの。さらに、感染症拡大期だけではなく、常日頃から実践するべきものを示している。
 主な内容は、HACCPに沿った衛生管理や、業態変容への積極的な取り組み、感染症対策に積極的な飲食店の利用促進や時差ランチタイムの実施など。適切な衛生管理のもと、作り手と食べ手が相互に理解し協力することを呼びかけている。
 同機構では3月に検討会を設置し、感染症の専門家、飲食店経営者、関連団体関係者などで、感染症対策の知見に基づいて議論を重ねてきた。飲食店側だけでなく、利用者にも外食利用の参考としていただきたい。

【問合せ】地域振興部TEL6944・6323


大阪ガスが技術ニーズ発表 中堅・中小から提案募集
もっと大阪

 大阪商工会議所は7月1日、「MoTTo OSAKA オープンイノベーションフォーラム With大阪ガス」技術ニーズ説明会を開く。
 これは大企業の技術ニーズに対し、中堅・中小企業からの提案を募り、両者の連携による技術開発や製品・事業化を支援するビジネスマッチング事業。大阪ガスは技術開発のスピードアップや開発製品の性能・信頼性向上を目指し、技術ニーズを公開。ニーズに応える中堅・中小企業からの提案を受け付ける。午後1時30分〜6時、大商で。無料。詳細はホームページ(https://www.osaka.cci.or.jp/event/seminar/202005/D22200701013.html)に掲載。
 また、6月29日には「中堅・中小企業のための技術提案力向上セミナー」を開催する。大企業への技術提案のポイントを専門家が解説する。午後3時〜4時10分、オンラインで。無料。詳細はホームページ(https://www.osaka.cci.or.jp/event/seminar/202005/D22200629010.html)に掲載。

【問合せ】産業・技術振興担当TEL6944・6300


食創造都市 大阪推進機構
大阪の飲食店を応援 クラウドファンディング活用

 食創造都市 大阪推進機構(事務局=大阪商工会議所、公益財団法人・大阪観光局)は、コロナ禍で苦しむ飲食店を支援するために、「大阪飲食店応援クラウドファンディング#みらい飯」を立ち上げ、広く寄付金を募集した。
 応援を求める府内148の飲食店が参加。4月28日から5月15日までの18日間で、延べ1436者から、総額1959万2000円の応援金が集まった。
 なお今回、大阪信用金庫、日本たばこ産業からは、それぞれ100万円の大口の寄付があった。ご支援いただいた皆様に厚く御礼申しあげます。
 集まった応援金は、参加した148店舗に5月29日に入金。当座の資金繰りや、営業継続、新たな事業展開の足がかりとしていただく。
 これまで、大阪の食とその魅力は、街のにぎわいや都市ブランド構築に大きな役割を果たしてきた。一日も早い飲食店の復活によって、大阪の街に活気を取り戻せるよう、同機構は大阪の食の振興に力を入れていく。

【問合せ】地域振興部TEL6944・6323


1号議員選挙権の取得
新規加入は7月13日まで 会費納入は8月1日まで

 大阪商工会議所は、現議員の任期満了に伴い、2020年11月1日から23年10月31日までを任期とする1号議員の選挙を10月14日(水)に実施いたします。同選挙は、会員および会員以外の特定商工業者が投票によって会員の中から選挙するもので、1号議員の定数は76人です。
 会員が選挙権・被選挙権を得るには、8月1日(土)までに会費をご納入いただくことが必要です。同日までにご納入いただいた会費額に応じて、選挙権個数が決定します。ただし、大阪市内に事業所をお持ちでないなどの特別会員の方は、選挙権がありません。
 特定商工業者が選挙権1個を得るには、同日までに3500円の負担金納入が必要です。
 新規の会員加入については、7月13日(月)の午後5時までに加入申込書を会員部に提出し、かつ8月1日(土)までに加入金と会費の納入があった場合、選挙権と被選挙権を得ることができます。
 入会手続きおよび会費・負担金の納入にはそれぞれ期限がありますので、お手続きはお早めにお願い申しあげます。

【問合せ】会員組織担当TEL6944・6251


お役に立ちます!大阪商工会議所
新型コロナ感染症拡大の影響を受ける事業者の皆様を全力で支援します

 大阪商工会議所では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けておられる事業者の皆様をご支援するため、経営相談をはじめ各種事業を実施しています。ぜひご活用下さい。

◆大商の支援事業
https://www.osaka.cci.or.jp/emergency/coronavirus.html

◆国・自治体の支援策など
https://www.osaka.cci.or.jp/emergency/contry_lgove.html


「新型コロナウイルスに関する経営相談窓口」を設置

 大阪商工会議所は、中小企業・小規模事業者などの方々を対象に、新型コロナウイルスに関する各種経営相談に幅広く応じるための相談窓口を設置しています。
 窓口の設置箇所は、大商の経営相談室と大阪市内の5支部です。ご遠慮なくご利用、ご相談下さい。

▽経営相談室TEL6944・6471
▽北支部TEL6130・5112
(管轄区=淀川、東淀川、西淀川、北、福島)
▽東支部TEL6358・6111
(管轄区=都島、旭、城東、鶴見、東成、生野)
▽中央支部TEL6944・6433
(管轄区=中央)
▽西支部TEL6539・1666
(管轄区=此花、西、港、大正、浪速、西成)
▽南支部TEL6771・2211
(管轄区=天王寺、阿倍野、東住吉、平野、住之江、住吉)


スタートアップ日本代表を選抜 応募は6月26日まで

 大阪商工会議所は、国内外の先進的なスタートアップを招待する「グローバル・イノベーション・フォーラム in Osaka 2020(GIF)」に参画する国内スタートアップを選抜するため、「GIF2020日本代表スタートアップ選抜コンテスト」を実施する。
 6月26日まで応募を受け付け、7月10日に開催する公開プレゼンテーションで、10月26〜28日に開催されるGIFに参画するスタートアップ5社を選抜する。応募方法など詳細はホームページ(https://www.osaka.cci.or.jp/event/seminar/202005/D22200527019.html)に掲載。

【問合せ】産業・技術振興担当TEL6944・6300


マクロミクロ――アフターコロナを機に

 新型コロナ感染拡大を防ぐため、多くの企業が在宅勤務を採用し、ほぼ強制的なテレワークが新しい働き方として身近になった◆テレワーク導入で、ITツールやセキュリティーなどハード面での環境整備に苦労した他に、戸惑ったのがマネジメントだ◆全員が職場に顔をそろえて働く情緒的な日本らしさは消え、部下を細かく指導することで承認欲求を満たしていたマイクロ・マネジメント好きの管理職は存在意義すら危うい。各人の明確な役割のもと、タスク管理や結果、自己管理がマネジメントに必要になるからだ◆無駄が多く非生産的な会議もチャットや資料共有で十分。どうしても必要な会議はオンラインで開かれる。オンライン会議の効率的な運営には、出席者の意見を引き出し、まとめていくコーチングとファシリテーション両方のスキルが必須だ◆もはやライフワークバランスという観点だけでテレワーク導入を検討する場合ではない。アフターコロナは管理職の新しいマネジメントスキルと社員のセルフマネジメント意識を向上させ、社内全体の働き方改革、生産性向上をめざす好機と捉えるべきではないだろうか。(雷音)


ウエルネス産業 新潮流 <14>

 関西地域の健康を産業が支えるプラットフォームづくりを目指して、大阪商工会議所が京都・神戸の商議所とともに進める「関西ウエルネス産業振興構想」。当欄では、様々な企業、自治体のウエルネスに関する新たな製品・サービス、取り組みについて紹介する。

◆大阪大学、アンジェス 新型コロナワクチン開発に着手 来春、100万人規模の供給へ

 森下竜一・大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学寄附講座教授(大阪商工会議所ライフサイエンス振興委員会副委員長)とアンジェス(山田英社長)、大阪大学は共同で新型コロナウイルス向けのDNAワクチンの開発をスタートさせた。今年3月5日に発表し、既に非臨床試験(GLP:Good Laboratory Practice)に使える原薬が世界最速で完成、4月10日には世界保健機関(WHO)が公開するワクチン開発機関一覧にも掲載された。
 いままでのワクチンは、主に病原体となるウイルスの毒性を弱めて病原性をなくした「生ワクチン」と、病原体となるウイルスの感染する能力を不活化で失わせた「不活化ワクチン」が主流だった。しかし、生ワクチンは発症のリスクがわずかに残るため、妊婦や免疫不全の患者には使えず、不活化ワクチンは作り出される免疫力が弱いため、何回か追加接種が必要であった。
 一方、今回、新型コロナウイルス向けに開発されているワクチンは「DNAワクチン」。病原体となるウイルスではなくウイルスの遺伝子を使うため安全性が高く、今回のような急な感染拡大が起こっても、ウイルスのゲノム情報が公開されればすぐに開発に着手できるといったメリットがある。
 このDNAワクチンは、遺伝子を運んでくれるベクター(運び屋)である「プラスミドDNA」に新型コロナウイルスのスパイク蛋白の遺伝子を導入したもので、アンジェスが日本初の遺伝子治療薬である「コラテジェン」(慢性動脈閉塞症の潰瘍の治療薬)を開発した技術を応用したものだ。しかもアンジェスはエボラウイルスや鳥インフルエンザウイルスに対するDNAワクチンを開発していたアメリカのバイオ企業「バイカル」との提携経験もある。
 DNAワクチンを接種すると、取り込まれた細胞中で新型コロナウイルスと同じ形式のスパイク蛋白だけを発現する。すると、体内の免疫システムはスパイク蛋白を異物として認識し、抗体を作って排除しようとする。次に本物の新型コロナウイルスが体内に侵入してくると、表面にあるスパイク蛋白を目印にしてそれを排除するように免疫システムが働くという仕組みだ。これによって感染を予防するだけでなく、感染しても発症や重症化を抑えたりすることが期待される。
 しかも、不活化ウイルスはウイルスを入手してからそれを不活化して生産するために約半年程度かかるのに対して、遺伝子ワクチンは遺伝子情報だけで短時間で開発でき、大量生産が可能。
 このワクチン開発プロジェクトには、ワクチンの製造を担当するタカラバイオをはじめ複数の企業が集結し、すでにオールジャパン体制が整っている。さらに、4月14日には大阪府、大阪市、大阪大学、公立大学法人大阪、大阪府立病院機構、大阪市民病院機構と「新型コロナウイルス感染症にかかる予防ワクチン・治療薬等の研究開発に係る連携に関する協定」を締結した。
 今後、少人数での有効性と安全性の試験(P1/2試験)を経て、今年9月には本格的な最終の臨床試験を開始し、来年春には100万人規模のワクチン提供が実現する見込みだ。さらに、有効性を高めた第二世代の新型コロナ感染予防DNAワクチンの開発にも同時に着手しており、こちらも来年以降の実用化を目指す。
【新型コロナウイルス感染症向けワクチン開発機関リスト】
https://www.who.int/blueprint/priority-diseases/key-action/Novel-Coronavirus_Landscape_nCoV-4april2020.pdf?ua=1


自民サイバー小委員会 廣瀬委員長が取り組み発表

 大阪商工会議所は5月14日、自由民主党サイバーセキュリティ小委員会(委員長=小林史明衆議院議員)からヒアリングを受け、企業成長支援委員会の廣瀬恭子委員長が「中小企業のサイバーセキュリティーを効果的に進めるための仕組み」について説明した。
 廣瀬委員長は、サイバーセキュリティお助け隊などの大商の取り組みを紹介し、「中小企業のため、わが国のサプライチェーンを守っていくため、お助け隊で少しでもお役に立ちたい」と発言。小林議員は大商の取り組みを高く評価し、セキュリティーに対する意識の低い中小企業に働きかけ、全国に普及していくにはどんな課題があるかと質問。これに対し、宮城勉専務理事が、「国の政策的支援が必要」と訴えた。
 大商は4月から、中小企業を対象にサイバーセキュリティお助け隊サービスを開始し、利用企業を募集している。

【問合せ】経営情報センターTEL6944・6353


外国企業誘致昨年度は35件 コロナ感染拡大で減

 大阪商工会議所が大阪府、大阪市とともに設立した大阪外国企業誘致センター(O―BIC、事務局=大商・国際部内)は、2019年度の外国企業の誘致実績が新型コロナウイルス感染拡大などの影響で、前年度比2割弱減の35件だったと発表した。この結果、O―BIC設立以来、19年間の誘致件数は583件に達した。
 国・地域別では中国が17件と最多で、韓国が5件、米国が3件と続く。アジア7カ国のほか、欧米5カ国からも進出があり、大阪に進出する国・地域が多様化。相談も30以上の国・地域から寄せられ、件数は03年以降最高の193件に上った。背景には、大阪市がスタートアップビザを付与する実施自治体として国に認定されたことのほか、G20大阪サミットの開催や2025年大阪・関西万博の開催決定などで、大阪が投資先として世界中から注目されていることがあるとみられる。
 中国企業による2億円の投資もあり、投資総額は5億円を超えた。1社あたりの資本金額は約1500万円で、過去5年間平均の1・5倍。

【問合せ】O―BICTEL6944・6298


会頭コメント

◆関西三府県の緊急事態宣言解除について

 大阪、京都、兵庫の三府県に対する緊急事態宣言が解除されたことは、関西が新型コロナウイルス感染症拡大防止に一丸となって取り組んだ結果であり、あらためて、さらに経済活動の幅が広がるものと受け止めている。
 今までの、自粛・休業要請によって、多くの中堅・中小企業、小規模事業者が危機的状況に瀕している。また、経済活動が、すぐさま以前のレベルに戻らないことを考えると、効果的な支援施策が迅速に届けられるよう、重ねて強く要望する。(5月21日)

◆スーパーシティ関連法成立について

 新型コロナウイルス対策を機に、オンライン診療や遠隔教育、リモートワーク等の重要性が広く認識された。こうした中、新しい生活様式を定着させ、より強靭な未来社会づくりのために必要な規制緩和や基盤整備を推進するスーパーシティ関連法が成立したことを歓迎する。
 本会議所は、目指すべき大阪のスーパーシティを、「誰もが、心身の健康を維持し、活動的な生活を送るために必要な課題を解決するまち」と定義した提言を既にまとめている。また、MaaS、ウエルネス、AI、IoT等、課題や分野ごとに多数の関心企業の参画を得て、具体的なプロジェクトを創出する枠組みも用意するなど、取り組みを進めてきた。
 スーパーシティの公募に際して、本会議所は、大阪府、大阪市の提案具体化に協力し、地域指定の獲得を全力で支援したい。「いのち輝く未来社会のデザイン」を掲げる万博を控える大阪から、スーパーシティのモデルケースが発信できることを期待する。(5月27日)


常議員会開く

 大阪商工会議所は5月29日、第26回常議員会を開き、@会員加入A2号議員の部会に対する割当数(追認)B副支部長の選任の同意C大阪におけるコモングラウンドの実装に向けた取り組みD定款の一部変更E参与の委嘱および委員会委員の委嘱の承認F名誉議員の推薦および退任役員・議員への感謝状贈呈――について審議し、了承した。
 また、@1号議員職務執行者の変更A2号議員の辞任・補欠選任B第12回「なにわなんでも大阪検定」C「新型コロナウイルス感染症対策に係る中堅・中小企業支援施策に関する緊急要望」D新型コロナウイルス感染拡大の影響をふまえた大阪商工会議所の取り組み――について報告した。

 なお、常議員会後の会員数は、法人2万998、団体950、個人7464の合計2万9412になった。
◎副支部長の選任
東支部(都島区)=澤山宏信・一般社団法人都島産業会会長(5月29日)


サイバーセキュリティ対策 ¥ナンボのもんやねん!? <新連載>
奈良先端科学技術大学院大学教授 門林 雄基

売り上げに3倍の差がつくサイバーセキュリティ

 最初は小さな会社だった楽天やアマゾンが飛ぶ鳥を落とす勢いで大成功しているのを、もはや疑う人はいないでしょう。「見てみい、そのうち情報漏えいとか大失敗しよるで」と思っている方もいるかもしれませんが、本当にそうでしょうか。じつは楽天やアマゾンの成長の秘訣はサイバーセキュリティなんです。これは別に私が勝手に言っている話ではなくて、当事者からお聞きした話です。
 「他社さんが情報漏洩やウイルス感染事故で大コケしている間に、ウチがシェアを逆転したんですよ。そこからはずっとトップを維持できていますね」「サイバーセキュリティは大事ですね。役員会のトップアジェンダですよ」――飛ぶ鳥を落とす勢いの急成長企業の方々は、こういうことをおっしゃいます。情報漏洩やウイルス感染でお客様や取引先に迷惑をかけない、というのは商売人として当たり前のことかもしれませんが、「危ないから使わない」「そんなもんに金かけてられへん」と避けてばかりでは肝心の商売が伸びないのではないでしょうか。
 スマホ、パソコン、ネット、クラウド――これらは一見、単なる流行りのようにも見えますが、じっさい使いこなしてみると大変便利です。21世紀の文明の利器、だと思います。大阪の中小企業の方にもどんどん使いこなしてもらって、どんどん商売を伸ばして、大阪を元気な街にしてほしいと思います。「そやかて、ウイルスとか情報漏洩とか怖いやん」――そういう懸念も、よくわかります。しかし事故のリスクもありつつ営業車を使いこなして、安全運転で日々商売の道具にしているのと同じで、リスクを見極めて、安全に使う方法もマスターして、それなりにお金もかけて、商売の道具として使いこなしてほしいと思います。
 私たちは産官学で力をあわせて、経済産業省が主導してつくった「産業サイバーセキュリティセンター」で日本の産業のためのサイバーセキュリティ人材育成に取り組んでいます。日本全国の基幹産業の方々に1年間、国内留学していただいて、サイバーセキュリティの基本から学んでもらっています。インターネットが発明されてから50年、サイバーセキュリティも30年ほどの蓄積がありますので、この分野のプロになるためには相当の修行が必要です。そして日本の大企業には、それくらいのプロフェッショナルが必要です。
 しかし日本の産業を実際に支えているのは中小企業の方々なので、中小企業の経営者のみなさんにもサイバーセキュリティへの意識を持っていただきたいと思います。このため、サイバーセキュリティの重要性や考え方を「お金」に絡めつつ、いろんな切り口でご紹介できればと思います。本コラムは次回以降、さまざまな業界から来ている受講生による連載記事となります。
 サイバーセキュリティ対策の上手い下手で売り上げに3倍の差がつく、というのは私が主宰しているサイバー演習での数字です。

 大阪商工会議所は2017年から中小企業のサイバー攻撃対策支援事業を実施しており、今年度からは中小企業のセキュリティ対策に特化し、安価で簡便に利用できる「サイバーセキュリティお助け隊サービス」が本格稼働しました。
 日々巧妙化するインターネットのサイバー攻撃。とくに中小企業においては、対策を講じていない企業が多くあります。
 そこで大商は、中小企業の経営者の方々にセキュリティ意識を少しでも高めていただくために、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の産業サイバーセキュリティセンターにおいて中核人材育成プログラムで講師を務めている奈良先端科学技術大学院大学の門林雄基教授に協力をお願いし、これから6回にわたりコラムを掲載します。

【参考】
○大阪商工会議所 サイバー攻撃対策支援事業
https://www.osaka.cci.or.jp/cybersecurity/
○産業サイバーセキュリティセンター
https://www.ipa.go.jp/icscoe/index.html


活躍する女性リーダーたち <17>

 大阪商工会議所は、企業で活躍する女性役員や管理職を応援する「大阪サクヤヒメ表彰」を2016年度に創設。当欄では、19年度に実施した第4回受賞者を紹介する。

◆日本製薬工業協会 常務理事(受賞時、田辺三菱製薬 中国事業統括室 室長)
 中川 祥子 さん

すべての女性にチャンス
 今回は大阪サクヤヒメ賞を受賞した日本製薬工業協会の中川祥子常務理事(受賞時、田辺三菱製薬の中国事業統括室室長)。
 薬剤師の専門性を生かして田辺三菱製薬に入社、製品開発の分野で成果をあげる。医療事故が生じ社会問題となったヘパリン入り生理食塩水を「プレフィルドシリンジ製品」として対策品を開発。医薬品包装のユニバーサルデザインの製品化を行い、グッドデザイン賞などを受賞。難病治療薬のプロダクトマネジャーとして国内トップシェアを築いた後、営業研修部長として大阪を中心に全国の女性営業職のキャリアアップを推進した。17年から事業統括部部長として赴任した中国で、新規に中国政策の先読みをした難病治療薬開発戦略を提案。政府当局から優先審査権を得る快挙をあげた。
 「『ロールモデルはなりたい自分』と考え、憧れるキャリアを描いてみては。足りない部分を成長させ、自分の得意技も磨いてほしい。すべての女性にチャンスはあります」と語る。


2020.06.10
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