<<I.各国の概況・経済指標 |
II.各国の投資環境 |
各国の投資環境を要約すると、次の通りである。なお、投資優遇制度などは、しばしば変更されるため、実際に適用されているかどうかは、「VI.各国の基礎データ」に掲載した各国の投資誘致機関に問い合わせて頂きたい。 |
1.主な投資優遇措置 |
(1)チェコ共和国 (2)ハンガリー共和国 (3)ポーランド共和国 (4)スロバキア共和国 (5)スロベニア共和国 (6)ブルガリア共和国 (7)ルーマニア共和国 |
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2003年12月に改正された投資優遇措置法が重要である。一定の条件(投資金額が2億コルナ以上など)を満たし、承認を受けた製造業の投資プロジェクトに対して、最大10年間の法人税免除、雇用創出補助金・職業訓練補助金の給付といった措置が適用されることになっている。同様の優遇措置は、戦略サービス分野(ソフトウエア・ITサービスセンターなど)および研究開発分野などについても規定されており、一定の条件を満たせば、事業活動補助金、職業訓練補助金などが給付される。 なお、これら措置はEU競争政策に整合的であるとされており、EU加盟によって大きく変化する可能性は少ない。ただ、野党のなかには外資に対する投資優遇に批判的な勢力もあり、むしろ、国内の政治情勢で変化することはありえる。 |
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2003年以来、EU競争政策に整合的な投資優遇措置”SMART HUNGARY”を実施している。その内容は、予め決められた基準(投資総額が100億フォリント以上など)を満たした投資に対して、一定の税額控除を4年間認めることなどである。 また、環境保全およびインターネット接続サービス分野に関する投資にも、一定の税額控除が認められている。その他、近代経営手法の導入(例えば、ISOなど国際規格の取得)、物流センター・工業団地の建設あるいは新規雇用創出プロジェクトなどに対する助成金制度も導入されている。 |
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同国における投資優遇措置は、全土に適用される「投資支援法(2002年5月発効)」によるものと、15の特別経済区に適用される「経済活動法(2001年1月発効)」に基づくものに大別できる。なお、これらはいずれもEU競争政策に整合的なものとなっている。 投資支援法に基づく措置には、次のようなものがある。決められた条件(1,000万ユーロ以上の投資、一定の新規雇用創出など)を満たす場合、@投資額の25%を上限とする補助金交付、新規雇用1人当り最大4,000ユーロの補助金、従業員に対する職業訓練について1人当り最大1,150ユーロの補助金などである。 また、経済活動法に基づく措置としては、一定の条件(10万ユーロ以上の投資で5年間の事業活動を行うなど)を満たした投資について、投資額の50%までの法人税の減免、不動産税の免税、職業訓練・雇用創出に対する補助金給付などである。 |
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2002年1月から発効した新投資促進法によって、一定の条件を満たした投資には(400万スロバキア・コルナ以上など)、各種優遇措置が用意されている。例えば、最長10年間法人税が免除されることなどである。また、新規雇用増を伴う場合、一定金額の補助金が給付される。また、職業訓練に対して、1人当り最大で1万スロバキア・コルナの助成が行われるという制度もある。なお、このような投資インセンティブは、既にEU競争政策と適合しており、加盟後も変化する可能性は少ない。 |
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特別経済区域では法人税が10%に軽減される(一般には25%)。また、一定の条件が満たされる場合(例えば、3年間で100人の新規雇用を創出するなど)、操業を開始した時点で補助金が給付される。さらに、失業者を雇用した場合、あるいは高齢者を雇用した場合など、社会保障負担などの面で軽減措置、さらには、職業訓練費の一部負担といった措置が用意されている。なお、これら優遇措置はEU競争政策に整合的なものとなっている。 |
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同国の場合、外資を特別に優遇するという措置はない。ただ、高失業地域に立地する企業には法人税を減免されること、および一定の条件を満たした投資に係る輸入資本財については、付加価値税を免除することといった措置が認められている。このような条件とは、例えば、投資額が1,000万レバ以上であること、50人を超える新規雇用を創出することなどである。 一方、政府は外国企業による直接投資を誘致するための新規立法を検討中であり、これによれば、1,000万レバ以上などの条件を満たした投資には、法人税の減免、社会保障負担の減免などが認められる予定である。 |
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外国投資促進法によって、100万ドル以上の直接投資に関して、次のような優遇措置を受けることができる。投資財に関する輸入関税の免除、付加価値税の支払い延期、投資額の20%相当額の税控除、5年までの損失控除などである。 また、工業団地法によって、特定の地域に対する投資について、一定の条件を満たせば次のような優遇措置が適用される。設備に関する輸入関税および付加価値税の免除、最大5年間の地方税免除などである。 さらに、特定地域振興法によって、一定の条件を満たす場合、同様に設備に係る輸入関税免除、付加価値税免除などが適用される。なお、この条件とは、高失業地域への投資であることなどである。 |
2.投資コストの比較 |
ここでは、投資を行う際に必要とされるコストのうち、主要なものについて、各国を比較してみた。 |
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(プラハ) |
(ブダペスト) |
(ワルシャワ) |
(ブラチスラヴァ) |
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賃金(労働者) |
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賃金(エンジニア) | ||||
工業団地借料 (平方メートル) |
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事務所賃料 (平方メートル) |
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日本向け電話(3分) | |
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産業用電気(1kwh) | |
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法人税(%) | ||||
個人所得税(%) (最低⇔最高) |
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付加価値税(%) | 一部商品は5% |
基礎生活品は12%, 教育・薬品などは0% |
軽減税率は7% |
軽減税率14% |
(リュブリャナ) |
(ソフィア) |
(ブカレスト) |
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賃金(労働者) |
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賃金(エンジニア) | |
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工業団地借料 (平方メートル) |
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事務所賃料 (平方メートル) |
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日本向け電話(3分) | |
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産業用電気(1kwh) | |
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法人税(%) | |
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個人所得税(%) | |
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付加価値税(%) | 軽減税率は8.5% |
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注)工業団地借料・事務所賃料は月額 出所)JETRO「ユーロトレンドNO.58」 |
3.各国通貨および通貨制度 |
2004年3月現在、各国の通貨名および対ドル・対ユーロ・レートは表-11の通りである。なお、同表から読み取れるように、各国通貨とも概ねユーロにペッグするという通貨体制が採用されている。 |
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チェコ |
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1997年5月から管理フロート |
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ハンガリー | |
ユーロに対するペッグ (変動幅:±15%) |
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ポーランド | 2000年4月から自由フロート |
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スロバキア | 1998年10月からユーロを参考とする 管理フロート |
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スロベニア | ユーロを参考とする管理フロート | |||
ブルガリア | 1997年7月からユーロを準備とする カレンシー・ボード制(1ユーロ=1.95583レブ) |
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ルーマニア | 1999年からドルおよびユーロを参考とする管理フロート |
注)対ユーロ・レートは、1ユーロ当り各国通貨。対ドル・レートも同様。なお、時点は2004年2月末。 参考)田中・藤田編著「ユーロと国際通貨システム」蒼天社出版、pp.197など。 |
4.各国の直接投資受け入れ状況 |
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チェコ |
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ハンガリー | |
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ポーランド | |
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スロバキア | |
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スロベニア | |
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ブルガリア | |
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ルーマニア | |
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合計 |
*年平均額 出所)国連、”World Investment Report2003” |
このような投資誘致政策の結果、さらには中東欧諸国の経済発展性、さらには生産拠点としての優位性を考慮し、域外諸国からの直接投資は増加を続けている。表によれば、1990年代前半、上記7ヶ国に対する直接投資流入額は、年平均でみて61億ドルであった。ただ、EU加盟交渉が進展するにつれ、同流入額は急増するようになっており、2000年以降の期間をみると、概ね年平均で200億ドルといった水準に達している。 |
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国名 | |
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チェコ |
フジクラ デンソーエアーズ アイシン精機 青山製作所 大日本インキ化学工業 フタバ産業 光洋精工 シミズ工業 住友軽金属 高田工業 トヨタ自動車 セクセル・ヴィレオ ・クライメート・コントロール |
自動車用ケーブル 自動車用エアコン部品 自動車用エアコン部品 自動車用ファスナー エポキシ樹脂 自動車用排気システム 電動パワーステアリング 自動車用プラスチック 自動車エアコン用アルミ 自動車用精密プラスチック 自動車製造 自動車エアコン用コンプレッサー |
ストシーブロ リベレツ ピーセク ロボシツェ ウースティ・ナド゙・イゼロウ ハヴリーチクフ・ブロド゙ ピルゼン リベレツ ベナートキイ・ナド・イゼロア ロウニィ コリーン フンボレッツ |
ハンガリー |
ダイヤモンド電機 住友電工・住友電装 デンソー スズキ |
エンジン用点火コイル ワイヤハーネス用電線 燃料噴射装置 新型車製造(イグニス) |
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ポーランド | トヨタ自動車 三ツ星ベルト 東洋シール工業 東邦工業 トヨタ自動車 |
自動車製造 自動車用伝道ベルト ベアリング用ゴムシール ベアリング用部品 ディーゼル・エンジン |
ヴァウブジフ プルシュコフ カトヴィツチェ ラドム イェルチ・ラスコヴィツェ |
ルーマニア | 矢崎総業 YKK |
ワイヤハーネス ファスナー |
プロエシュティ ブカレスト |
注)下記白書に掲載されているもののみに限定している。 出所)ジェトロ「貿易投資白書2003年版」 |
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チェコ | ハンガリー | ポーランド | スロベニア | スロバキア | ブルガリア | ルーマニア | |
木材製品 | |||||||
化学製品 | |||||||
金属製品 | |||||||
機械製品 | |||||||
その他製造業 | |||||||
製造業計 | |||||||
建設業 | |||||||
卸小売 | |||||||
金融・運輸・サービス | |||||||
全産業 |
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注)2002年11月現在 出所)東洋経済新報社「海外進出企業総覧2003」 |
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2004.3.29更新 |