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2018年3月 6日

台湾シルバー産業視察報告(2016年11月、台北・台南・高雄) その2

台湾シルバー産業視察報告(2016年11月、台北・台南・高雄) その1より続く

このほかに台湾では、医療・介護機器メーカーや介護施設視察、介護関連展示会見学を行いました。

■Apex Medical Corp.(雃博股份有限公司)

 1990年創業の在宅向け医療・介護機器メーカー。OEMから自社ブランドまで手がけており、すでにアジア・欧米に拠点を有している。2004年に上場。

 傷口ケア関連機器の売上が全体の約半分、呼吸器病関連機器(CPAP)が3割程度、滅菌機器が1割程度を占める。

 創業間もない頃は日本や欧米企業のマットレスなどのOEMが中心だったが、2010年以降自社ブランド製品の比率を高め、現在では約8割が自社ブランド。売上の5%を研究開発に振り向けている。研究開発力の充実・強化こそ、今後台湾企業が歩むべき道、とのこと。

介護施設「雙連安養中心」

 2000年設立。3.6万平米の敷地に、認知症ケア施設、自立向け施設、要介護者向け施設、研究開発センターを展開。デイサービス、訪問介護も実施しており、トータルで1600人の高齢者をケアしている。

 「我が家にいるような感覚」を入居者に味わってもらえるのが施設の特長。病院のような長い廊下を排した館内デザインや、家庭と同じような照明、高齢者の家族のための宿泊スペース等をそろえている。

 研究開発センターでは、高齢者向けの商品開発を企業と連携して行っており、これまでにベッドやソファ等を商品化してきた実績がある。

 ベッド数は432で、スタッフの数は200人。台湾の法律では、ベッド数432ならスタッフ数は120人で基準を満たすことができるが、当施設ではサービスの質を重視してスタッフ数を充実させている。このほか、デイサービス、訪問介護のスタッフが150人在籍している。

 施設の受付カウンターの高さは、車椅子に座った入居者が同じ目線でスタッフと会話できる75センチに設定。入居者が散歩する庭の花壇は、地面よりも高く設定してあり、入居者が車椅子に乗ったまま、かがまずに水遣りができるよう配慮している。

 レストランは計11か所あり、入居者ごとに異なるニーズに沿った食事を提供している。料理人5名を含む20名のスタッフが、レストランで働いている。また、部屋の清掃と洗濯サービスは毎日実施している。毎日の洗濯は臭い対策も兼ねている。

 当施設のモットーは「生涯楽しく生活し、学び、他人にサービスを提供しよう」というもの。週に40以上のレクリエーションや学習プログラム(高齢者大学)を用意しており、入居者は同プログラムへの参加を通じて「学士」から「博士」までの「学位」を取得できる仕組みになっている。いくつかのプログラムでは、入居者自身が講師役を務めることもある。施設として講師料も支払っているが、その多くは施設への寄付として戻ってくる。入居者が持っている能力を活用し、活躍の場(舞台)と役割を与え、達成感を味わってもらうことが重要と考える。外部にも講座を公開しているほか、地域のイベントにも積極的に参加しており、単なる高齢者施設を超えた、地域のコミュニティとなることを目指している。

■高級シニアマンション「潤福生活新象」

 当施設は、潤泰集団が社会貢献を目的に1996年に設立した。設立に際し、当時の会長が世界中を視察し、日本の介護施設運営会社に企画設計を依頼。その後、15年にわたり、コンサルティングしてもらった。現在の入居者数は200人で、入居率は95%。スタッフ数は60人。

 食事には気を遣っており、同じ食材でも固さを2段階で調理している。入居者の好みに合わせた料理、ベジタリアンや、豚肉・牛肉などの禁忌にも対応している。

 看護師は24時間2人以上常駐しており、血圧・血糖値は毎日測り、記録している。また、認知症予防に役立つ健康増進のレクリエーションを多数提供している。

 親・子・孫の3世代による食事会を開くなど、入居者と親族とのコミュニケーションの機会を積極的に創出している。台湾では、高齢者を施設に預けることへの心理的抵抗が根強いため、親族との接点を増やすことが、家族の後ろめたさの軽減につながる。

 当施設は、介護施設ではなくシニアマンションなので、政府からの補助金や、市民からの寄付金等は一切もらっていない。入居者の一般的な部屋の広さは50平米で、1,800万TWDを入居時に一時金で支払ってもらっている。これは退去時に全額返金(無利息)している。

 入居者の平均年齢は84歳で、他の施設に比べて高い方。自立が入居の条件だが、入居者が、時間の経過とともに要介護や認知症になるケースもある。そうしたケースでは、契約上は退去を迫ることもできるが、現状は黙認している。寝たきりになった場合は退去するケースが多いが、基本的には看取りまで対応している。

 入居後に要介護となった入居者は、自費でヘルパーを雇用することになる。ヘルパーは住み込みが多いため、当ホームではヘルパーも家族の一員としてカウントし、入居者から利用料を徴収している。ヘルパーは「外労紹介所」という外部機関が斡旋し、個人と契約する。インドネシア人、ベトナム人が多い。当ホームとして斡旋・仲介はしておらず、家族に代わって監督しているという立場。

 

介護施設「悠然緑園」

 当グループは介護施設を2か所、デイサービス機関を4か所運営。当施設は、翌日にグランドオープン予定。グループが運営する介護施設「悠然山荘(120名収容)」よりも大規模で、200人の収容が可能。今年7月から入居者の募集を開始し、現在の入居申込者は50人。敷金は5万TWD。

 1995年に奇美グループが社会貢献のために、25年前に基金を設立し、「悠然山荘」をオープンしたが、台南郊外に立地しており、過去10年間満室続きで、入居待ちも多数に上ったため、当施設を新たに設けることになった。当グループでは定期的に日本で研修をしているが、経営は順調とは言えず、赤字補填が必要だった。

  当施設の建物(7階建て)は、築20年の台南市政府の建物をリノベーションした。この建物は、もともと自立型の高齢者向けアパートとして台南市政府が建てたが、台湾では一戸建て需要が多く、入居者が伸び悩み、経営難で10年間閉鎖されていた。

  当施設は当グループが台南市政府から運営を委託されている「公設民営型」。建物のリフォーム代8,000万TWDは自社負担した。悠然山荘を新築すると最低3億TWDは必要なうえ、定員は200人に満たないので、許容範囲の投資額。ただし、今後の運営で赤字が出た場合は自社で負担する必要があるほか、市政府に権利料(320万TWD)を支払う契約になっている。50年で回収したい。台湾では介護保険制度がないので、入居者は月3~4万TWDの利用料(台南ではやや高額)を、自費で賄う必要がある。

 中国大陸での施設運営について打診も多く、この数年、各地を見て回ったが、建物は立派なものの、制度や仕組み(例:医療との連携)が整っておらず、クリアすべきリスクが多いため、現時点では検討していない。中国の介護施設から研修に来ている。

■展示会「亞洲樂齡智慧生活展(Elder Care Asia 2016)」視察

■場 所 :高雄展覧館(No. 39, Chenggong 2nd Rd, Qianzhen District, Kaohsiung City)

■主 催 :Intercon Expo Corp.、Interfama Fairs And Exhibitors Pte Ltd

■共 催 :Kaohsiung Exhibition Center Corporation (KECC)

■会 期 :2016年11月17日(木)~11月20日(日)

 吳政典・茵康國際會議顧問股份有限公司総経理の案内のもと、会場内の台湾企業数社のブースを見学。81社が出展(うち日本企業は3社)しており、アプリと連動したセンサーを内蔵する介護ベッドを手がける台湾メーカーや、日本の介護機器を輸入販売する台湾商社等のブースを見学。

*役職、発言内容ともに訪問当時のものです。

(続く)

投稿者 panda | 2018年3月 6日 15:29


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