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2018年3月 6日

台湾シルバー産業視察報告(2016年11月、台北・台南・高雄) その1

 台湾では他のアジアの先進諸国と同様、高齢化が急速に進行しており、高齢化率は2020年に16.1%、2030年に23.9%に達すると予測されている。これに伴い、2025年までの約10年間で、高齢者産業市場は現在の3.4倍に拡大すると推計されています。また、台湾版「介護保険法」が議会で可決され、台湾のベビーブーム世代の定年時期が2016年とされるなど、台湾におけるシルバー産業市場のニーズは、今後一層の高まりが期待されます。

 そこで、シルバー産業分野を中心に、日台ビジネスアライアンスの可能性を探るべく、2016年11月、台北・台南・高雄の3都市に「台湾ビジネス視察団」(団長=桑山信雄・中国ビジネス特別委員会委員長(当時)」を派遣し、台湾の有力企業で構成される経済団体会員企業らとの意見交換や、先進的な介護機器メーカー、介護施設の視察、介護関連の展示会見学等を実施しました。こことではシルバー産業に絞ってご報告します。

 視察団はまず台北において、大阪商工会議所が2016年3月に事業提携した台湾三三企業交流会(以下、三三会)・台日商務交流協進会を訪問し、同会会員企業等とシルバー産業分野における日台連携をテーマに意見交換を行いました。

 冒頭、三三会を代表してご挨拶された鄭世松顧問からは、台湾は10年後、5人に1人が高齢者となること、高齢化のスピードは日本の1.6倍、米国の2.8倍、英国の7.3倍とされており、医療・介護は今後、日台連携の代表的な分野となりうること、日本企業は1980年代以降、展開を進めたアセアンでネットワークを築いており、これに現地事情を熟知した台湾企業の実行力を加えれば、ともに中国、あるいはアセアンで成功できる可能性が高くなる、という提案がありました。

 続いて、台湾医療・生技機材工業同業公会 黃啓宗理事長からは台湾の医療機器業界についてご紹介いただきました。主な内容は以下のとおりです。

 医療機器メーカーは台湾に約700社、大陸に1万8千社。日本は製販含めて4000社あるとされる。介護関連の法律制定は日本では2000年、韓国では2008年、台湾ではようやく昨年(2015年)。中国では「健康大計画」を今年(2016年)発表したところ。

台湾の医療機器産業は2000年を境に、それまでの伝統的(ローエンド)なものから、ハイテクを活用したものへと大きく変化しており、主には①ICT産業、②材料工業、③精密加工で活発化している。①ICTは高齢化に伴い介護ロボット、システム開発、②材料工業、③精密加工は、歯、骨、眼等に身体機能の低下に対して、人工骨、人工脊椎等、画像診断(エコー、X線、CT等)関連の製品開発が進んでいる。

 台湾の長期介護(Long-Term Care:高齢者、慢性病、心身の障害等のある方への長期的ケア)については、政府による長期かつ詳細な政策はまだできていない。台湾人にとっては老人介護は福祉であり、産業であるととらえられていない。民間の介護保険はあるが政策は不十分。政府にとっての課題は財源不足と人手不足。不足している介護人材は5万人超と言われる。

 台湾の65歳以上人口は260万人。認知症は7〜8万人、ケアが必要な高齢者が70数万人で合計80万人程度。高齢者の1/3は何らかのケアが必要。人工透析が必要な患者は8万人。台湾では介護施設に入所するのは10〜15%、自宅等で家族・兄弟等による介護が40%。今後の高齢者のニーズは主に4つ。①食事、②行動・移動のサポート、③リハビリ、④生活を楽しく豊かにするアクティビティである。

 台湾には多くの外国人労働者がいる。介護の現場にはインドネシア人ヘルパーが20万人超いる一方で、工場等の生産現場にはベトナム人が多い。

 ヘルシーフードも今後台湾でビジネスチャンスがある。先日、日本で食事宅配サービス業者と交流した。その企業は4000世帯に食事を届けている。心臓、腎臓等疾患ごとに摂取してよい/いけない栄養分が異なり、個々人の状態に合わせた食事が提供されている。介護保険法導入以降、日本には16年の経験があり、台湾と協力できる分野は多い。

台湾三三企業交流会・台日商務交流協進会との意見交換会

鄭世松・三三会顧問

桑山・大阪商工会議所中国ビジネス特別委員会委員長(当時)

(続く)

*役職、発言内容ともに訪問当時のものです。

 

投稿者 panda | 2018年3月 6日 14:46


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