佐藤会頭の眼~講演録
Chairman’s Eye with you

2012年(平成24年)11月17日(土) 立命館大学経営学部50周年記念式典講演

「千客万来都市OSAKAプラン~経営から歴史を学ぶ」

CIMG5786.JPG「9月にアメリカ・ニューヨークで撮影(マンハッタン)」 現在、世界は同時不況の状況にあります。欧州の債務危機に端を発して世界の工場である中国が打撃を受け、アメリカもサブプライムローン問題以降、本格的な回復に至っておりません。日本はどうかというと、もう二十年もデフレが続いていて克服できていないのですから、世界同時不況以前から経済は停滞したままと言えるのではないでしょうか。円高、電力不安、それに政治の不安定などが加わり、世界の中で最も危機的な状況にあるのではないでしょうか。

 この2年半に私は商工会議所の仕事で15回ほどアジアに出張いたしております。とりわけ新興国、勃興国といわれる国々を訪問しております。いつも感じるのは、新興国、勃興国には輝く目をした人が多いと言うことです。ギラギラしています。この国を発展させるのだ、という意志の現れとして眼光に鋭さと明るさがあります。

 さて、ここで大阪商工会議所のビジョンである千客万来都市OSAKAプランについて簡単にご説明しておきます。一口に申しますと、勃興著しいアジアの成長を取り込むことにありますが、その具体的な戦略は1,旅遊都市化推進、2,メディカルポリス形成、3,水・インフラ輸出拠点化、4,環境・新エネルギー産業の研究開発拠点化、5,新興国市場開拓、の5つであります。私は1から4までの項目を実現させようと、5の新興国市場開拓のためせっせとアジアに出向いているということであります。

 日本を離れますと、彼の国々と我が国とを比較することができて、彼の国の人の目の輝きを知るのであります。国造りの真っ最中にある国と国造りをしなくなった国との違い、ということでしょうか。

 ベトナムは国家のトップも、経済人も官吏も、同じことを言います。国造りのビジョンが共有できている、つまり進むべきベクトルが合っております。日本はどうでしょうか。

 インドネシアで、ある偉い方に、こんな失礼な質問をしてみました。

 「貴国は他民族国家であるし多島国であり、多宗教でもある。これを束ねるのは大変ではないのか」と聞いてみたのであります。親日派の多い国ではありますが、関西の企業で進出を考えているところが多いものですから、リスク管理として、一応質問してみた次第であります。
返ってきた返事が痛快でした。ギャフンでした。

 「この国にはスカルノ時代からの7つの誓いというのがあって、多様性の中の統一を目指しております。だから政治は貴国より安定しています。首相が一年もしないうちに変わることはありません」

 インドネシアも上から下までベクトルが合っているということであります。

 9月、久し振りにニューヨークに行ってきました。よく、映像で紹介されるタイムズスクエアの広告塔を見て驚きました。一番下がコカコーラー、次は韓国の現代、サムソン、一番上が中国の新華社通信でした。ソニーはどうした?と少なからず、ガッカリして帰ってまいりました。
日本の文化、文明の置かれている状況が象徴的に現示されていたということであります。

 どうですか。これが現実であります。グローバルな時代とは、明日は追い付かれる時代であるということであります。そこで、いまこそ私達は眦を決して足下を見、目線は遠く将来を見る。いまこそ、大大阪の時代の精神を呼び覚ますべきである、と思うのであります。自由で進取的な企業精神を呼び覚ますことです。そして不断の努力をしなければなりません。