日本型シルバー・健康・長寿関連ビジネスダイレクトリ
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2018年3月 6日

中国シルバー産業視察報告(2016年、上海・烏鎮・濰坊・煙台)

 2016年9月、中国ビジネス視察団(団長=桑山信雄・大阪商工会議所中国ビジネス特別委員会委員長)で上海、浙江省杭州、山東省イ坊、煙台を訪れました。ここでは、特にシルバー産業の視察に絞って概要をご報告します。

 上海市金山区で訪問したのは、「上海頤和苑老年服務中心」。 朱泾鎮政府が土地を無償で提供し、非営利団体が運営する老人ホーム。 計画面積200ムー(約13.3ha)。三期に分けてプロジェクト進行中で完成すると2500床。第1期は67ムー(約4.5ha)、858床。うち466床が自立者向け、90床が要介護者向け。訪問時の契約率は90%、入居率は70−80%ということでした。 入居者を身体状況別でみると、70%が健康な自立者。30%が要介護。寝たきりは全体の10%程度。12棟のうち6棟が養老、6棟が介護。1棟24戸(1フロアー6戸×4階建て)。

 入居は60歳以上に限定。入所前に民政局によるアセスメントあり。現在の入居者は地元(金山区内)が中心だが、上海市の他の区からも受け入れ可。入居者は所有する住宅を賃貸に出し、その賃貸収入で、施設の入居費用を支払うケースが多いとのことです。

  1LDK(100平米)に2人で入居した場合の入居費用は1人あたり月5,000元。1人で入居した場合は7,000〜8,000元。2LDK(111平米)は1万5,000元。見舞いに来た子どもらとの一時同居も可能で、部屋はバリアフリー設計、家具、家電付き。床暖房付き。現状、メインターゲットは中~高所得者層。2期以降はより幅広い層にターゲットを拡大する可能性もある。

 本格的な認知症対応はまだできていないが、認知症の入所者が散歩等で外へ出る際にはGPSカードを携帯し、2〜3人の入所者にスタッフ1名が付き添う。

スタッフは主に地元(金山区)出身者。平均年齢23〜24歳。男女比は当初女性が多かったが(7割)、現在はほぼ半々。デンマークから介護に関する理念を導入。デンマークから副総経理(副社長)が派遣されており、スタッフ向け研修等を実施しているとのことでした。

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 次に訪問したのは、浙江省桐郷市烏鎮にある「雅達国際健康産業園」。 2011年に設立された北京雅達銀齢投資有限公司(3つのファンドから75億元拠出)が計画・建設中のハイエンドの高齢者向け施設。中国で初めて国家社会保険基金による投資を得て建設されるプロジェクトです。

 烏鎮は千年にわたる歴史をもつ水郷の文化遺産地区。上海から約110km(車で約1.5時間)、杭州から約60km(車で約35分)の距離。その近辺にある湿地を養老施設、リハビリ病院及び商業施設も含めたリゾート・タウンとするもの。高齢者住居という位置付けでありながら、起業家や芸能人2~3週間、別荘として滞在するようなケースも多い。(上海や杭州までは距離があり、本地を住居として通勤することは難しい。)

 高齢者向けマンション(5600戸、8000~9000人)、クリニック、リハビリ病院(370床)、レクリエーション施設(頤楽学院=ピアノ、琴、麻雀、工芸、座禅、フィットネスジム、プール、バスケット、卓球他各種スポーツ用体育館)、5つ星ホテル(2018年上半期開業予定)、商業区等を備えた総合高齢者施設。

・ 完成した700戸は完売。現在、9〜21階建ての高層マンションを建設中。 併設するリハビリ病院(170室→350室に拡張予定)の設計はドイツ人デザイナーの手による。運営はドイツのメディカルチーム及び中国の3級病院と提携。医師はドイツから派遣されている。

 今後は、 パークをベースに全国に施設運営のコンサルティングや福祉用具の販売を提供していきたい意向で、 常設展示場は2015年10月にオープン。主に高齢者を身体状況に応じて4段階に分け、それぞれの段階で暮らしやすい用具を紹介しながら体験してもらい、販売につなげるもの。商品は無料展示。展示品の詳細な紹介と体験時の説明は、出展者が実施。出展者は本センターと販売代理店契約を締結しているとのことでした。

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 この後、高速鉄道で山東省へ移動し、山東省濰坊市に新たにオープンする常設の福祉用品体験館「濰坊国際健康養老産業産品博覧中心」を見学しました。

  オープンは私たちが訪問した翌日とのことで、突貫工事中でしたが、日本企業では、ニチイ学館、双日、積水ハウス他と連携している。 車椅子や介護ベッド、マットレス、介護用トイレやケアシューズ、介護ロボット等を展示。 日本からはフランスベッド、タイカ(マットレス)、アサヒ陶衛(介護用トイレ)、徳武産業(ケアシューズ)等が製品を展示。大阪商工会議所もブースをいただき、「日本シルバー産業ダイレクトリ」を展示・配布していくことになりました。

このほか濰坊では、「中日韓産業博覧会」を視察しました。この展示会は、 中国国際商会 、中日韓経済発展協会中小企業促進会が共催する博覧会で、今回が2回目。Ÿ 「スマート製造及び電子通信」「エコ、新エネルギー」「現代農業及び食品安全」「健康養老

及び美容産業」「コンテンツ産業」の5分野を中心に各国企業が出展していました。

Ÿ 大阪商工会議所として、中国アジア発展協会ブースの一角で「日本シルバー産業ダイレクトリ」を配布して、日本の介護機器・サービスをPRした。また、大阪外国企業誘致センター(O-BIC)も共同出展し、大阪の投資環境やO-BICのサポート体制を紹介しました。

Ÿ  また、濰坊では同時開催の「中日韓経済貿易合作および商工会リーダーのフォーラムにおいて、桑山団長が「日本商工業界から見た国際経済と区域経済」をテーマにスピーチを実施したほか、同博覧会を取材している地元テレビ局の取材に応じました。

 煙台では、煙台市開発区にある老人ホーム「磁山頤生苑」を視察しました。磁山頤生苑は煙台市開発区から委託を受けた地元企業・金河集団が開発し、2014年にオープン。温泉リゾート区、老年公寓などからなり、1ヶ月の賃貸料は約3,000元(食費も含む)。

 高齢者向けのサービスを行う「療養中心」は5階建て。定員200人で、現在の利用は80人程度。入居者は毎月温泉チケットをもらえるほか、カラオケ、書画、映画等のさまざまな文化活動に無料で参加できることとなっていました。

<総括>

今回の訪中では、高齢者施設4ヶ所、介護・福祉用品の常設展示場2ヶ所の見学のほか、日本企業とシルバー産業での連携を希望する政府機関、経済団体等との意見交換会、やシルバー産業関連も取り扱う展示会「中日韓産業博覧会」を視察しました。シルバー産業をテーマに大阪商工会議所として訪中団を派遣するのは、2012年以降、今回で5回目でしたが、各地で様々なプロジェクトが立ち上がっていることを実感する一方で、いずれも試行錯誤の段階といった印象でした。

 デンマーク式介護を導入した「上海頤和苑老年服務中心」は、非営利団体が運営する老人ホームで、上海市金山区政府から土地が無償提供されていることもあり、中所得層をターゲットにしながらも入居費用は安価に抑えられ、「施設入居前に暮らしていた自宅を賃貸に出せばその賃貸収入でまかなえる範囲」とのことでした。

 浙江省烏鎮の「雅達国際健康産業園」は今回、2015年3月に続いて2度目の訪問でしたが、前回計画中だったリハビリ病院や福祉機器の常設展示場がすでにオープンしていた。高齢者の身体状況別(自立、要介護、認知症等)にさまざまな商品が展示されており、シルバー産業に対する理解が不十分な人にも分かりやすく工夫されていた。

 また、山東省濰坊市は、シルバー産業の振興に非常に積極的で、地元政府と北京に本部をおく中国アジア経済発展協会中小企業促進会が共同で設立した福祉機器の常設展示場が私たちの訪問中にオープンしました。この展示場には大阪商工会議所の専用スペースを設けて頂きました。こうした常設展示場を活用し、中国における商品PR、ひいては日本の介護についてご紹介しながら、今後、日本‐アジアシルバー産業連携促進プラットフォームの登録企業のみなさまの中国展開をお手伝いしていきたいと考えています。

のっぽパンダ

投稿者 panda | 2018年3月 6日 13:50


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