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4.改正都市計画法(都市計画法の一部を改正する法律)

4−1 概要

 都市計画法は、特別用途地区に関して、一部改正されました。この改正都市計画法は、平成10年5月29日に公布され、同年11月20日から施行されています。

<目的>

 地域の実情に的確に応じたまちづくりを進め、都市計画における地方分権を図ることを目的としています。

<内容>

 これまで11種類に限定されていた「特別用途地区」の種類を廃止し、市町村の判断で、特別用途地区の種類や目的を柔軟に定められるようになりました。

 特別用途地区では、用途地域によって定められた土地の利用規制をさらに細かく規制・緩和することができ、土地利用に関する特定の目的を達成することができます。これまでは、文教地区や中高層階住居専用地区というように、法律によって、特別用途地区が11種類に限定されていました。(→4−3活用事例)今回、都市計画法が改正されたことによって、市町村が、自らの判断で「特別用途地区」の種類や目的を定められるようになりました。

 特別用途地区は、用途地域に上塗りする制度であるため、既存の用途地域に反する特別用途地区は、指定できません。また、特定の目的を達成するために、規制が認められているのであって、単に商業調整を目的として、大規模小売店を規制するためだけの特別用途地区などは認められていません。

 通産省では、新たに設定できる特別用途地区の例として、下記のものを挙げています。

○「中小小売店舗地区」:商業地域等において、商店街を中心に中小商店の集積・展開による街並みの形成を図るため、中小店舗以外の立地を制限

○「特別住居地区」 :住居系の地域において、住民の利便の確保と良好な住環境の両立を図るため、立地可能施設を限定

○「住工共生地区」 :準工業地域等において、工業と住居とが調和を図りつつ共存するため、一定の施設の立地を制限

○「沿道業務機能地区」:街道沿いの小規模商業施設の集約的立地を交通関連サービス業務施設の整備を図るため、これら以外の用途の建築物の立地を制限

 これら以外にも、アイデアを生かして特別用途地区を設定することが考えられます。(→3−2特別用途地区の活用イメージ)



<特別用途地区の指定のイメージ>

以下に示すのは、一般的な特別用途地区設定の手順です。

市が「特別用途地区」の指定案を作成

特別用途地区を具体的にどこに設定するかを、通常の都市計画決定手続きに従って決めます。 都道府県の承認 ← 都市計画地方審議会 市が作成した地区指定案は、都道府県知事の承認を得る必要があります。また、その際には、都市計画地方審議会の審議を経ることとなります。 条例で「特別用途地区」の種類や規制内容を決定 地域の実情に応じた「特別用途地区」とするため、市の条例で、その種類や規制内容を決めます。 特別用途地区の決定

4−2 Q&A

Q1.特別用途地区の活用を働きかけたいと思いますが、どこに相談すればよいですか?

 A1.特別用途地区は、都市計画法に基づいた制度ですので、一般的には市町村の都市計画を担当する窓口(都市計画課)に相談していただくことになります。ただ、大規模商業施設の適正な立地を目的とする場合は、商業担当課との相談が必要となりますので、まず商業担当に相談してみるのも一案です。

Q2.特別用途地区を設定する際、その名称などについて制限はあるのでしょうか?

 A2.基本的にどんな名称にしても差し支えありません。ただ、設定する際には建築基準法による条例をつくる必要がありますので、社会に対するルールとして明確に書きあらわす必要があります。また、特別用途地区は建物の用途を制限・緩和するもので、その用途については建築確認が必要になります。従って、建築確認が困難な用途を制限・緩和する特別用途地区の設定は難しいということになります。

Q3.用途地域が指定されていない場合、特別用途地区は活用できないと聞きました。そのような場合、都市計画による立地規制はできないのでしょうか?

 A3.用途地域が指定されていない地域や、市街化調整区域、都市計画区域外(農業振興地域など)では、特別用途地区は設定できません。このような地域では、市町村がまちづくり条例や要綱を定めることで、計画的に土地利用を規制誘導することが可能です。実際、既にこうした取り組みを行なっている市町村もあります。(→3−1まちづくりへの取り組み、<事例紹介>住民参加でまちづくり条例を制定)

Q4都市計画法による地区計画制度でも立地規制ができると聞きました。特別用途地区とどう違うのでしょうか?

 A4.地区計画制度は、地区ごとに特色あるまちづくりを行なうために、市町村が住民参加により計画を作成し、開発や建築を規制・誘導することができます。特別用途地区では、建物の用途しか規制できませんが、地区計画制度では、建物の用途の他に、建物の大きさ(容積率や建ペイ率、高さ)や形態(屋根の形や壁の位置)、垣根等について定めたり、緑地の保全も行なうことができます。ただし、特別用途地区のような建物の用途の緩和はできません。地区計画を定めるには、地区内大半の住民の賛同を得た上で、市町村と協議して計画の内容を決めていきます。この制度を利用して商業活性化に取り組んでいる地域もあります。(→3−1まちづくりへの取り組み、<事例紹介> 地区計画制度を利用した商店街整備)

4−3 活用事例

 改正都市計画法は平成10年11月20日に施行されましたが、新しい制度を使って特別用途地区を設定している事例はまだありません。ただ、特別用途地区制度はこれまでも利用されてきていますので、ここでは、これまでの制度で活用されている特別用途地区の事例についてまとめてみました。
特別用途地区の指定状況
特別用途地区名 趣   旨 指定状況 指定都市例
中高層階住居専用地区 建築物の中高層階における住宅の確保及び住居の環境の保護を図る 12都市 大阪府大阪市
商業専用地区 店舗、事務所等の商業業務施設の複合的かつ高度な集積を図り、これらの商業業務施設に係る利便を増進する    
特別工業地区 特定の工業の利便の増進を図り、またはその利便の増進を図りつつ、これと調和した住居等の環境の保護を図る 214都市 岐阜県土岐市
文教地区 学校その他の教育文化施設に係る良好な環境の保護、または住宅地の良好な文教的環境の保護を図る 28都市 宮城県仙台市
小売店舗地区 小売店舗の集約的な立地を図り、小売店舗に係る業務の利便の増進を図る 2都市 北海道札幌市
事務所地区 事務所の集約的な立地を図り、事務所に係る業務の利便の増進を図る 4都市 熊本県熊本市
厚生地区 医療施設、社会福祉施設その他の厚生施設に係る良好な環境の保護を図る 1都市 三重県長島町
娯楽・レクリエーション地区 興業場その他の娯楽施設、スポーツまたはレクリエーション施設等に係る利便の増進、またはこれらの施設等に係る環境の保護を図る 12都市 静岡県伊東市
観光地区 温泉その他の観光資源のある地域において、観光地としての地区の特性にふさわしい宿泊施設、休業施設その他の施設の利便の増進、または環境の保護を図る 11都市 北海道函館市
特別業務地区 流通業務施設、沿道サービス施設及びこれらに関連する工業等の集約的な立地を図り、これらの施設に係る業務の利便の増進を図る 60都市 石川県金沢市
研究開発地区 研究所、研究支援施設その他の研究開発施設の集約的な立地を図り、これらの研究開発施設に係る環境の保護、及び業務の利便の増進を図る 4都市 京都府木津市
建設省調べ(平成8年3月31日現在)
<まちづくりの方法>

 どんなによいアイデアが浮かんだとしても、あなた一人の力でまちづくりはできません。周辺の住民や商店・企業、土地所有者と協力して構想をまとめ、地域の行政に働きかけていく必要があります。また、アイデアを効果的に実現する方法について、情報を収集するため専門家の知恵を借りることも必要でしょう。具体的には、次のようなプロセスが考えられます。

(1)仲間を増やし、まちづくり組織をつくりましょう

 まちづくりのアイデアについて、両隣、お向かいなど周辺の住民や商店・企業、土地所有者にも相談し、同じ志をもつ仲間を増やしていきましょう。仲間が増えれば、活動の拠点としてのまちづくり組織をつくる必要があります。まちづくり組織を活用して、まちの長所、問題点について共通認識をもち、それを地域のより多くの人に広報していくことが大切です。今後の活動を進める上で、最も重要な時期です。焦らずに、根気強く話し合いを進めましょう。

(2)行政などにご相談ください

  ある程度アイデアが固まったら、まず、近くの行政窓口などにご相談ください。まちづくりには、いろいろな制度、資金援助が用意されています。アイデアを実現するにはどの制度が効果的なのか、アドバイスを受けてみてはいかがでしょうか。(→3−3まちづくり支援メニュー)

(3)まちづくり構想をまとめましょう

 まちづくりのアイデアを実現する制度が具体化してきたら、まちづくり構想としてまとめましょう。まちづくり構想は、自分たちの描くまちの将来像を実現するための手段、方法、実施計画などが中心になります。特に、道路の拡幅や施設整備などのハード事業を行う場合、どの手段を使うかで計画が大きく変わってきます。(→資料:主なまちづくり制度)ここでも、行政や専門家のアドバイスを十分に生かして、よりよい構想をまとめましょう。

(4)計画を実行に移しましょう 

 まちづくり活動で何よりも大切なのは、住民のひとりひとりがまちづくりに参加するということです。まちづくりには、長い時間がかかります。活動の途中で、難しい問題に突き当たることもあるでしょう。なかなか計画が進まないと、当初、まちづくり活動に熱心だった人たちも、1人抜け、2人抜け、という状態になってしまうこともあるかもしれません。今まで、先進的にまちづくり活動を進めてこられた地域の事例を参考にしながら、ひとつずつ問題を乗り越えていってほしいと思います。 主なまちづくり制度
まちづくりの目的 制度の種類 概    要
市街地の整備や、住環境の整備をしたい 市街地再開発事業 低層の木造建築物が密集しているような既成市街地において、細分化された土地を統合し、不燃化、中高層化した共同建築物を建築し、合わせて道路等の公共施設を整備する事業
土地区画整理事業 土地の減歩や換地という手法により、道路、公園等の、公共施設の整備改善を行うとともに、個々の宅地の区画、形状を整え、利用増進を図る事業
住宅街区整備事業 土地の立体換地など、土地区画整理事業の換地手法に準じた手法により、共同住宅の供給と公共施設の整備を図るほか、必要に応じて集団的農地の確保を行う事業
目的に合わせた規制、誘導をしたい 特別用途地区 建物の用途を規制・緩和する制度
地区計画 建物の用途や形態、道路、公園などをきめ細かく規制・誘導する制度
建築協定 当該土地について一定の区域を定め、その区域内における建築物の敷地、位置、構造、用途、形態、意匠または建築設備に関してある地域の土地所有者等が全員の合意で協定を結ぶ制度
緑化協定 緑地の保全や緑化に関してある地域の土地所有者等が全員の合意で協定を結ぶ制度
(「大阪府の都市計画」大阪府、「都市計画」森林出版より抜粋)

<事例紹介> 人口回復策として「中高層階住居専用地区」を活用(大阪府・大阪市)


 大阪市では、人口回復策の一環として、住宅の確保を図り、職住のバランスのとれたまちづくりを行なうため、「中高層階住居専用地区」を定めています。地区内では、一定階(4階または、5階)以上に建築できるものを、原則として住宅や公共的な施設、公益上必要な施設に限定しています。一定階以下の低層部分については、その建築物が立地している用途地域に沿った建築制限を受けます。(→資料:条例による制限のイメージ)現在、都心周辺で住宅と店舗・事務所が併存した区域や、住宅地を通る幹線道路沿道でマンション立地が進んでいる区域など、358haが指定されています。

<事例紹介> 大学の周辺地域に「文教地区」を設定(宮城県・仙台市)


 仙台市では、東北大学、宮城教育大学、東北工業大学周辺の環境を保護するため、「文教地区」を設けています。区域内の用途地域は、「第二種中高層住居専用地域」か「第二種住居地域」ですが、用途地域に沿った建築制限のほか、簡易宿泊所や、物品販売業を営む床面積500u超の店舗の建築は認められていません。

<事例紹介> 「小売店舗地区」を設定し、商業集積の環境を保全(北海道・札幌市)


 札幌市では、郊外の古い住宅地に立地する商店街などを「小売店舗地区」に指定しています。区域内では、商業集積地にふさわしくない風俗施設や危険物の貯蔵・処理施設の立地を制限しています。


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2003.4.1更新
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