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5.大規模小売店舗立地法(大店立地法)

5−1 概要


<大店法とのちがい>

 これまで、大規模小売店の出店調整に対処してきた大規模小売店舗法(大店法)は、「中小小売業者の事業機会を確保することによって、小売業の正常な発達を図る」ことが目的でした。そのため、店舗面積500uを超える大規模小売店に対しては、開店日、店舗面積、閉店時間、年間休業日数を調整できることになっています。

 平成12年6月1日に大店立地法が施行されると同時に、これまでの大店法は廃止になります。 <目的>

 大規模小売店が出店すると、来客、物流による交通問題や環境問題が生じ、周辺の生活環境に影響が出てきます。大店立地法では、これらの問題と周辺の生活環境との調和を図っていくための手続きを定めています。

<対象>

 店舗面積1,000uを超える大規模小売店舗です。

<調整事項>

 地域社会との調和・地域づくりに関する次の2つの事項で、詳細は平成11年6月に策定される予定の指針によって定められることになっています。(→大規模小売店舗立地法第4条の指針の策定に当たって(案)大規模小売店舗を設置する者が配慮すべき事項に関する指針(案)(PDF形式)

(1)駐車場の不足などによって、周辺地域の住民利便や、商業などの業務利便に影響が及ぼされる場合、配慮すべき事項

(2)騒音の発生などによって、周辺地域の生活環境に悪化が及ぼされる場合、配慮すべき事項 <運用主体>

都道府県及び政令指定都市が運用主体となります。大阪市内の場合、大阪市が主体になります。

<手続きの流れ>

<施行時期>

 平成12年(2000年)6月1日から、実施されます。なお、新法の施行に伴い、現行の大店法は廃止されますが、新法の施行後8か月以内に現行大店法の手続きを終了し、開店できれば、新法に基づく手続きを行なう必要はありません。新法施行後、8か月以内に開店できなかった場合には、新法に基づく手続きが必要となります。

 つまり、平成13年(2001年)1月までに開店する店舗は現行の大店法、それ以降に開店する店舗は新法の大店立地法、ということになります。


5−2 Q&A

Q1.大店立地法の目的にある「生活環境への影響」というのは、具体的にどんなものですか?

 A1.大規模小売店の駐車場待ちの車で渋滞が起こり、周辺で生活する住民の利便性に影響を与える場合や、大規模小売店の出入口が、商店街の顧客の通行を妨げる場合、大規模小売店の出すゴミや騒音が、住民の生活を悪化させる場合などです。大規模小売店の出店に伴う他の商業施設の売上減少というようなものは、生活環境への影響とは考えられません。

Q2.現在、「生活環境への影響」を判断するための指針が取りまとめられていると聞きましたが、どのようなものになるのでしょうか?

 A2.現在、「交通・騒音・廃棄物」という分野ごとに専門家の意見を聞きながら、指針となる事項や、大規模小売店設置者のとるべき対応策について検討が進められています。(→資料:「指針」の構成について)配慮すべき各事項のうち、「その他」については、景観の保全、リサイクルへの配慮、通行の円滑化や回遊性の確保などが検討されています。これに対し、日本商工会議所などでは、市町村の総合計画・マスタープランなど各種まちづくり計画との整合性の配慮も考慮に入れるよう求めています。指針の原案は、まとめられた次第公開され、約1か月間、パブリック・コメントが実施されます。指針が決定するのは、平成11年6月中だと思われます。

Q3.現行大店法では、「開店日」「店舗面積」「閉店時刻」「年間休業日数」の4項目について調整していますが、今後はどうなるのでしょうか?


A3.いわゆる調整4項目が、大店立地法において直接、調整対象となることはありません。ただし、生活環境への影響という観点から、次のような場合には、間接的に調整対象となることも考えられます。

店舗面積:駐車場を広げるため、結果として店舗面積を削減する必要がある場合
閉店時刻:早朝・深夜営業により、騒音問題が発生する場合 年間休業日数・開店日:いかなる場合であっても、調整対象とは想定されません

Q4.大店立地法でも、中小小売業の事業機会を適正に確保するための商業調整が可能なのでしょうか?

 A4.大店法の目的は、中小小売業の事業機会を適正に確保することでしたが、大店立地法の目的は、周辺地域の生活環境の保持です。生活環境への影響には、A1.にあるように、経済的な影響は含まれません。従って、商業調整は一切不可ということになります。

Q5.生活環境の保持の見地から意見を提出できるのはどんな人ですか?

 A5.生活環境上の影響を受けるものであれば、個人、団体、当該地区での居住・事業活動の有無を問わず、広く意見を言うことができます。当該地域に居住していたり、事業を行なっている者に限る必要はなく、隣接する自治体でも意見を言うことができます。

Q6.大店立地法とともに成立した改正都市計画法、中心市街地活性化法との関係はどうなるのでしょうか?

 A6.大規模小売店については、まず、改正都市計画法のゾーニングによって出店の可否を決め、出店可能となれば大店立地法で生活環境への影響を調整することになりました。大店立地法は、大規模小売店の立地の適否を判断するのではなく、当該地への出店調整を定めたものです。従って、大規模小売店の立地そのものが周辺の生活環境に影響を与える場合や、中心市街地活性化法の適用を受けた地区の郊外に大規模小売店が出店し、活性化の取り組みが損なわれる恐れがある場合であっても、大店立地法で出店を阻止することはできません。その場合は、都市計画法をはじめとするゾーニング的手法の活用により対応することになります。なお、中心市街地活性化法の適用を受けた地区に立地する大規模小売店であっても、大店立地法の手続きが軽減されることはありません。

Q7.大店立地法は、大規模小売店が新規に出店する際の規定のみを定めたものなのでしょうか?

 A7.出店後も、生活環境を保持するための対応策を変更する場合には、大店立地法に基づく手続きが必要になります。対応策を実行しない場合や、手続きなしに変更する場合は、罰則が課せられることになっています。

5−3 大店立地法を先取りする事例

 大店法が廃止されることになった理由のひとつに、大規模小売店の出店に伴う交通渋滞など生活環境への影響が大きくなってきたことが挙げられます。大規模小売店が新たに出店しようとする場合、交通渋滞や駐車場不足への懸念、青少年への悪影響などを理由に、地元商業者や消費者が出店反対の立場をとる事例も増えています。しかし、大店法の調整項目は、開店日、店舗面積、閉店時刻、年間休業日数の4項目であったため、このような生活環境への影響は調整できませんでした。

 大店立地法の成立にはこのような背景もあったわけですが、地方自治体の中には、大店立地法を先取りする形で生活環境への影響について、独自の要綱を定めているところがあります。大店立地法の実際の運用は、現在国で審議されている指針の内容や、各地方自治体の対応によって大きく異なってきますが、これらの事例が施行後の参考になることでしょう。


<事例紹介> 地域環境保全の観点から大規模小売店出店を規制する要綱(東京都・荒川区)

  東京都荒川区では、平成9年9月1日から、「荒川区大規模小売店舗の出店に伴う地域環境保全のための要綱」が施行されています。この要綱は、大規模小売店(店舗面積が500uを超える小売店舗)の出店が、地域環境に与える影響を事前に把握し、その対応策を区と出店予定者が協議するための手続きを定めるものです。

 要綱の手続きフローは、次の通りです。荒川区内に出店を予定する者は、店舗計画の概要、駐車・駐輪場の整備計画および周辺の交通対策、廃棄物・再利用対象物対策などについて記載した「環境影響説明書」を区長に提出します。それに対して区長は、地域住民の意見を求めるため、町会役員などから構成される「環境問題地域関係者会議」を開催します。「環境影響説明書」は公開され、区民は意見書を区長に提出することができます。こうして、区長は、「環境問題地域関係者会議」の意見と区民の意見を参考に、出店が地域環境に悪影響を及ぼさないようにするための対策を、出店予定者と協議し、その結果を公開します。

 この要綱により、荒川区では、大型店出店に際する情報の公開や、区の大型店問題に対する姿勢の明示が可能となりました。ただし、この要綱は、大規模小売店舗法を前提にしたものであるため、大店法の廃止に伴い、廃止もしくは改正されることとなるでしょう。



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2003.4.1更新
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