平成16年3月29日 |
第4回通常議員総会 所信表明 |
- 産業に、都市に、人とコミュニティーに - |
○ 田代会頭は、不況に喘ぐ大阪経済の真只中にあって、「交流から創造へ」をキーワードに掲げられ、時代を拓く新しい産業構造を創造する観点から、例えばバイオ関連産業の振興やベンチャービジネスの育成など、多くの事業に大きな成果を上げられました。 ○ 特に、経済団体の再編の議論に先がけて、大阪工業会との統合を英断され、両団体の強みを活かした形で組織と事業を融合させ、新生・大商は、より実践的で、より強い経済団体として最高のスタートを切りました。また、大阪商工会議所の活動の原点に立ち返り、「より会員に近く、より多くの会員に」をモットーに、一万会員訪問活動やエリア・チェンバーといった地に足の着いた活動を開始されるなど、大阪商工会議所の新たな道筋を明確に打ち出し、リーダーシップを持って力強く推進して来られました。 ○ これらのご功績は、まさに田代会頭の時代を見据えた深い洞察力と会員の心を一つにまとめる包容力の賜物であり、改めて深甚なる敬意を表したいと存じます。 ○ 私は、田代会頭が心血を注がれた大阪経済再生への熱い志を受け継ぎ、新生・大商の使命の達成に向けて、皆さまと共に、新たな時代の要請と会員の皆さまのニーズを踏まえた活動を展開して参る所存であります。 ○ この機会に、今、私が考えております三つのことを申し上げたいと思います。 ○ まず、これからの大阪経済を活性化するためには、ビジョン、すなわち活動の大きな方向性を持った上で、その実現のために具体的なアクションプランを作ることが何よりも重要ではないかと考えます。大阪経済の活性化を誰もが望み、自治体をはじめ多くの人たちが取り組んでいますが、今の大阪はいったいどちらを向いて、何を目指しているのでしょうか。まずは、「大阪をどういう街にしたいのか」というビジョンを共有化し、「具体的に何をどうするのか」というアクションプランを策定し、スピーディーに実行していくことが必要であります。ビジョンとアクションプランをどのように作り上げていくのか、皆さまのお力を貸してください。 ○ 二つ目は、「ネットワークの活用」であります。大阪再生に至るまでには、解決困難な課題が多く、その実現には大阪商工会議所の力だけでは限界があります。3万を超える会員のネットワークの活用はもとより、他の商工会議所や関西経済連合会などの経済団体、自治体、NPO等と力を合わせ、役割分担をすることにより、大阪経済の抱える課題を一つひとつ克服していきたいと思います。特に大阪府・大阪市に対しては、より積極的に提言活動を行って、民間が先導し、行政を動かし、そして協働する関係を作り上げていきたいと考えます。ネットワーク活動を一層強化することについて、皆さまのご理解を頂きたいと考えます。 ○ 次に、「アジアとのビジネスの重視」であります。今、アジアは世界の経済成長センターとして注目を集めており、とりわけ中国はダイナミックな成長を遂げています。歴史的に中国をはじめとしたアジアとの関係が深い大阪として、まさにこのチャンスを逃してはなりません。大阪がアジアの中での存在感を格段に高め、貿易、投資、観光、雇用など、ヒト・モノ・カネや情報の往来を一層活発にすることで、アジアとともに繁栄する大阪を目指したいと思います。 ○ また、私は、大阪経済の再生を本物にする鍵は中堅中小企業の活性化にあると考えております。国や自治体に頼りすぎることなく、自立の気概を持って、新しい発展を志す企業や事業者の経営革新を積極的に支援すべきと考え、あらゆる経営相談にきめ細かく対応できるよう、支部の事業活動を一層充実させたいと考えております。 ○ さて、大阪が衰退してきた原因の一つは、行政や産業界などが問題を先送りし、大阪の将来に真の危機感を持って経済や産業の改革に取り組もうとしてこなかったことではないかと思っております。公共事業や補助金もあって、これまではそれでやってくることが出来たと言えるかもしれません。しかし、ご承知のとおり、これからは大きな期待を持てる財政事情ではありません。 私は、今、大阪経済を活性化するには、自治体、企業、市民、NPOがお互いに協力して、我々が「大阪に“賑わい”を創り出す」ことが何より大切であると考えます。つまり、人々にとって、来てみて楽しい心温かい街、企業や事業者、あるいは何か始めようと思っている人にとってはビジネスのチャンスがあり、情報がある街、住む人にとっては便利で親しみを感じる街、大阪をこのように人や企業が自然と集まってくる街にすることであります。そのためには、「大阪に“魅力の源泉”を創り出す」ことが重要です。産業に、都市に、コミュニティーに、ヒト・モノ・カネと情報が豊富に行き交う大阪となるための都市のハードとソフトを構築することが必要です。 ○ 大阪の街に、こうした人や企業を引きつける力を創り出すためには、大阪商工会議所として、できることとできないことを見極め、なすべき事業について、さらに選択と集中を図って、取り組んでいかなければなりません。 ○ まず、「産業に魅力の源泉を創る」ということです。 産業の活性化には、従来からモノづくりの拠点である大阪の産業構造の転換を進めつつ、地域経済の将来を担う「エンジン産業」に集中することが必要です。大阪のエンジン産業としては、例えば「バイオ」、「IT」と「集客・観光」、そして「新しいモノづくり」などがあると思います。 バイオ産業においては、関西一円でバイオ情報ハイウェイ構想を推進してまいりましたが、すでに目覚しい勢いでビジネスが立ち上がってきております。大阪北部の『彩都』は、いよいよ来月に街開きが行われるなど、今後もバイオ産業は更なる進展が期待されます。 集客・観光産業は、関連する業種や産業の裾野が極めて広く、経済面・雇用面でも即効性があり、注力すべき分野であります。大阪・関西には、多くの文化遺産や充実した観光・イベント施設、多彩な飲食・物販店などが集積しており、これらは都市間競争に勝つための大きな資産となります。 モノづくりの集積は、もとより大阪の強みの一つであります。デジタル家電の好調の影響を受け、モノづくりの国内回帰の動きが見られる中、独自技術と産産・産学の連携を活用して、モノづくりの高付加価値化による構造改革を更に進めていくことが求められます。 ○ 次に、「都市に魅力の源泉を創る」であります。 街の賑わいづくりには何より民間の知恵と力を活かすことが必要です。現在、商店街やNPO、経済団体など多くの人たちが街づくりや街おこしに取り組んでいますが、大阪の街を活性化するにはこれらの個々の取り組みがそれぞれに磨かれ、輝くことがまず大切です。街の魅力づくりには、都市の景観を保全する規制、「大阪ナイトカルチャー」事業に代表されるような文化を楽しむ環境、着飾った人々が夜でも安心して歩ける安全な街など、ソフト面での取り組みが重要です。街づくりには行政の果たす役割も大きく、大阪商工会議所は、会員を中心とした民間の活動と行政の支援を結ぶコーディネイターとしての役割を果たし、大阪ブランドを創りあげて参りたいと考えます。 また、現在、大阪・梅田北ヤードや関西国際空港の2期事業など大規模プロジェクトが進められていますが、大阪商工会議所としても、活気ある街づくりや集客観光の活性化の視点で積極的に参画していきたいと思います。 ○ 三つ目は「人とコミュニティーに魅力の源泉を創る」であります。 私は、大阪のあらゆる営みの基盤となる人材の育成―ヒトづくりに力を注いで参りたいと思います。大阪商工会議所には、そのための大きなポテンシャルがあります。大阪を活性化させるためには、大阪を愛し、コミュニティーに貢献し、地域産業を支える人材の育成が最も大切であります。教育界、行政、そして産業界の対話と連携による次世代の人材育成から、新規開業や第2創業を志す若手経営者の養成まで、大阪の明日を創り、明日の大阪を担うヒトづくりのための施策に取り組みたいと思います。 ○ 以上、会頭就任にあたり、私の考えているところを申し上げました。 田代会頭から引き継ぐ新生・大商は、大阪の未来を拓くことを目指しています。より強い経済団体を実現するためには、会員の皆さまから、「大阪商工会議所は役に立つ」と、評価して頂ける活動が出来なければなりません。現場第一主義をモットーに、会員の声に常に耳を傾け、スピード感を持って会員ニーズに基いた事業を推進するなど、きめ細かい取り組みを行って、「会員から信頼され、頼りにされる大商」を目指して参りたいと思います。 ○ 私自身、微力ではありますが、大阪経済の再生と、新生・大商の発展に向けて、ベストを尽くす覚悟であります。役員・議員の皆さまをはじめ、会員や関係各位の積極的なご参画、およびご支援、ご協力をお願いしまして、会頭就任のご挨拶といたします。 |
以上 |
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