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U 活性化方策の重点プロジェクト

3.店舗併用住宅建替えモデルの提案

    3-(1) 提案の背景と目的

      天神橋筋商店街は都心型商店街ではあるが、元来人がそこに住み商うという職住一体の商店街として発展してきた。しかし、近年は商店街に住まず地区外のマンションや郊外に住み、通う商店主が増加している。商店街の西側一帯がビジネス街化してきており、地域のコミュニティの活力が急速に低下してきている。
      一方、商店街店舗が高層マンションに建替えられるケースも増加してきている。マンション建設によって住民が増加するという長所はあるものの、建築物はバラバラに建てられ商店街としての調和や統一感が失われつつある。
      そこで、これからも続くと予想される店舗の建替えに際しモデルとなる建築のイメージを示すとともに、こうした建替えを支援していく制度の検討及び改善方向を提案する。

    ■商店街に住むことの意義と効果

主体
内容
備考
商業者 1. 生活全般における時間節約効果

2. 営業時間に対する自由度の増大

3. 家族との接触機会・時間の拡大

 
商店街 4. 商店街活動への参加のしやすさ及び意識の高揚

5. 災害時における防災・復旧体制のつくりやすさ

 
地域社会 6. 夜間人口の増加→顧客増

7. コミュニティ活動や伝統文化の継承の担い手の充実

8. 来街者との交流機会増、地域活性化
 
来街客 9. 人が住む街としての安心感

10. ストリートカルチャーの魅力向上

生活臭がして非日常的演出が図りにくい面もある。

    3-(2) 対象地区の想定

      天神橋筋商店街の延長は極めて長いことから、検討にあたっては、建替えの可能性が高く、かつ標準ケースとなり得る地区を設定する。周辺に居住ゾーンの残る地区として、天神橋1丁目及び5〜6丁目を抽出した。

    【想定地区の敷地条件モデル】用途地域は[商業地域]

天神橋筋
間口
(m)
奥行
(m)
面 積
(u)
容積率
(%)
天一
5〜12m
東側は30m
150〜360u
400
西側は25m
125〜300u
600
天五〜六
5〜12m
東側は20m
100〜240u
400
西側は15m
75〜180u
600
○基本的に西側の容積が600%と大きい。
○天一では、奥行が深くやや大敷地のケースが多い。
○天五〜六では大きい敷地の区画も一部あるが、基本的に奥行が浅い。(特に西側)
    3-(3) 建替モデルのプロトタイプ

      現在、多くの建替は単独建替として行われている。一定敷地以上のものについては、大きな問題はないが、狭小敷地の建替では斜線制限等の建替規制もあって、容積を十分に利用したり良好な建築物として、建替えることが困難である。単独の建替がバラバラに進むと結果的に地区のポテンシャルを十分に活かせず魅力のない商店街となる可能性が高い。
      そこで、狭小な敷地の商店の共同建替を行うこととするが、モデルケースとしては、協調建替を組み合わせた大規模共同建替タイプと一般的な共同建替タイプを提案する。

      1.大規模共同建替タイプ

        4〜5戸 500u程度の共同建替を中心に、これを一定のルールの下で協調しながら連鎖的に進め、最終的には大規模な住商複合開発に近いイメージの地区整備を図る。

      2.小規模共同建替タイプ
        2戸以上4〜5戸程度まで面積200u以上の店舗が共同して、自らの店舗と住居、そして上層階に分譲または賃貸の集合住宅を建設。

    3-(4) 大規模共同建替タイプの整備イメージ

      1.開発の考え方

        商業機能の維持、再生と居住機能の更新、新規導入を図り、商業と居住機能の両者の相乗効果により活性化をめざす。
        ○敷地の共同化
        ○連鎖による開発
        ○協調型まちづくり
        ○商業と居住の複合機能開発
        ○土地の高度利用

      2.モデル街区の敷地条件
        ○拠点性のある立地
        ○典型的な敷地条件
        ○建替規模の想定
          ・商店街沿道敷地 3〜5軒単位、敷地面積合計200u程度
          ・裏通り側敷地 3〜5軒単位、敷地面積合計500u程度

      3.事業化の課題

        大規模共同建替タイプの事業化については、事業の性格上一時期にすべてを開発していくことが難しいため、小規模な共同建替等連鎖的に進める段階的な事業推進が必要となってくると考えられる。したがって、事業化推進に向け以下のような観点からの取組みが必要とされる。

        ●ルールの設定

          地区のポテンシャルを活かせる高品質で魅力的な空間づくりのために、基本的な共同建替のルールを設定する。

        ●現行法規の問題

          商店街の特性を踏まえ、新たな考え方に基づいて現行法規の規制をクリアできるような制度の検討が必要である。
          建坪率… 現行法規では80%。今回の提案では1階レベルでは100%。2階レベルで空地をとることによって、居住環境を担保。
          斜線制限… 現行法規では1階レベルから適用。今回の提案では、商店街側は3階から適用。

        ●共同化の合意形成

          地権者間での合意形成や街並み形成についての一定のルール化など計画を担保できるような仕組みをつくる。

        ●支援制度の活用

          大阪市民間老朽住宅建替支援事業等、適切な支援制度を活用していく。

    3-(5) 小規模共同建替タイプの整備イメージ

      1.基本的考え方

        小敷地で老朽化の進む木造店舗など、商業空間としても、また居住空間としても不十分な店舗が共同して、店舗併用住宅を建設る。
        ○十分な売場、ストックスペースを持つ魅力ある商空間
        ○商人家族が住むにふさわしい十分なスペースと設備を持った高品質な居住空間
        • 建替に際して余った容積に集合住宅を導入することによって土地資産の有効活用を図り、事業採算性を高める。
        ○天神橋筋商店街らしい街並みの形成を図るため、共同建替建築のモデルを示す。(特に、アーケードと店舗の関係など)
        • 共同建替の際の土地、建物の所有と利用、運営の形態は様々なタイプが考えられる。

      2.モデル街区の敷地条件

        用途地域(商業地域)容積率400%または600%
        1戸では200uに満たない敷地を2戸以上の共同建替を想定
        建替規模の想定、2から3軒単位、200〜300u程度、築年の古い低層店舗で商店主が居住しており住み続ける意向のある商店

      3.整備イメージ


        1階の従前店舗の間口を極力広く確保する。また、店舗スペースを広くする。
        ○オーナーのためのゆとりある高品質な住居空間を確保する。
        ○共同化により広がった間口を生かした良好な賃貸または分譲住戸を建築し、事業性を高める。
        ○商店街に面した壁面をセットバックさせ、セミパブリックスペースとして演出する。
        ○アーケードと壁面の隙間に2階部のひさしを設け、外観演出と街並みの連続性、にぎわい性を高める。
        ○大規模共同建替型更新モデルと整合させ、2階を店舗または事業所として計画する。

      ■計画モデル例

敷地面積 260u( 78.6坪)
建築面積 220u( 66.7坪)
延床面積 1,100u(333.3坪)
基準階面積 130u( 39.4坪)
戸数

 

 

店舗又は事務所4戸

賃貸または分譲住宅8〜10戸(2LDK)

オーナー住宅2戸(3LDK+1)


    3-(6) 事業化に向けた課題

      1.各種制度の活用

        事業手法については、商業との一体的な整備という特徴を考慮して、商業の活性化と居住機能の更新、線的な整備と面的な整備を組み合わせた手法として適切な事業制度を活用するとともに既存の事業制度に対する要件の緩和や内容の充実に向けて検討を進める必要がある。

      2.法規制の課題

        建築基準法の斜線制限や建ぺい率の規制については、商店街の特性を踏まえた新たな考え方に基づいて規制をクリアする制度の検討が必要である。

      3.共同化の合意形成


        共同建替にあたっては地権者間での合意形成や街並み形成についての一定のルール化など、計画を担保できるような仕組みづくりが必要である。

      ○活用制度例

      大阪市民間老朽住宅建替支援事業
      (単独建替、共同建替・協調建替などに対する建替建設補助)

      ・ハウジングアドバイザー派遣制度

      中心市街地活性化法(略称)及び総合的対策よる各種制度の活用
      (中心市街地活性化住宅建築物整備事業等)

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2003.4.1更新
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