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T.天神橋筋商店街の現況と課題

1.天神橋地域の位置づけ

1−(1)天神橋地域の位置づけ

  • 天神橋地域(地図)は、「キタ」の商業地でももっとも早くから開けた地域である。「天満の天神さん」と呼ばれる天満宮付近は、明治の初めから多くの商店が軒を並べ、戦前からすでに現在のような規模の商店街として賑わってきた。
  • 歴史的な背景と人々の暮らしをささえた商業地として大阪の顔であった天神橋地域は、近年の都市構造の変化とともにその役割を変えつつある。梅田の鉄道ターミナルを中心とした巨大な商業集積はキタの都心として拡大し、現在でもターミナル周辺の大規模な再開発は進められており、天神橋地域が商業機能としての求心力を以前のような形で発揮することが困難になってきている。
  • しかしながら、天神橋地域は、一定規模の人口集積と地域の生活を支える商業地としての役割、あるいは、市街地形成において果たしてきた歴史的な求心力を持ってきた地域であることから、将来的にも天神橋筋商店街を中心として多様な地域資源の活用や周辺開発等と合わせた活性化が可能な地域であると考えられる。
1−(2)大阪市総合計画における位置づけ
  • 大阪市総合計画21における大阪市の都市構造の整備方向から、天神橋地域の位置づけを整理すると、南北軸の強化及び東西軸の育成・強化の双方に資する地域として位置づけられる。
  • また、天神橋地域は大阪市の中心ブロックに属している。中心ブロックの基本方針は、国際都市大阪の都心として、多様な都市機能の集積をはかり、世界の人々が活動し交流する活力ある地域を目指すとしている。天神橋地域については、業務・商業機能を強化していくことが整備の方向として示されている。
  • 土地利用構想については、天神橋地域は「居住・商業複合地」と位置づけられており、その整備方向は次の通りである
    • 1.業務・商業、サービス、文化、アミューズメント等や新しい都市機能の集積を進め、拠点の形成を図る。
      2.職住近接や遊住近接のニーズに対応して、土地の有効利用を進め、都市居住を促進するとともに、オープンスペースの確保に努め、快適な都市環境を創造する。
      3.都心と市内各地域や大阪都市圏の各地域とを結ぶ結節点では、その交通条件を生かし、業務・商業、サービスなどの機能の集積を図る。


2.天神橋筋商店街の現況と課題

2−(1)調査対象とする商店街の概要

    1.商店街の特色

      天神橋筋商店街は、大阪市北区天神橋1丁目から6丁目にかけて全長2kmにも及ぶ商店街であり、我が国でも最長最大の商店街である。天神橋1丁目から6丁目にかけて十数の商店街が直線的につながっており、その周辺にもいくつかの商店街や市場などが集積している。

      ○総延長
        約1900m。
        商店街名 延長 商店街名 延長








        天六商店街 約200m


        南ゾ|ン
        天神橋三丁目商店街 約500m
        天五中央商店会 約70m 天神橋二丁目商店街 約300m
        天神橋五丁目商店街 約250m 天神橋一丁目商店街 約170m
        天四北商店会 約100m  
         

         
        天神橋四番街商店街 約260m  
         

         

         
        天満南街商店会 約180m
         
        天満卸売市場、天神市場
         
                             

      ○立地特性
        天神橋1丁目から6丁目にかけて、北端(天六商店街)に市営地下鉄天神橋筋六丁目駅、中間点(天四北商店会、天神橋四番街商店街)に市営地下鉄扇町駅・JR天満駅、南(天神橋二丁目商店街)には、地下鉄南森町駅とJR大阪天満宮駅がある

      ○歩行者環境

        商店街を分断する要素として、国道1号が天神橋二丁目商店街を、阪神高速道路の高架下となる市道が天神橋三丁目商店街と天神橋四番街商店街を分断している。鉄道の駅周辺やパチンコ店周辺などに駐輪が非常に多く歩行環境を阻害している。

      ○商店街施設

        天神橋一丁目商店街の一部を除いてアーケードを整備しているが、老朽化している施設もある。また、天五中央商店会、天満南街商店会を除いてすべてカラー舗装化されている。一方で、案内板、休憩施設などが不十分である。また、商店街の駐車場が天神橋一丁目商店街にある。駐輪場は商店街にはなく、JR天満駅に公的な施設がある。ただし、駐輪スペースが不足しているため、周辺への駐輪が多い。

      ○その他

        大阪天満宮は夏の天神祭り等を中心に多くの人が訪れる。扇町キッズパークには「キッズプラザ」という子供向け博物館が開館。天神橋三丁目商店街にはギャラリートワジエムが交流施設として開設されている。

      ○商店街組織

        これら11の市場・商店街のうち、商店街振興組合が天六商店街、天神橋五丁目商店街、天神橋筋四番街、天神橋三丁目商店街、天神橋一丁目商店街、事業協同組合が天神橋二丁目商店街、天満市場、天神市場、任意団体である商店街が天五中央商店会、天満南街商店会、天四北商店会となっている。主な商店街の共同事業等の取り組みは、アーケードの改修やカラー舗装等を行っている。

      ○業種構成

        一部に最寄り品を含みながらも買回り品を中心としたターミナル型の商店街である。飲食店やレジャー施設(主にパチンコ店)も多い。

      ○経営状況

        これまでに実施されたアンケート調査等によると、最近3年間に客数及び売り上げが減少傾向にあるという回答が多い。

      ○来街者特性

        お洒落をした人や若者をあまり見かけず、普段着の人が多い。近隣の住民が多いようである。周辺のオフィスビルのサラリーマンやOLが多く、昼食時や夕方には駅周辺で人の流れが多い。

      ○周辺環境の動向

        天六には、商店街に面して(仮称)住まい情報センターが建設中であるほか、天満市場再開発計画が進行中である。また、マンション開発も多く、商店街周辺での開発が進みつつある。

    2.各商店街の概要(平成9年8月調査)

    名称 総延長 最寄り駅 店舗数等
    主な業種
    環境施設 その他
    天六商店街 約200m
    幅員8m
    地下鉄谷町線、堺筋線天神橋筋六丁目駅 最寄り 9
    買回り35
    物販計44
    飲食等 13
    その他 12
    空店舗
    工事中
    最寄り 食料品 3
    日用雑貨 5
    その他 1
    買回り 衣料 14
    身回り品12
    その他 9
    飲食 13
    サービス 12
    アーケード

    カラー舗装

    駐車場

     
    天五中央商店会 約70m
    幅員8m
    JR天満駅 最寄り 3
    買回り 6

    物販計 9
    飲食等 7
    その他
    空店舗
    工事中

    最寄り 食料品 0
    日用雑貨 2
    その他 1
    買回り 衣料 3
    身回り品 1
    その他 2
    飲食 7
    サービス
    アーケード

    アスファルト舗装道路

     

     
    天神橋五丁目商店街 約250m

    幅員8m(一部は4m)

    JR天満駅 最寄り 14
    買回り 76

    物販計 90
    飲食等 9
    その他 14
    空店舗 1
    工事中

    最寄り 食料品 6
    日用雑貨 6
    その他 2
    買回り 衣料 41
    身回り品22
    その他 13
    飲食 9
    サービス 9
    アーケード

    カラー舗装

    駐車場

     
    天四北商店会 約100m
    幅員8 m
    JR天満駅 最寄り 0
    買回り 21

    物販計 21
    飲食等 6
    その他 25
    空店舗 2
    工事中 2

    最寄り 食料品
    日用雑貨
    その他
    買回り 衣料 13
    身回り品 5
    その他 3
    飲食 6
    サービス 14
    アーケード

    カラー舗装

     

     
    天神橋筋四番街商店街 約260m
    幅員8m
    JR天満駅

    地下鉄堺筋線扇町駅

    最寄り 21
    買回り 35

    物販計 56
    飲食等 18
    その他 17
    空店舗
    工事中

    最寄り 食料品 10
    日用雑貨 9
    その他 2
    買回り 衣料 15
    身回り品11
    その他 9
    飲食 18
    サービス 17
    アーケード

    カラー舗装

     

     
    天満市場 最寄り 食料品 90 (平成5年11月 天満市場商業協同組合調査)
    日用雑貨 1
    衣料 1
    飲食 2
    サービス
     
    名称 総延長 最寄り駅 店舗数
    主な業種
    環境施設 その他
    天満南街商店会 約180m JR天満駅 最寄り 0
    買回り 1  

    物販計 1
    飲食等10
    その他
    空店舗
    工事中 1

    最寄り 食料品
    日用雑貨
    その他
    買回り 衣料
    身回り品
    その他 1
    飲食 10
    サービス
    アーケードなし

    アスファルト 舗装道路
     
    天神橋三丁目商店街 約500m
    幅員8m
    地下鉄堺筋線扇町駅

    地下鉄谷町線、堺筋線南森町駅

    最寄り21
    買回り45  

    物販計66
    飲食等38
    その他28
    空店舗 8
    工事中 4

    最寄り 食料品 10
    日用雑貨 9
    その他 2
    買回り 衣料 13
    身回り品 9
    その他 23
    飲食 38
    サービス 28
    アーケード

    カラー舗装

    ギャラリー

    児童公園

     
    天神橋二丁目商店街 約300m
    幅員8m
    地下鉄谷町線、堺筋線南森町駅

    JR東西線大阪天満宮駅

    最寄り26
    買回り25  

    物販計51
    飲食等25
    その他18
    空店舗 4
    工事中 2

    最寄り 食料品 16
    日用雑貨 7
    その他 3
    買回り 衣料 9
    身回り品 5
    その他 11
    飲食 25
    サービス 18
    アーケード

    カラー舗装

     

     
    天神橋一丁目商店街 約170m
    幅員8m
      最寄り 8
    買回り12
     

    物販計20
    飲食等26
    その他11
    空店舗 5
    工事中

    最寄り 食料品 6
    日用雑貨 2
    その他
    買回り 衣料 1
    身回り品 5
    その他 6
    飲食 26
    サービス 11
    アーケードと

    オープンモール

    アーチ

     

     
    天神市場 最寄り 食料品 14
    衣料 1
    その他 1

    3.天神橋筋商店街周辺の開発動向

      天神橋地域周辺では、過去数年間の間に交通関連プロジェクトや大規模な拠点開発等が進められてきており、周辺地域の環境にも変化をもたらしてきている。また、今後数年の間にも新しいプロジェクトが完成予定となっている。以下には、天神橋地域周辺の動向として最近の主なプロジェクト等の概要を取りまとめた。

    ■完成したプロジェクト

    プロジェクト名 位置・規模 完成時期
    概要
     




    扇町キッズパーク(北区扇町開発土地信託事業) 北区扇町1丁目2-7 平成9年3月完成 工業研究所跡地を、新しい地域イメージと賑わいの創出をテーマに、子供のための博物館「キッズプラザ大阪」を中核とした放送メディア施設や飲食店舗から構成される複合施設を整備。「キッズプラザ大阪」は平成9年7月オープンしたがすでに30万人以上の来観者が訪れている。
     

     




    大阪アメニティパーク

     

    北区天満橋1丁目

    約6.7ha

    平成8年商業・業務地区完成。

    住宅地区平成10年一部完成予定。

    大川に面した三菱金属大阪製錬所の移転跡地を複合開発。商業・業務地区には地上39階のインテリジェント・オフィスビル、帝国ホテル、商業施設等を建設。住宅地区には、2棟の高層住宅などを建設予定。

     

    JR東西線

     

     

    京橋〜尼崎約12.3km 平成9年3月完成 JR京橋駅と尼崎駅を地下ルートでつなぐプロジェクト。天神橋筋周辺には大阪天満宮駅が新しいターミナルとして開設された。

     

    ■今後整備されるプロジェクト

    プロジェクト名 位置・規模 完成時期
    概要
     

     

     

     

    北 ゾ|ン

    大阪市池田町地区第一種市街地再開発事業(天満市場再開発) 北区池田町

    約0.7ha

    平成13年度末竣工予定 池田町地区の大部分を占める「天満市場」は昭和24年に現在地に移転して営業が続けられてきたが、近年、空店舗の増加や老朽化した建物が更新時期を迎えていることをふまえ、また、多くの権利者の市場活性化への要望等により、環境改善を図る目的で再開発する。

    周辺の区画道路を整備するとともに、地上29階、地下1階建ての高層ビルを建設予定。地下1階〜地上2階は市場を中心とした店舗、3階〜6階は駐車場(約300台)、7階〜29階は住宅(約270戸)となる計画。

     


     

     

     

     




    扇町公園整備

     

    北区扇町1丁目他 平成14年完成予定 大阪プールの移転にあわせて、扇町公園を再整備する計画。「地域開発の先導的な役割を担う」「地域振興活性化の拠点とする」「美しく魅力ある都市空間を創出する」を基本コンセプトに、「花と緑」「水と光」「スポーツ」「イベント」の4つのテーマにもとづいて整備を進める予定。全天候温水プールの整備。
    (仮称)住まい情報センター 北区天神橋6丁目

    約4000u

    平成11年第一期完成予定

    平成12年第二期完成予定

    市民が「住まい」に関する様々な情報を迅速かつ的確に入手しうる総合的な住情報サービス拠点として整備を進める。大阪市内の住宅に関する各種の情報サービスの集約化による市民サービスの向上や、住まいに関する相談・コンサルティングの実施、さらに大阪の住まいや暮らしの歴史等の展示による「住むまち・大阪」のイメージアップを図ることを目的とする。

     

     

     

     

     




    大阪ひろばみち計画

     

     

    国道1号東野田〜国道2号野田阪神間4.8km   国道1号東野田〜国道2号野田阪神間約4.8kmを対象として、共同溝とJR東西線の工事の後を受けて、御堂筋と並ぶ大阪の代表的なメインストリートとして良好な景観の創出を図る。南森町の交差点付近に梅や桜の並木が植えられる予定。

     

    天満宮周辺開発 北区天神橋2丁目    「大阪天満宮」北側の裏門に隣接した用地約1400uを活用して、地域の活性化を図ることを目的とする。当地は、「吉本興業」の創業者である吉本夫妻が1912年に始めた寄席「文芸館」のあったところでもあることを活かして昔ながらの参詣客と若い世代をねらったにぎわいのある施設づくりを目指す。

     

     


2−(2)北ゾーンの現況

    商店街全体が全長2キロにも及ぶため、地域的に天神橋4丁目〜6丁目を北ゾーン、天神橋1丁目〜3丁目を南ゾーンの2ゾーンに区分して、その現況を把握した。ここでは、北ゾーンについて現地調査の結果をふまえながら、施設環境、店舗などのいくつかの視点からみた現況を取りまとめた。


    1.現況

    天神橋4丁目から6丁目にかけては、生活支援を中心とした繁華街型の商店街であるため、市場や生活用品のほか飲食店などが一定規模の割合で立地する。

    天五及び天六を中心にして買い回り品を中心とした店舗で構成される。特色のある店舗も多く、最も活気のあるエリアである。

    天四は、店舗の集積よりもパチンコ店やゲームセンターなどの集積が目立つため、看板などの過剰な宣伝効果によって混雑しているという印象が強い。また、駅周辺の銀行やレジャー施設には駐輪が多く環境を阻害している。

    来街者は、6割以上の人が大阪市内の客である。客層としては、お洒落をした人はあまり見かけず、普段着姿の人が多い。また、自転車で商店街を通行する人が多い。

    来街頻度は、平日と日曜で明確な違いが見られる。平日では毎日利用と週1〜2回利用の合計で約78%と、高頻度で利用されている。日曜ではその割合が約47%で、月に1,2度と年に数回の合計が約40%となっている。平日は常連客、日曜は不特定の顧客の来街が多いと思われる。

    来街者の年齢も、平日では50歳代、60歳代が半数以上、日曜は30歳代以下が半数以上となり、平日と日曜で顧客層が異なる。


    2.施設環境の特性

    ●商店街施設の老朽化等がみられる

      ・天六から天四商店街は、地下鉄やJRのターミナルに近いこともあって、メインの商店街として常に賑わっているが、大量の駐輪や工事中店舗の管理状況、アーケード等の施設に関して整備不足の部分が見られる。

      ・アーケードやぺーブメントについては、各商店街でそれぞれに改装等を実施してきたこともあって個別に整備されている。ただし、その整備時期が異なるため商店街間での新旧の統一感は十分とはいえず、将来的な整備構想のあるところについては早期に取り組む必要がある。こうした視点は看板や垂れ幕などについても同じことがいえる。また、天神橋筋商店街としての共通のサインや標識を設置するなどわかりやすい環境整備が求められる。

    ●駅周辺での大量駐輪や周辺地域とのアクセス条件が悪い

      ・人通りの多い空間であるにも関わらず、駐輪問題や施設の清掃などの面で十分な対策がおこなわれておらず、今後は周辺地域との回遊性についても考慮した環境整備が求められる。

      ・工事中店舗やパチンコ店、駅などの集客施設などの周辺に集積する自転車については駐輪場などの整備のほか、きめ細かな対策を必要とする。

      ・周辺地域との連携という点で路地への導線や新たに計画されている周辺プロジェクトからの連続性を確保できるような道路整備も必要とする。

      ・JR天満駅周辺や高速道路の高架下部分などの整備も重点的に行う必要がある。

      ・銀行の壁面や工事中の壁面が商店街に面しているため、上記のような駐輪や柵などによる囲いによって環境阻害要因を増加させている。

    ●繁華街的な活気はあるが、パチンコ店などが増加している

      ・商店街全体の雰囲気については、天六商店街は繁華街的な雰囲気がある。天神橋五丁目商店街は比較的長い商店街であるが、一部道路幅が狭くなっているところでは商品のはみ出しや圧迫感の感じられる空間となっている。天神橋四番街商店街、天四北商店会については、駅前のパチンコ店やレジャー施設等の印象が非常に強く、電飾の光や音と人の混雑が激しいという雰囲気である。

    3.店舗の特性

    ●衣料・洋品を中心とした買い回り品が多い

      ・全体としては、ブティック、洋品店、靴屋等のファッションを扱う店が圧倒的に多いことが特徴的であった。特に天満駅より北側にはこのような店舗が多い。しかし、5丁目から6丁目にかけて、お洒落なブティックが点在するものの、近隣住民を対象とした店が多いようである。

      ・最寄り品の店は少なく、薬局や洋菓子店等が少しあるものの、生鮮三品に関しては、肉屋が1軒と果物屋が1軒あるだけであり、スーパーマーケットも1軒あるのみ、コンビニも天満駅周辺に1軒あるのみである。

    ●最近建てられた店舗にはお洒落な飲食店や雑貨店もみられる

      ・比較的新しい店が多く、新陳代謝が行われている様子である。新しい店は、洒落ていて、若者をターゲットにしたものが多い。マンション等の1階から2階部分を利用したパティオ式の店舗もいくつか見受けられ、そのような店舗には小綺麗なレストランが入っていたり、若者向けの雑貨屋が入っていたり、洒落た感じである。

    ●一部に特定の飲食店や業種の建物が集積する。

      ・天五中央商店街は、天神橋筋の横道的なところに位置し、寿司屋が数軒かたまっているほか、下町風の飲食店が多い。また、天満駅より北側には銀行が多い。

    4.その他

    ●ゲームセンターやパチンコ店が全体的に多い


      ・全体としては、パチンコ店と喫茶店が他の商店街に比べて多いことが特徴的であった。特にJR天満駅周辺には、電車の乗降客をターゲットとしたパチンコ店が駅の半径50m以内に7軒ある。同じくゲームセンターもパチンコ店に比べ店の規模は小さいものの数的には同じくらいある。

    ●居酒屋や寿司屋が集中し、喫茶店も多い


      ・夜型の飲食店については、バーやスナックのような店はメインの通りには少ないものの、居酒屋や寿司屋は、特に6丁目から5丁目にかけて多い。

      ・喫茶店も他の商店街に比べ多いと思われる。マンガ喫茶がいくつか目に付く。お洒落な飲食店も何軒かある。

    ●美理容室や占い店など、特徴のある店がある

      ・美理容室や占い店が4軒もある。銀行も点在しているが、商店街に面しては、殺風景な壁であったり、ただの通路があるだけでもう少し工夫がほしい。

2−(3)南ゾーンの現況

    天神橋1丁目〜3丁目は南ゾーンとして、北ゾーンと同様に現況を把握した。

    1.現況

      ・天神橋1丁目から3丁目にかけては、周辺地区がビジネスゾーンとなっていることからオフィス従業者の飲食や利便機能を中心とした商店街となっている。

      ・天二がアーケード改装などハード面で新しくなっているので、施設の清潔さや雰囲気は良い印象を与えている。

      ・店舗も飲食店が多く、客層についても昼休みのサラリーマンやOLが中心。

      ・国道1号に面した2丁目の入り口にお迎え人形を設置したゲート空間がシンボルとなっているが、南に行くにしたがって、人の流れもまばらになり、天満宮よりも南側は店舗そのものも少なく、非店舗や空地、空店舗などが見られるようになり、駐輪もこれらの場所に多い。

      ・来街者の特性としては、昼食時にサラリーマンやOLの客が集中し、夕方には飲み屋などに立ち寄るサラリーマンが多い。南森町駅周辺では若い女性やお出かけ風の主婦などもいるが、普段着姿の客も多い。子供や老人の姿は少ない。

      ・平成5年の来街者調査では、北区内の客が約6割と多く、近隣からの来街が多い。

      ・来街頻度は、「毎日+2、3日に1回」で約6割となり、高い頻度で利用されている。

      ・来街者の年代は主にOL、サラリーマンと思われる20歳代と60歳代以上が最も多い。

      ・来街手段は、「徒歩」が最も多く約45%となっており、北ゾーンに比べ徒歩利用の割合が高い。地下鉄南森町駅に隣接することから、次いで、地下鉄が約31%となっている。


    2.施設環境の特性


    ●2・3丁目のアーケード等の改修が完成

      ・1丁目から3丁目にかけてのアーケードについては2丁目がすでに改装を終えており、3丁目についても美しく改修が進められ平成9年11月に完成した。このため、1丁目には南側半分がオープンモールとなっているため、他の商店街とは異なる雰囲気を持っているが、アーケードのある部分は施設建設後相当の期間を経ている。2丁目は入り口にお迎え人形のアーチをしつらえており好評である。3丁目についても歴史的なシンボルをモチーフとしたゲートが設置されている。

      ・ぺーブメントについては1丁目と2丁目が比較的新しいが、デザイン的にはシンプルな構成である。3丁目についてはアーケードの改装にあわせて一部改装された。

    ●駐輪問題が大きな環境阻害要因となっている

      ・商店街の環境阻害要因としては、1丁目から3丁目共通して駐輪・駐車の問題が大きい。特に、非店舗や工事中、空き店舗のシャッターの前では駐輪禁止の柵と一体化して駐輪がかたまっているところがみられる。また、パチンコ店やゲームセンター周辺にも駐輪が多く環境を阻害する大きな要因となっている。

    ●店舗構成は飲食店が多く、昼休みのサラリーマン等が多い

      ・店舗の構成に関しては、飲食店などの割合が高いことと、空店舗や非店舗の割合が高いことが特徴となっている。1丁目の南側については(オープンモール部)、オフィスビルやマンションなどに建て替えが進んでおり、商店街全体のゲートであるにも関わらず商店街としての印象が弱い。業種構成についても、バーやスナック等の夜型の飲食店が多く見られる。2丁目についても、飲食店が多いものの、お洒落な店もいくつか点在する。また、特徴的なこととしては、美理容室や占い店などの時間消費型商店の割合が高い。3丁目は、買い回り品中心である。また、大型のパチンコ店が数軒立地している。

      ・商店街を訪れる客層については、買い物客というよりも昼休みのサラリーマンやOLらしき人が目立つ程度である。駅周辺には買い物目的の主婦や若い女性も見受けられたが、その他は普段着の人が多いようである。


    3.店舗の特性

    ●最寄り品中心の店舗が多い

      ・天神橋1丁目から3丁目にかけては、4丁目から6丁目に比較して、最寄り品の割合が多くなる。特に、若者向きの洋品、衣料品店は少なく、買い回り品業種であっても、最寄り品的要素に近い、近隣住民対象の店が多い。

    ●特色のある伝統的な店舗が多い

      ・3丁目には、茶道具や骨董品、邦楽器など、古くからの伝統を守る店が何店か見られ、洋服の仕立て屋も多いなど、業種が雑多である。

      ・1丁目は特にオープンモールにおいて、新しさと古さがミックスされた飲食店が多く見られた。全体的に非店舗の割合が多い。


    4.その他

    ●北ゾーンに比べてパチンコ店などのレジャー施設は少ない

      ・天神橋1丁目から3丁目にかけての商店街における時間消費型商店(飲食店、レジャー施設等)の状況は、全体としてパチンコ店・ゲームセンターが南に行くほど少なくなっており、1丁目においてはどちらも1軒もない。

      ・地下鉄南森町駅やJR大阪天満宮駅の近辺には、駅周辺にもかかわらず、パチンコ店が1軒もない。飲食店は夜型の店が多いが、お洒落な店もいくらか見られる。

      ・飲食関係の店については、1丁目にバーやスナックのような夜型の店が目立つ。1丁目から2丁目にかけては、おしゃれな飲食店も何軒かある。

    ●美理容室が集中する

      ・その他、美理容室は2丁目に7軒も集中している。銀行については、商店街に面している店は少ないが、南森町の交差点に3軒かたまっている。


2−(4)各商店街ごとの問題点


名称 問題点

(施設環境、客層・来街者特性、業種構成)

課題
天六商店街
  • アーケードの老朽化
  • 駐輪問題
  • 銀行裏などの未活用
  • ごみ箱などファニチャー類のメンテ不足やデザイン不良
  • 人通りが多く活気はあるが若者が少ない

・銀行裏や大通りへの通路などには駐輪などが非常に多く商店街の環境を阻害している。アーケード等の施設についても老朽化しており、今後これらの施設整備に向けての取り組みが急がれる。
天五中央商店会
  • アーケードの老朽化
  • 舗装の不備
  • 全体的に薄暗い印象
・飲食店が多いが昼間は閉めているところも多い
・他の商店街がアーケード改装やカラー舗装の改装などを行っており、ここでは現状の施設が老朽化しているため、他との差異が目立つ。
天神橋五丁目商店街
  • 一部通路が狭い
  • 人通りは多いが若者が少ない。
  • 買い回り中心。
・アーケード等の施設老朽化が進んでいるため、環境の整備が必要と考えられる。
天四北商店会
  • パチンコ店などの電飾や騒音
  • 駐輪問題、特に駅周辺
  • 駅周辺には人通りが多い。パチンコ客以外には通過客が多い
  • 買回り中心であるがパチンコ店が集積しておりその印象が強い
・パチンコ店が駅周辺を中心に集中しており、電飾や騒音によって全体の雰囲気は良くない。特に、周辺の駐輪対策を急ぐ必要がある。
天神橋筋四番街商店街
  • 天満駅周辺を中心にしてパチンコ店が集積
  • 駅周辺には人通りが多い。パチンコ客以外には通過客が多い
  • 最寄り、買回り半数程度であるがパチンコ店などのレジャー施設の印象が強い
・パチンコ店が集積しているため、駐輪問題などの解決を急ぐ必要がある。
名称 問題点

(施設環境、客層・来街者特性、業種構成)

課題
天満南街商店会
  • JR天満駅周辺の駐輪問題
  • 駅からの歩行者の交通環境が悪い
・人通りは少ない

・ほとんどが飲食店

・天満駅からの交通アクセス条件が悪いため高齢者等の通行などに配慮した道路整備や駐輪場の設置が必要とされる



 


 

天神橋三丁目商店街 ・空店舗、空地などが見られる
  • 最寄り、買回りともに半々であるが、飲食店やサービス業も多い
・アーケードの改装によって施設環境は良くなったが、未活用となっている空店舗の積極的な活用が望まれる

・マンション建設等のミニ開発が進んでおり、今後の建設への対応を必要とする

 

 

天神橋二丁目商店街
  • 休憩スペース等の不足
  • 銀行のビル周辺や地下鉄入口付近の駐輪問題
  • 飲食店を中心としているため、オフィス従業者等が主な通行客である
・銀行周辺の駐輪対策が必要である

 

 

天神橋一丁目商店街
  • オープンモール部は植栽や駐車場の柵などが環境を阻害
  • アーケードが老朽化
  • 空店舗や工事中の建物が点在
  • 昼食時の飲食等を目的としたオフィス従業者が中心で人通りもまばら、非店舗も多い
・空地や空店舗などのあるところでは、積極的な活用方策を検討していく必要がある

・アーケード部等の施設が老朽化しているため早期に改修が必要と思われる


名称 特性
天満市場
  • 施設は老朽化しているが、独特の雰囲気を残した市場である。再開発計画が進められている


2−(5)課題の整理

1.商店街施設環境面での整備促進

    アーケードやぺーブメントは各商店街ごとに整備が進められているが、メインストリートから周辺につながる通路や道路施設は老朽化が目立ち、周辺地域との連続性が未整備。特に駐輪は、駅前や非店舗、空店舗周辺に多く商店街と一体的な対策が必要である。

2.商店街のシンボルとなるゲート空間の整備

    商店街は南北2kmに及ぶため、エリアごとのゾーンを設定し、それぞれ核となるターミナル機能や周辺開発との連携が必要であるが、現状ではこれらの要素をふまえた環境づくりが十分でない。従って、核となる部分やゲート空間にはシンボル的な雰囲気づくりが必要。

3.商店街の環境を阻害する交通施設との調和


    商店街を分断し環境を阻害する国道や高速道路の高架、鉄道の高架周辺では景観にも商店街の連続性にも影響を与える。交差点の美装化や高架下裏側景観整備などの必要性は高い。

4.周辺の地域資源との連携


    商店街周辺には、天満宮等の歴史・文化的な資源やコミュニティ施設等も整備されているが、これらの施設と一体的なソフト面での賑わいづくりや話題性の発揮する情報発信が少ない。扇町キッズパークなどの集客施設や今後開発予定の施設との連携を検討する必要がある。

5.商店街の特色ある共同事業の検討


    業種構成が買い回り品、最寄り品、飲食店と混在し、立地条件に比べて広域的に集客力のある店舗集積ができにくい。したがって、特色ある店舗づくりや顧客サービスの展開を商店街全体の共同事業として考え、実施していく必要がある。

6.個別商店の魅力向上及び経営基盤の強化


    4丁目から6丁目にかけては空店舗や空地がほとんどないが、1丁目を中心に空店舗や空地など店舗以外の施設が点在する。こうした施設の活用を進めるとともに、魅力ある個店づくりに向けた方策を充実していくことが必要である。

7.商店街及び地域の情報発信力の強化


    地域や商店街に関連する特色ある歴史的資源や文化的な環境を発掘し、情報発信することで、大阪の顔として天神橋地域を広く一般市民にアピールし、地域への愛着や支援体制を醸成していくことが必要である。また、こうした機会を捉えてイベント等のソフト事業の積極的な展開なども検討する必要がある。

8.全体のアイデンティティ形成

    現在は個別に商店街の整備が進められているが、環境変化に対して、大阪の顔としてのイメージ作りや一般市民への認知度の向上を図ることが必要である。したがって、商店街全体の広域的なPR活動や商店街全体のわかりやすさの形成などが不可欠である。
<目 次>


2003.4.1更新
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