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平成10年度大阪の標準者モデル賃金(要約)
平成11年1月
大商では、企業経営の参考に供するため、賃上げ実施後の在阪企業の賃金を調査しているが、このほど平成10年度の調査結果 をとりまとめた。  調査時期は平成10年6月29日〜8月末日。アンケート方式により、大阪市内に本社を有する常用従業員30人以上の企業を中心とする2,045社を対象とした。有効回答577社、回答率28.2%。   ※ここでいう対前年度上昇率とは、年齢、勤続年数など同一条件についての上昇率であり、一般 にベースアップ(べア)と呼ばれるものに相当する。

<まとめ>
平成10年度の賃上げ交渉は、金融不安や需要不振により景気悪化が加速され、わが国経済の先行き不透明感が深まるなど厳しい経営環境のもとで展開された。このため、学歴・年齢・性別 にかかわらず広い範囲で賃金抑制傾向が強まり、対前年度上昇率は−2.7〜1.4%と極めて低い水準にとどまった(ただし中学卒男女を除く)。
大学卒・男子・事務の初任給は対前年度比0.7%アップの
196,791円となり、平成2年度以降、伸び率は低下傾向にある。

1.年齢・勤続年数別賃金水準


年齢、勤続年数別に対前年度上昇率を見ると、−2.7 〜1.4 %と極めて低い水準にとどまり(ただし中学卒男女を除く)、学歴・年齢・性別 にかかわらず広い範囲でマイナス値を示した。この結果から、一昨年秋以降の金融不安を発端として景気悪化が加速され、経営側が賃金の引き上げ凍結や年功序列型賃金制度の改革、さらにリストラの一環として賃金水準の見直しを行うなど、これまでにない厳しい姿勢がうかがえる。 全体的に賃金抑制傾向が強まるなか、大卒男子・事務ではこれまで上昇率が比較的高かった若年層の27歳〜35歳、および50歳で前年比マイナスを示しており、これらの層にまでリストラの波が押し寄せていると思われる。 一方、高卒男子18歳〜20歳、女子18歳〜22歳で上昇率が相対的に高いが、男子27歳、女子40歳以降のポイントで同マイナスとなった。


2. 賃金倍率


賃金倍率(各学歴の初任給を100とした年齢別の賃金指数)は、全般的に昨年度と変わらない。例えば男子の場合、大学卒・事務では30歳で148.6 (前年度150.1 、以下同様)となり、40歳で215.2 (同216.0 )で初任給の倍を超え、50歳で277.8 (同280.5)と、約2.8 倍に達する(全産業・全規模)。なお、50歳まではこれまでと比べ変化は少ないが、55歳では平成元年度331.7 、平成5年度303.2 、平成10度299.3 と徐々に低下し、51〜55歳の賃金抑制がみられる。
高校卒・事務では25歳130.6(同131.5)、30歳171.7(同175.0)、40歳241.6(同245.9)、55歳341.6(同343.5)となっている。 大学卒・男子についてこの賃金倍率を規模別にみると、企業規模が大きいほど高く
、55歳の賃金は、1,000人以上規模326.7 、300〜999人規模303.7 に対して、100〜299人規模は289.7 、30〜99人規模は280.0 となり、規模間格差がみられる。


3.賃金水準の比較

1) 企業規模間の比較

従業員数1,000人以上規模の各年齢の平均賃金を100として、企業規模間の賃金比較を行うと、大学卒・男子・事務の場合、30歳時点では300〜999人規模88.7(前年度89.2)、100〜299人規模88.0(同88.4)、99人以下規模87.7(同89.8)となり、1,000人以上規模企業と10%強の差がつき、99人以下の企業では、その後も高年齢・長勤続層になるにつれ差が広がる傾向にある。 高校卒・男子・事務については、若年層の一部で1,000人以上規模を上回っているが、それ以降は全般 的に下回り、差が出るものの大学卒ほどの格差は見られない。 一方、女子の企業規模別 格差は男子と比較すると概して小さく、高卒・女子・販売
事務については、30〜99人、100〜299人規模企業の40歳以降で、1,000人以上規模に比べ 3〜8 ポイント下回っている。

2) 産業間の比較

全産業全規模の平均賃金を100として、産業間において同一年齢の賃金を比較すると、大学卒・男子・事務の場合、22歳(初任給)では製造業が非製造業をやや上回っているが、25歳で逆転、以後、非製造業が製造業を上回っており、賃金水準は非製造業優位 となっている。 製造業では、繊維・衣服がほとんどの年齢ポイントで全産業全規模平均を上回って
いる。また、化学が若年層で高いのに対し、食料品は中高年齢層で高い。 非製造業では、不動産業、建設業があらゆる層で高くなっている。

3) 学歴間の比較

学歴間で同一年齢の賃金を比較すると、高年齢になるにつれて学歴間賃金格差は概ね拡大している。例えば男子の場合、大学卒・事務の全産業全規模の平均賃金を100とすると、高校卒・事務については22歳95.5、30歳94.1、40歳91.4、50歳92.0、55歳92.9となっている。 中学卒についてはこの格差がより顕著にあらわれており、22歳94.7、30歳84.9、40歳76.3、55歳73.8となっている。

4) 職種間の比較

製造業において、事務、販売、技術、生産従事者の賃金水準を職種別に比較すると、大学卒・男子の場合、賃金水準は「販売」が全般 的に高く、次いで「技術」(ただし35歳ポイントを除く)、「事務」の順となっている。 一方、高校卒・男子の場合も、「販売」が全ての年齢層にわたり「事務」を上回っているが、「生産」は27歳以降、「事務」より低い水準で推移している。


4.初任給


平成10年度の初任給は、全産業・全規模で見ると、男子の場合、大学卒・事務で196,791 円、高校卒・事務160,244 円、中学卒140,347 円、女子の場合、大学卒・事務販売188,083 円、短大卒・事務販売167,471 円、高校卒・事務販売157,598円、中学卒136,224 円となった。 全産業全規模で見た場合の初任給の上昇率は、中学卒男女を除くと 0.3〜1.4 %と低水準ながら、前年度の上昇率と比較すると概ね伸びた。 大学卒・男子・事務の初任給の伸び率は、平成2年度に好況による人手不足を反映して 6.0%に達したが、その後は低下が続いており、平成10年度も 0.7%と低い伸びにとどまっている。



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2003.4.1更新
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