大阪商工会議所 HOME

都市計画制度の拡充に関する要望
〜「街づくり3法」活用促進のために〜

(平成11年10月28日 都市計画中央審議会・伊藤滋会長に要望)

今般、都市計画中央審議会で検討されている都市計画法の抜本的な見直しは、経済社会情勢の変化に対応した誠に時宜を得たものであり、「街づくり3法」の活用を促進する上でも、その推進に大きな期待を寄せている。本会議所は、昨年、「街づくり3法」(中心市街地活性化法、大規模小売店舗立地法、改正都市計画法)が成立したのを受けて、中心市街地の活性化や、都市に不可欠な商業機能の充実を図るべく、その活用策を探ってきた。「街づくり3法」の実効性を高めるには、都市計画制度を拡充するとともに、地域住民が主体となったまちづくりを支援していくことが必要と考える。  まちづくりは、地域の独自性を生かして進めていくことが肝要である。地方分権一括法の成立を機に、「国民の財産権を制限するのは国であり自治体ではない」という計画高権の考え方から脱却し、税財源も含めた大幅な権限委譲を推進することが望まれる。また、土地利用に関しては、大幅な私権制限を伴う場合も想定される。その際には、住民の理解と支援のもとに、地方自治体の首長が強いリーダーシップを発揮しなければならない。その指導力のもと、都市計画、商工業、農業、道路・交通 、環境など幅広い分野の関係部局が連携して、いわゆる縦割り行政を是正し、総合的な取組みを行うことが必要である。  以上の点を踏まえ、都市計画法の抜本的な見直しを強力に推進されるよう、下記事項を要望する。



1.マスタープランの拡充

(1)マスタープランに基づく立地規制・誘導の促進

マスタープランは、それに基づく土地利用が伴ってはじめて実効性を持つものである。欧米諸国の「計画なきところに開発なし」という土地利用制度に倣い、マスタープランに沿って、具体の都市計画を進める必要がある。マスタープランに基づく立地規制・誘導を促進し、さらに進捗状況の定期的なフォローアップを義務付けること。


(2)「市町村マスタープラン」の強化とまちづくり条例の策定促進

「市町村マスタープラン」は都市のあるべき姿を示すものとして、今後、その役割がますます高まると考えられることから、その法的効力を強化する必要がある。さらに経済団体、住民団体などがまちづくり計画を策定する場合の支援制度を拡充し、策定された計画を「市町村マスタープラン」に反映させるよう、その検討を義務化すること。
また、地域住民のニーズを把握しながら「市町村マスタープラン」を実現する手段として、まちづくり条例は極めて重要である。過去に築かれた文化や歴史的遺産、自然環境、など地域の独自性を生かした計画的な土地利用を推進するため、市町村によるまちづくり条例の策定を促進すること。


(3)都道府県全域を対象にしたマスタープランの法定化

現行制度におけるマスタープランとしては、平成4年に創設された「市町村マスタープラン」があるが、昨年末までに434市町村で策定されたにすぎない。全市町村での策定を目指すとともに、それぞれのマスタープランの広域調整を図るため、都道府県レベルでのマスタープランの策定を法定化すること。都道府県マスタープランにおいては、都市的な土地利用の広がり考慮し、都市計画区域のみならず全域を対象とし、域内の総合的な土地利用を図ること。
 


2.開発許可制度の拡充


(1)開発許可基準における中心市街地活性化への配慮

欧米諸国では、「計画なきところに開発なし」ということが、まちづくりの基本になっている。土地利用計画をベースに、中心市街地活性化やまちづくりへの影響を考慮して開発許可を運用するべきである。特に、中心市街地活性化法に基づき現在、全国各地で行われている活性化への取組みの効果 を減じさせることのないよう、開発許可基準には、中心市街地活性化への配慮を盛り込むこと。


(2)全ての大規模集客施設への開発許可制度の適用

開発許可制度の適用対象とならない都市計画区域外においても、大規模集客施設が建設され、それに見合う公共施設整備が不充分なまま、都市的な土地利用が進められている現実がある。都市のスプロール化を防止するため、大規模集客施設が建設される場合には、都市計画区域の内外を問わず、全ての大規模集客施設に対し開発許可制度を適用すること。


3.既成市街地の再整備

(1)地区特性を踏まえた「特別用途地区」の設定促進

昨年の都市計画法の一部改正により、都市計画区域内で用途地域が指定されている地域では、市町村が独自に特別 用途地区を定められるようになった。しかし、実際には利害関係の複雑な用途地域上に、市町村主導で新たな特別 用途地区を設定することには、かなりの困難が予想される。都市で重要な役割を果 たしている商業を活性化させるためには、都心居住の促進や公共施設の整備充実が必要であり、その地区整備手法として特別 用途地区が活用されるよう、市町村に対して設定を促進すること。


(2)地区計画制度の活用促進

老朽住宅密集市街地など権利関係が錯綜する既成市街地では、地域住民の意向を反映させながら計画をまとめる、地区計画制度の役割がより一層重要になる。地区計画制度を一層多様化、弾力化し、住民にとってわかりやすい制度に整備した上で、積極的な活用を働きかけること。例えば、防災・美観などの観点から、統一的な基準を地区毎に作ること。


(3)都市施設の立体的整備促進

広域からの吸引力が強い大都市の既成市街地では、都市で過ごす人々の安全性と快適性を向上させる施設の充実が必要である。既成市街地内の限られた地域を効率的に活用できるよう、「占有空間」も都市計画の対象とし、立体的な整備を促進すること。


(4)低未利用地の利用促進

バブル崩壊後、既成市街地における虫食い土地等が低未利用のままとなっており、土地利用の連続性を妨げる要因ともなっている。こうした低未利用地を有効に活用するため土地の整形、集約化を促進する施策を推進すること。

(5)工場等制限法の廃止

新しい産業の育成を促進するよう都市計画制度上の工夫が求められているが、これを有効にするために工場等制限法は廃止すること。


4.都市計画決定システムの拡充


(1)地域住民の発意を促す都市計画決定手続きの拡充

現行の公告・縦覧手続きでは情報入手が容易でないことに加え、案自体を理解するには専門的な知識が不可欠である。案の周知方法を多様化させるとともに、行政のアカウンタビリティ(説明責任)を向上すること。また、都市計画の決定に当たっては、手続きの過程も公表し、透明性を高めること。


(2)首長の強いリーダーシップと縦割り行政の是正

土地利用規制を行う場合、必ず私権制限が問題になる。利害関係者の十分なコンセンサスを得ることが第一ではあるが、ごく一部の限られた反対意見のために全体計画が実現しない場合などは、地方自治体の首長が強いリーダーシップを発揮しないと、問題は解決しない。住民の理解と支援を前提とした首長の権限を強化すること。
また、いわゆる縦割り行政により、土地利用の一貫性を確保するのが難しい場合もある。首長の指導力のもと、都市計画、商工業、農業、道路・交通 、環境など幅広い分野の関係部局が連携して、総合的な土地利用の取組みを図ること。


(3)行政間の隙間をつなぐ広域協議の仕組みが必要

土地利用政策は、市町村単位、都道府県単位で推進されており、地方自治体間の調整が不十分である。例えば、ある市町村で大規模集客施設を誘致した場合、周辺地域の土地利用計画に大きな影響を及ぼす恐れがある。このような事態を未然に防ぎ、総合的な土地利用を図るため、行政間の隙間をつなぐ広域協議の仕組みを確立すること。



2003.4.1更新
Copyright(C) 1996-2003 大阪商工会議所