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中小企業対策に関する要望
平成10年8月

我が国経済は、昨年秋以来の金融不安や、先行きの不透明感から来る消費低迷によって、一層後退色が強くなってきている。
現在の景気状況下では、経営基盤が脆弱な中小企業にとって、経営の舵取りは困難を極め、これに金融機関の貸し渋りが追い討ちをかける結果 となっている。
中小企業は、経営の建て直しに力を注ぎつつ、下請分業構造の変革や、国際競争の激化など経済の構造変化にも対応しなければならない。
我が国経済が今後とも活力を保ち続けるには、懸命に努力を続けているにも拘らず、苦境に立たされている多くの中小企業が活路を開くことが何よりも必要であるので、下記の措置を講じられることを強く要望する。




1.景気対策


総合経済対策については、できるだけ早期に執行されるとともに、必要に応じて機動的に追加対策を実施されたい。
また、消費の喚起をはかるため、所得税、住民税については特別減税ではなく、恒久減税を断行されたい。さらに、不良債権の処理を迅速に進められ、金融システムの安定を図られたい。

2.金融対策

(1)政府系中小企業金融機関の融資審査の弾力化
民間金融機関の貸し渋りにより、中小企業の資金繰りが一層困難になってきているため、企業の存続を第一義に考え、政府系中小企業金融機関におかれては融資審査の弾力化等、従来以上に踏み込んだ支援をされたい。
(2)小企業等経営改善資金(マル経)の充実 来年3月までの措置として本枠と別枠の合計で1,000万円とされている貸付限度額を、来年4月以降も本枠一本で1,000万円とするとともに、貸付期間も設備資金7年、運転資金5年とされたい。
また、新規開業を目指す企業者を対象とした「新規開業者経営改善貸付」は、融資対象者の条件が厳しく、貸付実績もあがりにくいため、貸付対象の資格等、融資条件を緩和されたい。
(3)政府系中小企業金融機関の融資金利減免措置の延長 政府系中小企業金融機関の金利5%超の既往貸付に対する金利減免措置が、平成10年10月18日に期限切れとなるが、これを延長されたい。
(4)中小企業信用保険公庫の保険準備金の増強 景気低迷により企業体力が弱まり、借入金の増加などでその返済能力が著しく低下し、倒産件数が増加しているため、信用保証協会の代位 弁済が増加している。そのため、引き続き中小企業信用保険公庫の保険準備金の増強を図られたい。
(5)中小企業信用保険公庫の信用保証協会に対する填補率引き上げ
   並びに信用保証協会の保証料率引き下げ
信用保証協会が信用保証機能を存分に発揮するため、中小企業信用保険公庫による、信用保証協会の無担保特例保険に対する債務保証額への填補率を引き上げるとともに、それに伴って信用保証協会が保険公庫に支払う保険料が引き上げられないよう配慮されたい。
また、現行の保証料率は、低金利下にあって相対的に高い水準にとどまっているため、引き下げられたい。
  (6)中小企業の資金調達手段の多様化支援 中小企業が発行する社債に公的保証を付けるとともに、中小企業が自らが保有する売掛債権を証券化することにより、資金を調達しうるスキームを構築されたい。

3.税制の見直し

(1)法人税の実効税率の引き下げ
我が国の産業の活力を高め、国際競争力を維持するために、法人税の実効税率をすみやかに40%に引き下げられたい。また、その際中小法人の軽減税率を併せて引き下げるとともに、昭和56年以来据え置かれている軽減税率の適用年間所得を1,500万円に引き上げられたい。
(2)赤字法人課税導入の反対 赤字法人課税を実施した場合、厳しい経営環境の中、赤字を出しながらも存続のために懸命の努力を重ねてきている中小企業に、致命傷を与えかねない。
また、新規に事業を立ち上げる場合は、当分赤字が続くことを考えれば、赤字法人課税の導入は見送られたい。
(3)同族会社の留保金課税の廃止 新株発行等による資金調達がはかれない中小同族法人にとって、留保金は唯一の資本充実策である。しかしこの留保金への課税は、上場企業と比べ不公平であるばかりか、中小企業の体力を大きく奪うものであるため、同族会社の留保金課税は直ちに廃止されたい。
(4)事業承継税制の改善 現在の相続税率は最高で70%と国際水準と比較しても非常に高いため、経営者が家族に事業承継する場合、過重な税負担により後継者の事業意欲が失われかねない。
 ついては、相続税の最高税率を50%に引き下げられるとともに、累進構造を緩和されたい。また、事業用資産に対する納税猶予などの特例を創設されたい。
取引相場のない株式の評価方法については、すべての会社に類似業種比準方式と純資産価格方式の選択を認められるとともに、類似業種比準方式の減額率を現在の30%から50%に引き上げられたい。
(5)固定資産税・都市計画税における「代替家屋の特例」の減額期間の延長 阪神・淡路大震災による被災地経済は、景気低迷により復興に遅れが目立ってきており、震災によって滅失、損壊した事業用家屋の再建に対する支援が重要な課題となっている。
家屋再建のための支援措置として、平成12年3月31日までに取得した代替家屋に係る固定資産税・都市計画税が当初3年間は2分の1に減額する措置が講じられているが、依然として再建に遅れが目立つ状況を踏まえて、是非ともこの減額期間を延長されたい。

4.中小企業基本法の見直し

中小企業基本法は、昭和48年に改正がなされた後、25年の歳月が経過し、その間の経済環境や産業構造の変化によって、実態にそぐわないものになってきている。たとえば、小売業やサービス業の資本金基準の上限が、株式会社の最低資本金額である1,000万円となっているなど、不都合が生じているところも見受けられる。
ついては、定められた資本金や従業員数の範囲を拡大し、業種の分類についても再度検討されたい。

5.中小製造業の振興

(1)「近畿圏の既成都市区域における工場等の制限に関する法律」の廃止
近畿圏の産業と文化の活性化に大きな制約となっている「近畿圏の既成都市区域における工場等の制限に関する法律」を廃止されたい。
(2)地場産地企業協同での試験・研究開発の体制に対するサポート 高付加価値製品の多品種少量生産体制の再構築を図るため、業界全体が協同して技術情報の収集・実用化に取り組むことが必要であるため、こうした地場産地企業協同での試験・研究開発の体制に対して、行政からもサポートをされたい。
(3)情報受発信ネットワーク構築への支援 消費者のニーズの動向を迅速に把握し、生産計画に反映させると同時に、こうした製品は供給可能という情報を潜在的な買い手に伝達することも重要であるため、市場・マーケティング情報の蓄積と産地からの情報を提供する情報受発信ネットワークの構築への支援をされたい。
(4)産学官連携の場づくりの支援 公的機関や大学と中小企業の間にある壁をなくし、相互の活発な交流や連携を通 じて、中小企業がより多くの技術情報を得られるよう、産学官連携の場づくりへの支援をされたい。

6.公共事業の地元中小建設業への優先発注

地域経済振興並びに地元中小建設業育成の観点から、公共事業をはじめ官公需の一層の前倒し執行とともに、地元中小建設業への優先発注に今後さらに努められたい。また、経審点数基準の思い切った引き下げ、大規模工事の分割発注等に配慮され、地元中小事業者の受注機会の拡大を図られたい。

7.商店街等の振興

(1)街づくりの視点からの総合的な活性化対策
中心市街地商店街の活性化対策事業を実施するにあたって、地域の特殊事情を加味し、地域がある程度自由な裁量 で運用できるような、各種補助金を含め、融資制度の確立をされたい。
また、街づくりの視点から、土地の有効活用、道路、交通問題、高齢化社会への
対応など、関係省庁、地方自治体が連携して総合的な活性化対策を講じられるとともに、建築基準法の運用の弾力化を図られたい。
(2)中小小売店の地域での役割を十分に踏まえた施策 大規模小売店舗立地法、中心市街地活性化法、改正都市計画法が成立し、現行の大規模小売店舗法が廃止されることになったため、新しい法律の枠組みの下での競争激化による皺寄せが、中小・零細な商店に集中的に表れることが懸念される。
ついては、これらの法律の政省令・指針の策定、運用にあたっては、商店街・中小小売市場等における中小小売店が、高齢化社会が進む中での身近な買い物機会の提供、街のにぎわいの確保、就労・雇用の場の提供など、地域社会の維持や街づくりの中で欠かすことの出来ない重要な役割を担っていることを十分に踏まえて対処されたい。
(3)災害復旧高度化事業の事業計画書提出期限の再延長 阪神・淡路大震災による被災中小企業が本格復興を遂げるため、商店街・小売市場などが組織的にまとまって災害復旧高度化資金助成制度を活用する希望が多いが、組織内での意思統一や市街地再開発事業ないし土地区画整理事業などの調整に時間を要するため、平成11年1月16日までとなっている事業計画書の提出期限を再度延長されたい。

8.労働問題

(1)雇用調整助成制度の充実
雇用調整助成制度について、業種、地域指定方式を見直すとともに、中小零細企業も利用しやすいように申請手続きの簡素化を図られたい。
(2)労働時間の特例措置の維持 平成9年度に週40時間労働制への移行がなされたが、従業員10人未満の商業・サービス業等では、週46時間の特例措置が講じられている。これらの業種では、手待ち時間の存在という特殊性があり、また、大半が厳しい経営環境にさらされているため、直接コスト増に結びつく営業時間や営業日の短縮は到底不可能である。よって、これらの業種では、特例措置は現行通 り維持されたい。

9.中小企業の環境対策への取り組み促進

中小企業が負担する環境対策コストへの税制上の優遇措置や特別 融資制度の拡充、補助金の給付を実施されたい。また、研究機関など外部の人材や大企業の環境対策ノウハウを中小企業が有効に活用できる制度を構築されたい。


2003.4.1更新
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