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中小企業対策に関する要望
平成10年6月24日
わが国経済は、先行き不安による個人消費の落ち込みに加え、これまで堅調であった輸出がアジア向けを中心に低迷するなど一段と後退色を強めており、倒産件数や失業率にいたっては過去最悪の水準に達するなど、危機的な状況に陥っている。
 とりわけ、わが国経済の根幹をなす中小企業においては、かつてない急激な構造変化に翻弄されるとともに、昨年秋以降顕著となった「貸し渋り」により、まさにギリギリの経営を強いられている。
 政府におかれては、引き続き、景気回復に全力を尽くされるとともに、わが国経済が持続的な発展を遂げるよう、新規事業開拓や新分野進出に挑戦する意欲ある中小企業の自助努力を支援することを要望する。



1.機動的な景気対策の実施

政府では、4月に過去最大規模の16兆円にのぼる「総合経済対策」を打ち出し、なかでも中小企業対策として、当初予算を上回る2,622億円の対策を講じられた。
このうえは、一日も早く実行に移すとともに、その後の推移によっては、さらなる景気対策を機動的に講じるべきである。
また、総合経済対策で期待される効果を持続させるためには、国民が将来への不安なく消費できる環境を整える必要があり、早急に所得税・住民税減税の恒久化を実現すべきである。

2.中小企業基本法の見直し


中小企業の範囲については、昭和48年に中小企業基本法の一部改正がなされたものの、その後今日まで改定は行われていない。しかし、この25年間における経済規模の拡大や株式会社の最低資本金が1,000万円になったことを考慮すると、少なくとも中小企業基本法における中小企業の資本金基準については、その規模を拡大すべきである。


3.中小企業金融対策の強化


1)政府系中小企業金融機関の融資審査の弾力化

    政府系金融機関にあっては、日本経済の活力の源泉として、また、雇用の受け皿として中小企業が果 たす役割の重要性に鑑み、当面の間、返済能力の全く見込めない企業は別として、中小企業の存続を第一義に考え、従来以上に踏み込んだ金融支援を行う。

2)小企業等経営改善資金融資制度(マル経)の充実

    平成11年4月以降、小企業等経営改善資金融資制度(マル経)の貸付限度額の本枠・別 枠の区別を撤廃し、限度額を1,000万円にするとともに、設備・運転資金の返済期間についても、それぞれ7年、5年とする。

3)政府系中小企業金融機関による融資金利減免措置の延長

     金利5%超の政府系中小企業金融機関の貸付に対して講じられている金利減免措置を期限切れとなる本年10月18日以降も延長する。

4)信用補完制度の充実

    信用力や担保力の乏しい中小企業金融の円滑化のためには信用保証制度の強化が必要である。そのため、現在の低金利状況下において相対的に高い水準に止まっている信用保証協会の保証率を引き下げるとともに、保険公庫、保証協会の経営基盤の強化を図る。

5)中小企業の資金調達手段の多様化支援

    中小企業にも直接金融の道を開くため、中小企業が発行する社債に公的保証を付けるとともに、中小企業が自らが保有する売掛債権を証券化することにより資金を調達しうるスキームを構築する。

4.中小企業税制の見直し


1)法人税率の引き下げ

    わが国産業の活力を高め国際競争力を維持するためには一刻も早く法人税の実効税率を国際的な水準に引き下げることが必要である。ついては、早急に法人税の実効税率を国際的な水準である40%まで引き下げる。また、法人税の引き下げに合わせて中小法人の軽減税率を引き下げるとともに、昭和56年以来据え置かれている軽減税率の適用年間所得金額を1,500万円に引き上げる。

2)赤字法人課税導入の反対

    地方における税収の安定化のための事業所得の外形標準課税いわゆる赤字法人課税については、厳しい経営環境の中、存続のため経営努力を重ねている中小企業の現状や、新規事業を立ち上げる場合、当分は赤字が続くことが予想されることなどに鑑み見送る。

3)同族会社の留保金課税の廃止

    エクイティファイナンスなどによる資金調達のできない同族会社にとって重要な資本充実策である留保金に対する課税は、同族中小企業に対し過重な税負担を強い、経営基盤の強化を大きく阻害するので廃止する。

4)事業承継税制の改善

    現行の相続税・贈与税の下では、事業承継に係わる過重な税負担によって、中小企業の円滑な世代交代や事業の存続が不可能となる事態が懸念される。そこで、相続税の最高税率を50%に引き下げるとともに、累進構造を緩和する。また、取引相場のない株式の評価方法については、中・小会社も100%類似業種比準方式で評価しうるよう改めると同時に、類似業種比準方式にかかる減額率を50%に引き上げる。

5.街づくりの視点に立った中心市街地・商店街の活性化


地域の生活・文化や経済の担い手である商店街は、地域コミュニティの核として重要な役割を果 たしてきたが、消費者ニーズの多様化、空き店舗の増加、後継者難等により厳しい経営環境に直面 している。今後、商店街の活性化を促進するためには、地域環境や交通問題、土地の有効・高度利用の促進、高齢化社会への対応等を含む地域全体の街づくりを推進することが緊要である。このため、「改正都市計画法」「大規模小売店舗立地法」「中心市街地活性化法」のいわゆる街づくり関連3法の施行にあたっては、以下の点に配慮すべきである。


1)商店街活性化対策の実施体制の整備

    街づくり関連3法案については、法律が制定されたものの、その運用にあたっては不明確なところが多い。よって、今後の運用にあたっては、中小企業が混乱をきたさぬ よう十分配慮する。

2)「大規模小売店舗立地法」における商工会議所の役割の明確化

    新たに制定された「大規模小売店舗立地法」の実施にあたっては、地域総合経済団体としての商工会議所の意見・役割を重視した法運営を行う。

6.中小企業の経営基盤の強化


1)ベンチャービジネス促進税制の創設

    ベンチャービジネスを支援するため、投資家がベンチャービジネスに対する投資額の2分の1相当分を当該年に所得控除しうる制度を創設するとともに、ベンチャービジネスに対する貸金については貸倒引当金の割合を引き上げる。

2)ISO14000シリーズ認証の取得促進

    今後、中小企業においても、国際標準規格に基づく環境管理の実施に取り組む必要がある。そこで、中小企業によるISO14000シリーズの認証取得を支援するため、専門家の派遣に必要な費用の補助を拡充する。

3)取引環境の整備

    独占禁止法の厳正運用等により企業間の自由な取引環境を整備する一方、下請代金支払遅延等防止法の厳正運用及び下請取引斡旋事業の充実により下請中小企業の経営の強化を図る。

4)「近畿圏の既成都市区域における工場等の制限に関する法律」の廃止

    近畿圏の産業と文化の活性化に大きな制約となっている「近畿圏の既成都市区域における工場等の制限に関する法律」を廃止する。


2003.4.1更新
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