多年度税収中立の枠組にとらわれ、思い切った減税策が打ち出されなかったのは残念だ。逆に、総じて個人への増税色が強く、経済活性化の視点にも乏しい内容となっている。 今後の年金財源確保の観点から、個人課税を強化せざるを得ない状況は理解できるが、微妙な経済情勢の下、トータルで国民負担を可能な限り低く抑える年金・福祉ビジョンを示すべきだ。 企業活力増進の観点からも、力不足の感は否めない。法人税率引き下げなど今一歩アクセルを踏み込んでほしかった。 こうした中、焦点となった不動産関係税制については、住宅ローン減税の延長や土地譲渡益課税の税率引き下げなど資産デフレ脱却にも配慮した内容となったことは評価できる。 他方、最後まで調整が難航した地方への税源移譲については、一定の道筋がついたものと思うが、譲与税はあくまで時限的な措置とし、早急に抜本的な基幹税の移譲について詰めた議論を行ってもらいたい。