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レトロな元銀行でのディナー「堺筋倶楽部」

洗練されていて、ロマンティックで、記憶に残るようなものを探しているなら、堺筋倶楽部でのディナーをお勧めします。堺筋に面しているこのビルはいい意味で目立ちます。

現代的なオフィスビルにはさまれた、地下鉄堺筋線「長堀橋」駅から数分の場所に、4階建てのこのビルは1931年(昭和6年)に川崎貯蓄銀行大阪支店として建てられました。
1900年代前半に大阪市内に建てられ、今なお残る数少ないビルとなったかつての銀行は、1888年に横浜で生まれた建築家の矢部又吉が設計したものです。1906年に矢部はドイツのベルリンに行き、建築家リヒャルト・ゼールに師事しました。(偶然にもゼールは1898年に京都の同志社大学キャンパス内に建てられた赤レンガのネオ・ゴシック建築「クラーク記念館」を設計しています。)ベルリンから戻った矢部が設計を依頼された川崎貯蓄銀行系列のビルのいくつかは、今も国の登録有形文化財として保存されています。

堺筋倶楽部の誕生に遡ると、何度かのM&Aやテナント替え(すべて銀行だったと思われます)が行われた後、このビルは1998年に売りに出され、より利益を生み出すように取り壊されるはずでした。しかし、重要な歴史遺産を失ってはならないと、地元住民がビルの保存と保護のために動きました。何度かの試練を経て、現オーナーがこのビルを鉄の塊にするのを防ぐことに成功したのです。
堺筋倶楽部には2つのレストランがあります。1つは1階のイタリア料理「アンブロシア」で、もう1つは2階と3階のフランス料理「リストワール」です。4階には宴会場「オリエンタル」があります。

玄関にクラシックなアーチがあるおかげで、このビルは現代の大阪というよりは、クラシックなヨーロッパの雰囲気を醸し出しています。堺筋倶楽部の玄関を入ると、新しい世界に入りこむかのようです。高く白い天井、壁の看板、木枠の窓にかけられたクラシックなひだ状のカーテン、四角い壁柱、ソケットなどが全て、過ぎし日の豊かでノスタルジックな雰囲気を加えています。1階アトリウムの後方には、かつて金庫であった鋼鉄の巨大なドアが今は違う種類のものを守っています。なんとワインセラーになっているのです。

イタリアンかフレンチか、どちらの料理を選ぼうと、少し時間をとって建物を鑑賞してみてください。上層階への階段をのぼりながら、手すりのなめらかな木の感触を味わってみてください。他のお客様の迷惑にならないように、他のダイニングルームを覗いてみるのもいいでしょう。自分のゲストを驚かせたければ、かつての電話交換室や役員会議室、もしくは金庫だった個室を予約しておくとよいでしょう。個室には世界中から集められた調度品も飾られています。
最上階の宴会場は20人から100人まで対応していて、コンサートやセミナー、パーティなどに利用されています。涙型のシャンデリアとグランドピアノもあり、高級ブランドを扱う企業によく利用されています。

もちろん料理も素晴らしいです。私はイタリア料理の「アンブロシア」を選んだのですが、その日の前菜は、暖かい素焼きのポットに色鮮やかに盛り付けられた野菜と新鮮なシーフードに、ガーリック・アンチョビのディップを添えたバーニャ・カウダでした。シェフお勧めの、ズワイガニと菊のパスタ 柚子とトマトのクリームソース和えは、さわやかで新鮮な味わいで私たちをうならせました。大山地鶏は完璧に調理され、マデイラソースとレンコンの薄切りとともに盛り付けられていました。やわらかい鶏肉はイタリア料理の技術と日本の材料が完璧に融合された賜物です。デザートの暖かいエスプレッソと冷たいカタロニア風のカスタード・アイスクリームとマスカルポーネ・チーズの組み合わせは、クリーミーで甘く、そして苦い、完璧な締めでした。
フレンチ、イタリアン、どちらのレストランにも、予算に応じた幅広い種類のワインが掲載されたコンパクトなワインリストがあります。

堺筋倶楽部は毎日ランチ(11:30から14:00)とディナー(18:00から21:30)の営業をしています。貸切のパーティが行われることもあるので、必ず予約をしてください。英語を話す給仕も多いですし、英語のメニューもあります。ディナーの予算は、アンブロシアの場合は少なくとも1人8000円、リストワールの場合はもう少し必要です。建物を堪能し、おいしい料理をお召し上がりください。