佐藤会頭の眼~会員企業と共に歩む(寄稿文) その12
Chairman’s Eye with you

その12<商工会議所に求められる役割とは>
2011年7月官邸に福山官房副長官を訪問し緊急要望IMG_3131.JPG「2011年7月 官邸に福山官房副長官を訪問し緊急要望を手渡し」
○本会議所では、所管する企画広報委員会で「千客万来都市OSAKAプラン」の進捗状況を検証。5つの戦略プロジェクトは濃淡こそあるが、少しずつ成果の兆しが表れ始めている。元々、千客万来の意味を辞書でひも解くと、「かわるがわる多くの客が入り来ること」とある。前任の野村会頭は、大阪に賑わいをという趣旨で、賑わい創出プランを推進してきたが、同じく大阪を舞台に人やモノが交流し、その結果、大阪が千客万来の街になっていけばという意味を込めて命名した。例えば、野村前会頭時代から引き継いだ大阪城とその周辺を観光スポットとして魅力ある場所に再生させようとする取り組みも、大阪城を活用して大阪に人を集め、ひいては大阪城だけでなく、周辺の賑わいにつなげていくことを目指すものだ。

2012年5月黒門市場の野菜店舗を視察CIMG1589.JPG「2012年5月 黒門市場商店街を視察」



○2011年3月11日発生した東日本大震災の直後、岩手、福島、宮城県の大阪事務所を訪問し、被害の状況をお聞きするとともに、我々にお手伝いできることはないかとお尋ねした。とりわけ印象に残ったのは福島県大阪事務所でのことだ。鈴木敏夫大阪事務所長は、被害の大きさは、宮城、岩手、福島の順であるが、宮城や岩手と違って福島は原発事故の影響で行方不明者の捜索もできない。原発問題は長びくと憂慮され、早く技術的に安定させて欲しいと訴えていた。

      訪問記録 2011年3月31日 岩手県大阪事務所、福島県大阪事務所
           2011年4月4日  宮城県大阪事務所



2011年9月買いまっせ売れ筋商品発掘市で挨拶CIMG0685.JPG「2011年9月 買いまっせ売れ筋商品発掘市で挨拶」
○震災から約半年が経過した10月半ば、日本商工会議所の役員会が福島県内で開かれた。地元を代表して挨拶した佐藤・福島県知事は、義援金など全国からの支援に感謝する一方、「義援金はもういい。全国から福島県に足を運んで頂き、福島県の産品をどんどん買って帰ってほしい。」と語りかけた。福島県は果物などの生産が盛んな県だ。これからは瓦礫処理というハード面に加えて、風評被害というバリアをいかに取り除いていくかが重要。商工会議所ならではの販路開拓支援に期待が高まっていると感じた。大商では、福島県大阪事務所を通じ、長年実施している「買いまっせ売れ筋商品発掘市」などを積極的に利用してバイヤーを発掘して欲しいと呼びかけている。



○2012年6月11日に訪問した西川産業(大阪市淀川区)の西川正一社長は、日商の呼びかけに応じて東日本大震災の被災事業者に工作機械向け切削部品などを無償提供。商工会議所のネットワークを通じて、仙台、大船渡、釜石の各商工会議所経由で7社・機関に延べ600万円相当の部品を譲渡された。先般、東北商工会議所連合会からの感謝状をお預かりし、西川社長に直接手渡しさせていただいた。このような志の高い企業が大阪にもおられることを知り、大変勇気の湧く訪問となった。



2012年6月西川産業訪問CIMG1753.JPG「2012年6月 西川産業を訪問し意見交換」
○西川社長は、「わが社は工作機械メーカーや製造各社の直需販売店として、日本のモノづくりを支える流通システムの役割を担っている」と自社を紹介。最近のメーカーの動向について「海外進出した日本企業が人件費以外のコスト高を憂慮し、国内に回帰する傾向も見られる」と分析していた。訪問して得られるまさに生きた情報だ。今後も、製造業の最新動向などを定期的にご教示賜りたいとお願いした。

      訪問記録 2012年6月11日 西川産業





2012年3月コドモエナジー岩本社長の開発したルナウェアにつき説明を受ける佐藤会頭CIMG1257.JPG「2012年3月 コドモエナジー社の岩本社長より新製品の紹介を受ける」
○2012年6月に熊本で開催された九州各地の商工会議所との懇談会の席上、佐賀県・有田商工会議所から有田焼400周年イベントの説明を受けた。そこで、会員企業のコドモエナジー社(旭区)が進めるプロジェクトについて発言した。同社は有田焼の技術を改良して畜光・発光する省エネ性能に優れた建材「ルナウェア」を開発。電力に依存しない伝統技術が生み出したサスティナブルな建材が高く評価され、2012年2月に第4回ものづくり日本大賞「内閣総理大臣賞」を受賞した会社だ。
同社の岩本泰典社長とは独立行政法人産業総合技術研究所関西センターのイベントでお会いし、早速企業訪問させて欲しいと願い出た。その取り組みは常にアグレッシブの一言。リーマンショック後の艱難辛苦を乗り越えた今、近い将来の上場を目指して東奔西走。まさに元気印の会社だ。福島県川内村での工場建設計画やアメリカ西海岸での新規事業展開についても報告を受けており、そのチャレンジ精神には敬服するばかりだ。2012年7月24日に本会議所で開催した福島県商工会議所連合会との懇談にも同席をお願いし、その場で進出計画を披露していただいた。福島県の支援も正式に決定しこれから工場建設が本格化するとのこと。今後の課題は、いかに販路を広げるかだ。非常用誘導看板などにも利用可能で、地下街、公園、マンション、ビルなどその用途は無限だ。

      訪問記録 2012年4月10日 コドモエナジー


 

2012年8月タカラベルモント大阪工場で製造現場視察CIMG2491.JPG「2012年8月 タカラベルモント大阪工場製造現場を視察」
○8月10日のタカラベルモント社(中央区)への訪問では、100カ所目の視察となった。個別の企業訪問では50社目となる。同社は西成区北津守を発祥の地とし、理美容向けの特殊イスや歯科医院向けの設備ユニットのメーカー。1970年(昭和45年)、日本万国博覧会エキスポ70(大阪)で独自の展示館を設けるとともに海外進出を積極的に展開。同業の米コーケン社を買収して業容を拡大した。

創業者の吉川秀信氏は大阪企業家ミュージアムにて「独自技術でモノづくりに挑む企業」の代表として紹介されている方。その吉川氏の名言は「世界はひとつ~商売に国境はない。良い品物は世界中どこにでも通用する。世界にはばたけ。」だ。まさに今の大阪企業にとって最も必要とされる言葉だ。こうしたグローバル化の先駆者企業こそ、世界に誇るべき大阪ブランドと言える。

大阪本社のショールーム(中央区)、製造現場の大阪工場(西成区)を視察したが、改めて部品点数の多さ、取引先中小企業の裾野の広がりに驚かされた。当日は、吉川秀隆社長から直接説明を受けたが、鋳物工場から理美容椅子の製造、そして歯科診療用機器、さらには美容分野(エステやネイル)への進出と、次々に新たなビジネス分野を見いだして進化を遂げる「しなやかさ」に感銘を受けた。常に自社の若さを保つ秘訣を知っている企業だ。

      訪問記録 2012年8月10日 タカラベルモント

○こうした心意気をもって、モノづくりや自社経営を長年続けている経営者の方が他にも数多くいらっしゃるのは間違いない。支援の輪を広げて大阪全体で支えていくことが肝要だ。税制面での政府への要望、資金面で金融機関への橋渡し、また販路拡大のための海外展開支援や売り手と買い手とのマッチングなど、力を結集して「つなぐ」ということに力を入れてきた大阪商工会議所であるが、グローバル経済の急激な進展の中で、医療機器開発をはじめとして課題解決型の新しい成長産業を創り出すということも重要な業務となっている。そう思うとまた現場に足を運ぶ気持ちになってくる。元気で底力のある中堅中小企業がたくさん大阪経済を支えて下さっていることを知れば知るほど勇気づけられる。さて、来週は・・・・・・。