佐藤会頭の眼~講演録
Chairman’s Eye with you

2014年9月4日(木) 国際観光文化フォーラムin京都

「USJが示すこと」

 もう一つUSJとは別の事例を紹介いたします。海遊館であります。世界最大級のスケールを誇る水族館で、80種類、約3万点もの生き物を飼育しております。これまでは持てるポテンシャルに無関心でありましたが、昨今外国人観光客に人気があります。

 世界最大の旅行口コミサイト、トリップアドバイザーが昨秋発表した外国人が“クール”と評した日本の観光スポット20を見ても東京の原宿竹下通りに次ぐ2位にランクしております。

 さらに、同じくトリップアドバイザーが8月上旬に発表したアジアの水族館ランキングではなんと1位、世界のランキングで13位となりました。世界中のお客様から高い評価を得ております。

 人気の秘密はどこにあるのか。最初に思い浮かびますのが、やはり海遊館の水槽の大きさで、最大の長さが34メートル、深さが9メートル。このサイズの水槽はそうはありません。また、海遊館には人気の動物たちがたくさんおります。ジンベエザメは海遊館の顔であります。この7月に2頭が相次いで亡くなり、その間は右のワモンアザラシが代役を務めましたが、やはり観光客の間ではジンベエザメが見られないことを残念がる方が多かったそうです。しかし8月25日には新たに4代目遊ちゃんが登場し、お客様のご期待に応えております。他にも人気者がおります。カマイルカは8月23日に赤ちゃんを出産しました。今行くと水槽内を2頭で泳ぐ様子を見ることができます。

 また、8月16日に北海道で捕獲されたマンボウは全長4メートル重さ1トンもあったそうです。そんな大きな体になるマンボウですが、泳ぎは得意でありません。水槽に入れると、ガラスにぶつかって弱りますので、衝突防止のため網で覆って展示しています。

 人気者がたくさんいる海遊館ですが2013年に、新・体感エリアがオープンし、サメやエイに直接手で触れることもできるようになりました。スタッフの方が海遊館に足りないのは何かと考えた結果、体験型エリアの創設に至ったそうです。

 しかし、何といっても海遊館活況の最大の理由は、知恵を絞りアイデアをひねり出して、コストを極力抑えた従業員手作りの企画を実施している、そこにあるのではないかと思います。

 例えば、夜の海遊館。17時以降は水槽の照明を青色に変えて演出しています。17時以降に行けば、いつもと違う夜の海に会えるわけです。生き物たちもゆっくり動いています。海遊館のスタッフのオリジナルワークブックもあります。クイズ形式、スタンプ形式で楽しみながら見学を促します。このように海遊館に行けば何かやっている、楽しい時間を過ごせるというワクワク感をお客様に抱かせ、その期待にお応えできているからではないでしょうか。それは来館者の6割がリピーターであると言われることでも証明されると思います。他にも海遊館おとまりスクール、ラッコの誕生会、水槽の前でヨガを楽しむイベントなど、スタッフの手作り感あふれた温かい仕掛けが施されています。