佐藤会頭の眼~講演録
Chairman’s Eye with you

2014年9月4日(木) 国際観光文化フォーラムin京都

「USJが示すこと」

  関西がUSJ特需に沸いております。つい数日前に発表されたUSJの8月の入場者数は単月で過去最高を更新したということでありました。TVやマスコミでも連日のようにUSJが取り上げられています。本日は「USJが示すこと」というテーマでお話ししたいと思います。

image001.png

















観光局は7月の訪日外国人数は、前年同月比26.6%増の127万9700人、単月として過去最高を記録しました。

image002.png

















 これは、年間の推移となります。2011年は622万人、2012年は836万人、2013年は1,036万人で推移しています。本年は1,200万人以上になるのではないでしょうか。政府は、2030年には3,000万人を目指すという目標を設定しております。

image003.png


















 次に2012年の入国旅行者ランキングを見ます。
外国人観光客は世界ランキング33位、アジアでは8位です。日本は豊富な観光資源に恵まれ、治安の良い国ですが、その割には、大変低いランクです。一方で、海外に出かける日本人は、世界ランキング11位、アジア2位となっており、入国旅行者ランキングに比べて、上位にあります。どんどん海外に出かけ、旅の魅力を知っているのに、自国の魅力を売り込めていないということがわかります。

image004.png

















 最後に、一番大きな問題、少子高齢化の問題です。まず上のグラフ、総人口の推移を見ますと、2004年には日本の総人口がピーク1億2700万人。それからずっと右肩下がりになっています。それよりも大変なのは、15歳から64歳の生産年齢人口の推移であります。総人口がピークを迎える前から右肩下がりになっています。働き手が段々少なくなっている、これが一番厄介な問題であります。

image005.png

















 世界の主要国と比較してみます。主要国の年齢3区分人口の割合であります。総人口に占める生産年齢人口の割合で見ますと、63.6%と他の主要国と比べても最も低い割合、一方老年人口は23.3%と最も高い割合を示しております。少子高齢化社会の進展が他国と比べても進んでいることが一目瞭然であります。この現状を頭に入れどうするか、ということを考えておかなければいけません。しかし、われわれ悩んでばかりはいられません。私たちが直面している問題というのは、避けられない現実だと認識すれば克服する道は描けます。少子高齢化社会という前提に立てば、策を講じることができるからです。

image006.png

















 国民1人当たりの1年間の消費額と、外国人観光客の日本での1人当たり消費額から、国民1人の減少は、外国人旅行者11人に相当するという計算があります。これだけ明確な目標となるものはないと思います。人口が1人減るならば、外国人旅行者を11人増やせばよいのです。人口の減少に見合う外国人旅行者数を目標設定すれば、人口減少社会到来の現実を直視しながら、目標値達成のアクションを積極的に行なうことができます。インバウンドの増加に必死になればよいのです。

 しかし、現実のインバウンド政策はどうなっているでしょうか。6年前に政府は「観光立国日本」のビジョンを打ち出し観光庁を設立しました。しかし、外国人旅行者数増加への具体的な取り組みが目に見える形で実行されておらず、成果が出ているようにも思えません。たとえば関西国際空港の役割について考えますと、2016年目標として国全体で年間1800万人のインバウンド客数の目標数値があるのですから、そのうち関西国際空港の役割分担は900万人だとか800万人であるというめざすべき数字が示されるべきであります。魅力ある観光地がたくさんある関西でありますから、これら経営資源を組み合わせれば、多数のインバウンド呼び込み策を打つことができます。もちろん各県では、努力していますが、個別に努力すればするほど総合力には結びつきにくいものであります。
 その反省から日本海文化をキーワードにして、行政区域をまたがる日本海ルートの魅力を中国にアピールして好評を博している民間の取組み事例があります。国はこうした取組みを支援することからでもよいから、観光立国日本の司令塔として中枢の役割を果し、観光立国への本格的なアクションを始めてもらいたいものです。

 そのように考えていましたところ、先月、国交省は、地方の観光地を訪れる外国人旅行者を増やすため、地方空港を利用して複数の都道府県を訪問する「広域観光周遊ルート」を創設することを決めました。訪日客が地方空港を使って日本に入り、6泊以上滞在して複数の都道府県を訪問することを想定しています。地方へ外国人観光客を呼び込む施策であります。ただ、1800万人達成目標の2016年は2年後に迫っています。1800万人という数値がふさわしいものかどうか。多彩で豊富な観光資源を有し、24時間営業の関西国際空港がある関西にいるからかもしれませんが、少し控え目な数字にも思えます。政府は逆ピラミッド型日本の行く末を真剣に考えてほしい。そしてその主役には観光を置いてほしいと思います。