佐藤会頭の眼~講演録
Chairman’s Eye with you

2014年(平成26年)7月14日(月) 平成26年度大阪大学先端教養科目「関西は今」での講演 

「覚めよ、有為の青年よ」

2014.7.14 阪大_ページ_3.jpg「昭和38年11月 毎日新聞への投書」 オリンピックの話に戻ります。昭和の東京オリンピック当時、私は学生でしたが、母校のボート部は強豪チームで、オリンピック出場の可能性があり、私の青春はオリンピックだったわけです。 ところが高度成長時代の日本でしたから、勝つということが前提だったわけです。そこで日本漕艇協会は練習環境から考え、関東の大学だけで選抜クルーを編成すると発表しました。関西にも同志社などボートが強くて優秀な選手がいるにも関わらずです。こんなことがアマチュアスポーツの世界で許されることかと新聞の投書欄を通じて抗議をしました。すると、抗議の声に押され、一度関東のチームに挑戦させてやるということになりました。残念ながら、選び抜かれ、猛練習に明け暮れた選抜クルーは仕上がっていて、挑戦した地方クルーはまさに打ち砕かれたわけであります。

 この話から申し上げたいことは、東京が国の中心で、地方は東京に挑戦するだけの構図が1964年当時から全く変わっていないのではないかとういことであります。

 ご承知のロンドンオリンピックはスポーツの祭典でありましたが、文化の祭典でもあったわけです。元々オリンピックはスポーツだけでなく文化事業も併催しています。ロンドンオリンピックのときには、エディンバラを代表格としてロンドン以外の各地でスポーツ祭典の前後に文化催事が開催され、オリンピックが終わった今も大勢のインバウンド客が訪れているとのことです。

 これを2020年の東京オリンピックでも見習って、成熟した先進国のオリンピックとすべきだと考えています。下村オリンピック担当大臣は、2020年のオリンピックは東京だけのものではなく、日本のオリンピックであると言っています。競技は東京で行うが、その賑わいは関西をはじめ日本全国に派生させたいというお考えです。2020年の日本は、昭和のオリンピックの頃のような成長国家ではなく、成熟国家です。いかに先進国として、成熟国家としての姿を世界の人たちに示せるかということが問われていると思います。