佐藤会頭の眼~講演録
Chairman’s Eye with you

2014年4月7日(月) 京都大学法学部入学式における講演会

「自国の文化を語れる若者たれ」

CIMG7952.JPG「講演会前には京都大学大学院法学研究科の松岡久和教授(右)と懇談を行った。」 2020年、東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。1964年に開催された東京オリンピックとどう違うか、皆さんは考えたことがありますか。

 1964年のオリンピックは、全国民が自分のこととして沸き返ったものです。高度経済成長の時代でしたから、伸びゆく日本と自分の人生を重ね合わせたのでした。京大ボート部も奮い立ちました。まだ大学の中ではA級の強豪でしたから、オリンピック出場は夢ではありませんでした。私も京大ボートの一員でしたから、青春の夢を膨らませたものです。

 では、今度のオリンピックはどうでしょうか。東京という名前が付いているのは同じですが、国民は東京の一極集中がますます進む、と醒めた目で見ているのではないでしょうか。日本は高度経済成長から低成長の時代に移行し、国民は自らの人生をオリンピックに重ね合わせることができないでいます。思えば、これまでオリンピックは勃興国の国威発揚の象徴でした。ところが、今度の東京オリンピックは成熟国家・日本での開催となります。ここに、大きな違いがあるということです。

 成熟国家ならではオリンピックを日本は開催すべきだと思います。その先例は先のロンドンオリンピック・パラリンピックです。スポーツの祭典であると共に、文化の祭典でありました。英国本土各地で文化の掘り起こしがなされ、それぞれ個性的な文化の華が開き、世界中から人がやってきました。カルチュラルオリンピヤードと言いますが、オリンピック開催の3年ほど前から、そしてオリンピックが終わった現在も文化の力で英国のインバウンドは右肩上がりということです。

 日本もこれに習おうとしております。3月1日、下村博文文部科学大臣が大阪に来られ、東京オリンピックと東京の名前が付いているのが、日本のオリンピックです、と話されました。私は、関西は文化の宝庫、関西がお役に立ちたい、と応じました。

 大臣はさらにこう言いました。2017年、スポーツ文化版ダボス会議を日本で開催してはどうか、とダボス会議の会長から提案があるが、関西で開催してはどうだろうか。こうした一連の動きが示しているように、どうやら成熟国家・日本の今後は文化がキーワードになりそうです。2020年のオリンピック、その前の年にはラグビーワールドカップ、オリンピックの翌年は関西で、ワールドマスターズゲイムズと3年連続して日本で世界的なスポーツの祭典です。若い皆さんは、否が応でもスポーツと文化の祭典に直面することになります。

 皆さんは伝統ある京都大学法学部の学生ですが、放牧の中で、どうか文化にも関心を持ってもらいたいと思います。世界から多くの人をお迎えするのですから、日本の文化の真髄を語れる日本人になってもらいたいと思います。和魂漢才、和魂洋才。和の心を忘れないで外国と交流して文化を融合してきた先人に学ばねばなりません。和の心、和の文化を体現したサムライがニューヨーク子に感動を与えたことを忘れないでもらいたいと思います。