佐藤会頭の眼~講演録
Chairman’s Eye with you

2014年4月7日(月) 京都大学法学部入学式における講演会

「自国の文化を語れる若者たれ」

CIMG7940.JPGCIMG7940.JPG「4月4日に懇談を行った大谷大学文学部教授で前大阪大学総長の鷲田清一氏(右)」 先週金曜日、本学文学部出身で現在大谷大学教授、その前は大阪大学総長だった鷲田清一さんと懇談いたしました。食事をしながら、文化について懇談したのですが、もっぱら私は聞き役で、先生の含蓄あるお話を引き出すだけでしたが、鷲田先生は京都大学の特徴というか、京大の良さについて、こう言われました。それは、何だと思いますか。

 先生は、京都大学の良さは「放牧」にある、と上手い表現で端的に言いました。「放牧」、放し飼いですね。でも哲学者の先生のことですから、言葉は簡単でも意味深なのです。放牧と言ったって、好き放題に草を食んだり、サボっていたりしての自由放任のことではなさそうです。ここは京都大学です。放牧とは放し飼いの意味ですが、牛小屋や馬小屋につながれていない、という意味もあります。それは束縛から解放されているということです。権威、権力に縛られない、離れているのが、京都大学たる所以だと理解したいものです。

 でも放牧という自由は、自分で始末しなければなりません。京大生は卒業してからも権威、権力への批判精神を強く持っているように思われますが、批判するだけでは力になりません。既存の権威、権力に束縛されずリアリティーを持って、組織を引っ張って行くリーダーでなければなりません。京大生はどうも、その辺りが弱い。京大生は卒業してから真価が問われるわけです。

 鷲田先生はもう一つ、皆さんの参考になることを言われました。それは、「風」です。京大教授風とかいう場合の風です。大学生時代は短い時間なので、学問を学んでも学び終えることは出来ないことを念頭に言っておられるのですが、皆さんは法学部ですから、皆さんならではの京都大学法学部風を学ぶことが大切、ということです。法学部らしさとか法学部の趣とかを学ぶことが、どれほどその後の人生を実りあるものにしているか、私も実感いたしております。京都大学法学部ならではの「風」を是非、感じ取ってもらいたいと思います。