佐藤会頭の眼~講演録
Chairman’s Eye with you

2014年1月28日(火)  平成25年CITEサロン第3回大阪都市格研究会 大阪まちなか・背骨の品格  

「千客万来都市OSAKAをつくろう」

CIMG6889.JPG 次に香港の事例をご紹介しましょう。1月中旬に香港に行ってきましたが、そこで香港貿易発展局と大阪商工会議所の間でMOUを結んで参りました。香港すごいですね。4年前にお会いしたマーガレット・フォン副総裁に「どうして香港に人が集まるのですか。」とお尋ねしますと、「人が集まるから人が集まるのです。」とこう言うのですね。当たり前のように聞こえますが実に奥深い言葉でして、「人を集める仕掛けを作っているからこそ人が集まる」ということなのですね。ここの人を集める仕掛けづくりに目をつぶってインバウンドの勧誘をやっても意味がないわけですね。それで、このMOUも結んだあとほったらかしなものになりがちですから、今回は実行のための検討会を作ろうという一条項を入れてもらいました。我々は香港に学びながらこれを推進していきたいと考えております。

 次に香港の凄さをご紹介しておきましょう。関空から香港までは4時間半ぐらいなのですが、先日香港に向けて関空を出発する時、訪日外国人客が1,000万人突破と垂れ幕が掲げられてありました。ところが香港ではインバウンドで毎年4,800万人の方が訪れると聞いて、以後は1,000万人で喜んでいるのが馬鹿らしくなって言うのを止めました。もう一つアベノハルカスが今年オープンし、展望フロアが60階で、淡路島まで見渡せますよと宣伝していて、ふと横を見ますと高いビルがあり、あれは何階建ですかとお聞きすると118階建てのビルですと。これも2度と言えなくなりました。香港はこのように凄いところで、われわれも狭い中で満足してはいけないのだと学んだわけであります。

CIMG6890.JPG 香港に着いた日にキャセイ・パシフック航空を訪問し次期COO(3月に就任)とお会いしました。キャセイ航空では現在1日4便の直行便を関空に運航して頂いていますが、我々が訪問するぞと言っておりますと、2月から1便増えて1日5便体制になることが最近発表されました。我々は御礼を申し上げると同時に、これでも足りないよ、ハリー・ポッターのテーマパークがUSJでこの夏にスタートしますからと宣伝しました。香港からの観光客ですが、当社のUSJ前のホテルでも台湾、韓国に次ぐ3番目に多い宿泊者になっています。ハリー・ポッターが始まると香港からのお客様が1日5便でも足りなくなるので、さらにもう1便増やしてほしいとお願いしました。併せて関空経由の北米便をお願いしますとお話ししましたら「わかりました。真剣に検討しましょう。」という答えでした。本当に香港は元気ですね。機を見るに敏でありますから真剣に考えて頂けるでしょう。

 それともう一つ都市格との関連でありますが、香港にある関西の出先事務所は兵庫県だけなのですが、その事務所では係員3名と少数ですが大変一生懸命頑張っておられます。その生の声を聞かせて頂きましたらこれで良いのかと思ったものですから、先般関西広域連合の会合がありましたので、会議の折に切実な声をお届けしました。

 どういうことかと言いますと、兵庫県では神戸牛を一生懸命売り込んでいるのです。ところが現地で入った香港の和食のお店で一切神戸牛は出てきません。我々は神戸牛や近江牛というとブランドが良く売れていると思っているのですが、決してそうではない、まさにブランドに寄りかっていては駄目だと思う訳です。なぜ売れていないのか、浸透していないのか、香港の和牛ブームのなかで売れているのはどこだと皆様お思いでしょうか。実は現地では佐賀牛ばっかりなのです。なぜでしょうか。これは都市格を考える上で絶好の議論の材料だと思いますので少しお話します。

 まずブランドを紹介する試食会を開催すると神戸牛はいける、さすが近江牛となります。でもこれで終わってしまっては駄目。皆さん、神戸牛は供給量が少ないというのは自覚しておられます。そこで、畜産農家を説得するのは大変なのだと思いますが、こうした畜産農家を増やしていく努力をしなければならないわけです。そのような努力がまだなされていない、供給が追い付かないという自覚はあるわけですが、でも生産体制をちゃんとしようという所まではいってないわけです。

CIMG6891.JPG それから関空からキャセイ航空の午前中の貨物便で新鮮な食材を送ると夕方のレストランには間に合いますと必ず関空会社などもPRするわけですが、あとは実際のデリバリーがどうなるのか、香港に着いてからお店に届くまでのデリバリーの体制が完璧でないと、中間がしっかりしていても駄目なわけですね。あるいはまた輸出入の検査体制の窓口ですが、これも関西にはありません。佐賀牛の場合はJA鹿児島が一手に引き受けているわけですね。そういった問題が関西にはあって、ブランドはあってもブランド力を発揮できないという実態を大変勉強させて頂いたわけであります。

 そこで、関西広域連合の会合で先ほどのお話をご披露させて頂きました。兵庫県の事務所が折角香港にあるわけですから関西広域連合としてみんなで力を合わせてやっていこうと申しあげたわけです。そうしたところ井戸連合長からは、関西総がかりで広域連合の力で兵庫県香港事務所を核にしてやっていきましょうとお話頂きました。

 もう一つ香港の凄さですが、英国のイートン校に並ぶインターナショナルスクールのハロウ校にも行ってきました。チャーチルなどを輩出した英国の有名私学が香港に進出しております。他にも北京やタイなどに学校がありますが、次は上海進出だそうです。そこで次はぜひ大阪にも進出して欲しいということでお訪ねしたわけです。ハロウ校は、2歳から18歳までの子弟の教育を行っています。視察しておりますと頭だけでなく体育の授業をしっかりやっています。体育の授業を重視しながら人材を育てる、こうした息の長い取り組みも必要でしょう。