佐藤会頭の眼~講演録
Chairman’s Eye with you

平成26年1月24日(金)  一般社団法人 近畿化学協会 平成26年新春セミナー

「魅力ある関西の文化戦略」

CIMG6518.JPG「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン内を視察する佐藤会頭」 それはユニバーサル・スタジオ・ジャパンであります。すごいですね。昨年の年間入場者数が1000万人を超えたそうであります。また今年夏頃ハリーポッターのテーマパークがオープンいたします。これも物凄い力を発揮するのではないかと思います。現在も海外から台湾、韓国、香港、シンガポール、タイ、インドネシアなどアジアの国々から多くの観光客をお迎えしていますが、さらに加速するのではないでしょうか。大阪の今年の観光の超目玉、それがUSJのハリーポッターであります。

 これに備えて、先般香港を訪問した際にキャセイ航空に増便のお願いにいったわけであります。現在1日4便でありますが、来月から香港・関空路線が1便増えて5便となります。本社訪問は、結果的にお礼ということになったわけですが、ハリーポッターが始まるとまだ需要に応じられないことなりそうなので、更なる1便の増便と、関空経由での北米(ロス)への就航をお願いいたしました。前向きに考えましょうとのことでした。現在一番元気がいいのは香港であり、キャセイ航空かもしれませんね。

 ここでUSJはなぜ、好調なのか。おもてなしの点からお話ししてみたいのですが、おそらく、次々とイベントを仕掛けるからだ、という答えが多いのではないでしょうか。USJが大人気を保っている秘密を読み解くカギは、やはり木村尚三郎先生の「耕す文化の時代」にあります。USJには、耕して耕して作り上げ、スタッフ全員が共有しているUSJならではの価値観、行動様式があります。つまり、これを文化と定義付けたいのですが、このことについて少し申しあげたいと思っております。

 USJに一歩足を踏み入れますと、現実を忘れる環境、夢の世界であります。人の目を気にすることなく、コスプレやキャラクターの衣装を身にまとい堂々と溶け込んでいける、それは、夢の世界、非日常の世界を作り上げているわけです。

 ですから、USJは非日常の世界を提供、それがUSJの大人気の秘密だ、と分析しても良いのですが、これではUSJの文化戦略の上っ面の分析に過ぎません。ではUSJはどうやって非日常の世界を作り上げているのか、これを申しあげておきたいと思います。

 どういうことかと言いますと、USJの閉園時間についてお話しをしたいと思います。残念ながら、当社の枚方パーク(ひらパー)なら、閉演時間がくると蛍の光の音楽を流して早く帰って下さいとサインを送っているわけです。普通のところならどこでもやっているのだと思います。飲食店でもひどいところだと、閉店時間が近づくとお客をほっておいて従業員が帰る支度を始めるところもありますね。こんなことをしては、おもてなしにならないわけです。

 USJは違います。蛍の光の音楽を園内に流すようなことはしておりません。それではどうやってゆるやかに現実の世界に戻しているのでしょうか。アベックがベンチに座っているとします。閉園時間を気にすることなく、夢の世界、二人だけの世界にどっぷりと浸かっています。ではどうやって閉園に気付いていただくか。二人のスタッフがベンチに少しずつ近付いていって、無言のまま、ライトを下に向けて点けたまま、じっと待っています。本人たちが気付くまで待っているのです。閉演時間が来たから、はい終わりというわけではないのです。現実の時間にすぐに戻させない、USJはこうした細かいことができるので結局成功しているのではないでしょうか。