佐藤会頭の眼~講演録
Chairman’s Eye with you

2013年(平成25年)9月12日(木)

第55回中小企業団体大阪大会

 それで、平成13年私は社長になりましたが、この時が一番厳しかったですね。(映像)今日は恥を晒して会社の事を申し上げておりますけど、(これは)京阪電車の当期純利益の推移となります。単体グループ会社(数)は、平成8年ごろは90社近くありました。それで私が社長になった時、再編成したり事業を止めたりして半分くらいに減らしました。そうしないと会社が立ち行かなくなったわけですが、ご覧の通り平成8年、つまり平成7年に運賃改定がありましたから、単体鉄道会社はこんな数字が出ております。それから運賃改定がありませんから減っているのですね。この10年度はちょっと特別な事情で当期利益は増えているわけですが、大体右肩下がりです。私が社長になったのはこんな状態が続いていた時で、私は社長を受けるに当って、もうこんなビジネスモデルをやめようと決意をしたわけです。と同時に、皆様ご承知のように時価会計制度が取り入れられましたから、含み損を全部出さないといけないとなり、(我が社でも)先送りしてきたわけですが、もうこれは一挙に(膿を)出そうということでこんな赤字になったのですね。単体連結、こんな赤字ですよ。社長に就任した当時、既に株主総会で平成13年度の配当は5円配当をお約束しておりました。しかし中間段階で見送りまして、通期になりまして無配を決意いたしました。その時に日経新聞夕刊「京阪電鉄無配転落」と大きな活字が躍っていたことを今でも覚えています。

2013.9.12中小企業団体中央会 _ページ_04.jpg「旅客数の推移」

 これから大変な苦難の歴史が始まったのですが、一度こういうふうにチャラにしないと新しいスタートは出来ないという事で一大決心をしたわけであります。こういう試練の時に経営者というのは大変辛いわけです。先ほど言いましたように、運賃値上げ依存、不動産の含み益依存に慣れていますから、なかなか転換できない。どうすれば良いかということなのですが、私の場合とったのはまず、自分の給料を40パーセント減らしまして、それから普通社員を集めてミーティングとかをやるのですが、ところがミーティングをやってもなかなか時間がない。それではもう間に合わないと言うので、もう単騎先行型ですね。信長に自分を重ねるわけではありませんが、信長は桶狭間の時、単騎先行です。評議を重ねて皆いい加減なことを言って結論が出ないから、信長は単騎先行で桶狭間に駆けつけたんですね。従う者はついてくるということでありまして、私もそのやり方をしたわけであります。


海軍にも同じような考え方がありまして運動一旗。「1つの旗に続け」、「司令官のあとに続け」という意味ですが、それと同じです。いざ決戦のときはやはりトップが自ら率先して打開に動かないと物事は進まないということであります。皆集まって小田原評定をしたって何もならないのです。その場合皆がついてきてくれるかどうか、ここが大切なのですね、それが難しい。それで私がとったやり方は、毎週、現場に行きまして、現場に行っても今から行くということは一切言わずに不意打ちで現場に行って、それから現状把握してその次の週、社長のホームページで書くのですね、厳しい書き方もしています。あるいは良い場合は無茶苦茶褒めたりしながら、毎週自分でおれはこう思うと原稿を書いて意識改革に努めてきたわけであります。そうしないと、単騎先行でも誰もついてこなくて、自分だけ走っていて後ろ振り向いたら誰もいないと、こんな怖いことはありません。いかに皆さん一緒になってついてくれるかと一生懸命考えたわけであります。それで何とか回復してこんな結果が出たわけでありますが、ここで申し上げたいのは、先ほど言いましたように古いビジネスモデルにしがみついてはダメだ、私どもの会社は今百年を超えておりますが、古ければ古いほど垢がついていまして、前はこんなことをやっていたと前例踏襲主義になるのです。この前例踏襲主義、これを如何に打破するかということが大切であります。