佐藤会頭の眼~講演録
Chairman’s Eye with you

2013年(平成25年)9月12日(木)

第55回中小企業団体大阪大会

 本日は私の社長時代、あるいは取締役会議長の時の経験をお話しいたしまして、ご参考になるものは拾って頂いて、ならないものはそのままにして頂きたいと思いますが、「何もしない」ということは一番良くないことなのですね。何か動いて打開していくという事をしないと世の中動かない、とまず これを申し上げたいのです。

 実は私、社長になったのは平成13年6月なのですが、役員になったのは平成7年6月でした。平成7年というのは私鉄業界にとって最後の良い時でした。どうしてかと言いますと運賃の値上げ、これは(それまで)過去2、3年に1度あったのですが、ところが平成7年の運賃改定を最後に今日まで1回も運賃改定がないのです。私鉄経営というのはご承知でしょうけど「運賃値上依存型経営」です。そしてまた、日本の経済は右肩上がりで、土地の値段が上がっていきますから、含み益が出ます。ですから、「含み益依存型経営」でもあります。これが私鉄のビジネスモデルなのです。運賃値上げ、不動産の含み益依存、これら2つが大きな私鉄経営を支えた成長のモデルだったのです。ところが平成7年を最後にそれらがなくなって、運賃の値上げが1回もありませんから大変な時代になったわけです。それと同時にデフレ、バブルが弾けて土地の値段、含み益どころか含み損が一杯でるようになったのですね。こういうときに私は社長になったわけであります。

2013.9.12中小企業団体中央会 _ページ_02.jpg「少子高齢化・人口減少」

 皆様方もこれから是非認識して頂きたい一番大きな問題、それはいわゆる少子高齢化の問題です。ちょっとグラフを見てみましょう。(グラフ)平成2年には日本の総人口がピークなのです。大阪でいえば花博があった頃だと思うのですが、それからご覧のように右肩下がり、これが今後の日本の将来を左右する非常に大きな問題であるということです。それよりも大変なのは、この生産年齢の人口、もう既に総人口がピークを迎える前から右肩下がりなのです。働き手が段々少なくなっている、これが日本の今後ずっと続く構造的な一番厄介な問題であります。これをまず我々はしっかりと頭に中に入れてどうするか、ということをいつも考えておかないといけないことであります。

 次は(映像)私鉄のお客さんの数です。京阪鉄道では、定期(券)のお客さんが右肩上がりでずっと続いているのですが、平成2年花博(の時期)をピークに傾向としては右肩下がりなのです。定期外は観光路線でありますから横ばいですが、生産年齢である働き手が少なくなっているのが続いているわけですから、定期(券)のお客さんが減っているという事であります。しかも東京に本社を移す企業が出てきますし、企業も厳しいですから工場を縮小、あるいは閉鎖するという事で通勤のお客さんが減ってくる。ですから私鉄の乗降人員を見れば関西、あるいは日本の今置かれている状況というのはすぐわかるのです。私ども鉄道業界は、こういう厳しい状況というのを一番早くわかっていたのですが、先ほども言いましたように含み益依存、運賃値上依存、このビジネスモデルをずっと続けてきたわけですから中々転換できないのです。運賃改定、またすぐあるだろうとこんな甘い考えで経営をしてきたわけであります。