佐藤会頭の眼~講演録
Chairman’s Eye with you

2012年(平成24年)10月31日(水) 関西・経営と心の会 講演

「大阪のまちづくりのあり方」

経営と心の会111_ページ_03.jpgくずはモール街(1972年開業)(クリックで拡大表示) 日本最初のオープンモールとして華々しくデビューしたくずはモールも同じであります。施設は老朽化し、マーチャンダイジングも時代とはかけ離れていき、陳腐化していきます。それは、商圏の縮小となって現れます。当初は少なくとも2、3キロメートルはあった商圏は500メートルに縮小。でも、ローズタウンには幾つものスーパーマーケットがあり、マイカーを利用すれば何でも揃っている総合スーパーに行けますから、居住者にとって生活の不便はありません。

 平成16年1月、くずはモールは営業を終了します。くずはモールの大リニューアルが始まったのであります。それまで、僅かの増設はありましたが、本格的な更新は一度も成されませんでした。何度かリニューアル計画が机上に上がりましたが、着手に至りませんでした。何故、計画は頓挫したのか。幾つかの理由はありますが、一つだけ申しますと、大リニューアルしなくても、利益が出ていたからであります。モールの担当セクションはビル経営部と言うところでした。特に努力せずともテナントからは賃料が入ってきます。こんな良い商売はない訳です。テナントさんも、利益が十分に出ていたことでしょう。施設もマーチャンダイズのソフトも陳腐化しているのに大家も店子も儲けている。利益を得てない不幸な人は住民であります。

 私は役員になる前、流通部門にいました。流通と言っても、スーパーマーケットの部長ですが、自分で志願しました。当時は経理とか労務、鉄道が中枢であり、流通は随分下に見られておりました。本社部門に居ると世間知らずの空理空論、頭でっかちの机上の計算とかで私は窒息死しそうでしたから、大根一本売って幾らの利益をあげることの大切さを学びたい、顧客ニーズを把握したい、とかとにかく現場に出てみたかったのであります。何を考えている、と人事担当役員から反対されましたが、意に介すことはありませんでした。

 その後、私は流通初の役員となり、平成13年、流通初の社長になりました。僅かの期間の流通畑でありましたが、その経験は私の貴重な財産であり、今もせっせと商店街を歩き、街を見る観察眼を磨いております。

 くずはモールのリニューアルは社長就任の3年目ですが、建築、設計、マーチャンダイジングなど関係者と随分研究しました。口では言えない色々な困難を克服してのリニューアルでしたから、私のサラリーマン生活の中では5本の指に入る思い出になっております。

 私の履歴書みたいな話はこれくらいにして、場格としてのくずはモールについてお話しします。くずはモールの新旧比較表をご覧下さい。売上高、面積など比較しておりますが、時価利回り(時価を考慮した総投資額利回り)の違いにご注目いただきたいと思います。旧いモールでは4.3%ですが、リニューアル後は10.6%と約2.5倍に向上しております。これは何を意味するか。そこが重要です。
旧いモールの時代では、固定賃料収入だけで満足していました。ビル経営部の時代です。大家稼業で満足しておりますから、利回りの意識はありません。もしあったとしても、簿価での利回りでしょう。地主ですから、土地は安い。安い土地で商売するのですから、当然利益は上がります。

 時価を克服して利益を計上する。10.6%ですから、新くずはモールは結果を出しております。その土地に見合った商売をしている訳であります。どうして、それが可能になっているのか。そこが大切であります。

 新モールは約170店のテナントさんが入っております。各テナントさんは競い合って商売をしておりますが、その競い合い方は如何にお客様のニーズを掴むかという競争であります。日々がお客様との戦いでありましょう。お客様から満足をいただけなくなった時、そのテナントは敗退であります。段々、商圏は拡がってきました。リニューアルオープンの時、7キロメートル位でしたが、現在は11,12キロと拡大いたしております。

 私は、このことを場の格が上がったと言っております。場格向上であります。
経営と心の会111_ページ_05.jpgKUZUHA MALLリニューアル(2005年)(クリックで拡大表示)