佐藤会頭の眼~講演録
Chairman’s Eye with you

2012年(平成24年)10月1日(月) 大阪経済大学80周年記念講演

「大阪を元気にするために」

 このように、国内外から人が集まり、商談も活発な大阪ですが、心して掛からなければなりません。先月、アメリカに行ってきました。若い頃から海外と言うと、私は東南アジア専門で、ニューヨークは僅か3回目です。新関空会社の福島会長とチャイナエアの台北ー関空ーニューヨーク便の継続と増便をチャイナエアニューヨーク支店に行ってお願いしてきたのですが、初めてニューヨークに行った1989年当時、そして十数年前に行った時のようなワクワクした感動はありませんでした。

 アトランタにあるデルタ本社にも新規路線開設と、シアトル-関空便の冬季のディリー化をお願いしてきました。アトランタやシアトルの都市の魅力は感じましたが、やはりワクワク感がない。若い頃と違って私の感受性に問題があるのだろうと思うのですが、今後のために帰国して調べましたところ、日本人のアメリカツアーは減少しているようでした。

 USJは大阪にありディズニーランドは関東にあるように、私達はアメリカの文化を既に日常体験的に身近な所で享受してしまっているので、アメリカに行っても、旅の魅力である非日常とか異文化の感覚を感じることがないために行かなくなったのであるまいか、と思った次第であります。

 ニューヨークと同じようにセカセカした賑やかな大阪ですが、先程ご紹介したように日本海文化圏の魅力を評価してくれている人達の中に、中国の料理界の友人達がいて、年に3、4回大阪にやってきます。

 日本のおもてなしの文化を高く評価していて、日本の料理の提供の仕方に真底感服していて、せっせと吸収しております。その学ぶスピードが速い。良いと思えば、すぐ本国に帰って自分の店で導入します。7月に中国に行った時、料理界の友人達は見てくれと言わんばかりに自分の経営する店で歓待してくれるのですが、ロブスターの活け造りが出ました。日本風の盛り付けです。鉄板焼きもありました。給仕も日本と同じく丁寧ですから、ここが中国とはとても思えませんでした。人件費が高くなって、道具屋筋で優れた日本の厨房関連機器を買ってくれるのは有難いのですが、やがて、日本から学ぶ技術、ノウハウはなくなるのではないでしょうか。

 その時がコワイ。アメリカ症候群です。料理界の事例を出しましたが、他の分野でも同じように日本の魅力が無くなった時、もう日本に行っても面白くない、大阪に行っても刺激を受けるものがない、となれば、インバウンドは先細りです。