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(以下の記載は、平成10年度末現在の内容のため、現在では終了している事業があります)

戦後の大阪商工会議所(3)-2
昭和54年〜平成10年

Chapter:2 中小企業の活力増進

 中小企業をとりまく環境は、国内外ともに大きく変貌し、厳しさを増している。目立った動きだけでも、日進月歩の技術革新の波、アジアをはじめとする各国の追い上げとわが国製造業の海外進出の活発化、インターネットや衛星放送の普及など情報化の進展、地球的規模での環境間題への関心の高まり、規制緩和と新産業・新企業の誕生への期待などがあげられる。本会議所では、中小企業が次々と押し寄せる変革の波に対応し、活力の維持・増進がはかられるよう、技術の振興をはじめ、情報化への対応支援、人材の確保・育成、ベンチャービジネスの育成、新事業・新分野進出の支援、環境問題への取り組み、小規模企業の振興など多様な活動を展開してきた。

■目次
  1. 技術の振興

  2. 情報化への対応支援

  3. 人材の確保・育成

  4. 新規企業・ベンチャービジネス支援

  5. 新事業・新分野進出の支援

  6. 環境問題への取り組み

  7. 流通業の振興

  8. 小規模企業の振興


1 - 技術の振興

●テクノ・カレッジの開講

 企業、とりわけ中小企業にとって、急速に進展する技術進歩に的確に対応し、製品開発力の強化や新事業分野への展開などを積極的に進めることが重要課題になっている。本会議所では、地元大学や国公立試験研究機関との連携、いわゆる産官学共同の強化を軸に、中小企業の技術力向上に向けた事業を積極的に展開している。まず、昭和60年に、大阪大学の協力を得て、産業の各分野に急速に浸透しつつあるエレクトロニクス技術の最新情報を体系的に習得することを狙いとして「大商テクノカレッジ・エレクトロニクスセミナー」を3日間にわたり計9講座を開催した。61年には受講者のレベルや専門分野に応じてコースを選択できるよう18講座に拡充したほか、62年には経営幹部向けの「概説と展望コース」と第一線技術者向けの「専門コース」を、また63年から「ウイークエンド・セミナー〈エレクトロニクス基礎コース〉」を設定するなど、工夫を重ね、平成2年まで実施した。

●テクノ・サロン開設 カレッジ・フェアの開催

 本会議所は、昭和61年から平成8年まで大阪大学の工学系の教授陣を招き、先端技術に関する最新の研究成果や学界情報などの説明を受けるとともに、企業が抱える技術・開発上の問題解決のためのアドバイスを得ることを目的に、会員制の「大商テクノ・サロン」(産学交流懇話会)を開設した。エレクトロニクスや新素材、環境・エネルギーなどをテーマに最新の研究開発動向の紹介、意見交換などを行うとともに、筑波研究学園都市、関西学術文化研究都市、播磨科学公園都市、大阪大学などの最先端研究施設の見学会を実施した。7年には大商テクノ・サロン開設10周年事業として「カレッジ・フェア」を開催した。関西の大学や研究機関が研究成果や共同研究の仕組みなどを紹介、関心のある中堅・中小企業との間で個別懇談を行った。以降、産官学の技術交流の場として毎年実施している。4年には技術面、研究開発面で課題を抱える中堅・中小企業に対して、大学の研究室を紹介する「研究開発支援システム」をスタートさせた。

●テクノマート大阪の開催

 昭和60年に最新の情報ネットワークを利用して、技術の仲介・斡旋を行う機関として(財)日本テクノマートが設立され、大阪副本部が開設された。そこで、本会議所では同大阪副本部と共催で、企業間の技術交流を促し、技術力の向上とビジネス機会の拡大に資するため、61年から技術交流・商談・展示会「テクノマート大阪」を開催している。当初は、半日間の開催で、出展企業が10数杜・団体、参加者数も200〜300人であったが、近年は2日間にわたり、50前後の企業・団体が出展し、参加者数も2000〜3000人に上っている。

●エキスパートバンク事業

 本会議所は、大阪府下の小規模事業者からの要請に応じて専門家を無料で派遣し、技術面や経営上の問題解決にあたるエキスパートバンク事業を昭和63年から実施している。毎年、35社前後に対してエキスパートを派遣し、1社平均で7日程度の相談に応じている。その内容は、平成3、4年までは「機械設備の省力化」「工程管理の省力化」「技術上の問題点の解決」といった技術進歩や人手不足への対応が多かったが、その後は「新製品開発」「新規事業の展開」などの相談が増え、折りからのベンチャービジネスブームを反映した動きとなっている。

●ロボリンピアの開催

 平成4年から、本会議所は、大阪府、大阪市との共催(9年からは本会議所と大阪市の共催)で、中堅・中小企業と技術系学生との交流促進を目的としたロボット競技会「ロボリンピア」を開催している。中堅・中小企業が技術面の支援を行い、学生にロボットの製作を通じて、ものづくりの面白さを体験してもらうもので、毎回大阪を中心とする近畿圏の技術系学生約100チームが参加、2000〜3000人に上る観客を前に手作りロボットによる技を競っている。また、「私のほしいロボット」をテーマにした小学生の絵画展のほか、8年からは「自転車」をテーマとした技術系学生によるCAD製図展を併催した。とくに、6年には、関西国際空港の開港を記念して、大阪とかかわりの深い8カ国・地域から9チームの技術系学生を招請し、内外の学生による国際ロボリンピアを開催した。


平成4年、関西初の大規模なロボット競技会「ロボリンピア92」を開催。

2 - 情報化への対応支援

●大商VANの運営


 本会議所は、昭和46年に経営情報センターを開設して以来、中小企業向け経営情報システムの開発、普及に努めるとともに、コンピュータによる情報処理サービス事業を実施している。
 とくに61年には、加工食品、菓子、日用品雑貨を扱う卸売業者3社と取引先の小売店16店を結ぶ「大商受発注システム」を開発した。このシステムは、経済団体として初めてのVAN(付加価値通信網)事業であり、性格上中立的に運用され、開放性の高いことから、利用企業が年を追って増加している。平成2年からは対象業種に医薬品を加え、現在は、卸売業者498社、ホームセンター、コンビニ、ミニスーパー、薬局など小売店1038社、小売りチェーン店の本部10、物流業者2社が加盟するわが国最大の地域流通VANに成長しており、10年には履物業界も対象に加える予定である。今後は、インターネットの利用も検討し、電子取引にも対応できる地域の中堅・中小流通業の情報インフラの構築を目指している。

●ビジネス・インフォマート・大商とインターネット事業


 昭和62年には、「ビジネス・インフォマート・大商」事業を開始した。これは、商工会議所がセンターとなってパソコン・ネットワークを運営する初のケースであり、加入者に対し、電子メール、電子掲示板、経済はじめ各種情報のデータベースなどのサービスを提供した。そして、平成8年に、本会議所にWWWサーバーを設置し、会員企業や地域の事業者が安価に接続できるようにインターネットプロバイダ事業「サイバー・インフォマートOSAKA」を開始した。これは、全国の商工会議所のなかで初の試みであり、「ビジネス・インフォマート・大商」と接続し、総合的な情報交流のための仕組みとして、利用普及に努めている。現在の利用者数は439社である。
 なお、近畿商工会議所連合会ベースでも、近畿全域のイベントカレンダー、検定試験のスケジュールと受付期間案内をホームページに掲載したのを皮切りに、インターネットを活用した情報発信機能の強化に取り組んでいる。

●電子メール配信事業

 本会議所は、平成9年から電子メール配信事業をスタートした。これは、情報提供企業が本会議所のホームページに配信したい情報を入力すると、入力された種々の情報を一本の電子メールに自動的にまとめ、その情報をほしい人に配信するサービスである。独自の広報媒体をもたない中小企業の新たな広報手段として注目されており、現在、受信登録者数は1841人、情報提供企業としては204社が参加している。
 このほか、10年には、中小企業におけるビジネス面でのマルチメディアの利用促進とマルチメディア・クリエーターの育成支援を狙いとして、企業におけるマルチメディア利用需要の掘り起こしと、それを効率的にクリーエーターの受注に結び付けるマッチングなどを事業の柱とする「バーチャル・インキュベータ構想」をまとめ、今後具体化していくことにしている。

3 - 人材の確保・育成

●人材情報プラザの開設

 本会議所では、昭和60年から62年にかけて、中堅・中小企業に対して即戦力となる人材を紹介・あっせんする「人材あっせん大会」を開催した。とくに、61年には民営化を前に余剰人員問題を抱える国鉄の人材を、62年には雇用調整が課題の鉄鋼、造船両業界の人材を、それぞれ中堅・中小企業に橋渡しすることを重点に実施した。そして、平成元年には人材あっせん大会を恒常化する形で、大企業と中小企業の間で求人・求職情報を取り次ぐ「大商人材情報プラザ」を開設した。平成9年度の実績では、217社から340人の求人情報が寄せられる一方、人材保有企業46社と求職希望者159人がプラザを訪れた。そして、双方の協議の結果、22人の就職が決まった。
 また、8年から、人材を保有する大手企業と中小企業の求人情報をマッチングさせる「人材情報交流会」(年1回)を始めた。8年には人材保有企業34社、求人企業81社、9年にはそれぞれ39社、68社が参加した。

●就職フェアの実施

 本会議所では、中小企業と学生を結び付ける合同就職説明会「大商就職フェア」を平成5年から開催している。中小企業にとっては学生に自社をアピールするチャンスであり、一方学生にとっては情報入手の機会の少ない中小企業の採用動向を知ることができるなど、中小企業、学生の双方から好評を得ている。平成5・6年は各1回であったが、7・8年は各2回、9年は3回と開催回数を増やしている。ちなみに、8年の場合、参加企業は合計で他社、来場学生数は4640人に上った。

●講座・セミナーの開催

 本会議所では、毎年会員企業の経営者から新入社員までを対象にした種々の講座を開催している。具体的には「会議所経営者大学」「経営トップセミナー」といった経営者を対象にした講座のほか、管理者、女子社員、新入社員など階層別の講座や、営業部門、総務・人事部門、経理・財務部門などを対象とした部門別の講座、さらには商品開発、ビジネス法務、株式公開やM&A、パソコンの講座などを、毎年30〜40講座を実施している。受講者総数は、3500人から4000人余に達している。平成8年からは、個別企業のニーズに応じたオーダーメイド研修も始めている。
 また、本会議所は、昭和58年から中堅・中小企業の経営者や経営幹部などを対象に、海外サマースクールを実施している。ニュービジネスやベンチャービジネスの動向、最新の流通事情や商業施設、都市再開発の展開状況、さらには投資環境などを視察するとともに、関係者からの説明とコーディネーターからの解説、参加者間の意見交換などを組み合わせたユニークな研修制度である。これまでの訪問先は、北アメリカを中心に、ヨーロッパ、中国、ベトナム、ミャンマーなど。毎回30〜40人の参加を得ている。

●優良商工従業員の表彰
●各種検定試験


 本会議所では、昭和45年から会員企業における従業員の定着と勤労意欲の高揚を目的として優良商工従業員の表彰制度を実施している。会員事業主に対して勤続25年以上で業績の向上に貢献した従業員の推薦を依頼し、優良商工従業員表彰委員会での審査を経て、表彰するもの。平成8年度までは商業と工業の2部門に分けて実施してきたが、9年度年度からは優良技術・優良創造・優良指導・優良行動の4部門に分けて実施している。制度発足以来の被表彰者総数は、延べ1万3573人に上っている。なお、制度発足20周年にあたる平成元年から、被表彰者を対象に東南アジア・中国へ使節団を派遣し、見聞を広めてもらっている。
 また、本会議所では、商工実務に関する技術・技能の普及向上をはかるため、現在、珠算、簿記、英語ビジネス、商業英語、販売士、日本語ワープロ、キータッチ2000テスト、ビジネスコンピューティング、カラーコーディネーター、ビジネス中国語、消費生活アドバイザー、ビジネス実務法務の12種目の検定試験を実施しており、受験者総数は年間3万人を超えている。時代の要請に合わせて試験種目の見直しを行っており、キータッチ2000テスト、ビジネスコンピューティング、カラーコーディネーター、ビジネス中国語、ビジネス実務法務は、いずれも最近5年以内に新たに始めた種目である。

4 - 新規企業・ベンチャービジネス支援

●新規開業支援センターの設置

 本会議所では、近年における中小企業の開業率の低下、廃業率の上昇を憂慮し、早くから新規企業の創設やベンチャービジネスの育成に向けた政策要望をとりまとめ、ストック・オプション・プランの導入をはじめ、ベンチャービジネスや個人投資家(エンジェル)に対する支援税制の実現などを促してきた。本会議所独自の取り組みとしても、新規に開業をめざす人に対して、事業プラン、マーケティング、労務、経理、融資制度などを具体的にアドバイスするため、平成6年に「新規開業支援サービスセンター」(NESSC)を開設した。脱サラや学生、主婦らから飲食店やサービス業、ベンチャービジネスなどの開業相談が持ち込まれ、相談件数は10年3月までの4年間で1037件に上った。また、9年には、近畿商工会議所連合会ベースで、「ベンチャービジネス支援センター」を本会議所内に設置した。本センターのしくみは、ベンチャー企業が近畿商工会議所連合会傘下の69商工会議所のいずれかに対してビジネスプランの評価、資金調達、販路、技術提携などの相談を持ち込むと、事務局(本会議所)に回され、事務局からベンチャーキャピタルや商社、大学、研究機関など約50機関で構成する協力メンバーに照会するもの。9年度には90件の相談があった。

●ビジネスプラン発表会

 本会議所では、世界ビジネス・コンベンションのノウハウを生かし、全国に先駆けて起業家やベンチャー企業が資金、技術、販路などの分野でビジネス・パートナーを募るための出会いの場を提供してきた。その1つが、先進的な技術、製品、アイデアをもつ内外のハイテク・ベンチャー企業とそれらに関心をもつ企業や投資家が一堂に会し、商談を繰り広げる「アジア太平洋ベンチャー(APV)」であり、平成7年から毎年10月に実施している。対象業種としては、「情報・通信」「医療・ヘルスケア」「環境・エネルギー」に、9年から「新素材」が新たに加わり4分野になった。内外からの応募企業数は、7年=99社、8年=89社、9年=144社で、これらの中から専門家による評価をもとに選ばれた28社、29社、34社がビジネスプランを発表した。これまでの発表企業を国別にみると、日本、アメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリス、イスラエル、ニュージーランド、フランス、ドイツ、オランダ、台湾である。本会議所では開催6ヵ月後にプラン発表企業を対象にフォローアップ調査を実施しているが、成果は上々で、9年の場合、発表企業34社のうち15社が「成約」ないし「成約見込み」と回答、これに「商談継続中」と答えた9社を加えると、全体の7割にあたる企業がAPVを通じて新たなビジネス展開のきっかけを掴んだことになる。ところで、同年11月、神戸で開かれたG8やEU各国の産業・雇用大臣会議において「グローバル・ベンチャー・フォーラム」の開催が決定し、翌10年からAPVをベースに参加対象地域を全世界に拡大して実施することになった。
 他方、国内のベンチャービジネスだけに限った「ベンチャービジネス・フォーラム」も、京都・神戸の両商工会議所とともに8年から10年まで3回にわたって開催した。毎回、応募企業の中から選定された20社前後のベンチャー企業がビジネスプランを発表し、商談を繰り広げた。近年、同種の発表会が自治体などでも行われるようになったため、本会議所では、今後はグローバル・ベンチャー・フォーラムに一本化することになった。

5 - 新事業・新分野進出の支援

●異業種交流事業

 本会議所は、異業種企業間の相互交流を深めることにより、経営の視野を広め、新製品開発のヒントを掴んでもらおうと、昭和56年に60社の参加を得て「異業種交流研究会」をスタートさせた。本研究会では、メンバー相互間の結びつきを強めるとともに、新製品開発のみならず、人材の確保・育成、社内の活性化方策、海外進出、広く経営者としての心構えなど経営全般にわたる問題をとりあげた。平成8年には「異業種経営者交流プラザ」に改組し、「オンリーワンを目指す企業経営」、「21世紀の経営」をテーマに、それぞれ20数杜が参加して、意見の交換や合宿、内外の視察などを行っている。また、支部においても、異業種交流会が結成され、現在15の支部で活動を展開している。

●成長産業分野における最新情報の提供


 将来、起きな成長が期待される産業についての最新の情報を提供し、企業の新たな事業展開を促すことも、大阪産業の活性化にとって重要な課題である。こうした観点から、本会議所は大阪府、大阪市などとともに、昭和60年、62年、平成2年、6年の4回にわたって「国際バイオテクノロジー会議・見本市」(バイオジャパン)を開催した。会議には、内外から産・官・学の第一線の学者、研究者、企業経営者が500〜600人集まり、最新の研究成果をめぐって意見を交換。6年には、アメリカと大阪のバイオ関連企業同士の技術交流や資本・事業提携の促進を目的に「バイオ・アライアンス94」を開催し、日米企業約商社の間で具体的な商談・交流が行われた。
 また、平成2年から、大阪府、大阪市、関経連などとともに、注目される先端技術の最新の研究開発動向について意見・情報交換を行う「国際ハイテク・フォーラム大阪」を開催している。さらに10年には、高齢化の進展に伴い、今後大きなマーケットに成長することが見込まれる福祉・介護分野のビジネス振興に資するため、「福祉産業フォーラム・大阪98」を開催した。福祉機器開発、バリアフリー住宅と福祉のまちづくり、流通・サービスの3つをテーマに分野別セミナーやシンポジウムを開催し、最新情報を提供するとともに、福祉機器・製品の展示や商談会を行った。

●人間感覚活用のための研究

 新製品、新サービスの開発にあたっては、機能性だけでなく、楽しさ、美しさ、豊かさ、快適さをアピールすることが重要になってきている。本会議所では、平成2年に通商産業者の大型プロジェクト「人間感覚計測応用技術の研究開発」の研究主体である「人間生活工学研究センター」の大阪設置を働きかけ、翌3年に設立認可を得、大西正文・副会頭が会長に選出された。
 また、2年には、製品開発における色彩の決定にテーマを絞り「色彩活用研究会」を設置。研究会には、色材メーカー、家電、自動車、ファッション、食品、広告、小売など14社が参加し、事例発表をもとに意見交換が行われた。当研究会の成果は「売れる色彩の研究」(ダイヤモンド社)として刊行した。

●非公開企業のM&A市場開設

 本会議所は、中堅・中小企業の機動的な新分野進出と後継者問題の解決に資する有力な手段として、中堅・中小企業のためのM&A(企業の合併・買収)市場の事業化を検討してきたが、平成9年4月に「企業名匿名方式による非公開企業のM&A市場」を開設した。これは、企業を売りたい、あるいは買いたいという希望を市場管理者である本会議所が受け付け、これを本市場に登録している銀行、証券会社などM&Aを手掛けている業者につないで、買い手、売り手を見つけようという仕組みである。開設後1年間に寄せられた相談件数は売り、買い合わせて207件、うち正式申込みに至ったものは売り33件、買い55件となっている。そして、10年8月に成約第1号、2号が生まれた。

6 - 環境問題への取り組み

●地球環境問題への対応

 近年、世界的に環境問題に対する関心が高まりをみせ、産業界としても新たな対応を求められている。本会議所では、平成5年に、オゾン層破壊問題に関連して特定フロン・トリクロロエタン製造の平成7年全廃にともなう企業への影響調査を実施するとともに、機械・金属関連の会員企業を対象に「脱特定フロン・エタン対策セミナー」を開催した。
 9年には、気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)が京都で開かれた。関西の自治体や経済界などは地球温暖化防止京都会議支援実行委員会を結成し、同会議の成功に向けて協力した。本会議所独自でも「地球温暖化防止対策研究会」を設置し、在阪企業が省エネやリサイクルなどに自主的に取り組める方策について検討を重ねた。その成果を企業行動ガイド「5アクション プラス1」として日本語、英語でとりまとめ、京都会議の会場や本会議所主催の「環境シンポジウム〜どう取り組む?地球温暖化防止」などで配付した。

●廃棄物問題などへの対応

 本会議所では、平成3年に産業廃棄物問題を中心に企業の取り組みについてのアンケート調査を実施したほか、省エネ・リサイクル支援法や廃棄物処理改正法、容器包装リサイクル法などが相次いで成立したのを受けて、説明会やセミナーを開催し、情報提供に努めた。また、4年には「環境基本法制に関する要望」をとりまとめ、中小企業の環境保全に対する取り組み支援などを求めた。7年には、一般廃棄物に占める割合が高いにもかかわらずリサイクルが遅れているプラスチック廃棄物について、大阪での有効なリサイクルシステムを構築するため、「プラスチック・リーサイクルシステム構想研究会」を設置し、廃プラスチックのリサイクルシステムの具体策について検討を重ねた。
 他方、7・8年には、企業の環境管理・監査システムの国際規格ISO14000シリーズの発効を前に「企業の環境管理・監査セミナー」を、9年には、中堅・中小企業への導入を促進するため、大阪市、財関西環境管理技術センターとの共催で「環境マネジメントセミナー」を開催した。

7 - 流通業の振興

●流通戦略ソフトカレッジなどの開催

 本会議所は、消費者行動の変化、技術革新、情報化の進展など流通業を取り巻く環境が大きく変貌する中で、創造性豊かな人材を育成するため、昭和62年から平成3年まで毎年「流通戦略ソフトカレッジ」を若手経営者、経営幹部を対象に開講した。本カレッジは、「サービスマーケティングの考え方」「事業開発の考え方」「新規事業開発」などをテーマに、レクチャー、ディスカッション、海外フィールドワーク、アフターケアの4部からなり、毎回30数人が受講した。また、平成元年、2年の両年には、流通業界の第一人者を招き、対談形式で新たな流通業のあり方と企業の経営戦略を探る「大商流通大学院」を開いた。
 平成2・3年には、小売業者が時代の流れに的確に対応した店舗づくりや経営改善に取り組むことができるよう、本会議所はじめ大阪府、府下市町村、財大阪商業振興センターなどが連携し、全国初の試みとして、商店向けテレビ講座「商い新時代」を放映した。両年とも、15分番組で26回ずつ放映した。
 また、多品種・少量・高頻度の配送など物流システムヘの対応や効果的な物流サービスのあり方、さらには企業の物流の効率化方策などを探るため、昭和61年から、毎年「物流セミナー」を開き、先進的な企業の事例紹介などを行っている。好評で、毎回の参加者数は200〜300人に上っている。

●商店街振興策の検討

 商店街は、大型店との競合、空き店舗の増加、後継者難など、構造的な課題に直面している。そこで、本会議所では、平成8年に「商店街振興策検討研究会」(座長=石原武政・大阪市立大学教授)を設置し、大阪市内30商店街と全国20商店街を対象にヒアリング調査を行うとともに、活性化方策を検討した。その結果、天神橋筋商店街と九条地域商店街を対象にモデル事業計画を策定することを決めた。天神橋筋商店街では、周辺回廊整備計画、天満宮周辺地区整備計画、建て替え支援モデル事業、商店街支援組織による活性化事業などを重点プロジェクトとして掲げている。一方、九条地域商店街では、商品開発の促進による個店の魅カアップ、多彩なイベントの展開による集客力の向上、地域資源の魅力向上による来訪者の回遊性向上など。10年には、商店街支援組織として町街トラスト「天神・天満計画」が発足し、九条地域商店街では回遊イラストマップの作成などの取り組みが始まっている。
 このほか、2年に国と自治体の資金拠出によって発足した中小商業活性化基金を活用して、本会議所は9年までに延べ353件に上る市内商店街や小売市場のリニューアル調査やプリーペイドカードシステムの開発、祭りやイベントの開催などの指導にあたった。

●小売商業活動の調整

 本会議所は、大規模小売店舗法にもとづき、大規模小売店舗における小売業の事業活動の調整を行っている。このため、本会議所に設置した商業活動調整協議会において審議し、意見を具申してきたが、平成4年の改正大規模小売店舗法の施行後は「商業まちづくり委員会」を設置して国や大阪府に対して届け出のあった大規模小売店舗の店舗面積、開店日、閉店時刻、年間休日日数について意見をとりまとめている。
 大規模小売店舗法については、平成2年以降、法改正も含め、3次にわたって規制緩和が行われ、大規模小売店舗の届け出件数も増加をみている。そこで、基本的枠組みを堅持するよう要望してきたが、10年に新たに「大規模小売店舗立地法」と「中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に間する法律」が制定されるとともに、都市計画法も一部改正され、大規模小売店舗法は廃止されることが決まった。本会議所では、「街づくり研究会」(座長=石原武政・大阪市立大学教授)を設置し、この度の街づくり関連3法の活用方法などを検討している。

8 - 小規模企業の振興

●経営改善普及事業の推進

 本会議所では、小規模事業者の経営基盤を強化するため、昭和35年以来、経営改善事業を実施している。とくに49年からは市内23ヵ所に支部を設置して、きめ細かいサービスを展開するなど、本事業の充実をはかってきた。支部では、経営指導員が小規模企業に対して経営相談や指導にあたっており、指導員が企業を訪問して行う巡回指導、支部窓口での相談はあわせて年間5万件を超えている。その内容は、金融を最多に、税務、経理、経営、労働、取引など多岐にわたっている。また、記帳指導も、記帳専任職員と記帳指導員が市内の1000を超える事業所に対して年間延べ5000回にわたって実施している。経営改善講習会を年間700〜800回開催し、受講者数は約1万5000人に上っている。このほか、中小企業の倒産防止のための特別相談事業、法律、特許・商標・意匠、貿易実務、入国管理、労働、PL法(製造物責任法)などの専門相談や商工取引相談を行っている。こうした経営改善普及事業の一層の普及と浸透をはかるため、平成元年から10月を「中小企業振興月間」と設定し、地域活性化イベント、テレビ・ラジオでのPR、POPコンクール、移動経営相談など多彩な事業を展開している。

●マルケイの推薦

 昭和48年に発足した小企業等経営改善資金融資制度(通称マルケイ融資)は、商工会議所の経営指導を6ヵ月以上にわたって受けた小規模企業が改善資金を申し込んだ場合、会議所で審査し、国民金融公庫に推薦するもので、無担保・無保証人で融資を受けることができる。融資限度額は順次増額され、平成9年からは設備資金、運転資金とも1000万円となっている。本会議所の毎年度の推薦実績をみると、件数ベースでは昭和51年度から56年度までは6000件を超えていたが、60年度以降は4000件前後、そして平成6年度からは毎年3000件前後で推移している。金額ベースでは、昭和50年代の後半には150憶円近い年度もあったが、60年代以降は多い年度で130億円前後、少ない年度で100憶円程度となっている。

●いきいきおおさか・中小企業フェスタの開催

 平成元年に、支部開設15周年事業として「第1回ぶらりある区〜なにわの味と技」展を市内の百貨店を会場に実施した。これは、本会議所の経営指導員が日々地域を巡回する中で見つけた大阪ならではの味や技をもつ店を紹介し、販路拡張など経営活動支援の一助にしようというもので、平成6年まで6回にわたって開催した。7年からは、中小企業の相互交流とビジネスチャンスの拡大を目指して「いきいきおおさか・中小企業フェスタ」をスタートした。本フェスタには毎回、独自の技術やユニークな発想で新製品や新サービスを開発した中小企業80〜90社が自社の製品などを展示し、活発な商談を繰り広げている。毎年の来場者数は3500〜5000人であり、商談件数は1000件前後に上っている。
 このほか、2年から、支部単位で地域活性化イベントを実施している。主なものとしては、「大正リサイクルワェア」(大正支部)「住吉大社かがり火フェスティバル」(往吉支部)「はしけフェスティバル」(港支部) 「あきないウォークラリー」(中央東支部)「東淀川ハートワルウォーク」(東淀川支部)などがあり、毎回多数の参加者を集めている。


2006.3.3更新
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