基本的な考え方
わが国経済はデフレスパイラルの瀬戸際に立たされるなど、極めて深刻な状況下にあり、今こそわが国経済社会の構造改革を断行し、21世紀の明るい日本を構築しなければならない。
こうした状況において、とりわけ厳しい経済環境に置かれている大阪・関西は、現下の閉塞状況から脱却し、わが国のリーディング・エリアとして再びその力を発揮できるよう、官民挙げて活性化への取り組みを強化することが喫緊の課題である。とくに、本会議所は地域総合経済団体として、地域活性化の中心的役割を果たさねばならない。
本会議所は、「交流から創造へ」をスローガンに、企業活力こそ新生大阪を創るための基盤との認識のもと、会員第一の観点に立って、意欲と潜在能力にあふれた会員の力が最大限に発揮されるよう、多様な交流機会を提供するなど、会員の経営支援やビジネスチャンス拡大に資する事業を市内各地域で積極的に展開する。あわせて、企業の経営環境整備や構造改革推進に向けた提言・要望活動を強化する。さらに、「進取の気性に富んだ風土」、「優れた中小企業の厚い集積」、「高度な学術研究の集積」といったポテンシャルを活かして、「都市」「産業」「人」これら3つの側面から『大阪経済新生』への取り組みを一層強化する。
そのため、会員の声を的確に把握し本会議所事業に反映させることにより、会員ニーズにスピーディーに応え、親しまれ利用される商工会議所をめざす。
なお、政策提言力や事業推進力を高めるとともに、地域経済の振興と会員の経営支援を強力に推進するため、(社)大阪工業会との平成15年度中の統合を視野に入れ、具体的な検討を開始する。
重 点 事 業
1.会員企業の経営・ビジネス支援強化
(会員交流事業の拡充)
会員企業の経営・ビジネスに直結する多様な交流機会を提供するため、各種セミナーや交流会を市内各地域で展開するとともに、調達見本市「買いまっせ!売れ筋商品発掘市」や大阪の新しい土産を開発する「パイロット研究会」、「大商ビジネスリンク」など会員交流事業を拡充開催する。
(会員ニーズに即した情報の提供)
会員に有用な情報を提供するため、商工図書館を運営するとともに、部会活動などを通じて各種セミナーや説明会を開催するほか、機関紙「大商ニュース」、機関誌「チェンバー」、大商メールマガジンの発行、ホームページの活用など広報媒体を情報発信力強化の観点から総合的に見直し、広報機能を強化する。
(福利厚生など各種会員サービスの充実)
会員企業の福利厚生に資するため、割安な価格で多様なサービスをアウトソーシング型で受けられる「商工会議所CLUB CCI」事業を普及するとともに、生命共済、個人年金共済、特定退職金共済、所得補償共済、がん保険、PL団体保険、中小企業倒産防止・小規模企業共済制度など各種共済制度の加入促進をはかる。あわせて、成人病検診等健康管理事業、ホテル優待事業などに加えて、ビジネスシヨウOSAKAにおいて大商コーナーを設け、低廉な価格で出展できるよう会員サービス事業を充実する。このほか、情報化の進展に対応する新しい共済制度「ネットセキュリティ保険(仮称)」を開発する。
(組織体制の強化)
会員訪問や会員モニター制度の運用などにより、会員のニーズを的確かつスピーディーに事業に反映させるとともに、本会議所の活動基盤を強化するため、引き続き会員増強運動を展開する。また、議員選挙を実施する。
2.提言・要望活動の強化
(景気回復、中小企業対策等に関する要望・提言活動)
活力ある経済を取り戻すために、景気回復や中小企業対策をはじめとする要望・提言活動を機動的に行い、その実現をはかる。
(構造改革推進等のための要望・提言活動)
企業の経営環境整備に資するため、雇用、地方行財政、税制など構造改革推進に向けた調査・研究を進め、政府および地方自治体に対して積極的に提言し、その実現をめざす。
3.都市力の創造・強化
(集客・観光機能の強化)
大阪の集客・観光機能を強化するため、具体的な集客機能の強化方策について骨太の提言をとりまとめるとともに、大阪のプロモーションのため映画等のロケ誘致・支援事業を強化する。この一環として、「大阪ロケにいらっしゃい」運動を展開する。あわせて、大阪の観光振興を強力に推進するため、(社)大阪府観光連盟、(社)大阪観光協会、(財)大阪コンベンション・ビューローの観光関連3団体の来春の統合に向けて主導的な役割を果たす。
(魅力ある都市づくり、都市活力の向上)
関西国際空港の2期事業の2007年の供用開始に向けて取り組みを強化するとともに、同空港のプロモーション活動に注力する。また、大阪のメインストリートである御堂筋をはじめ、都心部の活性化に取り組む。さらに、大阪の産業や地域経済に多大な貢献をした法人または個人を会頭名で表彰する「大阪活力大賞(仮称)」を創設し、大阪のチャレンジ精神、パイオニア精神の発信、高揚を通して、地域活力の向上をはかる。
(国際経済交流の促進)
「世界ビジネスコンベンション(G−BOC2002)」および常時ネット上での商談を可能にするサイバーG−BOCなどを通して中小企業の国際商談を支援するとともに、外国企業に大阪でのビジネス展開に必要な情報を一元的に提供し、総合的なサポートを行うため本会議所、大阪府、大阪市が共同で設置した「大阪外国企業誘致センター(O−BIC)」の活動を強化し、外国企業の大阪への進出を促進する。このほか、9月の「第8回国際エネルギー・フォーラム」や10月の「ニューアース2002」(地球環境技術展)、来年3月の「第3回世界水フォーラム」の開催に地元として協力するとともに、北欧のバイオ産業や高齢化社会の現状などを調査する「北欧視察団」や、ライフサイエンス分野でのビジネス交流を促進する実務者レベルの「カナダ・ビジネスミッション」を派遣するほか、延期されていた「アジア経済視察団」を派遣する。
4.産業力の創造・強化
(ベンチャービジネスの育成・振興)
大阪・関西をバイオに関する一大国際拠点とするため、産学官が結集する「関西バイオ推進会議」の運営に注力するとともに、バイオに関する研究を行う関西の大学や研究機関等を高速大容量の通信回線で結ぶ「バイオ情報ハイウェイ構想」を推進する。あわせて、新薬開発や遺伝子治療等に取り組むベンチャーを創生するため「バイオビジネスコンペJAPAN」を継続実施する。
また、新規開業ならびにベンチャービジネスを支援・育成するため、「大阪中央地域中小企業支援センター」の機能を強化するとともに、ベンチャー支援メニューを紹介する「ベンチャー・サポーターズ・フォーラム」を開催する。また、本会議所議員有志などを支援者とする「大商起業家発見塾」の運営を通じて、意欲的に事業展開をめざす起業家を支援する。
さらに、IT分野では「情報家電&ウェブ・携帯ビジネス振興フォーラム」を継続運営し、ITベンチャーを発掘するとともに、JAVA技術者の育成を通してJAVAを使用したアプリケーション流通の活性化をはかる。このほか、国際ハイテク・ベンチャーの商談会「グローバル・ベンチャー・フォーラム(GVF02)」の開催、海外ベンチャー企業との交流会などを通して、在阪企業の新規事業開発、新技術開発を支援する。
(中小企業のIT化支援)
中小企業のeビジネスを支援する国内最大の企業情報データベース「ザ・ビジネスモール」の登録数を平成14年度中に40万件に拡充し、その利用を促進するとともに、同モール上で中小企業が電子取引を容易に行うことができるよう、電子市場運営事業者と提携してさまざまなサービスを提供する。また、地域流通業者の受発注の効率化をはかる「大商VAN」を拡充するほか、情報化の遅れが目立つ中小企業へのインターネット利用等を促進するため、電子商取引、ブロードバンドなど多様化するインターネットを中小企業が安心・安全・リーズナブルな料金で利用できるデータセンターサービス事業を本格的に展開する。加えて、「大商パソコンカレッジ」の運営をはじめITに関する各種講習会を開催し、事業主および従業員のパソコンの技能向上を支援する。
(小売商業、商店街の活性化支援)
平成12年に施行された大規模小売店舗立地法は5年以内に見直しが折り込まれており、日本商工会議所や大阪市等と連携しながら、都市部における望ましい立地法のあり方について研究する。また、平成14年1月〜2月にかけて開催した「あきない百稼店」のフォローとして、新規開業予定者への開業支援や店舗拡大のサポートを行い、市内商店街の空き店舗への開業を促進する。あわせて、市内商店街・小売市場の活性化を推進するため、本会議所ホームページ上にサイトを設け、活性化事例など具体的な情報を提供するほか、ネット上で情報交換できる場を設ける。
(中小企業対策等の充実・強化)
(1)中小企業活力の増進
1.新分野・新事業進出支援
中堅・中小企業、ベンチャー企業の友好的なM&A(企業の合併・買収、企業提携)を支援する「非公開企業のM&A市場」の運営に注力するとともに、同市場の活性化をはかるため、M&A実務家研修の実施や、新しいM&Aハンドブックを制作しPR活動を強化する。また。展示商談会「いきいきおおさか中小企業フェスタ」を開催する。
2.次世代産業の育成
高齢社会対応型ビジネスを振興するため「福祉産業フォーラム」を継続開催するとともに、介護サービス事業分野の経営者同士の情報交換・交流の場として「介護保険サービス提供事業者交流会」を開催する。また、高齢者が使いやすい情報機器の開発や高齢者の生活に必要な身近なネットワークの構築をめざして、府下の自治体においてモデル実験を行う「高齢化社会ネットワーク研究会」を運営する。あわせて、「機能性食品開発研究会」を設置し、糖尿病や肥満等の予防につながる機能性食品の大阪での開発を推進する。
3.技術力向上支援
ナノテクノロジーを応用した中小企業の製品開発力向上をはかる「ナノテクノロジー商品開発セミナー」を設置・運営するほか、関西の大学や公的研究機関が保有する優れた技術を中堅・中小企業に移転する「産学官技術移転フェア」を継続実施するとともに、そのフォロー事業として企業の新製品開発を支援する「技術交流クラブ」を運営する。
4.環境問題への取り組み
中堅・中小企業が環境に関する国際規格であるISO14001を低コストで認証取得できるようその支援事業を継続実施するほか、資源循環型社会構築のため、大阪市における「廃プラスチックのリサイクルシステム事業」を推進するとともに、包装容器リサイクル事業の相談・受付業務を行う。
(2)小規模企業のサポート強化
小企業等経営改善資金融資(マルケイ融資)の推薦を行うとともに、同業務の電算化、効率化をはかるための融資判断支援システムを構築する。また、経営改善講習会を活発に行うとともに、法律、税務、労務、技術、貿易などの経営相談の実施により小規模企業を強力にサポートする。
5.人材の創造・育成
(大阪企業家ミュージアムの運営)
大阪企業家ミュージアムが次代を担う企業家精神あふれる人材の育成機能を十二分に発揮できるよう取り組みを強化する。その一環として、優れた歴史上の企業家と生前親交のあった人や研究者などから、その業績や経営理念、人となりなどを語ってもらう「企業家語り部シリーズ」を開催するほか、ベンチャー企業経営者、二世経営者などを対象に、経営者としての識見を涵養し、人脈を築く「大商経営塾(仮称)」を創設・運営する。また、新規開業や事業発展をめざす中小企業経営者、企業内事業革新リーダーなどを対象とした「大商ベンチャースクール」を引き続き開講するとともに、最近話題のヒット商品を開発した企業やその商品について、開発のプロセスなどを紹介する企画展示を行う。
(中小企業の人材確保・育成)
中小企業の人材の確保を支援するとともに、人材の流動化に対応するため「大商就職フェア2003」を拡充開催するほか、中小企業と大企業の人材の橋渡しを行う「大商人材情報プラザ」を運営する。また、企業の人材育成の一助として、各種セミナー、研修を充実するとともに、各種技能検定試験の実施および社会的ニーズの高い新規検定試験を開発し、実施する。あわせて、「優良商工従業員表彰事業」を引き続き実施する。
6.(社)大阪工業会との統合に向けた検討
時代の要請に応えうる“より強い経済団体”をめざして、本会議所と(社)大阪工業会による『統合検討委員会』を設置して、平成15年度中の統合を視野に入れ、具体的な検討を開始する。