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T.提言・要望活動の強化

21世紀の社会経済構築のための調査研究、提言等

・わが国税制の抜本的改革についての意見
 平成14年1月に小泉首相が政府税制調査会、経済財政諮問会議に対し、わが国税制の抜本的見直しに着手するよう指示し、ともに6月を目途に税制改革の基本方針をとりまとめるべく議論を開始した。こうした中、本会議所としても構造改革を進めながら経済活性化を図る上で税制の果たすべき役割が極めて大きいとの認識のもと、3月に「わが国税制の抜本的改革についての意見」をとりまとめ、政府はじめ関係機関に建議した。意見では少子・高齢化が進展する中、国際競争に打ち勝つ「強い日本」を復活させるためには、民間セクターの革新意欲を喚起し、創造的な活動を促す税制の構築が必要と主張。「民間活力の再生に向けた税制」「努力が評価され、より多くの人々に支えられた税制」など6つの基本的方向のもとに、設備投資・研究開発費投資促進税制の拡充、連結付加税の廃止など企業課税の適正化、贈与税の基礎控除額の大幅引き上げ、所得課税ベースの拡大と累進税率構造の緩和、国債の個人保有の促進や都市再生事業の円滑な推進をはかるための税制など22項目について提言した。

・今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革についての意見
 わが国経済の再生をはかるためには、経済社会の構造を変革し、不良債権の迅速な処理と過剰債務の解消、規制改革や特殊法人改革による民間活力発揮に向けた環境整備、財政や社会保障制度の持続安定性の確保などをはかる必要がある。このため政府では「改革なくして成長なし」との考えのもと、6月に「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」をとりまとめ、抜本的な構造改革に着手することになった。
 本会議所でも、21世紀にふさわしい社会経済システムの構築に取り組もうとする政府の姿勢を支持し、改革の断行を求めるとともに、改革に伴う摩擦を最小限に抑えるための中小企業や雇用などに対するセーフティネットの整備などを「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革についての意見」として取りまとめ、7月に政府はじめ関係機関に建議した。
 その結果、9月には改革の道筋を示す「改革工程表」、10月には「改革先行プログラム」が策定され、これを受け雇用対策、中小企業金融のセーフティネット対策の拡充を柱とする第1次補正予算が編成された。また、12月には「特殊法人等整理合理化計画」がまとめられるとともに、平成14年度予算においても公共投資の1割削減など歳出の効率化がはかられる一方で、都市再生、科学技術振興などに重点的な予算配分が行われるなど歳出構造の質的な見直しがはかられた。

・今後の中小企業信用保証制度のあり方に関する意見
 中小企業信用保証制度は、中小企業の資金調達の円滑化に大きな役割を果たしているが、近年、代位弁済が増加の一途を辿っており、各地の信用保証協会の財政を圧迫し、円滑な運営に支障を来す事態も懸念されている。そこで、今後とも中小企業信用保証制度が時代の新しい要請に対応しつつ、持続安定的な運営がはかられるよう、名古屋、京都、神戸の商工会議所と共同で、「今後の中小企業信用保証制度のあり方に関する意見」をとりまとめ、8月に政府はじめ関係機関に建議した。
 同意見では、制度運営に係る各種基金の積増しを国に要請。併せて、金融機関の審査機能や、保証を受けた企業に対するモニタリング機能を向上させるため、金融機関が一定のリスクを負担する「部分保証制度」導入の検討を求めたほか、信用リスクに応じた保証料の設定や、事業の将来性等に着目した保証制度の導入、直接金融へのアプローチ支援、地域特性に応じた保証制度の展開について要望した。
 この結果、12月に、売掛債権担保融資保証制度が創設されたほか、新事業創出保証制度(無担保・第3者保証人なし)の保証限度額が拡充された。

・今後の労働政策に関する意見
 わが国が国際競争力を確保し、経済の再生をはかっていくためには、高コスト構造の是正と企業活力の発揮を促すことが不可欠である。労働分野においては、経済のグローバル化の進展や少子高齢化の本格化、さらには人々の就労意識の多様化などを直視した新たな雇用・労働システムを構築することが強く望まれる。そこで、本会議所でも10月に「今後の労働政策に関する意見」をとりまとめ、政府はじめ関係機関に建議した。同意見では、労働基準法を改正し裁量労働制や有期雇用を拡大・普及するとともに、解雇規制ルールを立法により明確化するよう求めた。また、就業形態の多様化を促すための労働者派遣法・職業安定法の規制緩和を求める一方、自営業者やパートタイム労働者へのセーフティネットの拡充を提案。ワークシェアリング促進のための政府支援も求めた。さらに世界的な人材獲得競争に対応するため外国人労働者受け入れ拡大に向けた入国管理政策の転換を要望した。
 その結果、3年の有期雇用契約が認められる対象者や専門型裁量労働制の対象職種の拡大など労働基準法が改正されたほか、求職者からの職業紹介手数料が徴収可能な対象者の拡大や、45歳以上の中高年齢者に関して3年の派遣期間を認める労働者派遣法の見直しなどが行われた。

・商法等の一部を改正する法律案要綱中間試案に対する意見
 企業活動のグローバル化やIT化の進展、企業の資金調達手段の多様化など経済社会情勢の変化に、商法の分野においても対応することが求められた。
こうした中、4月に法務大臣の諮問機関である法制審議会が企業統治の実効性の確保、高度情報化社会への対応、企業の資金調達手段の改善等といった視点から「商法等の一部を改正する法律案要綱中間試案」をとりまとめた。これに対し本会議所は、時代の新しい流れに即応してスピーディかつ的確に商法の改正を行うことが不可欠との認識のもと、企業の自主性の重視、中小会社が現実的に対応できる法整備、IT化の推進といった三つの視点からの検討を求める「商法等の一部を改正する法律案要綱中間試案に対する意見」を5月にとりまとめ、政府はじめ関係機関に建議した。その結果、株式分割の際の純資産額規制の撤廃、大会社における社外取締役の選任義務の見送り、従来の公告にかえてインターネットでの公開を認める株式会社の計算書類の公開方法の拡大、会社関係書類の電子化が認められた。

・地方税財政制度の抜本的改革の早期着手について
 地方財政は近年悪化を続け、国からの地方交付税や補助金への依存度が高まり、真の地方分権からは程遠い状況にある。小泉内閣が進める構造改革においても地方税財政制度の見直しが謳われているが、具体的な動きは遅れている。そこで、国から地方への財政移転制度の抜本的見直しや、地方税体系を簡素化、応益性の観点から見直すことなどを盛り込んだ「地方税財政制度の抜本的改革の早期着手について」と題する意見を11月にとりまとめ政府はじめ関係機関に建議した。
また、大阪府・市共に財政が危機的状況にある中で、府・市間における重複行政がかねてより指摘されている。そこで、府・市に対し一層の行政改革の実行を促すため、非効率な行政サービスの実態を明かにすべく、在阪経済5団体が共同で「府県・政令市間の地方行財政効率化に関する調査」を関西社会経済システム研究所に委託した。

・中小企業に対する政策金融のあり方についての意見
 特殊法人改革の一環として、政府系金融機関について政策的な必要性を問い直し、組織の見直しが検討されることになった。本会議所では、中小企業に対する政策金融についても、民間金融機関の補完という役割に照らしてその実態を点検することは重要であるが、現下の厳しい金融経済情勢の中で、中小企業が資金調達に支障を来すことのないよう、十分配慮する必要があるとの認識のもと、「中小企業に対する政策金融のあり方についての意見」をとりまとめ10月に政府はじめ関係機関に建議した。
同意見では、政府系金融機関による融資が中小企業にとって経営上の大きな課題である資金調達の円滑化に重要な役割を果たしていることに鑑み、政府系中小企業金融機関の基本的枠組み存続や、商工組合中央金庫の現状維持、信用保証制度の抜本的見直し、企業再編促進にかかる融資制度の拡充について要望した。その結果、12月に行政改革推進本部がまとめた「特殊法人等整理合理化計画」では、政府系中小企業金融機関廃止・民営化の対象には含まれず、引き続き経済財政諮問会議で検討されることになった。

・日本政策投資銀行の見直しに関する要望
 行政改革推進本部では民間事業者との競合などの指摘をうけた日本政策投資銀行を含む政策金融のあり方について検討されることにもなった。本会議所では特殊法人等の業務効率化は必要であるが、社会資本整備や都市再生、地方の活性化など民間金融機関では十分な対応ができない分野に資金供給を行う政策金融の役割は引き続き必要であるとの認識のもと、その存続を求めて「日本政策投資銀行の見直しに関する要望」を12月に財務大臣に建議した。その結果、同月に行政改革推進本部から発表された「特殊法人等整理合理化計画」の中で、日本政策投資銀行が担っていた社会資本整備等の政策金融機能は存続し、組織形態については引き続き経済財政諮問会議で検討されることになった。

・首都機能移転への取組み
 首都機能移転については、衆議院の特別委員会が、14年5月を目途に国会移転先の候補地について結論を出す旨、決議している。かねてより移転先として三重・幾央地域がふさわしいと主張している本会議所では、今年度も他団体と連携し、移転実現に向けた各種事業を展開した。まず9月に民間鉄道会社の協力を得て三重幾央地域を広くPRするため、鳳凰のキャラクターやシンボルマークを描いた「首都機能移転PR列車」を運行。さらに12月には、移転気運を盛り上げるため「日本の未来首都」について考えるシンポジウムを開催した。また、「岐阜・愛知」「栃木・福島」の他候補地関係者との共催により「国会等移転実現総決起大会」を東京で実施し、参加した国会議員に対し、首都機能移転は検討の時期から、決断の時期に来ていることを強く訴えた。この他、衆参両院の特別委員会によって、7月と14年2月に三重畿央地域の現地調査が行われた際に概況説明会を開催。さらに14年2月には三重幾央新都推進協議会として「首都機能移転推進に関するアピール」を採択し、政府はじめ関係機関に要望した。

・国際エネルギーフォーラム地元協力協議会の設置
 石油などのエネルギー生産国と消費国の閣僚レベルが情報・意見交換を行うことにより、共通理解を図ることを目的とする「国際エネルギーフォーラム」が日本国政府主催により、平成14年9月21日から23日の3日間、大阪国際会議場で開催されることになった。そこで、本会議所はじめ在阪経済5団体と大阪府、大阪市等は、地元として会議開催に協力するとともに、来阪する閣僚やメディアを通じて大阪・関西をPRするために、12月21日に同フォーラム地元協力協議会を設立(会長:太田房江・大阪府知事)した。本会議所の田代和会頭が同協議会の副会長に就任し、地元協力事業のための募金活動などを実施することになった。

2003.4.1更新
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