中小企業対策等の充実・強化
【中小企業活力の増進】
・非公開企業のM&A市場の運営
近年、中小企業の経営戦略の一つとして、M&A(企業の合併・買収)が注目されている。とくに、事業承継対策の一環としてM&Aにより株式譲渡する場合、廃業・清算とは異なり、会社が存続し、従業員の雇用も確保されるうえに、課税方式の違いからオーナー株主の手取り額も多くなるなどのメリットが指摘されている。また、買収側にとっても新分野への進出など機動的な事業展開が可能になることから、中小企業にとってM&Aは身近なものとなりつつある。本会議所では、平成9年4月に全国初の「企業名匿名方式による非公開企業のM&A市場」を創設し、中小企業の友好的なM&Aの支援を行ってきた。
市場創設4年目となる本年度は、セミナーなどを通じて従来の事業承継対策としての案件掘り起こしに努めるとともに、ベンチャー企業経営者に対し創業者利益を得るための出口戦略としてM&Aの活用を働きかけた。
本市場の共同運営者として6月に東大阪商工会議所が加わり、本会議所のほか、京都・神戸・尼崎の各会議所が連携して運営にあたることになった。なお、本年度は2件のM&Aが成約し、市場発足以来の成約は9件となった。
・いきいきおおさか中小企業フェスタ2000の開催
独自の発想や技術力をもとに新製品、新商品、新サービス等を開発している大阪の中小企業に販路開拓、企業・商品等のPR、企業間交流・情報収集の機会を提供し、ビジネスチャンスの拡大を支援促進するため、11月8・9日の2日間、「いきいきおおさか中小企業フェスタ2000」を開催した。
6回目となる今回は、幅広い業種から87企業・団体(97ブース)が出展し、商談や企業・製品のPRを行った。会期中の来場者数は6,500人、各ブースへの訪問者数は平均125人、商談成立件数は1出展者平均9.7件であった。会場内では出展企業16社・団体による製品プレゼンテーションも行われた。
また、会期中、石黒和義・日本アイ・ビー・エム(株)西日本担当常務、和田一夫・(株)ベンチャービジネス・ファンド社長を迎え、経営革新、地域振興に役立つセミナーを開催したところ、延べ620人が聴講した。
・産学官技術移転フェアの開催ならびに技術交流クラブの運営
関西圏の大学や公的研究機関が保有する研究成果を産業界に移転し、企業の新事業・新製品開発に結びつけるため、11月28・29日、「産学官技術移転フェア2000」を開催した。20大学、9研究機関、8技術コンサルタント会社・団体と、延べ2,300人の企業関係者が参加した。前年に引き続き民間の技術コンサルタントが、大学・研究機関から提供された研究成果(技術シーズ)の内容をわかりやすく解説し、具体的にどのような製品や事業に活用できるかを企業関係者に提案した。その結果、大学・研究機関からの技術移転が促進され、民間企業への移転の可能性が高い案件は10件にのぼった。
また、平成11年9月開催の同フェア99のフォローアップ事業として、技術コンサルタントをコーディネーターに複数の中小企業をメンバーとする技術交流クラブを設置し、新製品・新事業開発に取り組んだ。そのうち「アルコール香り製剤」グループは、試作品を本フェア2000で紹介するとともに、平成13年秋の商品販売を目標に共通のブランドやロゴマークを決めるなど活発な活動を行った。「機能性を付与した生分解性プラスチック」グループでも、参加メンバー共同での特許出願が予定されている。
・企業の環境問題への取り組み支援
環境マネジメントシステムに関する国際規格であるISO14001の認証取得を支援するため、(財)関西環境管理技術センターとともに「環境マネジメントシステム共同構築実践セミナー」を開催した。また、ISO14001認証取得の事例紹介を中心に「環境マネジメントセミナー」を2回開催した。
あわせて、21世紀の成長産業として注目を浴びている環境産業を大阪・関西において振興するため、先進的な取り組み事例の紹介や最新情報の提供、商談コーナーの設置などを柱とする「環境ビジネスフォーラム・大阪2001」を大阪市・ATCグリーンエコプラザと共催した。また、環境経営を進めるうえでの有効な手法の紹介や最新情報の提供を目的に「環境経営講座」を開講した。
さらに、公害健康被害補償予防事業として公害健康被害補償予防協会の委託を受け、汚染負荷量賦課金の申告受付を行った。申告件数は289件であった。
・大阪コレクション開催への協力
新人デザイナーの発掘・育成と関西のファッション産業の振興をねらいに、大阪コレクション(主催は大阪コレクション開催委員会)を4月と11月に開催した。
2000/2001秋冬大阪コレクション(4月25日から27日)では、6ステージ・8組のデザイナーが作品を発表し、約5,000人の観客を魅了した。同時期に開催したデザイナーズワークショップには11組のデザイナーが参加し、ビジネスチャンスを模索した。
2001春夏大阪コレクション(11月14日から17日)では14ステージ・12組のデザイナーが作品を発表、約5,500人の観客を魅了した。
【小規模企業の体質強化(経営改善普及事業の充実)】
・小企業等経営改善資金融資の推薦
小企業等経営改善資金融資(マル経)の推薦実績は、2,243件、90億9,590万円で、前年度に比べ件数は10.7%、金額は9.4%減少した。
件数、金額のいずれもが前年度を大きく下回った要因としては、(1)平成10年10月に「貸し渋り」対策として創設された「金融安定化特別保証制度」の効果で、前年度中に資金需要が一巡したこと、(2)長期化する不況の影響で、売上の減少・価格の低下が引き起こされ、小規模企業の体力が疲弊し、資金需要自体が弱含みになってきたことなどが挙げられる。
マル経融資推薦実績
項 目
|
12年度計
|
前年度比
|
推薦件数合計 |
2,243
|
▲10.7%
|
推薦金額合計(千円) |
9,095,900
|
▲9.4%
|
推薦単価(千円) |
4,055
|
1.5%
|
内訳
|
(1)使途別(千円) |
運転資金
|
7,613,000
|
▲7.1%
|
設備資金
|
1,482,900
|
▲19.4%
|
(2)業態別(件数) |
個人
|
1,022
|
▲19.0%
|
法人
|
1,221
|
▲2.5%
|
(3)業種別(件数) |
商業・サービス
|
1,331
|
▲9.3%
|
製造業そのほか
|
912
|
▲12.7%
|
・経営相談・指導業務の充実
経営指導員が小規模企業に対する経営相談・指導にあたった。件数は、巡回指導が1万9,802件、窓口相談が1万9,277件となった。その内容は、金融、税務、経理、経営、労働、取引など多岐にわたっているが、このうち金融相談が1万5,675件と最も多く、全体の40.1%を占めた。このほか専門指導センターでは、専門経営指導員2人が1,985件の専門分野別、業種別問題などの相談・指導にあたった。
経営相談・指導件数
|
巡 回
|
窓 口
|
計
|
金 融 |
4,841
|
10,834
|
15,675
|
税 務 |
329
|
495
|
824
|
経 理 |
389
|
412
|
801
|
経 営 |
9,161
|
3,330
|
12,491
|
労 働 |
131
|
125
|
256
|
取 引 |
100
|
80
|
180
|
その他 |
4,851
|
4,001
|
8,852
|
計 |
19,802
|
19,277
|
39,079
|
・経営改善講習会の開催
本年度は経営改善講習会を年間で469回開催し、受講者総数は7,017人であった。新入社員教育、簿記、労務、融資・助成金活用、パソコン操作、ホームページ作成など実務に役立つ講座を中心に内容の充実を図った。
経営改善講習会開催状況
|
回 数
|
受講者数
|
金 融
|
13
|
137
|
税 務
|
16
|
190
|
経 理
|
143
|
2,037
|
経 営
|
215
|
3,152
|
労 働
|
78
|
1,439
|
その他
|
4
|
62
|
計
|
469
|
7,017
|
・記帳継続指導の実施
小規模事業者の自立化を促すため、本年度は記帳専任職員7人と記帳指導員29人あわせて36人が市内1,019事業所に対して、延べ4,669回(1事業所平均4.6回)にわたり、記帳の仕方を指導した。
事業所を訪問してきめ細かい指導を行うとともに、確定申告期には近畿税理士会の協力を得て、17支部で合計71日、702人の確定申告相談に応じた。
・経営安定特別相談事業の実施
商工調停士の有光聿郎氏、和田亮介氏を中心に中小企業倒産防止のための特別相談事業を実施し、14社の相談があった。
また、経営安定セミナーを2回開催し、延べ250人の参加者を得た。
さらに、大型倒産や金融機関の破綻が相次ぎ発生したことに伴い、通常相談に加え、特別相談窓口を設置。延べ150人の相談を受けた。
・専門相談・商工取引相談の実施
<専門相談>
中小企業相談所と10支部に専門家を置いて専門相談を行った。相談所での専門相談については、法律、特許・商標・意匠、独禁法・景品表示法・下請法、貿易実務、入国管理、税務・経営、労務、技術、マーケティングの相談に応じた。本年度の相談件数は1,176件であった。
また、支部では、商工業、税務、労務の相談指導を行い、本年度の相談件数は3,321件であった。
<商工取引相談>
商工取引相談は2,459件で、メーカー、問屋などの業者の照会が多く、そのうちの大半が仕入れ先の照会であるが、アイデア売込、商品販路開拓の相談もみられた。
相談は大阪市域に限らず、日本全国さらに中国・韓国・台湾などアジア諸国・地域からの照会もあった。
・エキスパートバンクの運営
エキスパートバンクは、大阪府下の小規模企業の要請に応じて、エキスパートを無料で派遣し、技術あるいは経営上の問題点を改善する制度である。
本年度のエキスパート派遣先は19社、相談日数は延べ94日で、1社あたりの相談日数は約4.9日であった。派遣先企業のうち9社が製造業で全体の47%を占め、サービス業、小売業が各3社、建設業2社と続く。
・中小企業倒産防止共済制度の普及
取引先の倒産の影響を受けて、中小企業者自らが連鎖倒産する等の事態を防止し、経営の安定を図るための中小企業倒産防止共済制度の今年度の新規加入者数は33件で、前年度に比べ2.9%減少した。
一方、全国の企業倒産件数は、18,000件を超え戦後4番目、負債総額は27兆円余りと戦後最悪となった。いずれも、前年を大きく上回ったことを反映し、貸付請求件数は255件(対前年度比22.0%増)、貸付金額は19億860万円(同18.1%増)となった。
・小規模企業共済制度の普及
小規模企業の事業主および会社役員のための退職金制度について、本年度の加入者は173件で、前年度に比べて1.7%減少した。この結果、昭和49年12月の取り扱い開始以来の加入累計は1万9,933件となった。
・中小企業振興月間事業の実施
“がんばる経営、応援します”のキャッチフレーズのもと、経営改善普及事業の一層の普及・浸透を図るため、10月に中小企業振興月間事業を実施した。
期間中は経営改善講習会を各支部において集中的に開催したほか、各種の施策普及作成物を配布することで、経営改善普及事業の普及・浸透を図った。
・中小商業活性化事業の推進
本年度も中小商業活性化事業に取り組む任意団体の窓口を務め、商業活性化を推進した(5件、助成金額850万円)。
また、中小商業活性化支援事業では、幹事会議所として府下の商工会議所をとりまとめ、研修会やガイドブックの刊行など、中小小売商業の振興に取り組んだ。
・地域振興セミナーの開催
「中小企業支援地域展開推進協議会」(本会議所と大阪市経済局中小企業指導センターで組織)は、市内を5ブロックに分けて行う地域別セミナーを5回開催し、延べ参加者数は626人にのぼった。
・異業種交流、婦人・女性部活動の実施
各支部において地域内の異業種交流会および婦人・女性部が開催する勉強会、見学会、交流会等の活動を支援した。
・支部役員と正副会頭との交流懇談会
正副会頭が分担して支部の正副支部長・運営委員・振興委員などと交流・懇談を行った。懇談会では、下請け製造業の現状や大型店の出店問題などが話題となったほか、商店街におけるインターネット活用事例や、オリンピック招致に向けた取り組みが披露されるなど、多岐にわたって意見交換が行われた。
こうした発言を政府などへの要望や、本会議所事業に活かすよう努めた。
・「創業塾」、「新規開業支援拡大セミナー」の開催
創業を具体的に予定している人を積極的に支援するため、本会議所は日本商工会議所との共催で、「創業塾」を10月19日から12月7日まで全10回講座で開催した。また、日本商工会議所・大阪府商工会議所連合会との共催で2月15日には「新規開業支援拡大セミナー」を実施した。
|