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景気対策など経済運営、地域政策ならびに各種構造改革等の推進に関する政策提言・要望

・景気対策等に関する要望

本年度のわが国経済は、年度当初から秋口にかけては輸出や企業の設備投資の増加に支えられ、緩やかながらも改善傾向にあった。しかしながら、年明け後は個人消費など内需が盛り上がりを欠く中で、米国景気の急減速に伴い輸出の増勢が鈍化し株価も下落を続けるなど、停滞色が強まった。
こうした情勢のもと本会議所では、経済企画庁長官、大蔵大臣、経済産業副大臣、日本銀行総裁などとの懇談会はじめ機会あるごとに政策当局に対し、景気動向を注視した政策展開、中小企業対策の拡充、各種制度改革の推進などを強く求めた。
7月には第二次森内閣の発足に伴い、景気の自律的拡大に向けた政策運営の継続、中小企業の自助努力支援、社会保障制度改革や地方分権の推進などの要望をとりまとめ、森首相はじめ関係閣僚に建議した。12月に発足した第二次森改造内閣に対しても、中央省庁再編後の平成13年1月に、IT革命への総合的な対応、中小企業対策の充実、国・地方を通じた税・財政制度の抜本的改革などにより活力ある経済社会の基盤づくりに取り組むよう求めた。
こうした結果、10月にはIT革命推進、環境問題への対応、高齢化対策、都市基盤整備の4分野に重点を置いた事業規模約11兆円の日本新生対策が決定されるとともに、11月には総額4兆7,800億円を超える補正予算が成立した。また、平成13年度予算においても景気配慮型の編成が行われた。金融政策も2度にわたり公定歩合が引き下げられ、平成13年3月には史上最低の0.25%とされたほか、量的金融緩和により事実上のゼロ金利政策が復活された。

・平成13年度中小企業対策に関する要望

景気回復が遅れる中で、多くの中小企業は極めて厳しい環境下におかれた。わが国経済の再生を図るには、中小企業の経営革新と新事業開拓に向けた自助努力を支援し、新たな発展基盤を整えることが不可欠である。
そこで、多様で活力ある中小企業の育成、発展を図るため、5月に「平成13年度中小企業対策に関する要望」をとりまとめ政府はじめ関係機関に建議した。要望では中小企業対策予算の拡充はじめ、金融対策や中小企業関係税制の拡充、IT革命など新たな環境変化への対応支援、創業・ベンチャー支援、商店街などの活性化対策、ものづくり支援、雇用流動化の促進などを求めた。
その結果、中小企業対策費は1,948億円が確保され、平成12年度補正予算と平成13年度予算をあわせて過去最大規模の9,358億円が計上された。具体的な政策としては、信用補完制度の一般無担保保証限度額の引き上げやセーフティネット貸付の拡充、IT化の促進に向けた各種研修事業やIT導入貸付の拡充、中小企業支援センターを通じた経営支援体制の強化などが図られることになった。

・名京阪神4商工会議所による中小企業対策要望

7月に名古屋・京都・神戸の各会議所と共同で「平成13年度中小企業対策に関する要望」をとりまとめ、政府はじめ関係機関に建議した。5月に行った本会議所単独の中小企業対策に関する要望事項のほかに、小規模企業対策予算の拡充、中小商業の活性化支援、技術移転促進策の拡充、中小企業庁の地方移転、阪神・淡路大震災による被災地支援などをあわせて50項目にわたる対策を求めた。
また、9月18日には京都で殿岡茂樹・中小企業庁次長を招き、「21世紀中小企業の新たな挑戦」をテーマに第39回名京阪神4商工会議所中小企業懇談会を開催した。4商工会議所による7月の要望も踏まえ、殿岡次長から平成13年度の中小企業政策について説明が行われた後、小川洋・近畿通商産業局長らも交え、4商工会議所の中小企業関連委員会正副委員長が事業承継対策、中小企業金融対策、私募債発行の円滑化、ベンチャー振興策の拡充などについて意見を交換した。

・今後の税制改革に関する要望

今日わが国財政が危機的な状況を迎える中で、今後歳出構造の見直しとともに、税制の抜本的改革が不可欠となっている。とくに、経済社会の持続的な発展を確保するために、民間活力、とりわけ新分野進出や経営革新に取り組む中小企業の自助努力を支援する税制の拡充、国・地方を通じた税源配分や税体系の抜本的見直し、努力したものが報われる税制の構築などが重要と考えられる。このような認識のもと7月に「今後の税制改革に関する要望」をとりまとめ、政府税制調査会、自民党税制調査会、政府首脳などに建議した。個人所得課税における課税ベースの見直しと累進構造の緩和、企業活力増進に向けた中小企業関係税制および起業・ベンチャー支援税制の拡充、地方税改革として地方消費税の拡充や所得税の住民税への一部税源移譲など地方税源の充実、法人事業税への外形標準課税の導入反対、税務行政の効率化に向けた納税者番号制の導入など19項目について提言した。

・平成13年度税制改正に関する要望

7月に建議した「今後の税制改革に関する要望」をベースに、早急に実現が望まれる事項を「平成13年度税制改正に関する要望」としてとりまとめ、9月に政府はじめ関係機関に建議した。中小企業支援税制の拡充、相続税・贈与税の見直し、ベンチャー企業支援税制の創設、会社分割税制の創設と連結納税制度の導入、寄付金税制の拡充、株式譲渡益の源泉分離課税の存続、住宅ローン税額控除制度などの拡充、法人事業税への外形標準課税の導入反対など27項目にわたって要望した。
その結果、贈与税基礎控除額の引き上げ、会社分割・合併等に係る企業再編組織税制の創設、認定NPO法人に対する寄付金控除の適用、株式における源泉分離課税制度の延長、法人の土地譲渡益に対する追加課税の適用停止期間の延長などが実現した。一方、相続税率の引き下げ、個人所得税の課税ベースの拡大、地方税の抜本改革などは見送られた。
また、法人事業税の外形標準課税化については11月に自治省から具体案が示されたが、日本商工会議所はじめ全国の経済団体が導入反対を表明し、本会議所でも再三にわたり地元選出国会議員などに導入反対を訴えた。その結果、平成13年度の導入は回避されたが、今後も導入に向けた検討が継続されることになっている。

・大阪府における銀行課税ならびに税制改革への対応

平成12年3月に東京都が大手金融機関を対象にした外形標準課税の導入を決め、大阪府でも同税の導入の動きが表面化した。大手銀行に限定した課税強化は、税の公平性に反するだけでなく、金融システムや景気に悪影響を及ぼし、さらには一般的な外形標準課税の導入機運が高まることも懸念された。そこで、5月に2度にわたり、大阪府知事、大阪府議会議長などに対し「大手金融機関に対する外形標準課税条例案について慎重審議」を要望した。大阪府議会では5月に「大阪府における銀行等における事業税の課税標準の特例に関する条例案」を可決した。この結果、資金量5兆円以上の金融機関は5年間の時限措置として業務粗利益に3%の税率で事業税が課されることになった。
また、9月には法人府民税均等割にかかる超過課税を軸とする税制改革素案が示された。これに対し、1月に大阪府商工会議所連合会として「大阪府における税財政に関する要望」を大阪府知事に建議した。要望では、5千数百億円にも及ぶ財源不足に対する財政再建の全体像を明らかにすることはもちろん、府民や企業の理解と協力を得るためには一段の行財政改革の断行が不可欠であるとの考えを強調した。しかしながら大阪府では、3月議会において、一部原案を修正したうえで3年間の時限措置として法人府民税均等割の超過課税を決定した。

・社会保障制度改革についての意見

少子・高齢化が急速に進む中で、社会保障制度をこのまま放置すれば国民負担率の大幅な上昇を招き、制度自体が成り立たなくなる恐れが強い。そこで政府は平成12年1月に首相の諮問機関として「社会保障構造のあり方について考える有識者会議」を発足させ、年金・医療・介護保険などの見直しについて検討を始めた。そこで、本会議所でも7月に「社会保障制度改革についての意見」をとりまとめ、森首相はじめ関係機関、有識者会議委員に建議した。
同意見では、世代間・世代内の公平性に配慮したうえで制度のスリム化を図ること、公的部門による社会保障は国民の生活保障に不可欠な基礎的分野を担うものとし、それ以外は極力自助努力に委ねること、制度の簡素化を図り国民が負担と給付の関係について理解できるよう努めることが必要と主張した。そのうえで、年金保険制度について基礎年金をすべて税方式に転換することや厚生年金(報酬比例部分)の積立方式への移行などを提案。医療保険制度については負担と給付の適正化などによる医療費の抑制、さらに高齢者に対する社会保障給付についても一律に扱うのではなく所得、資産に応じた給付水準の適正化などを求めた。

・首都機能移転への取り組み

本会議所ではかねてより東京一極集中を是正する首都機能移転について、人口重心や全国からのアクセスを考慮し、「三重・畿央地域」を中心とする「中央地域」が移転先に望ましいと主張している。本年度も他団体とも連携して移転実現に向け各種事業を展開した。
まず8月には関西・中部圏の17の経済団体・自治体で構成する「中央地域へ首都機能移転を推進する会」の総会を開催し、「国土の中央部への首都機能移転を望む」との要望書を採択し、政府関係先に陳情した。9月には扇千景国土庁長官の首都機能移転見直し発言に対し、推進する会において「首都機能の移転に関する緊急アピール」を採択し政府関係先に遺憾の意を表明した。10月には関西圏の68の経済団体・自治体などで構成する「三重畿央新都推進協議会」を設置するとともに、「首都機能移転に関する要望」を決議し政府関係先に陳情した。11月には首都機能移転問題を広く啓蒙するため日本計画行政学会とともに「21世紀の新首都の展望」をテーマに国際シンポジウムを開催。平成13年3月には関西・中部圏の経済団体・自治体の共催により「首都機能移転・東京フォーラム」を開催した。

・景気動向等関連調査の実施

本会議所が行う政策提言などの参考にするために各種調査を実施した。国内景気や企業経営動向について経営者の判断を把握するため四半期毎に「経営・経済動向調査」を行った。同調査は、平成13年の3月期から関西経済連合会、大阪工業会との共同調査として3団体の会員企業を対象に実施することになった。また、アンケートによる「設備投資・雇用動向に関する調査」、「資金調達・資金繰りに関する調査」、「在阪企業のIT化に関する調査」のほか、ヒアリングによる「大阪の業種別企業動向調査」を四半期毎に実施した。


2003.4.1更新
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