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ニューズレター(支部概況報告)No.173 2005.5.20

テーマ
1.工夫ある経営で頑張っている中小企業                     

○ネット通販の極意
 ネット通販花盛り、と言いたいところだが、仮想店舗の数こそ星の数ほどあれども、本当に商品が売れているところはそう多くない。
 「ネットではモノが売れない」という愚痴をよく聞く。
 ネット通販は顔が見えないだけに、ドライでビジネスライクなものである。このクリック一発でモノが売れ、必要なモノが購入できる世界に人間的な情の取引を導入して成功している社長がいる。森製紐(東成区東中本2-17-18 TEL.6974-0033)の森 勝久社長である。
 同社は鹿児島県の焼酎メーカーとネットで取引を行っている。商品は瓶の飾り用の紐である。先日その焼酎メーカーの会長が亡くなり、取引先から「偲ぶ会」開催の案内を貰った。この焼酎メーカーの取引額は同社にとってそれ程大きなものではなかったし、取引期間もそれ程長くはなかった。しかし、この森社長は取引額の多寡でお得意先を区別するような人ではない。故人を偲ぶために、はるばる遠国薩摩まで出向いた。迎えた先方の社長以下社員は、ネットで数回品物を購入しただけの遠方からの来訪者に驚き、恐縮し、感激した。
 同社へは同じ九州でもう一軒ネットの取引先があった。と言っても鹿児島から九州を半周するほどの離れた大分県杵築市ではあったが、森社長は列車を乗り継いで、同じ日に、この会社へも挨拶に訪れた。ここでも社長以下社員たちが遠来の客に驚き、感激して歓迎してくれた。
 勿論、この感激は、当然、強固で確実な取引へと発展していることは言うまでもない。
 ある工務店から同社にネットで紐の注文が来た。その量が半端ではない。幅6mm程度の紐を8,000mという大量の注文である。社長は不思議に思って注文主の工務店に使用方法を尋ねると、うどん店の壁材に使用するという。森社長の真骨頂はこれからで、早速、自社の紐が壁材になっているという様子を確かめるために現地の甲子園まで出向いた。そこで自社製品の今までに考えたことも無い素晴らしい使われ方を見て感動。今度は従業員を全員引き連れて甲子園までうどんを食べに出かけ、従業員たちにも自分と同じ感動を味わわせた。
 もし、これがネットで売りっ放しだったら、単に紐が大量に売れただけで終っていたであろう。ところが現地まで出向いたことによって、自社の製品でありながら社員が誰も考えつかなかった使用方法に巡り合い、今後の営業の可能性が更に広がったわけである。
 しかし、このやり方は時間も費用も労力もかかると思うが、森社長に言わせれば「飛び込みの営業で何軒も断られ続ける苦労を考えれば、ネットのアクセス先は、ドアを開けてくれた訳だから、訪問して誠意を示せば必ず取引につなげることができる」と言う。
 最もハイテクなネット通販を、わざわざ足を運んで人間関係につなげるという、一見回り道に見えるこのローテクなやり方こそ、ネット時代の「日本的な商いの極意」だと言われると、思わず頷いてしまうのは私だけだろうか。
(東成・生野支部)

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