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「設備投資動向調査」の調査結果について
平成9年12月/担当:経済部 石井

記者発表資料
大阪経済記者クラブ会員  各 位

大阪商工会議所
平成9年10月8日

大阪商工会議所では、四半期毎に実施している「経営・経済動向調査」(9月 25日、資料配付にて発表済)の付帯調査として「設備投資動向調査」を実施し、 この度結果を取りまとめた。結果の概要は以下の通り。

〈調査の概要〉
調査時点 平成9年8月下旬〜9月上旬
調査対象 大阪府下に本社・本店を有する2,136 社の経営者
回答企業 664社(うち大企業331社、中小企業333社)
回答率 31.1%

〈調査結果の概要〉

  • 平成9年度に国内設備投資を「実施する」と回答した企業は65.5%(435 社)となり、平成8年度に「実施した」と回答した企業64.9%(431社)と ほぼ変わらない結果となった。
     投資額については、9年度は1社平均27億1,730万円で、8年度に比べ 9.7%の増加。規模別にみると、大企業は13.2%増となったが、中小企業は 15.1%減と大きく落ち込んだ。前年度との比較において、実施割合では両者の 傾向は変わらなかったが、投資金額の伸び率では大きな差が出た。
     設備投資の目的としては「老朽化設備の更新」が大企業、中小企業ともおのおの 3分の2を占めた。
    設備投資を実施しない理由としては「売上見通し等があまり良くないため」が最 も多く、大企業が49.3%、中小企業が61.0%と、ここでも規模間格差が見 られる。

  • リースについては、88.0%と9割近い企業が「利用している」と回答。とく に「情報関連機器」「事務用機器」「輸送用機械」等で高い利用率を示しており、 こうした分野では設備投資のかなりの部分がリースに代替されているものと思われ る。

  • 金融機関の貸出状況については、18.9%の企業が、借入を申込む際、以前よ りも難しくなったと感じたことが「ある」と回答した。規模別にみると、大企業の 13.3%に対し、中小企業23.8%と、中小企業の資金調達が難しくなってい る様子が感じられた。業種別にみると、不動産業が44.4%とかなり高い数字に なっている。

  • 金融ビッグバンに伴う資金調達への影響については、15.4%の企業から「困 難にならないか心配である」との回答を得た。とくに大企業(13.0%)よりも 中小企業(17.7%)に資金調達への影響を心配する声が多かった。「その他」 と答えた中には、大企業を中心に「低利で資金調達できる」など、逆にサービス向 上を期待する声もあった。

 


設備の稼働状況について

現在の国内設備の稼働状況について尋ねたところ、「ほぼ適正である」との回 答は80.6%で、「過剰である」は11.3%、「不足している」は7.2% となった。「ほぼ適正」が全体の8割を占めたものの、前回の9年3月時点での 調査に引き続き、依然、過剰感が不足感を上回る状況が続いている。
規模別にみると、「過剰である」と答えたのは大企業で10.0%、中小企業 で12.6%と、中小企業の方がやや高い数字を示した。
業種別では、運輸業で過剰感が2割を越えたのが目立つ。

平成9年度国内設備投資計画について


1.国内設備投資実施の有無

平成9年度の国内設備投資について、「実施する」と回答した企業は 65.5%で、過半数の企業が設備投資に踏み切っていることがわかった。
規模別にみると、大企業で8割近い企業が「実施する」と答えたのに対し、 中小企業では5割強にとどまっており、両者の差がはっきりと表れる結果にな った。
業種別では、実施割合が製造業で7割を越えるのに対し、非製造業では5〜 6割前後と、一般にいわれている業種間格差がくっきりと浮き彫りにされた。 とりわけ製造業の大企業では88.8%が「実施する」と答えており、現在の 民間設備投資の牽引役を果している。
 なお前年度との比較では、大きな相違は見られなかった。

2. 国内設備投資実施額

問1.で設備投資を「実施する」と回答した企業435社に投資額を尋ねたと ころ、1社あたり27億1,730万円で、8年度実績額と比べると9.7% の増額となった。
規模別にみると、大企業が前年度比13.2%の増に対し、中小企業が 15.1%の減となった。前年度との比較において、設備投資の実施割合では 両者とも変わらなかったが、額では大きな差が出たことから、大企業が回復基 調を維持しているのに対し、中小企業では先行きに幾分のかげりが見られ始め たといえそうだ。 業種別では、小売業の落ち込みが目立つ。

3. 国内設備投資実施額と計画額の比較

問1.で設備投資を「実施する」と回答した企業435社に投資実施額と計画 額との比較について尋ねたところ、「計画どおり実施する」が76.3%、 「計画を増額して実施する」が12.2%(うち「計画にはないが実施する」 は4.8%)、「計画を減額して実施する」が10.6%となった。当初計画 と比べて減額、増額する割合はほぼ拮抗している。
規模別にみると、大企業より中小企業で減額よりも増額して実施する割合が高くなっている。 業種別では、建設業と小売業で2割近い企業が「計画を減額して実施する」 と答えているのが目立つ。

4. 設備投資の理由

問1.で設備投資を「実施する」と回答した企業435社に理由を尋ねたとこ ろ、「老朽化設備の更新」が65.5%で最も高く、次いで「能力増強」が 54.9%、「省力化・合理化」が46.4%の順になっている。 規模別での大きな差異は見られなかった。
業種別では、大企業の製造業で「省力化・合理化」が71.8%と前年度に 引き続き際立って高く、大規模生産現場での雇用調整が進んでいる様子を伺わ せた。また、「新分野進出・研究開発等」を理由に挙げた企業が、製造業では3割を越えており(製造業の大企業では38.8%)、他業種に比べ高い数値となった。

5. 国内設備投資を実施しない理由

問1.で設備投資を「実施しない」と回答した企業229社に対し、その理由 を尋ねたところ、「売上見通し等があまり良くないため」が57.2%と最も 多く、以下、「経営環境の先行きが不透明なため」(42.4%)、「当面 の 必要投資が一巡したため」(35.4%)と続いた。 規模別にみると、「売上見通 し等があまり良くないため」と答えた企業が、 大企業で49.3%、中小企業で61.0%と大きな開きがあり、中小企業の 先行きにはより厳しいものがあるといえそうだ。 業種別では、「売上見通し等があまり良くないため」とした企業が、小売業 と運輸業で7割を越える高い数値となった。「経営環境の先行きが不透明なた め」を理由に挙げた企業では、建設業と不動産業でともに66.7%と最も高 く、公共事業の減少や不動産市況の低迷による影響を伺わせた。


海外拠点について


1. 海外拠点の有無

海外に拠点をもっているか否かについて尋ねたところ、「ある」と答えた企 業は21.8%であった。
規模別にみると、大企業では「ある」との回答は34.4%であったが、中 小企業では9.3%にとどまった。 業種別では、製造業で「ある」と答えた企業が31.7%と他の業種に比べ て高いが、中でも大企業は56.9%の過半数が「海外拠点を持っている」と 回答している。

2. 海外設備投資実施の有無

問1.で海外に拠点を「もっている」もしくは「現在、計画中である」と回答 した企業150社に対し、海外拠点への設備投資実施の有無について尋ねたと ころ、36.7%が「実施する」と答えた。 規模別にみると、大企業では41.0%が「実施する」としたのに対し、中 小企業では21.2%にとどまっている。 業種別では、製造業が43.5%と最も高く、その中でも大企業は過半数を 越える高い数値を示した。

3.海外設備投資実施金額

問2.で平成9年度の海外での設備投資を「実施する」と回答した企業55社 に投資額を尋ねたところ、1社あたり41億8,094万円と、前年度に比べ 3.4%の減少となった。
規模別にみると、前年に比べいずれも減少となったが、大企業の4.3%に 対し、中小企業では55.3%と大幅な落ち込みを示した。

4. 平成9年度の海外拠点への設備投資の目的

問2.で平成9年度の海外での設備投資を「実施する」と回答した企業55社 に目的を尋ねたところ、「現地需要の開拓・拡大に対応するため」と答えた企 業が58.2%と最も多かった。
規模別にみると、大企業では「現地需要の開拓・拡大に対応するため」が 60.4%と最も多く、中でも製造業に絞ると64.7%とさらに高い割合に なる。中小企業では「現地需要の開拓・拡大に対応するため」「主要取引先の 海外展開に対応するため」と回答した企業がともに42.9%で一番多く、製 造業に限れば「主要取引先の海外展開に対応するため」が50.0%と最も多 くなる。中小企業の場合は親会社や取引先の都合に引っ張られているケースが 多いようだ。

5平成9年度の海外拠点の設備投資先

問2.で「実施する」と回答した企業55社に投資先を尋ねたところ、「中国」 と答えた企業が54.5%と最も多く、次いで「北米」(34.5%)、「E U」(31.3%)の順になった。ただし、タイ、インドネシア等、アセアン 諸国を合わせると8割を越える企業の投資先に挙がっており、中国を上回る。
規模別にみると、中小企業では投資先が「中国」「台湾」「タイ」以外は 「北米」に限られており、アジア重視の姿勢が目立つ。


リースについて

1. リース利用の有無

リースの利用について尋ねたところ、「利用している」と答えた企業が 88.0%と9割近くに上った。とくに大企業に限ってみると、94.0%と ほとんどの企業が利用している。
業種別にみると、不動産業での利用が63.2%で、他業種と比べかなり低 い数字となった。

2. リース年間利用額

問1.でリースを「利用している」と回答した企業に対し、平成9年度の年間 利用額について尋ねたところ、1社あたり1億8,382万円に上った。 規模別 にみると、大企業(2億9,834万円)、中小企業(5,709万 円)となっている。

3. リースを利用している分野

問1.でリースを「利用している」と回答した企業584社を対象に、利用分 野を尋ねたところ、「情報関連機器」が93.2%と圧倒的に多く、次いで 「事務用機器」(78.4%)、「輸送用機械」(47.1%)が高い割合を 示した。こうした分野では、設備投資のかなりの部分がリースに代替されてい るものと思われる。

4. リースを利用している分野

問1.でリースを「利用している」と回答した企業584社に理由を尋ねたと ころ、「減価償却等の手間が省けるため」が66.8%で最も多く、次いで 「商品サイクルが短くなっているため」(61.0%)、「所有するよりリー スの方が割安なため」(33.9%)と続いた。「その他」と回答した企業の 中には、「費用を平準化できるため」とする答えが多かった。

5. リースに対する今後の利用の意向

リースに対する今後の利用の意向について尋ねたところ、「現在リースを利 用中で、今後の利用については現状のまま」と答えた企業が66.5%と最も 多かった。
今後のリース市場の動向については、「現在リースを利用中で、今後も利用 を増やしていく」「現在リースを利用していないが、今後は利用したい」と答 えた企業をあわせると20.9%になるのに対し、「現在リースを利用中で、 今後の利用は減らしていく」「現在リースを利用しておらず、今後とも利用の 予定はない」と答えた企業をあわせると15.5%にとどまることから、わず かながらも拡大していくものと予想される。


資金調達について

1. 主な資金調達先

主な資金調達先について尋ねたところ、間接金融では「都市銀行」と答えた 企業が82.8%と圧倒的多数を占め、次いで「公的金融」(34.0%)、 「地方銀行」(30.1%)の順になっている。「外資系銀行」の利用は4件 (0.6%)と最も低い数字にとどまった。
規模別にみると、「公的金融」で大企業(24.8%)よりも中小企業 (43.2%)の利用比率が高いのが目立った。「信用金庫」でも同様の傾向 が見られる。「その他」では、大企業では「生命保険会社」や「長期信用銀行」、 中小企業では「親会社」といった回答が多かった。 一方、直接金融では77.7%が「利用なし」という結果 となった。直接金 融で資金調達する場合は「社債市場」とするものが12.0%、「株式市場」 は9.9%となった。「海外資本市場」はまだ少ない。

2. 金融機関の貸出状況

問1.で間接金融における主な資金調達について「借入なし」「その他」と回 答した企業を除く586社を対象に、借入を申し込む際、以前よりも難しくな ったと感じたことがあるかどうかを尋ねたところ、18.9%が「ある」と答 えた。
規模別にみると、大企業の13.3%に対し、中小企業が23.8%と、中 小企業の資金調達が難しくなっている様子が感じられた。 業種別にみると、不動産業が44.4%と他と比べて高くなっており、不動 産市況の悪化が担保価値の低下を招き、資金調達を難しくしていると思われる。 借入が以前よりも難しくなった金融機関の種別では、「都市銀行」という答 えが83.8%で最も多かった。

3. 借入が困難な場合にとった対策

問2.で以前よりも借入が難しくなったと感じたことが「ある」と回答した企 業111社を対象に、その際にとった対策について尋ねたところ、「とくにな し」とする答えが54.1%と最も多く、過半数を越えた。「その他」と回答 した中には、「資産売却」といった答えがいくつか見られた。 規模別にみると、大企業では「民間の金融機関を活用した」(20.0%) が「公的金融機関を活用した」(17.5%)が上回っているのに対し、中小 企業では全く逆の結果となった(14.1%、28.2%)。

4. 今後の資金調達の方針

今後の資金調達の方針について尋ねたところ、「とくに変更なし」とする答 えが圧倒的に多く、93.7%にも上った。今後の資金調達のあり方には、と くに大きな変化がみられないといえそうだ。 ただし大企業に限ってみると、「直接金融の比重を増やす」が9.1%(う ち製造業に限れば12.1%)と割合が高くなるので、大企業を中心に直接金 融指向が強まるのではないかと思われる。

5. 金融ビッグバンに伴う資金調達への影響

金融ビッグバンによる資金調達への影響について尋ねたところ、「困難にな らないか心配である」が15.4%に上った。 規模別にみると、「困難にならないか心配である」とする回答は、大企業 (13.0%)よりも中小企業(17.7%)に多く見られた。審査機能の強 化等による金融機関の貸し渋りに対しては、中小企業の方がより強い懸念を抱 いているようだ。
「その他」の回答では、金融ビッグバンで金融機関の競争が促進されること から「低利で資金調達ができる」など、逆にサービス向上を期待する声が大企 業を中心に見られた。一方、中小企業では「わからない」とする答えが多かっ た。


〔本件担当〕 大阪商工会議所 経済部  大西
TEL 06−944−6304


2003.4.1更新
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