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企業による従業員の再就職支援活動に関する調査結果
平成11年7月6日
平成11年7月6日
記者発表資料
大阪経済記者クラブ

 会 員 各 位

企業による従業員の再就職支援活動に関する調査結果(要約)

大阪商工会議所
〈調査の概要〉

悪化する雇用情勢に歯止めをかけ、わが国の産業再生を図るには、円滑な人材移動が重要課題となっている。人材移動を促進するためには、個人、企業、及び国のそれぞれの立場で取り組むべき課題は異なるものと思われるが、ここでは企業における従業員の再就職支援の実態を把握し、今後の大商の事業展開の参考とするため本調査を実施した。調査期間は平成11年5月下旬?6月上旬。郵送のアンケート方式により大阪府下に本店・本社を有する1,074社の経営者を対象とした。有効回答527件、回答率49.1%。

〈今回の特徴〉

(1) 従業員の再就職に対する支援について
 
長期継続雇用などいわゆる終身雇用を前提とする日本的雇用慣行のもとで、企業による従業員の再就職支援活動は、今のところ一般 的でないことが伺える。
とくに、従業員の職業能力開発への支援は乏しい。

(2) 中高年齢者の中途採用への取り組みについて
 
中高年齢者の中途採用には、大企業より中小企業のほうが積極的な姿勢が見える。また、大企業・中小企業とも製造業で中途採用の実施率が高かった。
中高年齢者の中途採用を実施する企業は、中途採用者に即戦力を求めている。

(3) 国への要望等について
 
人材移動の円滑化を推進するには、中途採用の普及を図るインセンティブが必要。
職業能力開発への支援を国等に期待している。

以 上

■問い合わせ先■ 
大阪商工会議所 経済部 上野・上月
06-6944-6304


1. 調査の概要

調査目的 企業における従業員の再就職支援の実態把握
調査時点 平成11年5月下旬〜6月上旬
調査内容 従業員の再就職に対する支援の有無及び内容、中高年齢者の中途採用の実態、国への要望等
調査対象 大阪府下に本店・本社を有する1,074社の経営者
調査方法 郵送によるアンケート方式
回答状況 回答527社、(うち大企業253社、中小企業274社、有効回答率49.1%)
企業区分 製造業及び建設業では資本金1億円以上、その他の業種では資本金5000万円以上を大企業とする。

2.調査結果の概要

(1) 従業員の再就職に対する支援
  
1.

主に40歳以上の中高年齢層の正社員が定年前に退職する際、その再就職を何らかの方法で支援しているか尋ねたところ、73.2%が「支援し

ていない」と答え、「支援している」(14.8%)、「検討中」(9.7%)を大きく上回った。
企業の規模別に見ると、大企業では「支援している」と「検討中」を合わせると35.1%になるが、中小企業は両方合計して14.6%で、企業規模による差が大きい。
業種別に見た場合、大企業・中小企業とも製造業で再就職支援の実施率が高い。

2. 「支援している」または「検討中」と答えた企業に、どのような方法で再就職支援を実施・検討しているのか尋ねたところ、「子会社、関連会社等への転籍出向」(55.0%)の割合が最も高く、次に「民間の再就職支援企業を利用した転職斡旋」(32.6%)、「ライフプラン設計等に関するセミナーによる情報提供」(29.5%)、「公共職業安定所等への登録」(18.6%)、「独立・開業のための情報提供や資金援助」(17.1%)、「教育訓練を受けるための経済的・時間的支援」(16.3%)と続く。
規模別に見ると、大企業では「転籍出向」「セミナーなどによる情報提供」「再就職支援企業を利用した転職斡旋」の割合が高いが、中小企業では「公共職業安定所等への登録」が最も高く、「転籍出向」と「独立・開業のための情報提供・資金援助」が同じ割合でこれに続く。
3. 「支援していない」と答えた企業にその理由を尋ねたところ、「再就職は個人の責任で決めるべきことだから」(59.3%)とする割合が最も高い。一方、「転籍出向先がない」(51.8%)、「再就職支援をする余裕がない」(34.5%)など、支援したくてもできない企業の事情が読み取れる。
規模別では、中小企業で「再就職は個人の責任で決めるべき」とした割合が高く、61.9%であった。

(2) 中途採用への取り組み
1. 主に40歳以上の中高年齢者を正社員として中途採用しているか尋ねたところ、「採用している」(49.7%)、「採用していない」(48.8%)と、ほぼ拮抗した。
規模別に見ると、大企業の53.4%が「採用していない」と答えたのに対し、中小企業では53.3%が「採用している」とし、中小企業の方が中途採用にやや積極的。
業種別では大企業・中小企業とも製造業での中途採用実施の割合が高く、特に中小企業の製造業は62.4%が中高年の中途採用を実施している。
2. 中高年齢者の中途採用を実施している企業に対し、その利点についてきいたところ、「必要なときに即戦力を獲得できる」(84.0%)とした割合が圧倒的に高く、企業は中途採用者にすぐに役立つ職業能力を求めている。さらに、「新たな教育投資が不要」(36.6%)、「組織が活性化する」(36.3%)と続く。
規模別に見ると、大企業では「即戦力として獲得」とする割合が9割を超えて最も高く、次いで「組織が活性化する」が続き、中途採用による組織の活性化への期待も大きい。3番目には「新たな教育投資が不要」としている。中小企業でも「即戦力として獲得」の割合が最も高いが、2番目に「新たな教育投資が不要」が続き、なるべく費用をかけずに役立つ人材を採りたい中小企業の本音が伺える。
3. 一方、中途採用を実施していない企業に問題点を尋ねたところ、企業の規模・業種の別 を問わず「社内の中高年齢層が過剰である」(68.9%)とする割合が最も高く、次いで「賃金面 で折り合わないから」(33.1%)、「将来の幹部候補は社内で育成するから」(26.8%)といった回答割合が高い。

(3) 国への要望等
1. 人材移動の円滑化を図るために、政府にどのような政策を要望するか尋ねたところ、「中高年齢者の中途採用を実施する企業への助成制度の拡充」(55.0%)、「雇用調整助成金の拡充」(33.6%)、「自己啓発にかかる費用の所得控除など、能力開発を促すための税制改正」(31.7%)、「失業給付の期間延長」(29.2%)、「転職コストを低減する年金・退職金制度の改革」(27.5%)、「従業員の職業訓練など再就職支援にかかる費用への助成制度の拡充」(24.7%)、「人材派遣・職業紹介の一層の自由化」(23.3%)となった。
規模別に見ると、「中途採用実施企業への助成制度の拡充」とする割合は企業規模にかかわらず最も高いが、大企業では「年金・退職金制度の改革」「能力開発を促すための税制改革」がこれに続く。他方、中小企業は2番目以下に「雇用調整助成金の拡充」「失業給付の期間延長」が続き、企業規模により政策要望の内容に違いが見られた。


2003.4.1更新
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