大阪商工会議所 HOME

3.まちづくりへの提案

3−1 まちづくりへの取り組み

 「自分たちが住むまちをよりよいものにしたい」という思いは、みなさん誰もががお持ちのことと思います。まず、まちづくりに大切なのは、この気持ちです。ただ、何から手をつければよいのか、どんな方法・支援制度があるのか、よく分からないという方が多いのではないでしょうか。

 まちづくりには、地域の人たちが中心になり、地域の特性を生かした取り組みをすることが必要であると言われます。実際、全国には、積極的な取り組みを行い、魅力あるまちづくりをしている事例がたくさんありますが、それらに共通しているのは地域特性の奇抜さ・目新しさではありません。どこのまちにでもある特性を掘り下げ、付加価値をつけることで、まちづくりに結びつけているのです。

 まちづくりのきっかけとなるキーワードを簡単にまとめてみました。あなたのまちの特性を再発見する手がかりになれば、幸いです。あなたのまちの長所が明確なものになれば、それを促進するまちづくりのヒントが浮かんでくることでしょう。あなたのまちをチェックしてみて下さい。


<あなたのまちの長所は何でしょう?>

□ (1) 歴史的な資産(社寺仏閣、史跡、歴史的建造物、古い街並みなど)がある
□ (2) 文化的な資産(伝統行事、祭り、美術館、博物館など)がある
□ (3) 集客施設がある
□ (4) 異国情緒がある
□ (5) 地元出身の有名人がいる
□ (6) 伝統産業、地元発祥の産業などがある
□ (7) 地元の特産物がある
□ (8) 水辺(川・海)や緑が近く、自然と触れ合える
□ (9) 環境保全活動(リサイクル、フリーマーケットなど)に熱心だ
□ (10) 高齢者・身体の不自由な人に対するバリアフリーが行き届いている

<あなたの商店街の長所は何でしょう>

□ (1) 歴史的な風格を感じさせる老舗店舗が多い
□ (2) 昔から続く伝統行事、祭りがあり、商店街や地域住民が一緒に取り組んいる
□ (3) 近隣型の商店街で、地域住民の身近な買物の場として賑わっている
□ (4) 商店街内にコミュニティ広場などがあり、地域住民の憩いの場となっている
□ (5) 情報化に積極的に取り組み、顧客サービスに活用している
□ (6) 定期的に清掃活動を行なっている
□ (7) やる気のあるリーダーがおり、若手の意見を取り入れる仕組みも整備されている
□ (8) 地域に根ざした個性的なイベントを積極的に企画、実施している
□ (9) 駐車場やポイントカードなどの共同事業を実施し、運営資金を生み出している
□ (10) 空き店舗を新業態のアンテナショップにするなど、うまく活用している

<まちづくりの方法>

 どんなによいアイデアが浮かんだとしても、あなた一人の力でまちづくりはできません。周辺の住民や商店・企業、土地所有者と協力して構想をまとめ、地域の行政に働きかけていく必要があります。また、アイデアを効果的に実現する方法について、情報を収集するため専門家の知恵を借りることも必要でしょう。具体的には、次のようなプロセスが考えられます。

(1)仲間を増やし、まちづくり組織をつくりましょう

 まちづくりのアイデアについて、両隣、お向かいなど周辺の住民や商店・企業、土地所有者にも相談し、同じ志をもつ仲間を増やしていきましょう。仲間が増えれば、活動の拠点としてのまちづくり組織をつくる必要があります。まちづくり組織を活用して、まちの長所、問題点について共通認識をもち、それを地域のより多くの人に広報していくことが大切です。今後の活動を進める上で、最も重要な時期です。焦らずに、根気強く話し合いを進めましょう。

(2)行政などにご相談ください

  ある程度アイデアが固まったら、まず、近くの行政窓口などにご相談ください。まちづくりには、いろいろな制度、資金援助が用意されています。アイデアを実現するにはどの制度が効果的なのか、アドバイスを受けてみてはいかがでしょうか。(→3−3まちづくり支援メニュー)

(3)まちづくり構想をまとめましょう

 まちづくりのアイデアを実現する制度が具体化してきたら、まちづくり構想としてまとめましょう。まちづくり構想は、自分たちの描くまちの将来像を実現するための手段、方法、実施計画などが中心になります。特に、道路の拡幅や施設整備などのハード事業を行う場合、どの手段を使うかで計画が大きく変わってきます。(→資料:主なまちづくり制度)ここでも、行政や専門家のアドバイスを十分に生かして、よりよい構想をまとめましょう。

(4)計画を実行に移しましょう 

 まちづくり活動で何よりも大切なのは、住民のひとりひとりがまちづくりに参加するということです。まちづくりには、長い時間がかかります。活動の途中で、難しい問題に突き当たることもあるでしょう。なかなか計画が進まないと、当初、まちづくり活動に熱心だった人たちも、1人抜け、2人抜け、という状態になってしまうこともあるかもしれません。今まで、先進的にまちづくり活動を進めてこられた地域の事例を参考にしながら、ひとつずつ問題を乗り越えていってほしいと思います。 主なまちづくり制度
まちづくりの目的 制度の種類 概    要
市街地の整備や、住環境の整備をしたい 市街地再開発事業 低層の木造建築物が密集しているような既成市街地において、細分化された土地を統合し、不燃化、中高層化した共同建築物を建築し、合わせて道路等の公共施設を整備する事業
土地区画整理事業 土地の減歩や換地という手法により、道路、公園等の、公共施設の整備改善を行うとともに、個々の宅地の区画、形状を整え、利用増進を図る事業
住宅街区整備事業 土地の立体換地など、土地区画整理事業の換地手法に準じた手法により、共同住宅の供給と公共施設の整備を図るほか、必要に応じて集団的農地の確保を行う事業
目的に合わせた規制、誘導をしたい 特別用途地区 建物の用途を規制・緩和する制度
地区計画 建物の用途や形態、道路、公園などをきめ細かく規制・誘導する制度
建築協定 当該土地について一定の区域を定め、その区域内における建築物の敷地、位置、構造、用途、形態、意匠または建築設備に関してある地域の土地所有者等が全員の合意で協定を結ぶ制度
緑化協定 緑地の保全や緑化に関してある地域の土地所有者等が全員の合意で協定を結ぶ制度
(「大阪府の都市計画」大阪府、「都市計画」森林出版より抜粋)

 


<事例紹介> 住民参加でまちづくり条例を制定(神奈川県・真鶴町)


 神奈川県の西端に位置する人口約9,800人の真鶴町では、平成6年から「真鶴町まちづくり条例」を施行しています。この条例の特徴は、@町内全域に及ぶ独自の「土地利用規制規準」を設けたこと、A建築物の景観基準「美の原則」を設けたこと、B建設行為の手続きを明確に定め住民参加を取り入れたこと、C都市計画マスタープランである「まちづくり計画」も盛り込んだことです。土地利用規制規準では、町内全域をゾーニングし、建築できる建物の用途や高さ、まちづくりの具体的な進め方まで決めています。この条例制定にあたっては、住民説明会を十分行い、住民の意見を生かしながら内容が定められました。

  この条例が施行されたことにより、一定規模以上の建設行為が行なわれるときは、その建設行為が「土地利用規制規準」「美の原則」「まちづくり計画」に合致しているか確認されます。また、住民説明会も開催され、必要があれば公聴会を開催したり、議会議決を受けることもできるなど、公開制に基づく民主的な手続きを経ることが重視されています。

 この条例の効果は、大規模な建築物全般を対象にしているため、小売店以外の大規模集客施設に対しても対処できます。また、景観上の問題に対しても、「美の原則」という景観基準が条例化されているため、開発業者からも理解を得られやすいというメリットもあります。
まちづくり条例とは?

 市町村や都道府県といった地方自治体が制定する条例で、開発や建築をする場合のルールや手続きについて定めています。名称は自治体によって様々ですが、一般には、住民が地区の環境を守ったり、自主的にまちづくりをするための手続きについても定めています。
 条例は地方自治体の議会議決を経て制定されるため、条例に基づくまちづくりの規定は、非常に大きな効力をもっています。


<事例紹介> まちづくり協議会による住環境整備(東京都・世田谷区)


 昭和54年の世田谷区の調査で、太子堂地区は道路幅が狭く、木造住宅が密集していて、災害時に危険であると判定されました。そのことがきっかけとなって、昭和55年から防災まちづくりが始まりました。その後、昭和57年にまちづくり協議会を発足させました。協議会のメンバーは公募による個人参加で、私権の制限を伴う重要な決定をする場合には、協議会ニュースとして全戸に配布し、住民の意見を求めてから区に提案することになっています。これまで、区が所有する遊休地への公園の設置、暗渠になっていた川のせせらぎの復活、道路拡幅計画などについて意見、提案を出しています。

 これまでの活動の中では、住民同士の意見が対立することもありました。そのような場合には、協議会としての計画案は一旦撤回し、反対する住民の人たちともう一度議論をやり直してきました。また、行政と対立することもあります。区では、区長の強力なリーダーシップのもと、長期にわたってまちづくりを推進してきました。しかし、道路拡幅では住民と意見が対立し、協議会が反対派住民の意見をまとめて区に提案し、それを受けた区が改善案を示すことで、計画を進めることができました。

 まちづくり活動も長く続けていると、参加者の減少や、参加者同士の知識のギャップ、活動資金など様々な問題が出てきます。このような課題を解決するためには、まちづくりに関心をもち、自ら考え行動し、創造的なまちづくり活動を継続していける人たちを増やすことが求められています。(「第108回とよなか・まちづくりフォーラム」フォーラム・レポートNo.80より要約)

まちづくり協議会とは?

 まちづくり協議会は、住民の積極的参加によるまちづくり組織で、住民自らが住みよいまちづくりを推進することを目的としています。地元と行政との橋渡し的な存在であり、まちづくりの核としての役割を担っているのです。主な活動は、まちづくりの調査、計画案などの作成、事業の実施などにおいてそれぞれ協議を行い、合意形成をすることでしょう。そのためには、地元住民へのまちづくりの普及・啓発活動も必要となります。住民による組織としては、従来から町会や自治会、商店街などがあります。まちづくり協議会は、それら既存の組織に加え、地域を代表する団体、企業、個人などの参加により構成されています。


<事例紹介> 商業まちづくりを進めるまちづくり協議会(大阪府・豊中市)


 大阪府・豊中市では、「みんなの計画、役所の支援」を合言葉に、市民主体・行政支援の取り組みが行なわれています。まちづくり活動の中には、住環境整備を基本にしたものも多い中、豊中の場合は、商業地の活性化を目指したまちづくりがきっかけになっています。平成4年には、「まちづくり条例」を制定し、これまで行なってきた商業まちづくりに関する支援を、まちづくり活動全般に広げたものとして制度化しました。(→資料:豊中市まちづくり条例とまちづくりの進め方)このようなまちづくりの試みは、最初から制度や組織ができていたわけではありません。市民の主体的なまちづくり活動を支えていく中で、少しずつ制度化してきたのです。

 豊中のまちづくり支援の特徴は、まだ、まちづくり活動がはじまったばかりの初動期に経済的支援、技術的支援を手厚く行なっている点です。まちづくり活動にかかる費用を助成(期間、金額は限定付き)したり、まちづくりアドバイザーやまちづくりコンサルタントを派遣したりしています。行政組織としては、市役所の中に「まちづくり支援室」が設けられています。行政の総合窓口として住民からの意見・要望を交通整理し、まちづくり活動を支援しています。また、市役所内のまちづくりに関係ある各課から選抜された「まちづくり支援チーム」も組織され、制度の情報提供や助言などを行なっています。

 まちづくり協議会の中でも先端をいく「豊中駅前まちづくり協議会」は、地元主導のまちづくり計画として「まちづくり構想」を市に提出しました。それに対して市は、まちづくり支援室を中心に2年間、行政内ビデオの検討や、協議会とのやり取りなどを行なってきました。その結果、行政版まちづくり構想「まちづくりの基本方針」を発表しています。「みんなの計画、役所の支援」が、構想実現の次のステージへと進み出したのです。(「まちづくりへの新発想」三好庸隆著、建築資料研究社より要約)


3−2 特別用途地区の活用イメージ

 まちづくり関連3法の成立を契機に、地元商業者をはじめとする住民参加による新しいまちづくりを進めることが重要です。熱意をもってまちづくりに取り組む地域が、積極的に新しい枠組みを活用していくことが望まれています。そこで、まちづくり関連3法の中でも、ゾーニング(地域特性を生かして土地利用に規制や緩和を図ること)によるまちづくりを推進する制度である特別用途地区について、活用のイメージをまとめてみました。

 今回の都市計画法の改正により、特別用途地区の名称・種類や目的を、市町村の自らの判断によって柔軟に定められるようになりましたが、これらのイメージを参考に、あなたのまちでも特別用途地区の設定を働きかけてみてはいかがでしょうか。


特別用途地区の活用イメージ
名 称 対象になる建築物 目  的
中小小売店舗地区 中小店舗以外の立地を規制 商業地域等において、商店街を中心に中小商店の集積・展開によるまち並みの形成を図る
沿道業務機能地区 小規模商業施設、交通関連サービス以外を規制 街道沿いの小規模商業施設の集約的立地と交通関連サービスの整備を図る
特別住居地区 一定の大規模施設を規制 住居系の地域において、住民の利便の確保と良好な住環境の両立を図る
住工共生地区 一定の大規模施設を規制 準工業地域等において、工業と住居とが調和を図りつつ共存する
児童通学環境保全地区 風俗営業、娯楽施設、大規模小売店を規制 小学校・幼稚園の周辺で、児童の通学環境を保全する
伝統文化保存地区 風俗営業、娯楽施設を規制 神社仏閣周辺の伝統的なまち並みを保全する
中低層路面型独立店舗集積地区 非店舗、大規模小売店を規制 既成市街地の商業ストリート等で、路面店の特色を生かす
住商共生地区 街路に面した1階部分を店舗にし、上層部に住居を義務づける 既存商店街での居住を促進する 


3−3 まちづくり支援メニュー

 まちづくりに関しては、商工会議所や行政などでいろいろな制度、資金援助が用意されています。(→資料:まちづくり活動に対する行政等による支援施策と担当部署の一覧)あなたのまちづくりアイデアを実現するにはどの制度が効果的なのか、検討されてみてはいかがでしょうか。


<大阪商工会議所の主な支援メニュー>


○ 企業コミュニティ活動の支援(アメニティ・ソサエティの設立・活動支援)

  地域の自治やまちづくりにおける企業市民の活動を推進するため、平成3年に「アメニティ・ソサエティ」の結成を提唱しました。アメニティ・ソサエティとは、地域アメニティの向上をはかるため、任意で自主的に活動する地域住民組織の名称です。現在、市内3か所でアメニティ・ソサエティが結成され、地域の美化や緑化、文化活動や交流会など、様々な活動を展開しています。また、こうしたまちづくりに取り組む企業コミュニティの活動内容や、課題解決に向けたヒントを掲載した「都市型企業コミュニティ活動の手引き」を発行しています。さらに、企業コミュニティ組織の相互交流、連携をはかるネットワーク組織として、「アメニティ・ソサエティ活動連絡協議会」を設立し、各団体が相互に情報交換する場として、あるいは、事業協力や連携を促し、地域の課題解決に向けた研究活動を行なう場として、役立てていきたいと考えています。

 [問合せ]大阪商工会議所経済部内 アメニティ・ソサエティ活動連絡協議会事務局 TEL 06-6944-6331

○ まちづくり関連3法の活用支援

  まちづくり関連3法の内容を理解し、まちづくりに活用してもらうため、リーフレッ トを作成しています。また、1999年6月に大店立地法の指針が発表された後には、まちづくり関連3法の活用策について考えるフォーラムを開催する予定です。

 [問合せ]大阪商工会議所産業部        TEL 06-6944-6494


<大阪府の主なまちづくり支援メニュー>


○ 中小商業活性化推進事業(商業まちづくり計画の策定)

  中小商業活性化推進事業(中小商業活性化基金)では、魅力ある街づくりの一環として、商店街を整備するための調査・研究・計画策定に必要な費用を助成しています。これまでこの助成を受け、街づくりを推進するための調査を行なったり、街並・景観などの整備計画を策定した地区もあります。(→資料:中小商業活性化推進事業)

 [問合せ]財団法人大阪商業振興センター    TEL 06-6947-4331〜4332

○ 商業基盤施設整備事業(商業まちづくり計画の実施)

  上記の中小商業活性化推進事業により策定された計画を実施するために、ハード施設の建設や取得をする場合、必要な経費を補助しています。商店街でのまちづくり活動では、共同施設の整備・更新を伴う場合が多く見られます。イベント広場や公園、文化施設、アーケード、駐車場などを整備する場合に利用できます。(→資料:商業基盤施設整備事業)

 [問合せ]大阪府商工部商業観光課       TEL 06-6941-0351(内線2672・2673)


<大阪市の主なまちづくり支援メニュー>


○ 大阪市まちづくり活動支援制度

  まちづくりの整備手法や制度などの適用がはっきりしていない初期段階を支援する制度です。まちづくりアドバイザーの派遣、まちづくり活動の助成、まちづくりコンサルタントの派遣を通じて、自発的に取り組む地域のまちづくりを支援します。現在、市内7地区でまちづくりに向けた様々な活動が行なわれています。(→資料:まちづくり活動と大阪市まちづくり活動支援制度の流れ)

 [問合せ]大阪市計画調整局 地域まちづくり推進部まちづくり支援課 TEL 06-6208-7896

○ 大阪市商店街整備支援事業(商業まちづくりの推進)

  商店街が進める個性的で魅力あるまちづくりを支援し、商店街の組織強化や活性化、地域経済の発展に寄与することを目的にした事業です。商店街の組織づくりから、活性化計画づくり、施設整備まで一貫した支援を行います。(→資料:大阪市商店街整備支援事業)

 [問合せ]大阪市経済局 中小企業部商工課商業係  TEL 06-6208-8936〜8937


 < 目次へ >  < 次へ >


2003.4.1更新
Copyright(C) 1996-2003 大阪商工会議所