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 第106回経営・経済動向調査附帯調査
金融機関の貸し渋りに関するアンケ−ト調査
平成10年12月
■問い合わせ先
大阪商工会議所 経済部 大引、上月
TEL 06−6944−6304

金融機関の貸し渋りに関するアンケート結果

調査時点

平成10年11月下旬〜12月上旬

調査対象 

 
大阪府下に本店・本社を有する2,086 社の経営者


回答状況

 
回答 629社(うち大企業 308社、中小企業 321社、有効回答率30.1% )


企業規模区分

 
製造業および建設業では資本金1億円以上、その他の業種では資本金5,000万円以上を大企業とする。


金融機関の貸し渋りについて


総 括

 
(1)10〜12月の貸出姿勢の変化

取引している金融機関の10〜12月の貸出姿勢が7〜9月までと比べて変わったかに ついて聞いたところ、全体の約5割(49.6%) が「依然として厳しい」または「より厳しく なった」と答えた。前回9月調査(61.3%) と今回を比べると貸し渋りが厳しいとするもの は11.7ポイント減った。ただ、「緩くなった」が前回4.6%、今回4.3%とほとんど変わって いない。これに対し、「借入なし等」が前回33.1% から今回42.6% へと大幅に増えている ことから、リストラなどのコスト削減で、借入に依存しない体質に経営改善していると考 えられる。





( 2 )金融機関別の貸出姿勢
 
「依然として厳しい」「より厳しくなった」と感じる金融機関は、「都市銀行(91.3%) 」「地方銀行(29.5%) 」と、9月調査(都市銀行88.3% 、地方銀行2.5% )と比べ、都市 銀行の貸し渋りがより顕著になっているのが伺える。

( 3 )貸し渋りの内容

具体的には、「借入金利が高くなった(45.3%) 」が前回調査と同様に一番多く、続いて 「追加担保の要請など担保条件が厳しくなった(33.9%) 」「審査のために提出する資料が 増え、審査期間が長くなった(33.9%) 」をあげるものが多い。また今回、「保証条件の強 化(23.3%) 」が前回(6.2%) より大幅に増えたが、これは中小企業(製造業40.3% 、非製 造業30.9%)」からの指摘が増えたためである。そのほか「長期・固定の借入ができなくな った(21.3%) 」「既存借入金の返済(21.3%) 」「希望額の借入が難しくなった(20.9%)」 などを指摘するものが多い。 規模別でみると、大企業では「借入金利が高くなった」と回答したのは、製造業で57.1 % 、非製造業で67.0% と非製造業で金利上昇とあげるものが多い。中小企業では、「担保 条件強化( 製造業38.8% 、非製造業40.4%)」「保証条件強化( 製造業40.3% 、非製造業30 .9%)」を指摘するところが多く、十分な担保・保証がなければ借入は困難になっているの が伺える。そのほか、金利高騰(製造業23.9% 、非製造業39.4%)、既存借入返済(製造業 23.9% 、非製造業23.4%)などをあげるところが多かった。

( 4 )貸し渋りへの対応  

こうした借入困難に対して、どのように対処しているかについて聞いたところ、中小企 業では「信用保証協会を利用」が製造業で56.7% 、非製造業46.8% と一番となった( 前回 は製造業で25.0% 、非製造業17.9%)。これは10月からの『中小企業金融安定化特別 保証』 の実施で利用者が増えたためと思われる。また、全体で指摘の多いものは、「金融機関と ねばり強く交渉し、解消した(26.2%)」「公的金融機関を活用(23.4%) 」などがあった。 なお、前回調査で1番多かった「他の民間金融機関を活用」は指摘するものが11.9% と大 きく減少した( 前回は31.4%)。

( 5 )貸し渋りの影響
 

借入困難の影響としては、「賃金・賞与の抑制(43.3%) 」が1番となり、前回(29.9%) から大幅増となり、「従業員の削減(26.6%) 」( 前回19.7%)と合わせ、人件費抑制で対処 する傾向が顕著になっている。また、「販売管理費等の削減(41.0%) 」にも多くの指摘が あり、多方面でのコスト削減を強いられている。そのほかには、「設備投資抑制(26.0%) 」があり、最近の投資減退、賃金抑制、失業率悪化、景気悪化の一因が信用収縮にあるこ とが伺える。規模別の特徴としては、中小企業で特に従業員の賃金や雇用面への影響が強 く、「賃金・賞与の抑制( 製造業47.8% 、非製造業 54.3%)」「従業員の削減 (製造業38 .8% 、非製造業34.0%)」の回答が多い。また、規模を問わず、非製造業において「販売管 理費等の削減」が目立っている(大企業46.8% 、中小企業47.8%)。

( 6 )貸し渋りについての具体的事例、意見


今回から、貸し渋りについての自由記入欄を設けたところ次のような具体的事例、意見 があった。
    <事例>
    ・「新規の資金調達は全く不可能。既存借入も返済、金利の譲歩がない」(中小・建設) ・「都銀より取引縮小の意思表示があった」(中小・繊維製造)
    ・「信用保証協会の保証を勧め、プロパ−融資への返済を迫られている。銀行が自己のた   めに保証協会を利用しており、貸し渋りの解消になっていない」(中小・繊維卸売) ・「貸し渋りは中小企業の意欲減退につながる。現に、廃業を考えている経営者が増えて   いる」(中小企業・精密機械器具製造)
    ・「関係会社の借入保証を求められている」(大・食料品卸売)
    ・「公的金融でさえ厳しくなっている」(中小・木材製品製造)
    ・「第二地銀の例だが、借入金残を全額返済すれば賞与資金を貸すと言ってきたので、そ   の通りにしたが、支店が本店に稟議したところ、ノ−の返事で結局何も借りられなか  った」(中小・運送)
    ・「預金増額の要請があった」(大・運送)
    ・「割引手形の銘柄指定がある」(大・非鉄金属製造)
    ・「公的資金導入で、銀行の現場も少し状況がかわるのではと期待していたが、新聞報道でゼネコン向け融資の債権放棄の記事が載った直後から、また当初の状況に戻った感じ。金利引き上げ交渉は一方的すぎる」(大・食料品卸売)
    <意見>
    ・「銀行の貸し渋りはまだ続くと思うが、10月からの中小企業金融安定化特別 保証制度のおかげで気分的には非常に緩和された」(中小・運輸)
    ・「銀行は身勝手だ。自らの節減、リストラの前にまず取引先に無理を言う」(大・繊維 卸売)
    ・「貸し渋りの最大の原因は銀行の自己資本比率8%以上の確保ということもあるが、不 動産を中心とする担保価値の大幅な下落もある。土地の流動化を急ぎ、下落しすぎている不動産価値を正常化することが必要」(中小・繊維卸売)
    ・「貸し渋りの表現はまずい。金融機関としては、経営の健全化のために当然のことをし ているまでのことで、弱いものいじめのニュアンスをもつ表現は景気にもマイナスに  なる」(大・電気機械器具製造)

集計結果

<金融機関の貸し渋りについて>

1.取り引きしている金融機関の貸し出し姿勢の変化(7〜9月と10月以降を比べて)


以下、前問で「依然厳しい」「より厳しくなった」と回答した企業254社(大企業1 10社、中小企業144社)対象

2.厳しくなったと感じる金融機関の種別(複数回答)



3.具体的にどのように借入条件が厳しくなったか(3つ以内の複数回答)


4.借入困難に対して、どのように対処しているか(3つ以内の複数回答)


5.借入困難に伴う影響は(3つ以内の複数回答)



2003.4.1更新
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