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事業承継に関するアンケート調査
特集/ニューファクトリー
平成10年3月
<結果の要約>

今回の調査では、回答企業860社のうち、後継者を決定していない企業が470社(54.7%)あり、後継者の選定という事業承継の第一歩すら踏み出していない中小企業が過半を占めることが明らかになった。その理由は、「現代表者・社長自身がまだ若いので考える必要がない」というものが最も多かったものの、「後継者にしたい人がいるが本人が承諾しない」や「廃業を考えている」といったものも少なからずあり、経営環境が厳しく、将来に対して明るい展望が拓けない現状において、後継者難に悩む中小企業が多いことがわかる。
 一方、すでに後継者を決定している企業は、回答企業860社のうち385社(44.8%)あった。しかし、事業承継に際し、「後継者の経営能力の向上」に困っている企業も多く、現在の国際競争の激化や規制緩和などかつてない構造変革期において、従来どおり、単に現経営者と同族であるからといった理由のみで事業を承継・継続できる環境ではなくなってきた状況がうかがえる。
また、事業承継においては、相続税(いわゆる事業承継税制)が高いという制度面 での問題を指摘する企業が多かったほか、所有と経営が一体化した中小企業では、「会社の信用=経営者の信用」であるため、同族以外への事業承継が困難であるといったことも推測された。
今後、日本経済の新たな発展のためには、中小企業が変化に的確に対応し、活力を取り戻すことが必要である。そして、その前提として、円滑な事業承継が可能となる環境を早急に整備することが求められる。
以下に調査結果の要約を示す。

1.二代目以降の現代表者・社長の8割は先代からみて「同族」、うち6割は「息子」

全回答者(860社・860名)のうち、二代目以降の現代表者・社長にあたる回答者677人に対し、先代との関係を尋ねたところ、「息子」との回答が422件(62.3%)と大半であり、これに「娘婿」「甥・姪」などを含めた同族にあたるとの回答は562件(83.0%)を占める。

2.現代表者・社長が先代から事業承継した理由は「先代の一族であり当然だと思ったから」が6割


二代目以降の現代表者・社長677人に対し、先代からの事業承継を決心した理由を尋ねたところ、「先代の一族であり当然だと思ったから」との回答が397件(58.6%)と最も多い。


3.先代からの事業承継対策として、現代表者・社長の35%が「経営者としての心構えを先代から聞いた」と回答。「業界団体の会合に進んで出席した」との回答も3割。

二代目以降の現代表者・社長677人に対し、先代からの事業承継に際し行ったことを尋ねたところ、「経営者としての心構えを先代から聞いた」との回答が241件(35.6%)と最も多く、これに「業界団体の会合に進んで出席した」211件(31.2%)が続く。

4.先代からの事業承継に際し3割の現代表者・社長が「先代時代の幹部(番頭)の処遇」や「取引先や金融機関からの信用の維持・獲得」に困っている。

二代目以降の現代表者・社長677人に対し、先代からの事業承継に際し困ったことを尋ねたところ、「先代時代の幹部(番頭)の処遇」との回答が226件(33.4%)と最も多い。これに、「取引先や金融機関からの信用の維持・獲得」(222件、32.8%)、「従業員対策」(187件、27.6%)が続く。

5.2社に1社で「後継者が決まっていない」

回答者860人全員に対し、後継者を決定しているかどうか尋ねたところ、「決定している」との回答が385件(44.8%)と「決定していない」470件(54.7%)を下回っている。

6.次期後継者は8割以上が「同族」から選んでいる。うち「息子」は6割

「後継者を決定している」と回答した385人に対し、自身との関係を尋ねたところ、「息子」との回答が248件(64.4%)あり、「取引先」「その他」を除く同族で85.0%を占める。

7.後継者決定の際、現代表者・社長の6割が「経営者の一族である」ことを重視している

「後継者を決定している」と回答した385人に対し、後継者を決定するに際し重視した点を尋ねたところ、「経営者の一族であること」との回答が240件(62.3%)と最も多い。これに「経営理念を継承できる」との回答が146件(37.9%)あり、「経営意欲が旺盛である」137件(35.6%)と続く。

8.次期後継者に対し行っていることとして、2社に1社が「経営者としての心構えを聞かせている」と回答

「後継者を決定している」と回答した385人に対し、円滑な事業承継のために行った、あるいは行っていることを尋ねたところ、「経営者としての心構えを聞かせる」との回答が196件(50.9%)と最も多く、「業界団体の会合に出席させる」123件(31.9%)、「経営者向けのセミナーに参加させる」121件(31.4%)と続く。

9.事業承継の時期で最も多いのは「自分が一定年齢に達したとき」。2社に1社が5年以内に予定

「後継者を決定している」と回答した385人に対し、事業承継の時期を尋ねたところ、「現代表者・社長自身が一定年齢に達した時」との回答が116件(30.1%)と最も多い。

10.7割の現代表者・社長が事業承継後「会社に残り後継者を補佐する」と回答

「後継者を決定している」と回答した385人に対し、事業承継した後の身の振り方を尋ねたところ、「会社に残り後継者を補佐する」との回答が262件(68.1%)と最も多く、全体の約7割を占める。

11.後継者に事業承継する際に困っていることとして、4割の現代表者・社長が「後継者の経営能力の向上」と回答。「取引先や金融機関からの信用の維持・獲得」との回答は3割

「後継者を決定している」と回答した385人に対し、事業承継に際し困っていることを尋ねたところ、「後継者の経営能力の向上」との回答が164件(42.6%)と最も多く、「取引先や金融機関からの信用の維持・獲得」との回答121件(31.4%)が続く。

12.後継者を決定していない理由として、3社に1社が「自分自身がまだ若いので考える必要がない」と回答。「廃業を考えている」企業は1割

「後継者を決定していない」と回答した470人に対し、後継者を決定していない理由を尋ねたところ、「自分自身がまだ若いので考える必要がない」との回答が156件(33.2%)と最も多い。

13.後継者にしたい人がいるのに本人が承諾しない理由の3割は「事業の将来性に疑問を持っている」

「後継者を決定していない」と回答した470人のうち、「後継者にしたい人がいるが本人が承諾しない」と回答した32人に対し、後継者が承諾しない理由について尋ねたところ、「事業の将来性に疑問を持っている」との回答が9件(27.3%)と最も多い。

14.「廃業する」理由は「事業に将来性がない」が6割。「適当な後継者がいない」は3割

「廃業を考えている」企業49社にその理由を尋ねたところ、「事業に将来性がない」との回答が31件(63.3%)と最も多い。また、「適当な後継者がいない」との回答は14件(28.6%)。

15.後継者が決まっていない企業の1割が「会社売却」を検討

「後継者を決定していない」と回答した470社に対し、会社売却の意向を尋ねたところ、「売却を検討している」との回答は52件(11.1%)。

16.事業承継に関する意見・要望はほとんどが「自社株式の評価の見直し」について

事業承継に関して、政府または大阪商工会議所に対する意見・要望を尋ねたところ、「自社株式の評価方法の見直し」が大半を占める。また、本所に対しては、後継者を対象とする異業種交流会や各種セミナーを要望する意見が多かった。


2003.4.1更新
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