大商では、企業経営の参考に供するため、賃上げ実施後の在阪企業の賃金を調査し
ているが、このほど平成9年度の調査結果をとりまとめた。
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1.年齢・勤続年数別賃金水準(第1表) |
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年齢、勤続年数別に対前年度上昇率を見ると、概ね1%以内と極めて低いものに とどまった。これは、昨年度の上昇率が高かったことによる反動という側面もある が、「わが国は世界トップ水準の賃金水準にあり、これからの引き上げは雇用の深 刻化を招く」とし、「月額ベースの賃上げよりも成果配分は賞与や一時金で支払う 」とする経営側の姿勢が顕著となった結果、ベースアップが大きく抑制されたもの と見られる。 全体的に低水準ではあるが、大卒男子では25歳〜40歳の上昇率が比較的高い 一方、低年齢層と高年齢層で上昇率は低く抑えられる傾向が見られた。一方、高卒 男女は18歳〜20歳で上昇率が相対的に高くなった。 |
2.賃金倍率(第2表) | ||
賃金倍率(各学歴の初任給を100とした年齢別の賃金指数)は、全般的に昨年度 と同じ傾向となっている。例えば、男子の場合、大学卒・事務(全産業・全規模) では30歳で150.1(前年度149.9)となり、40歳で216.0(同215.7)と初任給の2倍を 超え、55歳で300.6(同300.9)に達する。 高校卒・事務では25歳131.5(同131.7)、30歳で175.0(同175.4)、40歳で245.8(同 246.3)、55歳で343.5(同343.7)となっている。 大学卒・男子についてこの賃金倍率を規模別にみると、企業規模が大きいほど高 く、55歳の賃金は、1,000人以上規模328.9、300〜999人規模303.5に対して、 100〜299人規模は290.4、30〜99人規模は278.3となっており、規模間格差がみ られる。 |
3.賃金水準の比較 | ||
1)企業規模間の比較(第3表) 従業員数1,000人以上規模の各年齢の平均賃金を100として、企業規模間の賃金
比較を行うと、大学卒・男子・事務の場合、30歳時点では300〜999人規模89.2
(前年度89.0)、100〜299人規模88.4(同87.8)、99人以下規模89.8(同89.6)
と、1,000人以上規模企業と10%強の差がつき、99人以下の企業では、その後も
高年齢・長勤続層になるにつれ差が広がる傾向にある。 高校卒・男子・事務については、若年層の一部で1,000人以上規模を上回ってい
る。それ以降は全般的に下回り、差が出るものの、大学卒ほどの格差は見られない。 2)産業間の比較(第4表) 全産業全規模の平均賃金を100として、産業間において同一年齢の賃金を比較す
ると、大学卒・男子・事務の場合、22歳(初任給)では製造業が非製造業をやや上
回っているが、27歳で逆転、以後、非製造業が製造業を上回っており、賃金水準は
非製造業優位となっている。 3)学歴間の比較(第5表) 学歴間で同一年齢の賃金を比較すると、高年齢になるにつれて学歴間賃金格差は 概ね拡大している。例えば男子の場合、大学卒・事務の全産業全規模の平均賃金を 100とすると、高校卒・事務については22歳96.1、30歳94.9、40歳92.6、50歳93.3、 55歳93.0となっている。特に中学卒についてはこの格差がより顕著にあらわれてお り、22歳97.1、30歳90.3、40歳81.0、55歳73.0となっている。 4)職種間の比較(第6表) 製造業において、事務、販売、技術、生産従事者の賃金水準を職種別に比較する と、大学卒・男子の場合、賃金水準は「販売」が全般的に高く、次いで「技術」 「事務」の順となっている。 一方、高校卒・男子の場合は、「販売」が全ての年齢層にわたり「事務」を上回 っているが、「生産」は27歳以降「事務」より低い水準で推移している。 |
4. 初任給(第9表) | ||
平成9年度の初任給は、全産業・全規模で見ると、男子の場合、大学卒・事務で 195,423円、高校卒・事務158,988円、中学卒142,134円、女子の場合、大学卒・ 事務販売186,875円、短大卒・事務販売166,074円、高校卒・事務販売155,483円、 中学卒137,166円となった。 全産業・全規模で見た場合の初任給の上昇率は、-1.0〜2.0%と低水準ながらも、 前年度の上昇率と比較すると、中学卒女子を除く各学歴で伸びた。 |
2003.4.1更新 |