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都市型社会資本整備に関する要望
平成10年12月
大都市圏は、諸機能が集積し、経済発展の中核的役割を担ってきたが、過密による交通 渋滞や通勤混雑問題、産業の空洞化や低未利用地対策、老朽木造密集市街地問題など、大都市固有の諸問題解決が緊要となっている。
さらに、世界的な都市間交流の拡大、高度情報化の進展、人口の高齢化の進行、環境重視など、時流に即した都市づくりも迫られている。
このため、これからの都市整備にあたっては、都市計画法の遵守、土地収用法の実効を上げつつ、従来型の公共事業の推進はもとより、新たな都市システムの導入や都市機能の強化に重点を置いた、いわば次世代型の社会資本整備に取り組むことが望まれる。このような点を踏まえながら、国および地方自治体においては、都市圏における下記のような社会資本を早急に整備されるよう要望する。



1.環境・エネルギー系

アメニティ豊かな都市環境の創造に取り組むとともに、都市における環境負荷を低減するような省エネルギー、リサイクル型の都市・社会構造の構築を目指し、環境共生型のまちづくりに向けた都市整備が求められる。 とりわけ、これからの都市インフラとして不可欠なのは、いわゆるライフライン系インフラと呼ばれる都市自立型の社会資本であり、エネルギーや資源の有効利用を促すような都市基盤施設の整備を急ぐべきである。

今後必要な社会資本整備
○緑化や河川改修、水質保全、ビオトープ(生物の暮らしを持続的に保障するひとまとまりの空間)など、都心部の環境創造、環境アメニティの向上をはかる社会資本の整備

○渇水、河川流量安定化対策として、雨水や下水処理水を活用した水のリサイクル利用システムの構築

○廃棄物高度処理施設(とくにダイオキシン対策)の整備、廃棄物資源化システムの構築

○ごみ発電や焼却廃熱利用による熱供給、ごみの固形燃料(RDF)化システムの導入

○環境負荷を抑える省エネルギー型エコ住宅の建設促進

○自然エネルギーやコージェネレーション(熱電併給)などを活用した地域自立型エネルギーシステムの導入

○低公害車普及促進のための燃料供給施設の整備


2.情報・産業系

都市装置としての情報インフラは、単なる地域内情報通信ネットワークとしての機能に止まらず、高度化するビジネスニーズや生活者ニーズへの対応や行政による都市管理・運営、高齢者・身障者などに対する生活支援サービスの提供、災害時のセキュリティ対策などを視野に入れた整備が重要である。 こうした点を踏まえ、これからの都市における情報インフラ整備にあたっては、省庁間での重複投資を回避しながら、総合的な情報通 信基盤を構築していくことが求められる。

今後必要な社会資本整備
○大容量光ファイバー網、CATV網の整備・高度利用による基幹的地域情報通 信網の早期整備

○高齢者や身障者に対する行政・医療・防災・労働などの各種支援システムの構築

○タウン情報の提供や公共施設の予約、行政相談等にも対応した、マルチメディア端末を備える地域情報拠点の整備

○産業空洞化、域内中小企業対策の一環としての域内企業情報データベースの整備

○深刻な都市失業問題対策として、ハイテク・新規成長分野への就労構造の転換、技能労働者の再雇用・再就職を促す技能研修機関、技能養成支援制度の創設

○行政による都市管理、マーケティング等企業戦略立案の双方で利用可能な、GIS(地図情報システム)を活用した都市空間基盤情報システムの整備


3.交通・物流系

都市における人流・物流の円滑化、NOX 等大気汚染の改善をはかるため、総合的な都市内交通 システムの構築を進め、交通混雑の解消や物流効率化を促進する社会基盤の整備が求められる。

今後必要な社会資本整備
○都心と周辺地域との連携をはかる、広域交通インフラとしての高速道路や高規格幹線道路、環状道路交通 網の整備

○都心部再開発等を促す都市計画道路・都市鉄道の重点的整備

○都市交通のボトルネック解消のための連続立体交差事業の推進

○空港、港湾へのアクセス向上をはかる高規格連絡道の整備

○パークアンドライド、パークアンドバスライド、さらにはサイクルアンドライドなど、公共交通 機関の利便性向上をはかる都市内交通システムとターミナルの整備

○共同集配情報システムや共同物流施設などの整備による、都市内物流システムの構築

道路交通情報通信システム(VICS)や自動料金収受システムなど、高度道路交通 システム(ITS)の普及促進


4.都市空間・防災系

災害に強くかつ災害時の被害を最小限に止めるような柔軟な都市構造を備え、観光資源ともなり得る魅力的な景観をも持ち合わせた空間として整備していく必要がある。そのためには、都市全体の機能再配置、物理的な都市施設や景観の修復、新たな都市基盤システムの構築を目指した社会資本整備が求められる。 具体的には、これまで述べてきた社会資本に加えて、防災面から都市全体を総合的に管理・運営する施設およびシステムや、高齢化社会の到来を踏まえた人に優しいバリアフリーな都市基盤の整備、諸活動がグローバルに展開される場、景観デザインにも配慮された空間としての整備などが必要である。

今後必要な社会資本整備
○都市構造の再編、機能再配置を促す土地区画整理事業の積極的推進

○街づくり3法の実施、とくに地方自治体の首長への権限委譲、都市計画法や土地収用法の推進を踏まえた、特定モデル地域指定による面 的開発の促進

○都市居住の安全性を高める老朽木造密集市街地、住工混在地域の再編・整備

○人に優しい道づくりの一環としての幅広・バリアフリーな歩道、自転車専用道路の整備

○都市アメニティの向上および防災拠点・空間としての公園・緑地の整備

○災害時にも重要な水源として活用できる池や水路、せせらぎなどの修景・親水用空間としての整備

○都心部での水害を回避するため、自然な形で雨水の地下浸透化をはかる透水性舗装など雨水浸透システムの積極的導入

○安全なライフラインの整備や高度情報化、都市景観の向上に対応した電線共同溝等の敷設促進

○大深度地下を利用した清掃工場、下水処理場等の建設

○都市空洞化対策としての都心部低未利用地情報データベースの整備

○都市における歴史的景観・文化情報の発信主体となる歴史的建造物の保存、整備

○各種標識・サイン等の多言語表示化の推進などによる国際交流空間としての基盤整備


(参考)

用語説明 

ビオトープ(Biotop)

○生物の暮らしを持続的に保障するひとまとまりの空間。
○都市化の波によって次々と姿を消す自然のビオトープの再生をはかるため、小規模な自然生態系を都心部に人工的に作っていこうする取り組みで、環境先進国ドイツでは校庭のいたるところに作られている。

ごみの固形燃料(RDF=Refused Derived Fuel)
○可燃ごみを破砕・乾燥・成形することにより、石炭に近い発熱量を有する固形燃料に再生したもの。
○保存性・輸送性に優れ、従来のごみ直接燃焼の2倍以上の熱回収が可能である。エコ住宅(環境負荷低減型住宅)
○優れた建築材料の使用、設計上の工夫等により省エネルギー性能の向上がはかられる構造を有する住宅、あるいは外壁床材、内外装材等の建築部にリサイクル資材、雨水利用設備の導入等により資源の有効活用がはかられた住宅。

域内企業情報データベース
○地域の地場産業や中小企業などの振興をはかるため、一定のテーマ性(モノづくり機能別 、環境関連など)を持った分類により個別企業情報をデータベース化したもの。
○東京墨田区でも構築され、区内企業の受注や異業種交流促進のために活用されている。GIS(地図情報システム=ographicInformationSystems)
○地理的位置に関する情報を持つ様々な台帳・統計データ等をデジタル化された地図上に結びつけ、統合的に処理、管理、分析するコンピュータ情報処理体系。
○行政による防災管理システムの整備や、民間によるマーケティング、商品配送ルートの効率化など、その活用範囲は拡大している。

道路交通情報通信システム(VICS=Vehicle Information and Communication System)
○VICSセンターで編集、処理された渋滞や交通規制などの道路交通 情報をリアルタイムに送信し、カーナビゲーションなどの車載機に、現在地や事故・渋滞・目的地までの所要時間などの各種情報を文字・図形で表示するシステム。


2003.4.1更新
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