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小渕新内閣への要望
平成10年8月

わが国経済社会は、従来の政治・経済システムに対する信頼が揺らぎ、将来に明るい見通 しを見出せないことから、国民・企業の間に閉塞感と不安感が広がり、かつてない深刻な状況に陥っている。
そこで、小渕新内閣におかれては、萎縮している国民や企業が自信を取り戻し、積極的な経済活動を展開できるよう、景気回復、金融安定化や中期的な構造改革の道筋など、明るいビジョンを早急に提示し、内外の信頼回復に努められたい。具体的には、危機的状況にある日本経済を建て直すため、以下の通 り、景気対策、税制改革、金融安定化策などを迅速に実施するよう強く要望する。




1.景気対策の機動的な実施


最近のわが国経済は、先行き不安による消費不振の長期化をはじめ、最終需要が軒並み落ち込み、経営環境や所得・雇用情勢も極端な悪化を示すなど、危機的な状況に陥っている。そこで、先般 決められた総合経済対策を円滑に実施するとともに、その後の推移によってはさらなる景気対策を講じられたい。

2.税制改革並びに社会保障制度改革の実現

1)所得税・住民税の恒久減税の実施
    所得の伸び悩み、社会保障費の増加という国民の先行き不安を払拭し、消費を喚起するため、所得税・住民税の最高税率の引き下げ、累進税率の緩和で5兆円以上の減税を実現されたい。
2)法人実効税率の40%以下への引き下げ
    わが国産業の活力を高め、国際競争力を維持するには一刻も早く法人税の実効税率を国際的な水準に引き下げることが必要である。ついては法人税の実効税率を国際的な水準である40%以下に引き下げられたい。また、法人税の引き下げに合わせて中小法人の軽減税率を引き下げるとともに、昭和56年以来据え置かれている軽減税率の適用年間所得金額を1,500万円に引き上げられたい。
3)外形標準課税の回避
    政府において検討課題となっている地方税における外形標準課税の導入は、わが国経済基盤を支える中小企業やベンチャ−ビジネスの倒産を誘発して、経済活力を削ぐ深刻な影響を招く懸念が極めて強いので見送られたい。
4)社会保障制度の改革
    少子高齢化が急速に進展するなか、社会保障費負担の抑制や世代間の不公平是正が図れるよう、年金・医療など社会保障改革の道筋を示し、国民の不安感を払拭されたい。

3.金融システム安定化策の早期実施

金融不安と信用収縮を招いている金融機関の不良債権の早期処理が急務となっている。政府におかれては、企業の再活性化とともに海外の日本経済への信頼を回復するため、ブリッジバンク制度を中核とする金融再生ト−タルプランを早急に実行に移し、不良債権処理の早期化と健全な借り手企業の保護を図られたい。

4.中小企業・ベンチャ−企業対策の実施

1)中小企業基本法の見直し

    中小企業の範囲については、昭和48年に中小企業基本法の一部改正がなされたものの、その後今日まで改定は行われていない。しかし、この25年間における経済規模の拡大や株式会社の最低資本金が1,000万円になったことを考慮する と、少なくとも中小企業基本法における中小企業の資本金基準については、その規模を拡大されたい。
2)政府系中小企業金融機関の融資拡充
    1)融資審査の弾力化
      政府系中小企業金融機関にあっては、返済能力のない企業は別 として、中小企業の存続を第1義に考え、従来以上に融資審査を弾力化されたい。

    2)小企業等経営改善資金融資制度(マル経)の充実

      平成11年3月以降、小企業等経営改善資金融資制度(マル経)の貸付限度額の本枠・別 枠の区別を撤廃し、限度額を1,000万円にするとともに、設備・運転資金の返済期間についても、それぞれ7年、5年とされたい。

    3)融資金利減免措置の延長

      金利5%超の政府系中小企業金融機関の貸付に対して講じられている金利減免措置を期限切れとなる本年10月18日以降も延長されたい。

    4)信用補完制度の充実

      信用力や担保力の乏しい中小企業金融の円滑化のために信用保証制度の強化が必要である。 そのため、現在の低金利状況下において相対的に高い水準に止まっている信用保証協会の保証率を引き 下げるとともに、保険公庫、保証協会の経営基盤の強化を図られたい。
3)ベンチャ−ビジネス促進税制の創設
    ベンチャ−ビジネスを支援するため、投資家がベンチャ−ビジネスに対する投資額の2分の1相当分を当該年に所得控除しうる制度を創設するとともに、ベンチャ−ビジネスに対する貸金については貸倒引当金の割合を引き上げられたい。
4)コンピュ−タ−2000年問題への対応
    中小企業のコンピュ−タ−2000年問題への対応を支援するため、プログラム変更などに伴う更新費用に対する優遇税制を拡充されたい。

5.製造業・流通業の活性化

1)「近畿圏の規制都市区域における工場等の制限に関する法律」の廃止
    近畿圏の産業と文化の活性化に大きな制約となっている「近畿圏の規制都市区域における工場等の制限に関する法律」を廃止されたい。
2)街づくりの視点に立った中心市街地・商店街の活性化
    地域の生活・文化や経済の担い手である商店街は、地域コミュニティの核として重要な役割を果 してきたが、消費者ニ−ズの多様化、空き店舗の増加、後継者難等により厳しい経営環境に直面 している。今後、商店街の活性化を促進するために は、地域環境や交通問題、土地の有効・高度利用の促進、高齢化社会への対応等を含む地域全体の街づくりを推進することが緊要である。このため、「改正都市計画法」「大規模小売店舗立地法」「中心市街地活性化法」のいわゆる街づくり関連3法案の施行にあっては、以下の点に配慮されたい。
    1)商店街活性化対策の実施体制の整備
    街づくり関連法案については、法律が制定されたものの、その運用にあたっては不明確なところが多い。空洞化問題に対応し、地域がその特性を生かしてすすめる街づくりに役立つものとすることが大切であり、中小企業の振興につながる街づくりが推進されるよう十分配慮されたい。

    2)「街づくり関連3法」における商工会議所の役割の明確化

      街づくり関連3法の実施にあたっては、地域総合経済団体としての商工会議所の意見・役割を重視した法運営を行われたい。

6.行政改革、地方分権、規制緩和など構造改革の推進

わが国が21世紀に向けて明るい展望を切り開いていくためには、当面の景気回復とともに中期的な構造改革を断行することが肝要である。とりわけその中核になる行政改革については、肥大化・硬直化した行政システムを抜本的に改革し、自由にして公正な社会の形成のための国家機能が有効・適切に発揮しうるよう簡素で効率的な行政機構を実現されたい。このため、先般 決められた中央省庁改革基本法にもとづく省庁再編や行政事務・事業のスリム化、効率化を断固実行するとともに、併せて官民分担の徹底、地方分権、規制緩和を強力に推進されたい。

7.地域整備の推進

1)関西国際空港全体構想の早期実現
    我が国の航空ネットワ−クの拠点として重要な役割を果 たしている関西国際空港を、世界第一級の国際ハブ空港に育て上げるべく、滑走路3本からなる全体構想を早期に実現されたい。
    当面、2期事業の円滑な推進が図られるよう、所要の事業費を確保されたい。
2)関西文化学術研究都市への交通アクセスの改善
    関西文化学術研究都市中心部と大阪方面との交通アクセスには不十分な点が多い。交通 アクセス改善のため、京阪奈新線(近鉄東大阪線生駒駅〜近鉄京都線高の原駅)について、平成10年度に新規事業採択された生駒駅〜登美ケ丘間の整備が図られるように、十分な予算措置を講じられたい。
3)2008年第29回オリンピック競技大会の大阪招致
    2008年に開催される第29回オリンピック競技大会の大阪招致に関し、一日も早く閣議了解を行うとともに、国を挙げての招致支援体制を早急に整備されたい。


2003.4.1更新
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